ソードアート・オンライン 幻影の暗殺者   作:双盾

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聖夜の哨戒

あれから数日、現状はかなり進展していた。

階層の攻略に伴い入手できるアイテムや装備の質も上がっていき、攻略の安定に伴いプレイヤー達は安心を感じられるようになってきていた。

その裏にはPKギルドの減少とPKKギルドの勢力の増強にあった。

名だたるPKギルドを次々に葬り去っていった我がギルドの噂は瞬時に広まり、それを証明するかのようにPKギルドのプレイヤー達は死んでいった。

ラフコフを除くほぼすべての大手PKギルドは壊滅、あるいは消滅し、残っていたPKギルドの数々もまた影を潜め、活動は縮小していった。

散り散りとなったPKギルドは小さな集まりを成すものの弱小に成り果て、下手に行動して身を危険に晒すことを恐れ、消滅していく。

だが、ラフコフは常に例外であった。

拠点を転々とし、構成員も、戦力さえ全貌を把握できていない。

彼らによる殺人の速度は若干の低下を見せたものの大きな低下が見られない。

 

「厄介な相手だ」

 

「最大手のPKギルドなだけはありますね」

 

しかしながら、俺達もまた様々な対策を取り、戦力を増強してきた。

いまや攻略ギルドに匹敵するほどの戦力となっている。

けれども掃討作戦に踏み込むには至っていないのが現状であった。

 

 

 

 

 

 

世間はクリスマスに賑わいを見せるが、それは聖竜連合や黒猫団もまた例外ではなく、ホームの窓からは楽しげに談笑する様子が見れた。

が、例外なるギルドが一つだけあった。

我がPKKギルドことshadowである。

情報班と探索班は、日々ラフコフの全貌解明に精を出しているが、それ以外の者は手持ち無沙汰であった。

何せ仕事であるはずのPKギルド狩りだが、肝心のPKギルドが雲隠れしてしまっているのだ。

それはPKの減少を意味しているのでこれを「もっと仕事寄越せ」などと社畜のようなことを言う訳にはいかないので、何とも複雑なところである。

とどのつまりが暇なのである。

 

「だらけるなと言われても、なにやってりゃいいんですか」

 

慢心はダメ、ゼッタイ。と、昔の画面の向こうの妻が幾度となく言い聞かせてくれた言葉。慢心しきっているこの空間を引き締めるべく様々さ手を打ったが、現在に至り、結果万策尽きた状況にあった。

外に繰り出せば何か手はあるのだろうが、けれども顔を露出させることを可能な限り避けたい俺達は、下手にこの拠点から出る訳にもいかない。

負の循環であった。

 

 

 

 

 

 

そんな時だった。

攻略組の精鋭の姿が見えないとの情報を掴んだのは。

つまりこれはとある噂が確信的になったということで、その場では精鋭同志の乱闘が予測された。

そしてそんな場所はラフコフにとっては最高の状況である。

 

「これより俺達は、緊急哨戒任務にあたる!!」

 

そんなことになったら攻略の低下どころではない。

ギルド同士の同盟すら危うくなりかねない。

そんなことはさせない。

俺達は最初で最後の哨戒任務にあたった。

場所は情報屋から仕入れた情報で、交戦が予測される場所から半径200m離れた場所を周回することになった。

雪の降り積もる森林。

今日は12月24日。夜も遅く、人の気配があるはずもない場所だ。

しかし今日は違った。

まずギルドの姿を発見したのは北の哨戒班。

情報によれば赤茶で統一された極東風の武装をした少数の集団。リーダーと思われる男は額に鉢巻をしているとのこと。

……クラインかよ。

クラインも有名になったものだ。攻撃に重きを置く攻略ギルドの数々とは真逆、防御に重きを置く唯一の攻略組のリーダーとして、すでにプレイヤーたちからは憧れとして認識されている。……けれども有名になったからといって助平な性格が変わるわけでは無かったが。

続いての報告は南。

装備は白と青系統な西洋系で統一され、リーダーと思われる人物は青髪の盾持ち剣士とのこと。

これは聖竜連合だな。となると先頭にいるのがディアベルか。

あいつも中々に出世したもんだ。

しかし次の報告に、俺は耳を疑った。

東からの報告。

隠蔽を使って身を隠し指定場所に接近する者が一名。上位索敵スキルを使い隠蔽を見破る。

全身を黒で統一した片手剣士。

キリトだ。

アイツに限ってそんなことはと思っていたが、まさかイベントボスに一人で挑むつもりか。

 

「どうしますか」

 

「……ラフコフの姿を発見するまでは様子見。乱闘が始まり次第鎮圧だ」

 

「了解です」

 

あの集団の中で最もレベルが高いのはキリトだ。

技量的な面からしてもそう簡単にくたばりはしないだろう。

 

 

 

 

 

 

これだけのギルドが集まるのにはわけがある。

鼠の情報によれば、今日この場の少し先にイベントボスが登場するらしい。

そして驚くべきはそのドロップアイテム。

攻略組が血眼になるのもうなずける。

それは、この世界では唯一となりうる死者蘇生アイテム。

俺達も欲しいが、そのために無用な争いを巻き起こし、あまつさえ死者を増やす危険を冒すのは理に反する。

だからこそこうして警備にあたるのだ。

 

 

 

 

 

 

予想通り、乱闘が始まる。

キリトはクライン率いる風林火山と手を組んだのか一人、奥へ向かおうとする。

しかし、その瞬間のことだった。

キリトの行く手を阻むようにして煌めく白刃がキリトの頬を掠めた。

 

「!?」

 

