ことりちゃん、お誕生日おめでとう!
今回はことりちゃんのお誕生日記念という事で、一章スタート以前の過去のエピソードを公開させて頂きます。
【個人話】なので、穂乃果ちゃんと同じく本編にも関係のある内容になっています!
そして、物語の時系列は――正也達が中学二年生だった時の冬の頃になります。
では、どうぞ………
それは、ことりがまだ小学生になりたてだった頃の記憶。
暗い夜道の中で泣いていることりの手を引いて、ずっと前を歩いてくれた、
それは
穂乃果ちゃんがいくら小学生はオトナなんだと言っても、ことりたちはまだまだ子供で……結局大丈夫じゃ無くて、私と正ちゃんは、穂乃果ちゃんと
ことりはその時、不安で不安で仕方なくて……つい『ほのかちゃ~~んっ!』って言いながら泣いちゃって……そんな時でした。
―――ことりちゃん大丈夫だよ! 僕がいるから大丈夫!
そう言って、正ちゃんはことりの手を握りながら励ましてくれました。
こんな時、女の子の普通の反応としては、その正ちゃんの頼りになる姿に一瞬で恋しちゃったのかもしれないけど……でも正ちゃんは、そんな小さい頃のことりの期待に応えてくれるほど、頼りになる男の子とはほど遠くて……
―――うう……くらいよぉ……こわいよぉ……穂乃果ちゃん見つからないよぉ……
穂乃果ちゃんが見つからない中、暗くなっていく町中で、ことりの手を握るその手は私以上に震えていて……
―――もしかして……このままずっと迷子? やだよぉ……うぇぇぇぇーーーん!! 穂乃果ちゃんどこーー!?
ついに正ちゃんは不安でことり以上に大泣きしちゃって……本当に正ちゃんは、ことりの思う“頼りになる男の子”とはあまりにもかけ離れていました。
……でも。
―――ヒック……ヒック……ことりちゃぁん……大丈夫? 大丈夫だからね……僕が……ヒック……僕がいるから大丈夫だからぁ……うぇぇーーん!!
正ちゃんは自分が一番大丈夫じゃないはずなのに、ずっとことりの事を心配して声をかけ続けてくれました。
ことりの手を握って泣きながら前を歩く正ちゃんのその手は、私の事を思いやるように優しく……でもしっかりと握っていてくれて……
そんな正ちゃんに、ことりの胸はじんわりと暖かくなっていって――
――気が付いたら、どんなに自分が傷ついても、友達の事を誰よりも思いやってくれる……そんな優しさを持った正ちゃんの事を―――ことりは、いつの間にか好きになっちゃってました。
結局、その後ようやく穂乃果ちゃんと海未ちゃんを見つけれて、その後近所の優しいおばさまに出会い、帰り道を教えて貰って無事に私たちは家に帰る事ができました。
そしてその帰り道―――ことりは、正ちゃんと家の方向の関係で別れるまで、まだじんわりとあったかい正ちゃんの手を放したくなくて……結局手を握ったままで
でも、ちょっとおニブさんな正ちゃんは、ことりがまだ怖いと思ってると勘違いしてくれたおかげで、なんにも不思議がられることはありませんでした……えへへ、らっきー
そう思って、ことりは正ちゃんと握った手をそっと胸に抱き締めながら、ニコニコ笑顔で家に帰りました。
これが……正ちゃんとことりの大切な思い出で、そして―――
―――私、
……え? なんで初恋
それは……この出来事から一年ぐらい経って、ことりが小学二年生になった頃の事――昔から、良くも悪くも周りの事をよく見ちゃう子どもだったことりには……気づいてしまったからです。
穂乃果ちゃんと海未ちゃんも、ことりと同じ気持ちになっちゃったんだって。
その頃は小学生だったことりにも、一人の男の子をみんなが好きになっちゃうことが、なんとなく“ダメな事”なんだっていう事は感じてて……
……そして、もしかしたら私のせいで穂乃果ちゃんと海未ちゃんの二人が悲しむことになるかも知れないって考えたら……怖くてどうしようもなくて。
だから……ことりの答えはもう……
―――はじめまして! わたし、こうさかほのか! ことりちゃんっていうの? ほのかといっしょにあそぼうよ!
