ソードアート・オンライン 幻影の暗殺者   作:双盾

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乱入者

「準備はいいな?」

 

「OKです」

 

第13階層の洞窟の岩陰で指文字でコミニュケーションを取る。

この洞窟は、PKギルドの1つである『パンプキン・パイ』の拠点だからだ。

すでに入口の警護をしていたプレイヤーは一時的な、効果の弱い睡眠と、効果時間の長い強力な麻痺を与えてあるのでしばらくは動けないだろう。

 

「突撃」

 

準備が整い、突撃の指示を下した。

隠蔽スキルを発動して足音を小さくして洞窟内部へと侵入していく。

しばらくして見えた鋼鉄の扉で足を止める。

 

「マックス、頼む」

 

「はい」

 

ギルドの中で最も聞き耳スキルの高いマックスに内部の情報を集めさせる。

少しして、耳を離して報告する。

 

「恐らく奴らは装備を解除しているんでしょう。金属音や足音からして」

 

「それは好都合だ。カガミが開錠スキルで開錠した瞬間に突撃する。構えろ」

 

皆武器を引き抜き戦闘に備える。カガミはストレージからピッキングセットを取り出し、鍵穴を弄る。

そして

カチャリ

 

「攻撃開始」

 

バン!!

 

鋼鉄の扉を勢いよく開きながらギルド内へと、プレイヤーへと襲い掛かった。

 

「!?敵襲!!てきしゅ――――」

 

敵襲を知らせる為に大声で喚き散らす五月蝿い男の首を切り裂き一撃で仕留める。

続けて滑って転んでいるドジプレイヤーを殺すと洞窟を、更に奥へ奥へと進む。

元々蟻の巣だった洞窟だ。道は入り組み曲がりくねって視界が悪い。

 

「よく来たなァ襲撃者!!!」

 

「!」

 

ドォォォォォン!!

 

赤い光が衝撃を纏って目の前を通過し、地面に叩きつけられる。

光の形から今の攻撃は斧の初期重範囲単発攻撃のグランド・ディストラクトだと分かる。

そして、斧の装飾や形状から、相手はギルドボスであるホルザックだと判明した。

 

「ホルザック、覚悟!」

 

「俺の名前知ってるのか。俺も有名になったもん、だなぁ!!!」

 

スキル硬直が解除され、すかさず3連撃攻撃のクリムゾン・ブラッドを発動してくる。

狭い洞窟では左右上下の回避が制限される。後ろへとライジングステップ(ジグザグに下がり、一直線に移動しない)で下がる。

しかし、斧スキルはスキル硬直が長い。少し距離があるがこの程度なら一瞬で詰められる。

勝った、そう思ったが

 

「勝った。と、思うだろ?」

 

「何!?」

 

クリムゾン・ブラッドの最後の一撃を振りかぶったその時

 

ガン!!

 

勢いよく振り上げられた斧は天井に当たり、スキルは解除される。スキル妨害の硬直はかなり短い。コレを狙っていたのだと知った。

 

「終わるのはおめぇだぁぁぁ!!」

 

斧が黄金に輝く。

あれは斧上位超広範囲3連撃スキル、エクスプロード・カタパルトだ。

攻撃範囲が大きく回避しにくい、且つ超高威力の攻撃だ。

そんな絶体絶命の時、仲間の声が響いた。

 

「ジンさん!!そっちに誰かが行きました!!気を付けてください!!」

 

気を付けるも何もホルザックの攻撃の回避が難しい時点でそんなことを考えていることなどできない。

斧が迫りくる。

一撃目、下から上に振り上げられる刃を身を逸らして避ける。

だが二撃目は範囲が広すぎて回避しきれない。

二撃目、上から大きな衝撃を纏った刃が振り下ろされ――――

 

「させるかぁぁぁぁ!!」

 

一陣の風が舞い込み、緑の閃光が黄金の光が放たれる斧を打った。

 

ガァァァァァン!!!!

