私立グリモワール魔法学園SS【風飛の丘に花は散り 裏→表】 作:テンコ。
「そんなに緊張しないでくれよ?あ、大きな声を出すのは勘弁してくれ。実は許可なんて取っていないんだ。その内、鬼の風紀委員長が見回りにくるかもしれないから静かに頼むよ」
夜の学園、その報道部室には僕と、もう一人の人影があった。
「おや?もしかして夏海に呼び出されたと思ってきたら、僕が居たのがそんなにショックだったかい?ふふ、夏海の奴・・・・・・意外と可能性あるんじゃないか?」
「あの、一応聞きますけど・・・・・・これは一体どういう事ですか?」
「なぁに、用事は直ぐに済むさ」
遊佐先輩は部室にある机に腰をかけ足を組みながらこちらを向く。迷い無く僕を見つめる彼女の意思ある視線に、ついぞ僕は耐えられなくなり思わず顔を逸らす━━━瞬間
「そうやって、自分の見てきた事からも目を逸らすのかい?」
報道部室内の、いや、遊佐先輩の纏う空気が・・・・・・一変した。まるで「逃した獲物は逃がさない」、そんな狩人の様な・・・・・・静かな威圧感を感じる。
「君の事情は聞いている。霧の嵐に巻き込まれて、今から1年と2ヶ月後のグリモアに・・・・・・裏世界に飛ばされていたんだってね」
「そ、それをどこで・・・・・・」
「まぁ、それは機密情報という事で。だが、僕はこんな事も知っている。・・・・・・転校生君、君は運悪くも裏世界で第8次侵攻にかち合った。そして、開戦直前に霧の嵐でこの「表世界」に戻ってきた」
「・・・・・・」
「そして今に至るわけだけど・・・・・・君はどうやら関わってしまったみたいだね。あの世界のグリモア学園の生徒達と。」
遊佐先輩が溜息を一息付くと、先程まで感じられた圧力はどこかへ消えた。だが相変わらず目線は鋭いまま、こちらを射抜くかの様に向いている。
「「その時代」なら僕の協力者・・・・・・まぁ「裏世界の僕」からだけど、ある程度情報は得ている。第8次侵攻によって君が関わったと思われる彼女達がどのような最期を告げたかは・・・・・・君が良ければ後で教えてあげよう。君が本当に望むならね。でも、君をここに呼び出したのは明確な理由がある」
遊佐先輩が椅子から立ち上がり、あっという間に僕の目前・・・・・・互いの呼吸が感じられる程の近距離まで詰められ、僕は身動きが取れなくなった。明確な理由・・・・・・それって
「受け取ったんだろう?きっと、彼女達から」
目は・・・・・・笑っていない、いつもの意地悪そうな先輩の顔じゃない。きっと、これは・・・・・・誰かを鍛える為の、もしかしたら普段の岸田さんとのそれに近い物なのかもしれない。
「だったら君は届けるべきだ。表の、今この時代にいる彼女達に」
「・・・・・・でも・・・・・・」
「・・・・・・僕にはわかってるよ、転校生君。君が何を思っているか」
僕から顔を離し、ゆっくり報道部室の窓へと向かう遊佐先輩。「まったく今日は明るい夜だな」と夜にも限らず眩しそうに右手で月光を遮る。
「君は・・・・・・怖いんだ」
「!!?」
思わず・・・・・・息を飲む。足は震え、今にも崩れ落ちてしまいそうになるのを両手を力一杯に握り締め何とか耐える。しかし先輩の「答え合わせ」はまだ終わらない。
「怖いんだろう?きっとそれは、彼女達の想いを届ける事じゃない、裏世界に一人飛ばされた事じゃない。・・・・・・君の力が、魔法使いとしての君の能力が
「本当は何の役にも立たないんじゃないか?」
って言われる事を、君は恐れているんだ」
「・・・・・・ぁ・・・・・・」
僕の持っていた「答え」・・・・・・それを見事に言い当てられ、僕は絶句するしかなかった。