ことりの……答えは……
―――ことり……? 大丈夫ですか? ほら、私が保健室につれていってあげます。
…………もう、とっくの昔に決まっていて。
だから――
まだ、二人だったら……どちらかがフラれちゃったとしても、ことりが優しく慰めてあげられるから……
ことりはそうグッと決意して、まだ割り切れない心を頑張って押さえつけながら、今までずっと過ごし続けてました。
……そんな思いで、二人のことを応援し続けて約5年。
気がつけばことりは、中学二年生になっていました。
□ □ □ □ □
「南さん……もしよかったら、オレと付き合ってくれないかな?」
「え……ええっと……その……」
季節は冬……突然ですが、ことりは今、人生初の“告白”をされています。
それは、穂乃果ちゃんの提案でことり達四人で生徒会を初めてから、約一か月後のことでした。
登校したときに、ふと下駄箱を覗いてみるとそこには一枚の手紙があって、その手紙の呼び出しに応えて放課後に体育館裏に行ったら――この状況に。
見た所、相手の人は先輩の人で――しかも、ただの先輩じゃ無くて、それも、校内の女の子からかなりの人気を誇る、テニス部のキャプテンの
クラスの女の子が言うには、部活ではいい先輩で、大会でも結構な成績を残していて、しかもその上、学年で上位に入るぐらいに頭も良いらしくて―――正直、なんでことりなんかを? と思うぐらいの先輩で……思わず、ことりは戸惑っていました。
「……ええっと、やっぱり……ダメ……かな?」
「ええっと……なんで、私……なんですか?」
思わず、ことりはそう尋ねてしまいます。
だって――今まで一度もこんな告白なんてされたこと無かったのに……
「なんでって? う~ん……南さんはさ、自分の魅力にもっと気づいた方が良いよ? この学校には南さんのファンクラブだって実はあるんだから……」
「え、えええ………!?」
フ、ファンクラブ!? ことりは漆山先輩の言葉に耳を疑います。
「いつも笑顔が可愛くて、クラスのみんなに優しい……そんな南さんが魅力的じゃない訳ないよ。――今までこうやって告白とか受けてなかったのは、きっと他のみんなは、あの南さんの幼馴染の男が、南さんと付き合ってると思ってるからなんだって」
「私が……正ちゃんと?」
漆山先輩の言葉を聞いて、つい思わずことりは正ちゃんの隣を歩いている自分を想像しかけて……やめました。
――ダメ、ことりは二人の事を応援するって決めたんだから……。
最近ことりはこんな風に、いけないとは分かっていても、つい正ちゃんと一緒にいる自分を想像してしまって、胸が痛くなってしまう事が多くなっていました。
このままじゃいけない――って、ことりは分かってるんだけど……思う気持ちはどうにも抑えられなくて……
最初に2人を応援すると決心したあの日から5年も経つのに、ことりは気持ちを全然割り切れてなんかいませんでした。
そこまで考えてしまって、ことりはダメなのに思い出してしまいます。正ちゃんが今までことりに言ってくれた沢山の嬉しい言葉を
―――ことりはスゴイ! 俺達には見えてないものが、きっとことりには見えてるんだって!
―――確かに、穂乃果も海未もスゴイよ……でもさ、自分はみんなに比べて何も無いなんて言うなよ、ことり。
―――ことりの持ってるその“優しさ”は、きっと俺たち三人の中で誰も持ってない物だと思うからさ……もっと自分に自信持ってくれ! ことりは俺の自慢の大親友だから!
その言葉一つ一つが本当に嬉しくて……気持ちを割りきるには……あまりにも正ちゃんが優しすぎて。
そう思うとことりは、思わず手をギュッと握りしめてしまいます。
「でもさ、オレにはわかるよ……南さんはあの男の子とは付き合っていないんだよね?
だから今こうして――もしかしたらって思って、オレなりのなけなしの勇気を振り絞って今日はここに居るんだ」
「そう……なんですか、でも……その……」
ことりは、もうどうしたら良いのかわかりません。
多分……良い先輩だって事はわかるんです。それに、断る理由もなくて――でも、今のことりのこの気持ちで漆山先輩の気持ちに応えるのも……何か本当に悪い気がして。
それに、ことりは今まで正ちゃんと
だから、ことりはずっと悩んで黙ったままでいると、漆山先輩が
「じゃあ……こうしよう。一週間、オレに時間くれないかな?
