私立グリモワール魔法学園SS【風飛の丘に花は散り 裏→表】 作:テンコ。
裏山から移動を始めて10数分。僕達3人はグリモア学園の校門前に到着した。魔法使い育成機関の名の通り様々な設備を内包するこの学園の敷地はとても広大であり、入学した当初はクラスメイトである南智花さんに、およそ一日かけて案内して貰った程だ。
「オラ、止まるな。さっさと歩け、また急にいなくなられるとこっちが困るんだからよ」
校門前で立ち止まっていた僕に、隣を歩いていたメアリーさんが声をかけてくる。彼女は両手を後頭部に当てながら、気だるそうに溜息をする。
「ドクター宍戸には、テメェが裏世界に飛ばされたって話はしといた。・・・・・・本当なら、この前、別件で回収した裏世界のデータを解析するって話だったんだが・・・・・・中止になるかもな、クソッ」
「この前収集した・・・・・・」
僕は「前回」の強制召集
そもそも、僕が「裏世界」に行く事は今回の件が初めてではなかった。この「表世界」には「裏世界」に繋がる「ゲート」と呼ばれる入り口が複数あり、現在確認出来ている場所だけで5箇所もある。僕は、生徒会長である武田虎千代さんが率いる学園選抜生として既に数回、裏世界の調査に同行している。その甲斐あってか、今回単独で「裏世界」に飛ばされてしまっても、慌てふためく事なく動く事が出来た・・・・・と思う。勿論、「この世界と同じく」僕に協力してくれた「彼女ら」の協力があったからこそだが・・・・・・。
「アタイはこの前の調査でテメェと同行してねぇから、そっちで何が起きたかは知らねぇ。それを今日、じっくり腰据えて聞き出そーって腹だったんだが・・・・・・チッ」
心底恨みがましい様子で大きく舌打ちをするメアリーさん。一足早く、目の前の校門をくぐり、真正面に見える噴水の方向へと歩みを進める。そんな後姿に、僕は「裏世界」で出会ったメアリーさんの姿が重なって見えた。あの時、メアリーさんは確か・・・・・・
「向こうのアタイに伝えておけ」
「!?」
どこからか、そんな声が頭をよぎり、僕は思わず目を見開いた。しかし幻聴だったのだろう、「彼女」の姿はどこにも見えなかった。・・・・・・当然だ、僕はつい先程戻ってきてしまったのだ。霧の魔物からの侵攻を、奇跡的に乗り越えたこの「表世界」に・・・・・・何も出来ないまま。悔しさと後悔からか、僕は自分の右手を握り締め、胸に当てる。
「転校生・・・・・・お前・・・・・・」
僕の後ろに立っていた朝比奈さんが、何かを察したのか僕に声をかけてきた。僕が朝比奈さんの方に振り向き目が合ったその瞬間
「あぁ~!転校生さんがいましたぁ!」
「ワン!ワン!」
「っと・・・・・・さらか」
校門から街の方向へ30mぐらいだろうか、そこには同じグリモア学園生徒であり、12歳でありながら既に在学年数10年という仲月さらと愛犬であるシローの姿があった。遠くからこちらに向かって駆け出してくる。どうやら在校していた生徒には僕の捜索願いと言う名のクエストが発注されてるみたいだ。
「・・・・・・お前はアイツと一緒に宍戸の所に行け。俺はここで一抜けだ」
そう言うと朝比奈さんは、さらちゃんを迎えに行くかの様に、学園の外へと向けて歩き始めた。・・・・・・朝比奈さん、さっき何か言いかけてた様な気がしたけど・・・・・・。
「オイ!早く歩けつっただろ!蜂の巣にするぞテメェ!」
噴水前からメアリーさんの怒号が聞えてきた。普段なら、彼女が怖くてすぐさま駆け足で向かうのだけど・・・・・・先程、頭をよぎった彼女の「遺言」が、僕の足を鉛の様に重くしていた。
単語・人物解説
・仲月さら:2歳で魔法使いに覚醒し今年で在学10年になるベテラン(?)様々な先輩が魔物との戦いで命を落として行くの見てきた彼女だが、心折れる事無く人類の為に戦う魔法使いになれる様、頑張っている。身長が低いのを気にし、主人公と初めて会った時には20本もの牛乳を飲み干そうとしていた。
・シロー:仲月さらと常に一緒にいる子犬。魔法学園には基本的に動物の類は立ち入り出来ないが、シローは何故か在校が許可されている。
・グリモア学園の敷地:学園の名の通り一般の学校と同等以上の設備を有している。
※内容としては「授業塔・図書館塔・食堂塔・文化部塔・グラウンド・プール・全寮制の為、学園生寮」
しかし魔法使い育成機関の為、一般高校では有り得ない設備も有している。
※内容としては「魔法塔(精鋭部隊詰め所・魔道兵器開発局・調理室)・コロシアム」
他には野薔薇姫が管理するバラ園が存在する。