マドカのHPを3000以下にする
敗北条件
一夏の撃墜
SR取得条件
マドカを撃破する
はやく天獄編やりたい。
「いいよ。じゃあ白雪の改修と戦う場所を用意するからちょっと待ってね」
少女――マドカが俺に決闘を申し込んだのを何かで聞いていたのだろう。俺が反応するよりも早く現れた束さんはそう言い、再び白雪のもとへ戻っていった。
その後ろを俺から視線を外したマドカが続く。
結局なにも返事を出来なかった俺は案内してくれたクロエに礼を言ってから用意された部屋に入り、ベッドに飛び込んだ。
「……なんなんだ」
思わず呟いてしまった。普段、腕にガントレットの形で待機している白雪はいないから、俺の言葉はただ宙に散る。
マドカ。俺を回収してくれた少女。こちらが礼を言うよりも先に戦いを申し込んできた少女。
なぜ戦いたいのか。なぜ千冬姉に似ているのか。
後者に関しては親類という可能性もあるが、今まで聞いたことがなかったので確率は低い。だが俺が知らないだけと言われるとそうなのだから、候補の一つ。
前者に関しては全く分からない。ただ、彼女の目に敵意は無かったように思える。
敵意がないならなんだというのか。考えても情報が少なすぎて答えが導き出せない。
やがて俺は考えるのをやめた。
答えが分からないのなら、自分たちで見つけ出す。やれることをやる。あの世界で俺が学んだことだ。
今の俺が出来る事。それは彼女と真正面から戦うこと。
「戦ったら、何かわかるかな」
コミュニケーションとしてぶつかり合うことが有効なのは確かだ。
それだけに頼るのはまた違うのだが、今回はやるしかない。
それにIS同士で戦えるのだ。自分よりも大きい相手とやり合うのではない。それだけで少し嬉しい。
そんな事を考えていたら、俺はいつの間にか眠っていた。
☆☆☆
翌日。俺は改修が完了した白雪と共にとある孤島で対戦相手であるマドカと向かい合っていた。
束さんの仕事がとても速いことはさておいて。この孤島は地図に載っていない島で、束さん直々に様々な機能を設けているようで、ここと一定範囲の海上ならISで戦闘しても問題ないらしい。束さんすげえ。
その束さんとクロエは上空で滞空しているラボの中で観戦するそうだ。
「…」
マドカは目を瞑ったまま微動だにしない。何か考え事をしているのか。
俺たちの前にスクリーンが投影された。
『はーい。じゃあ、この画面のカウントが0になったら開始ね。二人ともがんばれ、がんばれ』
束さんの声援が響き渡り、画面に5が表示された。
俺は急いで言いたかったことを言うために口を開く。
「この前はありがとう。おかげで助かった」
マドカの目が見開かれる。驚いたらしい。ただ言っていなかった礼を言っただけなのに。
続けて俺は言った。
「この戦いが終わったらさ、ゆっくり話でもしようぜ」
「……ああ」
了承してくれた。今はそれで十分だ。
0になる瞬間。
「共に行こう!白雪!」
「来い!黒騎士!」
俺たちはISを身にまとう。
白雪のボディは雪の言う通り一次移行になっていて、ひどく懐かしい気持ちになった。
三次移行の時のように全身装甲ではない、とてもISらしい姿だ。
一方でマドカのISはまるで名の通り騎士を思わせるIS。それはISが世に広まる原因となったIS、白騎士に酷似していた。
…これは何かの偶然だろうか。
「行くぞ」
マドカが自身の得物である、紫のエネルギーを帯びたバスターソードを振り上げ、強烈な速度で一気に間合いを詰めて来た。IS機動カテゴリーに属する操縦技法のひとつ、瞬時加速を使ったのだろう。
俺は「淡雪」を構え、振り下ろしてきた大剣を受け止めた。
加速の分の力を上乗せされた一撃は「淡雪」の刀身に容易く罅を入れた。
予測が甘かった。舌打ちしかけた自身を自制する。
そもそも、同サイズぐらいの相手と戦うということに気分が高揚して真正面から受け止めた自分が悪いのだから。
「淡雪」が限界を迎える前に態勢を整えるため、刀身を斜めに黒騎士の大剣を流し、反動でこちらに身体を突き出す形になった黒騎士の腕を掴む。そのまま強引に後方へと投げた。黒騎士の機体が離れきる前にターンして蹴り飛ばすのも忘れない。
「器用なことをっ…」
「お褒めの言葉どうも」
すぐさま反転したマドカの言葉にとりあえず返答しながら、一撃で破壊されかけた「淡雪」を見つつ俺は雪へと決めたことを告げる。
「雪、騎士形態だ。あの大剣とやりあうにはそれしかない」
『鈴雪による射撃は効果が無いと予測。雪も一夏の案に賛成です。騎士形態へ移行します』
瞬間、白雪の姿が瞬く光と共に変化していく。
マドカの瞳に驚愕の色が浮かんだ。
「二次移行か…?」
「違う。これは白雪の騎士形態――白騎士だ」
白雪の時には無かったパーツが追加され、多少重量が増えたこの姿。
だがそれ以上にスピードを重視するかのように背に現れた大型のウィングスラスターが特徴的だ。
……白騎士という名を使うことがあながち間違いでないことを束さんはすでに把握していることだろう。
俺は「淡雪」と「鈴雪」の代わりに白騎士専用装備である「白光剣」を構える。
専用と言っているが、真実はこの剣が白騎士の時の唯一の武装ということ。
「次はこっちからだ!」
『システムグリーン。どうぞ』