一週間、まずはお友達から始めてみて、それから南さんがこの先付き合うかどうか判断する――ってのはどうかな?」
「お友達……からですか?」
「そうそう! いきなり付き合うって感じじゃ無くて、まずはお友達みたいな感じて軽ーく考えてくれたらいいから! ――どう?」
友達から始めてみる……その言葉にことりの心は揺らぎます。
もしかしたら――正ちゃん以外の男の人の事をもっと良く知れば、正ちゃんの事を割り切れるきっかけになるかもしれないから――
「一週間……お友達だったら……別に、大丈夫です」
「よし、じゃあ決まりってことで……連絡先、交換しても良いかな?」
だから、ことりは漆山先輩の提案に賛成して、漆山先輩と連絡先の交換をしました。
「よっし! じゃあ、とりあえずこれから一週間はよろしくって事で……でも、オレはできるならその先もずっと南さん――いや、ことりちゃんと一緒に居たいんだって事を忘れないでくれよ……じゃあ、今日はこれで!」
別れ際の漆山先輩の笑顔は、確かに校内の女の子たちがカッコいいって言うのもわかるぐらいの爽やかな笑顔でした。
でもことりには……からかい屋さんで、どうしようもなくカッコつけたがりな正ちゃんが時々見せる、飾らないイタズラっぽい笑顔の方が、何倍もカッコよく見えて。
ダメダメ……考えてはいけないはずなのに、ついそんな事をまた考えてしまいます。
ことりはそんな考えをなんとか頭から追いやりながら、ことりは正ちゃん達が居るはずの生徒会室に戻りました。
そしてその日の夜、漆山先輩から一通のメールが届きました。
私のことを思いやった丁寧な内容で書かれたそのメールには、“ある提案”があって……ことりは少し悩んだ後、その漆山先輩の提案に賛成しました。
今日は水曜日……来週の水曜日には、ことりは先輩の気持ちに応えるのかどうかを決めないといけません。
これから一週間、ことりはちゃんと漆山先輩と向き合えるのでしょうか……なんとなく、不安な気持ちで私は眠りにつきました。
■ ■ ■ ■ ■
「はっ……はっ……全く! 穂乃果はどうしてそんなに寝坊が多いんですか!」
「本当にそうだよ穂乃果……俺が起こしに行かなかったら今日は遅刻してたんじゃないのかっ……!?」
「ゼェ……ゼェ……ごめんなさい二人とも~~!!」
今日は木曜日。俺――織部正也は、穂乃果と海未の二人と一緒に、遅刻しない為に学校まで全力ダッシュをしていた。
理由は、俺達の会話を聞いての通り。
穂乃果が寝坊して、それを俺が起こしに行くという……穂乃果が寝坊した時の俺達の中でほぼお決まりのルーチンワーク。
幼馴染の女の子が、男の主人公を起こしにくるという往年のラブコメ展開を、俺と穂乃果は全力で逆走しているのだった……全く、現実なんてこんなもんさ……。
俺がそんな風に現実に対して軽く絶望した時、ようやく校門が見え、俺達三人は走るスピードを落とす。
「ふぅ……全く、一時はどうなる事かと思いましたよ、仮にも生徒の模範であるべき生徒会が、三人も遅刻してしまうなんてあってはならない事ですから」
「危ない危ない……カッコいい生徒会長のイメージから、危うく遅刻魔生徒会長にイメージダウンするところだったぜ……」
「はぁっ……はぁっ……なんで二人は息そんな切れてないの……?」
「「鍛え方の違いだ(です)」」
俺達は、そんな風に言い合いながら無事、校門をくぐって遅刻を回避することに成功する。学校の時計を見ると、案外まだ余裕があるようだった……もしかしたら走らなくても良かったかもな。
「それにしても……今日はことりが、用事があるから今日は先に学校に行くと言っていましたが……今日の私達の事を考えると、ことりは先に行って正解でしたね……」
「ことりはラッキーだよな……本当に、朝からこんな走るとは思ってなかったよ」
今日の朝ことりからある連絡があった。
その内容によると、ことりはこれから一週間ほど用事で、先に学校に行かないといけなくなったらしく、俺達と一緒に登校が出来なくなる……ということだった。
「はぁ……はぁ……でも、ことりちゃんがいないのって珍しいよね。
