Hero   作:Gさん

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「Set」

バルバレは、ドンドルマの南東に位置する都市である。

貿易の要となるここには多くのキャラバンが行き交う。大きな集会所もあり、ハンター達の多くはここを拠点にしている。

数年前、「我らの団」というふざけた名前の旅団がこの町を含む近隣の都市を救った。彼らは英雄として崇められ、しかし驕ることなく今もまだ世界を股にかけ様々な偉業を成し遂げているらしい。そんな彼らの出発地点がここバルバレであり、多くのハンターはここを聖地の一つとして巡業する者もいる。

活気に満ちた町であり、月刊「ハンターウォーカー」において「バルバレに来たら帰れなくなっちゃうわ」というタイトルでバルバレの特集がされたことがあり、女性視点でのバルバレの楽しみ方を詳しく掲載されたことがあったせいか、女性の旅行者にも好まれている。

 

JUN達がバルバレに到着してから5日後の午後、4人は加工屋から武器の完成の連絡を受け散々に溢れかえった人ごみの中を掻い潜りながらようやく加工屋へとたどり着いた。

結局、Moonのガンランス「エンデデアヴェルト」は整備不慮のせいであちこちが錆び付き、砲身も焼き付いており、シリンダーが全く機能しなくなっていたため、新調を余儀なくされた。ありったけの素材を持ち込みその日は加工屋を後にした。JUNの軽弩も同じようにやたらと贅沢なそれらの素材を用いて新調することとなる。

 

バルバレの加工屋「バルバレンシア」店主、ジョルノ・ゴレイアの前に2人の男女がつい先ほど来店し、彼は依頼されていたガンランス「祖龍霊銃槍・崩千」を女性に渡した。

彼としては珍しい祖龍の素材を最大限に活かすため散々に苦悩した。バレルの角度やトリガーの握りや遊び、放熱機関の調整、砲撃に対して刃が溶けたり刃毀れしないように強度を高める。それと同時に軽量化にも十分に注意する。盾にも十分に気を遣う。祖龍の軽く頑丈な剛翼を更に薄く加工し、それを幾重にも重ねる。そうすることによって耐久性と軽量化を最大限に発揮出来るように施した。そこに冷却機関として崩竜の素材を組み込み、槍部分に崩竜の大顎重削顎を組み込むことによって、業界初の双属性ガンランスを完成させることとなった。この依頼を受けて5日目、彼はほとんど寝ていないのだ。それほどまでに祖龍の素材に魅せられ、加工屋冥利に尽きた。加工人生35年。元来気の弱い男だったが、加工屋に憧れ、今の親方に弟子入りして金槌の握り方から教わった。親方に怒鳴られ、逃げ出したこともあった。親方に認めてもらうこと20年。その加工屋人生をして、渾身の力作だ。もし、今命が尽きたとしても、このジョルノ・ゴレイアに一片の悔い無し。そう言い切れるほどの魂を武器達に注ぎこんだ。

 

その女性は、ガンランスを受け取ると、目を爛々と輝かせトリガーを引き加減を調べたり砲身にどういった加工を行い、どのような砲弾種を放てるのか、放熱機構は油圧送風式なのか、水冷式なのか、自然放熱式なのか、ガンランス使いならではの質問が飛び交い、その質問のすべてに懇切丁寧に答えた。勿論彼女は満足している。ジョルノも満足し盾の質問への完璧な答えも準備していた。

その後、ジョルノは困惑する。

彼女はガンランスを受け取ると、さも当たり前のように盾をこちらに寄越してきたのだ。

 

「え…?お嬢ちゃん、盾…」

 

「ん?あぁ、いらねぇよ。それよりさぁ、このリロードのギミックかっけぇな!いい仕事してんぜ、おっちゃん!」

 

Moonはやや広めの店内で空リロードを繰り返す。砲身の周りを螺旋状に巻き付かれたドラムマガジンがシュルシュルと軽やかな音を立てながら空装填されていく機構を痛く気に入ったらしいが、ジョルノはそれどころではない。堅牢な盾の素晴らしさを伝えようとするが、Moonはまるで聞いている様子はない。あろうことかもう一つ注文した軽弩も勿体ぶらずに早く見せてくれ、とこちらに快活に笑いながら指示まで送ってくる始末だった。呆気に取られながらジョルノは盾を受け取り、しずしずとカウンターの下に音を立てずに横に倒すと、静かに店の奥へと入っていった。JUNの軽弩を取りに行くのだろう。その足取りはやけに重く、そして寂しそうに映る背中はとても小さく見えた。しばらしくてからジョルノは両手で大事そうに抱えたそれを持ったまま二人と対峙する形でカウンターに置く。

 

「是遠阿武祖龍弩(ゼオンアブソリュード)だが、こちらも…」

 

「あぁ、ありがとう。」

 

JUNに至っては説明すら聞く気がないのか、礼を言うと軽弩を一度構えてスコープ越しにジョルノを覗き違和感が無いことを確認すると肩に背負い、唖然としているジョルノに対してハットを人差し指でやや上に傾けながら「何か?」と首を傾けている。

 

「いや、もういい…。」

 

「・・・?」

 

ジョルノの落胆した様子をもう一度少し不思議そうに首を傾げMoonとJUNは踵を返した。その姿を目で追いながら、ジョルノは今日は浴びるほど酒を飲もうと心に誓った。疲れや達成感などはもうそこには無く…。後に「武器防具五賢神」の一人と謳われる男の35年目にして初めての圧倒的な敗北だった。

 

 

 

