Hero   作:Gさん

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「覇たる日輪に見ゆるは羅刹か黒き咆哮か(前編)」

そこはドンドルマの街がすっぽりと入るほどの大きな面積を有した平地だった。

辺りは溶岩に囲まれ、泡立った溶岩の鈍い音だけが耳に残るそんな場所だった。

三頭のモンスターはJUN達侵入者を見つけ大気を揺らすほどの大きな咆哮を上げる。

その爆音を頬で感じる。ヒリヒリするほどの緊迫感。何もかもが懐かしい。

たった一つのミスが命取りとなり、人の命など一瞬にして屑よりも無価値な物とする自然と自然に生きる獣達の洗礼。JUNは不謹慎とは思いつつもそんな感覚を覚えた。

だが、その咆哮が作戦の合図でもあった。クーラードリンクを一気に飲み干し、瓶を方々に投げ捨てると、それぞれの作戦地点へと走る四人。

 

中央に座する覇たるものアカムトルムにはMoonと那由多。

右にいるリオレウス希少種はSai。

左にいるリオレウス希少種はJUN。

それぞれが対峙する。

 

先に動いたのはJUNが対峙するリオレウスだった。アカムトルム目がけて距離を縮めるMoonと那由多目がけて火球を吐こうとしているのか、大きく息を吸い込み口の中に炎を溜め込んでいる。が、そんな「溜め」のある動作をJUNが見逃すはずもなく。

後ろに倒れるように背を反らすと腰の脇で軽弩を構え、そのままトリガーを引く。

JUNの得意とするクイックドローは見事にリオレウスの右目へと突き刺さり、火球は霧散した。怒り狂ったようにJUNを見据え咆哮するリオレウスにJUNは人差し指を突き立てて左右に振りながら、ニヤリと笑んだ。

 

「それは無粋だよ、君。それはそうと熱いね。一緒にアイスティーでもどうだい?」

 

JUNの挑発を理解したのかは定かではないが、リオレウスはJUN目掛けて突進していく。走りながら横目でその様子を確認したMoonと那由多は小さく頷くとアカムトルム目がけて更に加速した。

 

「那由多ぁっ!先に行くぜっ!!」

 

「あ~い♪いってらっしゃ~い♪」

 

「おうっ!!」

 

走りながら背負っていた大袋を衝撃を加えないように置くと、Moonは後方に角度を合わせ銃槍を構えてトリガーを引く。銃槍はヒューンという空気を巻き取るような高音を放ちながら銃口に熱が集中されていく。空気を交え青みがかった炎が銃口から溢れんばかりに溜まったそのとき、走りながらタイミングを合わせ跳躍するMoon。トリガーから指を離し竜撃砲は発射された。竜撃砲を移動方法として利用するMoonの好む突撃法であり、爆音と共にMoonはアカムトルム目掛け鋭いアーチを描くように空中からのアカムトルムの背中に飛び乗った。

威力が高すぎたせいかアカムトルムを飛び越えそうになったため、背中に一際大きく突起した棘を左手で掴み棘を中心に一回転、上手く反動をいなして背中に着地すると間髪入れる事無く銃槍を背中に突き刺し砲弾を撃ち込み、反動で打ち上がる銃槍をもう一度突き刺しては砲弾を撃ち込み、と繰り返しMoonは叫ぶ。

 

「オラオラオラオラぁっ!!!!!まだまだ行くぜぇ!!!!!!」

 

背中の激痛に甲高い悲鳴を上げながら、Moonを振り落とそうとするも突き刺さった銃槍にしがみ付きそれでもトリガーを引き続けるMoonがアカムトルムの目と鼻の先に到着した那由多目がけて更に叫ぶ。

 

「那由多ぁっ!!ショータイムだぜっ!!」

 

那由多は既に大きく振り被った大剣と共に跳躍し、アカムトルムの頭部目がけて勢い良く大剣を振り下ろす。空気が鈍い音を立てながら大剣はアカムトルムを捉えた。彼女はいつもの口調で、だがいつもよりも楽しそう、歌うように叫んだ。