正ちゃんが生徒会の仕事で先に学校に行ったり、海未ちゃんの剣道部の朝練がある時はよく一緒に登校できないのはあったけど、ことりちゃんだけは絶対今まで穂乃果たちと登校してたのに……ことりちゃん、どうしたんだろ?」
穂乃果はさっきまであがっていた息を整えながらそう言う。
確かに、俺と海未や、時々寝坊してしまう時がある穂乃果は、朝一緒に登校できないときがあったが、ことりだけはずっと毎日いつもの集合場所で待っていてくれたのだ。
だから、穂乃果の言いたいことはわかる。――でも。
「ことりだって色々ある時はあるだろ、気にしなくてもいいんだって穂乃果」
この言葉に尽きる。
確かに俺達は、小さい頃からずっと親友で居たけど、それは互いが互いの事を完全に知り尽くしている事を証明している訳ではないのだ。
ことりだってことりの事情があれば、俺だって俺の
あんまり、本人が話したがらないのにそれを無理やり聞くのは、カッコいい男としてあんまりよろしくないだろう。という俺自身の判断でだ。
「そうですよ、ことりだって時には学校に早く行かなければいけない用も出来ます。
ですから、それをあまり気にするのはいけませんよ、穂乃果」
「そっかぁ……うん、あんまり気にしすぎるのもダメだよね」
海未がそう言うと、穂乃果はそれで納得したように頷いた。
俺達がそんなやり取りをしながら、教室に向かう―――すると、教室からざわざわと騒がしい声が聞こえてくるのを感じた。
「うん? なんか教室がざわざわしてるよ?」
「なんの騒ぎでしょうか……?」
「さぁ……? とりあえず、行ってみようぜ」
俺は、そう言う穂乃果と海未より先に教室に入る。
すると、ことりの席あたりに女子が5~6人ぐらい集まって、その中心の人物であることりに何かを問いかけていた。
ことり……何かやったのか?
俺はそう思って、話の内容を聞くため耳を澄ます。
すると、とんでもない内容の話が俺の耳に飛び込んできた。
「ねぇねぇ! ことりちゃんって、あの漆山先輩と付き合い始めたのっ!? すっご~い!」
――――――え?
□ ■ □ ■ □
―――大変な事になってしまいました。
「ことりちゃん! 見ちゃったよ~! ことりちゃんと漆山先輩が一緒に学校に来てる所をさ~!」
漆山先輩の提案で、ことりは初めて正ちゃん達との登校を断って、他の人に余り見られないように、朝早めに待ち合わせして漆山先輩と一緒に学校に登校しました。
漆山先輩はことりの事を最大限に気遣って、会話の内容もことりに合わせた内容の話をよくふってくれました。
だからことりは思っているほど緊張はしなかったので、それは良かったんですけど……学校に朝早くから来ている人はやっぱり居た様で、たちまちこんな風に噂になっちゃってました。
「二人で一緒に登校……これはもう、“そういう事”だって思っていいんだよね!?」
「ねぇねぇ! ことりちゃんって、あの漆山先輩と付き合い始めたのっ!? すっご~い!」
ことりの周りには、明らかに興味深々っていったような目をした女の子たちが続々と集まって来ていました。
もちろんことりは最初、漆山先輩とは付き合ってないって話を何度も何度もしたんだけど――どうにもみんなは信じてくれないみたいで。
ことりは、もうみんなに合わせて困ったように愛想笑いを浮かべるだけになっていました。
「おいこらアンタら! そんなにガッツいたらいい加減ことりも迷惑でしょ、そろそろその辺にしときな」
そんな時、ことりの事を庇う声が飛んできました。
その声の主は、自前の
この子の名前は、
よくクラスのみんなを、正ちゃんや穂乃果ちゃんの二人と一緒にまとめ上げてくれる、とっても頼りになる女の子です。
「え~! そんな事いって……正直、果歩も興味あるでしょ~?」
「ないね、さぁ、そろそろ予鈴も鳴るし……散った散ったぁ!」
「ちぇ~素直じゃないなぁ……果歩」
そう言いながら、しぶしぶといったようにことりの周りにいる女の子たちは自分の席に着いていきました。……た、助かったぁ…。
「ありがとう……果歩ちゃん」
「いいって、いいって……アンタ漆山先輩と付き合ってないんでしょ?