 

超大型の銃弾でも発射したらこんな音になるんだろうかというほどの重い打撃音が、斧を吹き飛ばした。

 

「はァ?」

 

呆けた顔をするのも無理はない。

視界に入ったのは細剣かと見紛うほどの細身の片手剣が、超重量超威力の斧を吹き飛ばしたという現象だ。到底信じられる物じゃない。

 

「今だよ!!」

 

最高のタイミングでのスイッチ。間違いない。斧を弾いた彼女は―――――

 

「止め!!」

 

「うごぁっ」

 

開いた口内へと切先を突き刺す。貫通し、後頭部へと。言葉さえ発させずポリゴンと化して絶命した。

 

 

 

 

「ひさしぶりだな、ユウキ」

 

「ひさしぶり、ジン」

 

『パンプキン・パイ』を壊滅させ、仲間を先に拠点に返して俺は、乱入者と、ユウキと対面していた。

 

「どうしてここが分かった?」

 

「アルゴさんから聞いたんだよ。正しくは盗み聞きだけど」

 

「そうか」

 

恐らく、いや、確実に、ユウキはキリトとアルゴの会話を盗み聞きしたんだろう。

キリトが俺の居場所を嗅ぎ回るのは目に見えていたことだった。

しかしこれは予想外だ。

ユウキが、自ら死地へと赴くようなことになるとは。もしかしたらそれを無意識のうちに考えないようにしていたのかもしれない。

何にせよこれは、俺の落ち度だ。

 

「ユウキ、もうこんなことはしない方がいい。皆も心配する」

 

「じゃあボクからも1つ、条件を付けさせて。ジンがこれを了解してくれたらボクもこんなことは止めるよ」

 

「条件はなんだ」

 

「ジンが黒猫団に戻って、PKKもやめる。これがボクの条件」

 

この条件に俺は言葉を失った。

ユウキは何故そんなことを言うのか、理解できなかった。

確かに俺のやっていることは一般的に正しいと言えるものではない。

だが確かな変化をもたらしてもいる。これはユウキも理解しているだろう。

 

「何故そんなことを言うんだ?」

 

「ジンはさっきボクに言ったよね。皆も心配するって。それはジンにだって言えることなんだよ?」

 

「――――」

 

言葉が出なかった。

何も言えなくなった。

そんな俺を見て、尚もユウキは続ける。

 

「ジンはさ、ボク達に色んな事を教えてくれたよね。それだけじゃない。皆を助けてくれた。きっと誰よりも僕達のことを考えてくれてるんだと思う。

 けど、それは僕達も同じなんだよジン。

 ジンがこういうことをしてることは知ってる。ジンだったら死んじゃったりしないってわかってる。

 でも時々考えちゃうんだ。もしジンが死んじゃったらって」

ユウキの目から涙が零れる。

 

「そしたらすっごく悲しくなって、苦しくなって…………いっそボクがジンの代わりに―――――」

 

「やめろ、ユウキ。…………それ以上は言うな」

 

これ以上の言葉は聞きたくない。

 

何も言えないようにユウキを抱きしめる。

抱きしめたユウキの身体は、想像していた以上に華奢で、そして幼く、とても脆く、儚く感じた。

この体はバーチャルで偽物だったとしても、きっとユウキの魂が宿っている。そう思えた。

 

「だからボク、ジンの為ならって、無我夢中で――――」

 

「分かったから。無理して言わなくていい」

 

「う、ああ……あああああ!!」

 

ユウキは、叫ぶように泣いた。

俺はただ、抱きしめることしかできなかった。

ユウキが苦しむ原因を作ったのは俺で、その苦しみを俺自身深く理解している。

だからただ抱きしめることしかできなかった。

 

 

 

 

俺は、俺の背負うべき責任を背負うつもりでいた。

実際に背負っている物もあった。

けれどそれ以上に、目を逸らし続けてきた責任の方が大きかった。

その責任が、別の物となって、多くの人を苦しめてきた。

そしてその結果がこのザマだ。

たった1人の少女ですら救えてないじゃないか。

自分は、何のためにここまでやってきたんだ。

自分が自分に課した罰を、今更ながら理解したような気がした。

 

グラリ

 

信念が、

 

グラリ

 

自身が、

 

グラリ

 

揺らぐのが分かる。

俺は――――――




3000字を切ってしまったorz
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