 

「ショ~~~~~~~タイムっ♪だぜぇっ♪」

 

大剣はやや出張った下顎を引き裂き地面へと突き刺さる。すぐに軽々と大剣を抜き取ると再び跳躍しながら上半身を大きくねじり、力強く薙ぎ払う。

 

「ショ~はまだまだ続くぅ~っ♪だぜぇっ♪」

 

薙ぎ払いはアカムトルムの牙をいとも簡単にへし折り、地面に着地しても未だクルクルと回り続ける那由多だったが、大剣を地面に突き立て遠心力を殺すとまたも簡単に大剣を地面から抜き取り、下段に構えたままアカムトルムの顎下まで駆け込むと剣を大きく振り上げた。

 

「んっしょ♪だぜぇっ♪」

 

下顎の骨を砕く重く鈍い音。大量の返り血を浴びながら、那由多は飛び退く。

Moonが背中から肩、腕と伝いながら着地すると急ぎアカムトルムの真正面に立ち、少し跳ねて粉々になった下顎目掛けて砲撃を放つ。

アカムトルムの顎を燃やしながら砲撃の反動で後方に吹き飛び那由多の横に着地する。

Moonと那由多は背中を合わせ半身の状態でアカムトルムを見ると、舌を出しながら中指を突き立てた。

Moonが那由多に教えた敵の挑発方法であるらしいのだが、あまりにもお行儀が悪い。

 

「かかってこいよっ!」

「かかってこいよぉ♪」

 

目を血走らせたアカムトルムがそれを見るや全身を赤く染め地が割れんばかりの咆哮を走らせた。

 

 

 

「みんな、かっこいいなぁー!!」

 

リオレウスの攻撃を紙一重で避けながら横目で全員の戦闘を見、さらに上空へと四方八方目掛けて抗竜石・心撃で加工された矢を放っていくSai。強く射られた矢もあれば弱く射る矢もある。それのもたらす意味はすぐに明らかな物となる。

 

「私の戦いはここからです!!」

 

リオレウスの突進をふわりと翻すように避けるとその場にしゃがみ、すれ違ったリオレウスの方へと上半身を反らせて番えた矢を足目掛けて射る。矢は足の中心へと突き刺さり、よろめいたリオレウスの背中に矢が突き刺さる。空から落ちてきた一本目の矢だった。

堪らず後方上空へと飛んだリオレウスだったが、その両翼にも矢が突き刺さる。二本、三本目の矢だった。

翼を破壊されたリオレウスはそのまま地面へと叩きつけられたが、尻尾に幾重にも痛みが走る。五本の落ちてきた矢がリオレウスの尻尾へと横一列に突き刺さり、尻尾は文字通り皮一枚で繋がっている状態だったが、そこに九本目の矢が落ち、尻尾を切り離した。リオレウスが痛みに耐えきれず前方へと突っ伏しながら見上げた空には、小さな無数の点が自分目掛けて少しずつ近付いていることを確認した。同時に自分の死も近いことを悟った。

一本、二本、三本、四本、五本、六本、七本、八本、九本、一〇本………。

頭、背中、翼、頭、背中、翼、頭、頭、頭、頭……。

一本も地面に突き刺さることなく、リオレウスの体を射っていく。

逃げようとした先には必ず矢が落ちてきて、逃げようとした先には必ず矢が落ちてきて、逃げようとした先には必ず矢が落ちてきて、逃げようとした先には必ず矢が落ちてきて…。

その様子をSaiはしばらく見てから、リオレウスに背を向けて走り出す。

五〇本近い矢がリオレウスを射抜き、リオレウスはただ痛みに耐えながら踊るように死んでいった。

 

 

「Sai式必殺の、矢真嵐(ヤマアラシ)さんです!!」

 

ぴたりと足を止め、思い出したように振り返ると既に息の事切れたリオレウスに対して説明を始めた。

 

「あ、えぇとですね!ヤマアラシっていう動物がいましてですね!その背中って針がこう、ばーーーーー!っていっぱいあってですね!!…って、そんなこと言ってる場合じゃなかった!!作戦作戦!!」