一回目の瞬時加速で黒騎士の後方へと飛び出し、二度目の加速で方向転換。無防備な背中に斬りかかる。
「その程度!」
反応というよりは反射と言った方が正しいかもしれない即応で黒騎士が大剣で俺の一撃を受け止めた。
互いの刀身を包むエネルギーがぶつかり合う。
目の前の相手に集中しながら、俺は今更ながら白雪、白騎士との一体感に驚いていた。
(身体が軽い。中身が新品になっただけでこうも変わるのかよ)
(現時点で最低でも三割以上のスペック増加が見られます。三次移行が再び可能になった場合のスペックは計り知れないかと思われます)
雪も自身がさらに強くなったことに高揚しているんだろう。声が弾んでいる。
刃を合わせたままでは埒があかないと思ったのか、黒騎士は大型のビットを二基展開し、俺へとその銃口を向けてくる。俺は放たれる前に後方へ飛んだ。
そして黒騎士は自身にビットを追従させつつ追撃してくる。俺が動こうとしたらビットで進行方向を妨害し、大剣でバッサリとしようという魂胆だろうか。
けど、今の俺たちはそのぐらいじゃあ落とせない。だろ?雪。
(そうですね。今だけは私も調子にのりましょう。さあ、如何様にもお飛びください)
ルートは…いいや、ノリで行くとしよう。
まずは黒騎士へ切っ先を向けて「白光剣」を投げる。真正面から投げられた「白光剣」は訝しげな表情のマドカに容易く避けられた。それでいい。
黒騎士が避けるほんの直前、俺たちはさっきも使った、背中のスラスターとウィングスラスターを交互に用いることで使える多段瞬時加速によって「白光剣」が通る軌道へ先回りし、右手で持ち手をキャッチした。この瞬間に俺がいるのは黒騎士の背後。
まだ俺がいた場所の方を見ていた黒騎士の無防備な背中を斬る。
決まったかどうかなんて考えない。この瞬間はただ相手への攻撃の手を緩めないことだけ考える。
続けて黒騎士を蹴り飛ばし、すぐさま加速で接近して斬る。再び蹴って斬る。キック&スラッシュ。これを繰り返すだけの何らおかしいところはない連続攻撃。
そして最後の仕上げにピクリとも動かない黒騎士の足を掴んで地面に叩き付けようとしたら、目の前にスクリーンが現れた。そこには慌てた様子の束さんがワタワタしていた。
『いっくん!ストップストップ!やりすぎ!』
「へ?」
その言葉で止まった俺は黒騎士、マドカを見る。
気絶してた。
なるほど、これはピクリとも動かないわけだ。
でもなぜ気絶しているのだろうか?
不可解な状況に俺が首を傾げていると束さんが安堵の息を吐いていた。
『はあ~。念のため二機とも模擬戦仕様の設定にしといてよかったよ。とりあえずこれで終了ね。いっくん、まーちゃん抱えて戻ってきてね』
そう言って束さんは通信を切った。
まあ勝ったからとにかく良しとするか。それにしても、さっきの束さんの言葉はどういう意味なんだ?
雪は分かるか?
『…落ち着いてさっき私たちがやったことを思い返すと一つの答えが浮かんできます』
「ほうほう。ズバリそれは?」
『やりすぎ?でしょうか?』
……ん?どこが?
☆☆☆
マドカをクロエに任せた後、俺は束さんのもとで正座をさせられていた。
束さん曰く「ちょっぴりおこ」とのことなので、俺は逆らわずに従っている。原因が分からないが、俺に何かしらの非があったのだろうから。
束さんが俺の頬をつんつんしつつ言う。
「いっくん、束さんが模擬戦仕様の超安全モードにしとかなかったら、今頃まーちゃんがあられもない姿になったうえに黒騎士大破してるんだからね。反省しようね」
「…はあ」
『…はあ』
「いや、揃って分かんないですっていうリアクションされちゃうと束さんが困るんだけど。というか、雪ちゃんは真っ先に分かって欲しかったなあ。がっくし」
がっくし、などと昨今でもあまりリアクションとして使われるのを見ないようなことを声付きでやる束さんの言葉を思い返し、俺は自分なりにさっきの戦闘を分析する。
なにかおかしいところがあったかどうか。先に答えを出したのは雪だった。
『…ああ、なるほど。申し訳ありません。一夏、お母様。ようやく雪も理解出来ました』
雪は俺に答えを簡潔に言った。
『一夏。簡単に言うと、私たちはあちらの世界のノリのまま、こちらの世界における戦闘を行ってしまったのです』
「…間違ってたか?」
油断は禁物。失敗はそのまま自身の危機に直結する。だから自分に出来る全力で。
向こうの世界でいつも自分なりに反芻し続けた言葉だ。
やるからには全力。それが今回は正しくなかったのだろうか。
『心構えとしては正しいかと思われます。ただ、両者では規模が違うんです』
「私も雪ちゃんからあっちの話はちょっと聞いたけど、こっちの世界は比較的にはそれなりに平和だからね。求められる事のスケールも違ってくる。ただ今回は単純にいっくんの実力がまーちゃん以上で、束さんの予想を軽く超えちゃったってのもあるから、深刻には考え過ぎないでね」
二人からそう言われたとしても、織斑一夏がやることは変わらない、と俺自身が確信していた。
出来る事ならやる。全力で。きっとその方針は変わらない。
そんなこんなで話をしていると、束さんへクロエからマドカが目を覚ましたという連絡が入ったので、話を終わらせ、三人で彼女のところへ向かった。
大体一話4000~5000を目指す(目標
では、また次回。