私立グリモワール魔法学園SS【風飛の丘に花は散り 裏→表】   作:テンコ。

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あと2章くらいで終わる予定です。

多分(白目


帰還【失って、失われていないモノ】⑤

ピカッ、ピカッとすっかり暗くなった部屋の中、正確には僕の顔の横で何かが点滅している。学園から配布されている携帯デバイスだ。普通のスマホとしてだけでは無くグリモア学園専用SNS「More@(通称:もあっと)」や受注クエストの確認等、学園生活をサポートする為に作られ、全校生徒がこれを日夜所持している。点灯しているという事は何らかのメッセージないし連絡を通知しているのだろう。

 

「・・・・・・うぅ・・・・・・」

 

わずかに残る眠気を吹き飛ばす為、右手で右目を拭う、が

 

「ッ!」

 

ズキン!と予想外の痛みが走り、全身がわずかに浮く。どうやら泣きながら(自覚は無いが)寝てしまった所為で目が少し腫れ上がってしまったみたいだ。僕は涙目になりながら携帯デバイスの液晶画面を確認する。

 

「時間は・・・・・・21時、か。随分寝ちゃったな」

 

携帯デバイスに映る現在時間を見て、僕は夕食を取るのも忘れて自室に篭りっ放しという事に気付く。いつもなら寮で友人と夕飯を食べて、ひとっ風呂でも浴びている時間だろうが、いかんせん今日の僕には余裕が無かった。すっかり夕飯を食べ損ねてしまい、明日の朝食までどうしたものかと思い悩んでいると、またしてもデバイスがメッセージを受信した事を知らせる為に点滅を始めた。

 

「こんな時間にメッセージなんて珍しい・・・・・・な」

 

届いたメッセージを開きで目で追う・・・・・・が、その内容に僕は目を大きく見開き固まってしまった。

 

『やぁ、起きたかい転校生君?』

 

差出人は・・・・・・遊佐先輩!?いや、遊佐先輩が「もあっと」でメッセージを送ってきてくれたのは別に初めてではない。だから、そう、この場合驚く事と言えば・・・・・・何で「僕が今起きた事を知っている」んだ!?

 

僕の問いに答える様にデバイスが「もあっと」の通知を知らせるべく再び点灯を始めた。

 

『それは企業秘密さ。乙女には知られちゃいけない秘密が沢山あるからね』

「いや、その、健全な男子にはもっと知られちゃいけない物があるんですが・・・・・」

 

まぁ「あの」遊佐先輩だし・・・・・・きっと何でも有りなんだろう。今度休みの日にでも部屋中を掃除し監視カメラの一つでもしかけられていないか確かめよう、と僕が心の中でそう決めるとまたしてもメッセージが送られてきたようだ。

 

『実は折り入って頼みがある。実は夏海が、また学園新聞のボツを出してしまってね。それも締め切りまであまり時間が無いというのに。そこで、君に手伝って貰いたい事がある。風紀委員に事情を話しておくから、良かったら報道部の部室まで来てくれないかな?』

「え、今から・・・・・・?」

 

唐突な申し出に、もう一度デバイスの時計を確認する。今の時間は夜の21時過ぎ、通常なら全校生徒は下校しこの学生寮に戻らなければいけない時間だ。もし不当に夜間に在校しているのを風紀委員に見つかったら・・・・・・恐らく懲罰房行きだろう、何が起きるか検討も付かない。でも

 

「遊佐先輩が許可を?もしかして岸田さん、物凄くピンチだったりするのかな・・・・・・?」

 

正直、あまり乗り気でない。けど、もし報道部部長である遊佐さんが僕の協力を要請したにも関わらずそれを断った、なんて事が知られたら遊佐先輩を敬愛する岸田さんの事だ。根も葉も無い記事やニュースをばら撒いてしまうかもしれない。・・・・・・けど、それ以前に岸田さんは僕の友達だ。友達が困っている、ならば、それだけで僕が動く理由は充分だ。

 

「・・・・・・それに、報道部にいけば夜食用のアンパンがあるかもしれないし、ね」

 

若干の私利私欲を胸に、僕はベッドから降り部屋のドアへ向かう。

 

「・・・・・・今から行きます・・・・・・送信っと」

 

「もあっと」で遊佐先輩に返事を出し、僕は早足で寮の玄関を目指した。辺りは月の光に照らされて、夜なのに随分明るく見える。今日は満月かな・・・・・・。

 

 

 

 

丁度、僕の真後ろ、満月を背に報道部部室へ向かう僕を監視する一つの影がそこにはあった。

 

「ダーリンはそちらへ向かやはったで~・・・・・・」

『ありがとう、白藤君。けど、もうそろそろ』

「はいはい、もう「おっかけ正宗」は解除済みですよ・・・・・・っと」

 

ピコン。とデバイスがメッセージの送信完了を告げる。

 

「はぁ・・・・・・まさかダーリンの部屋が覗けるなんてぇ・・・・・・と、いけない。風紀委員の見回りがあるかもしれんし、早う帰れへんと」

 

そそくさと学園寮1Fのロビーに居た白藤香ノ葉は、魔法気配を悟られまいと自分の部屋へと移動を始めた。僕が自室でリアルタイムに一挙一動を把握されていたのは、彼女の式神の働きによる物であった。その事を知るきっかけはまた別の話になるが・・・・・・

 

「恋する乙女は大胆・・・・・・ってね」

 

遊佐鳴子は、白藤からのメッセージを受け取り心底楽しそうに微笑んだ。

 

 




単語・人物解説
・白藤香ノ葉:転校生をダーリンと話す京都弁の女の子。式神を操る魔法が使用でき文中で出た「おっかけ正宗」の他に「見回り信長」「留守番家康」等が存在する。

・「あの」遊佐先輩:遊佐鳴子は霧の嵐によって未来(裏世界)に飛ばされた経緯を持つ。そこで得た情報を使い、関係各所を脅迫紛いの手法で操っている。

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