時同じ頃、Saiと那由多は旅の準備を終えてアイテムショップ「エンデデアヴェルト」に戻っていた。Saiが店内に飾っている不思議な道具の数々を指さしながら那由多に説明を受けているのだが、そのほとんどがこう言ってはなんだが絶望的に使用頻度が少ない、というか使用してはいけない代物と認識できる。

数点、自分でも使用出来そうな物を見つけ、Saiは那由多にそれらの品物を購入したい旨を告げるが、那由多はSaiからお金を取るつもりはないらしい。

「うん♪あげるよぉ♪」と店の奥から木箱を取り出し、Saiの望んでいる品物をダースで用意してSaiの前に「はぃっ♪」と朗らかな笑顔を見せた。恐らくMoonも同じようにSaiから金を取るような真似はしないだろう。そう踏んだのだろう。何度か断るSaiだったが、那由多は「ん?うんうん♪Saiさん、早く受け取ってよぉ♪」と話を聞いていないとしか思えない返答をしながら、手に持った木箱をグイグイと優しくSaiの前に差し出している。

 

「じゃ、じゃあ、ありがたくいただきます!!」

 

「あ~~~いっ♪それと、アイテム減ってきたら、Moonがどこでも調合出来ると思うからだいじょうぶぅ♪」

 

「帰ってきたらMoonさんには、私からもお願いしてみます!!」

 

「お願いしなくてもMoonは作るかもしれないけどねぇ♪」

 

そんなやり取りをしているとドアが開き、勝ち誇った顔でガンランスを背負ったMoonといつも通りの平静な顔付きのJUNが会話をしながら入ってくる。会話というよりはMoonが圧倒的に話していて、JUNはただ相槌を打っている。

SaiがMoonの発明品を那由多から無償でもらったことから始まり、ガンランスと軽弩が思ったより良い出来栄えだったこと、明日にはここを発つことと店はしばらく閉店することを話し、夜を迎え、その日は明日に備え皆早めに床に就いた。

空が白みがかる頃に那由多が起床し、皆の朝食を準備し、皆を起こす。

食事を済ませ、とうとうクエストを受けるためにバルバレを離れることとなった。

 

バルバレの入り口の門に4人の姿がある。

まだ早朝のためか、キャラバンの姿も多くなく、開店している店は一軒も無い。

静寂に近い、バルバレで唯一静かな時間である。

 

「では、諸君。行くとしようか。」

 

「はい!!いざ!!!」

 

「ドントルマへっ!!」

 

「ほぉぉ~~~い♪」

 

JUNの一声に、Sai、Moon、那由多が続き、戦いの一歩を踏んだ。

の、だが…。

 

「あ、那由多、【しばらく閉店する】って看板かけるって言ってたけど、ちゃんとかけてきた?」

 

「ん…?あっ…♪忘れた♪」

 

「おいおいおい…。」

 

「それでこそ那由多君さ。」

 

「師匠もやりそうなミスですけどね。」

 

「ふふ…。」

 

「あ~みんな先に行ってて~♪すぐ追い付くから~~♪」

 

言うが先か那由多は店へと向かっていく。

大剣を背負った少女のような体躯の背中がどんどん町の中に吸い込まれていく。

呆れたように溜息を吐きながらMoonは先に行くように促すが、どう考えても店主であるMoonの仕事のような気もする。

 

那由多が店の前に辿り着くと見慣れない三毛のアイルーが一匹、中に誰も存在しないアイテムショップ「エンデデアヴェルト」の扉をノックしている。アイルーは那由多の存在に気付きそちらに振り替えると丁寧に会釈をする。

 

 

「こちらの主様でいらっしゃいますニャ?」

 

「ううん、私は那由多だよぉ♪」

 

丁寧で歯切れの良い問いに、屈託のない笑みで自己紹介をする那由多。

 

「・・・?えぇと・・・あの・・・」

 

「猫ちゃんはお名前はなんてゆ~の?」

 

自分の質問が分かり難かったために自己紹介をされてしまったのか自問し、先程の会話を思い返してみたが明らかに自分に非がないことを再確認するも、アイルーは那由多に会話を合わせる。

 

「失礼しましたニャ。私はワトソンと申しますニャ。不貞のご主人の匂いを追ってきたのですが、ここから強く感じましたニャ。」

 

「ご主人って人は知らないなぁ~…。」

 

「えぇと・・・ジュ、JUNという方が私のご主人様ですニャ。」

 

那由多は口元に人差し指を当てながら首を左右にゆっくりと傾けながら思考するが、しばらくして苦笑しながらワトソンの頭を優しく撫でる。

 

「ごめんね~♪《JUN》って人は知らないや♪」

 

「アニャ…おかしいですニャ、ここからご主人の匂いがいっぱい感じられるのですニャ。幾つか質問をさせてもらってもよろし…」

 

ワトソンがやや困惑しながら那由多に何度か語り掛けるが、那由多は鼻歌混じりに扉の横に置いてあった何も書いていない木の板に楽しそうに文字やら絵を書いて、それをそそくさとドアノブに掛けると、頑張って質問を繰り返しているワトソンの頭を撫でた。

 

「ごめんねぇ♪ワトソンちゃん♪私急いでるから行くねぇ~♪」

 

ワトソンの言葉は一つも那由多に届くことはなかった。

気付けば那由多の姿は遥か遠くに見え、ワトソンは深く溜息を吐いて先程ノックを繰り返した扉に目をやる。

 

【しばらく開店しまぁ~す♪dy Moonと那由多】

 

「フム…困りましたニャ。」

 

理解に苦しむ内容と現状にワトソンはもう一度溜息を吐いた。

那由多にJUNという知り合いはいない。親友と呼べるのは「Moon」と「Saiさん」と「ヒーロー」だけなのだから。

すぐにMoon達と合流し4人は一路ドンドルマへ。

 

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