俺は反射的に飛び出しそうになるのを堪えて様子を伺った。

闇の奥。

イベントボスへ間へとつながる小道から一人、歩み寄ってくるボロマントを纏った―――――

 

「ああ?来たのはテメェか?PKKの野郎が来ると思ったが………まあそんなことはどうでもいいかァ」

 

キリトを一瞥し、意外そうな表情を浮かべた宿敵を捉えた。

 

「さぁ、ショウタイムだ!!」

 

が、次の瞬間には腰に携えていた友切包丁を振りかざしてきた。

その時、マントが舞い、手の甲の刻印が――――笑みを浮かべる棺桶の刻印が、この夜空の元に晒された。

刹那、場の雰囲気は一変した。

殺る気に満ち満ちていた聖竜連合は怯み、風林火山は警戒の色を強めた。

俺は勢いよく立ち上がり、指示を出した。

 

「総員!!隠蔽を解除!!周囲を警戒せよ!!ラフコフを発見し次第殲滅せよ!!」

 

「ジン!?」

 

「ho-ho-ho……来てるとおもったぜェ!!」

 

pohは標的を俺に変え、最高速度で突進してきた。

これがpohでなければ俺は短剣をすぐには抜かなかっただろう。

だが正面にいるのはpohだ。

仮想世界最恐であり最凶、死を恐れず死を齎す殺人鬼――――いや、殺神鬼だ。

一瞬でも隙を見せることは死と同義の相手だ。

 

ガキィン!!

 

凄まじい金属音が静寂に包まれていた森林を穿っていく。

ギリリリと刃の擦れる音とともに散る火花は、場に恐怖を撒き散らす。

 

「っ!!」

 

ジリジリと俺に迫る包丁。

筋力では負けているようだ。

しかし攻略組と同等かそれ以上の俊敏、そして俺達の索敵を掻い潜るだけの隠蔽能力。

こいつのレベルは俺やキリトと同じくらいになっているのだろう。

 

「中々に強い!!」

 

「だろォ?でなくちゃテメェの宿敵として相応しくねぇってもんだァ!!」

 

蹴りで俺を弾き飛ばし、すかさずステップを踏んで近接してくるpoh。

その特異なステップで攻撃を翻弄し、されど敵の視覚から離れず、降り積もる雪さえも無いかのように軽い足運びで、攻撃に転じることさえ難しいほどの連撃を繰り返す。

大振りな短剣の攻撃に騙されそうになるが、その足元では防御し剣を封じられた俺の足をからめ取ろうと細かくステップを踏み続ける両足が待ち構える。

殺しに特化した人間の本領はこんなものではないと考えると目の前の敵が、どれだけ恐ろしいかを改めて知らされる。

 

「どォしたってんだァ?俺にattackさせでばかりでいいのかァ?」

 

「余裕綽々って感じだ……なっ!!」

 

刃を刀身で防御し容赦なく足を掬い上げようと蛇のように妖しく蠢く足技をジャンプで避けると、敵の腹目掛けて蹴りを入れる。

しかし俺の筋力値では蹴り飛ばすには至らず、左手で足を掴まれてしまう。

死の薫りが濃くなる。

pohもまた獰猛な笑みを浮かべる。

だがこれは作戦の内だ。

 

「らぁ!!」

 

片足だけの筋力で上体を起こし、体術スキル<閃打>を顔面に放つが、顔を逸らされ回避されてしまうがこれは注意を引くための攻撃。

本命は――――

俺の足を掴む左腕を切り裂いた右手の短剣だ。

 

「ふんっ!!」

 

左足で強く地面を踏み、自由になった右足で足払いを繰り出す。

姿勢を崩したpohだが受け身を取り緊急回避でその場を離脱する。

攻撃は反撃を至難のものとし、攻撃を許しても連撃を許さない。

強敵だ。

 

「……hohoho、中々にやるじゃねぇか。だがここまでだ」

 

右腕には、気付かぬうちに握られていた青色の結晶。

転移結晶!!逃げるつもりか!!

 

「待ちやがれ!!」

 

「次回は俺がテメェの首を頂く。――――――」

 

隠し持っていた小剣を投擲スキル<ホライゾン・シューター>で放つも一歩足りず、逃走を許してしまった。

すると、深い森の奥から何度か蒼白い光を見た。

やはり潜伏していたか。

しばらくすると奥から仲間たちが集まってきた。

数人は討ち取ったものの、やはり大半は逃がしてしまったとのことだった。

 

「仕方ない、撤収だ」

 

「ま、待てよジン!!」

 

キリトが焦った声音で俺を静止させようと立ちはだかる。

俺は面倒だと思いつつも、仲間に先に撤収しろとの命を出してキリトと対面した。

 

「久しぶりだなぁキリト。ディアベルもな」

 

「……ジン、もうやめるんだ。こんなことは」

 

「PKKのことか?それなら無理―――でもないが、お前には難しいだろうな」

 

正直なことを言ってしまえば、俺はこれ以上のPKKは意味を成さないだろうなと考えていた。

ラフコフ以外がほぼほぼ消滅してしまった状態で、弱小ばかりを狙ったところでこれ以上の効果は現れそうにない。

しかしshadowが解散したと言う話が出ればすぐにPKが始まるだろう。

だからこそあえて無理だとは言わなかった。

 

「ジン、お前は何を望むんだ?」

 

「俺が望む物?決まってるだろう?」

 

俺が本当に望む物。それは――――

 

 

「救済さ」




久しぶりにSAOを見て、また書きたくなったので、投稿
しばらくはSAO優先で書いていきます
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