 

Saiは焦った調子で踵を返し走り始めた。

 

「矢真嵐(ヤマアラシ)さん」はモンスター研究者さえ喉を唸らせたほどの観察眼を持ったSaiがなんとなく考えた技で、曲射を効率的に使える方法を導き出した結果でもある。モンスターの行動パターンを熟知し、どうしたらどこに動くかを予測しながら強弱を使い分けた矢を放ち、モンスターを仕留める。降り注ぐ矢が突き刺さり動物のヤマアラシのようだと思ったSaiだったが、ヤマアラシにさえ「さん」付けする律儀なSaiは技名にも「さん」を付けてしまったらしい。

後世、「伝説的曲射十選」に選ばれた「ドラゴンダンス」という射法があるのだが、これはSaiの「矢真嵐さん」を見た若いハンターが真似て特許申請を行ったものである。精度はSaiのそれとは似ても似つかないほどにお粗末なもので「矢真嵐さん矢十本バージョン」と嘲笑う熟年ハンターもいる。彼らは知っているのだ。Saiという世界屈指の弓使いがいたことを。だが、後の世の文献をくまなく調べても「Sai」という弓使いハンターの名は見当たることはない。Saiがハンターとして後世にその名を残さないように生きるようになるのは、まだ少し先の話である。

 

 

 

右目を損傷したリオレウスは上空に舞うと黒い息を吐きながらJUNへと飛び掛かった。

後方に飛び退きながら放たれる通常弾三発。言わずもがな抗竜石・心撃の加工は済んでいる。

一発は眉間。一発は左目。一発はまた眉間。

痛みに堪えきれず羽ばたきを忘れ地面へと落ちるリオレウスだったが、JUNが追撃の手を緩めることはない。

正確無比にその弾はリオレウスの弱点である頭部へと刺さり、やがて抗竜石の効果が現れリオレウスからは異様な邪気は払われた。視力を失ったリオレウスは立ち上がると辺り構わず尻尾で薙ぎ払い、明後日の方向に火球を放ち、虚空を噛み千切ろうとしている。狂乱と呼ぶに相応しいほどに。

辺りを見回し通常弾を装填しながらJUNは苦笑する。

 

「これは困ったな。弾の無駄使いはしたくないから、弱点だけを狙いたいんだが…。」

 

視力を失ったリオレウスはそんな言葉に耳を貸すはずもなく、自分の視力を奪った憎きJUNに報いるために大暴れ。その様子にJUNは溜息を吐く。

 

「やれやれ、あれで行くとしよう。」

 

JUNは大きく息を吸い込むと、腰を低く落とす。

リオレウスが自分に対して正面を向いた瞬間、JUNは勢い良くリオレウスへと走り、その股下へスライディングするように滑り込みながら軽弩を構え、リオレウスの喉、心臓が位置する胸元へと流れるように撃ち込んでいく。JUNが放った弾は合計一〇発。

天才的な戦術を編み出すJUNは、如何に無駄弾を使わずにこの長丁場を切り抜けるかを考えた。結果このリオレウスには一二発の弾で仕留めなければならなかった。二発無駄弾を撃たずに済んだことになる。空を見上げながらそんなことを考え笑むJUNだったが、そんなJUNの腹部に絶命したリオレウスの尻尾が倒れ掛かってきた。

 

「グフッ」

 

20のダメージ。

尻尾を持ち上げて身を捩らせながら起き上がると、辺りを見回す。

こんな様をSai達に見られると厄介だった。

Moonに見られたが最後、「ヒーローあの時、尻尾を…w」としばらく酒の肴にされかねない。幸いにしてMoonと那由多はアカムトルムに中指を突き立てていてJUNの失態は見ていない。Saiは作戦通りMoonの置いた大袋から例の物を取り出して準備に取り掛かっていた。

 

「ほっ」

 

胸を撫で下ろしながらJUNは次の作戦地点まで進む。

この戦いの「肝」と自らが称したその地点まで。

 

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