あの子たちも人の話を聞けってのに……色恋に興味のある年なのは分かるんだけどねぇ……って、アタシも同い年か! あははははっ!」
そう言って、ことりに明るく笑いかける果歩ちゃん。
こういう果歩ちゃんの竹の割ったような明るい性格は、本当に魅力的だってことりは思っています。
ことりがそう思っていると、突然に果歩ちゃんが何かに気が付いたように、ことりに声をかけてきました。
「あ、ほらことり、教室の入り口の方見てごらん……多分あれ、ことりに用がありそうな顔してるよ……会長達」
「―――え?」
果歩ちゃんの言葉に、教室の入口の方を見ます。
そこには、正ちゃんと穂乃果ちゃんと海未ちゃん……三人ともビックリしたような顔をして、ことりの方を見つめていました。
□ ■ □ ■ □
「―――ことり、どういうことか説明してください」
「そうだよことりちゃん! 私達とってもビックリしたんだからね!」
今日の授業を、まるで針のむしろのような気分で受けて、そして迎えたお昼休み。
ことりは、穂乃果ちゃんと海未ちゃんと……そして、なんとも言えないような複雑な顔でずっと黙ってる正ちゃんと一緒に、生徒会室の中で海未ちゃんと穂乃果ちゃんにそう問い詰められていました。
「じ、じつは……」
本当は、みんなに知られたくなかったから隠しておくつもりだったけど……こうなってしまったら仕方がなかったので、ことりは全部、ありのままを話すことにしました。
「……なんですかその話は、こっちが答えに困ったのを良いことに、わざわざ話のハードルを下げてまで、ことりと接点を持とうとしたのが見え見えじゃないですか」
ことりの話を聞き終わって、海未ちゃんは怒ったようにそう言いました。
「で、でも漆山先輩は、ちゃんとことりの返事を待ってくれてたよ……?」
「それが作戦なんです。父が言っていました、人は承諾に窮する要求をを突き付けられた後、その後に譲歩案を提示されれば、それに飛び付くものだと……それは、つまりそういう事なんじゃないですか?」
海未ちゃんの言葉に、ことりは思わずビクッとしてしまいます。
まさに、ことりはそんな感じだったからです。
――でも、昨日の告白の時と、メールでの丁寧で思いやりの籠った文章、そして今日一緒に登校した時の優しい漆山先輩……どれをとってみても、ことりの中で漆山先輩がひどい人には思えませんでした。
だから……ことりは。
「漆山先輩は……海未ちゃんが考えてるような悪い人じゃないと思うよ」
「なっ……ことり……!?」
漆山先輩の事を、ことりは信じることにしました。
あと、一週間……先輩の想いに応えられるかどうか……ことりはしっかり考えたいって思ったからです。
今のことりの発言を聞いて、海未ちゃんの目に少し厳しい色が灯ります。
「ことり……あなたは優しすぎますっ!」
「こ、ことりちゃん……?」
穂乃果ちゃんは、ことりと海未ちゃんの間に流れる、普段とはちょっと違うピリピリとした雰囲気に、少し戸惑い気味でした。
「……正也、さっきから黙っていますが、あなたからも何かことりに言ってあげてください」
海未ちゃんはそう言って、さっきから黙ったままだった正ちゃんの方を見ます。
正ちゃんが今、どう思っているのか知りたい。
ことりは、そんな……何を期待しているのかわからないような感情で、同じく正ちゃんの方を見ようとします。
でも、きっと優しい正ちゃんのことだから、ことりが幸せならそれで良い……みたいな事を言って、何も文句は言わないと思うけど……
ことりは、そう思って正ちゃんの方を見ると……そこには、私の予想外の反応をする正ちゃんが居ました。
「…………俺? 俺は………」
正ちゃんはそう言うと、何かつらい物でも抱えたような表情でじっと黙りました。
それは、何かを言うのを我慢しているようで……でも言わない――そんな気持ちがないまぜになったような――そんな顔で。
ことりは、正ちゃんのそんな顔を見て思わず……してはいけない期待が膨らんでしまいます。
反対して欲しい……なんて……!
「俺は……っ! …………こ、ことりが決める事だから……それでいいと……思う……」
……でも、返ってきた言葉は、結局ことりの予想通りの言葉で。
そう言って、正ちゃんは俯いたっきり何も言わなくなってしまいました。
なんで……本当にことりの自由にして良いと思っているなら、そんな表情をしてるの正ちゃん?
もう……お願いだからこれ以上ことりの事を……迷わせないでっ……!
「……そう……正ちゃんがそう言うんだったら……ことりは好きにするねっ……!」
「こ、ことり……? お、俺は……」
そう思ったら、ことりの口は勝手に動いていました。目元がジーンと熱くなってきます……もしかしたら、今ことりは涙目になっているのかもしれません。
「もう……正ちゃんなんて……知らないっ……!」
ことりは、それ以上正ちゃんの言葉を聞きたくなくて―――走って生徒会室を出ました。
それは、まるで喧嘩別れのような感じで……
走って生徒会室から離れることりの目には、涙がずっと流れ続けていました。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
では、誤字脱字、意見や感想などがございましたら、是非お気軽に感想欄にお願いします。