ソードアート・オンライン 幻影の暗殺者   作:双盾

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ラフコフ掃討会議

 

「ったく………ひどい目にあったぜ」

 

「それはこっちのセリフよ!!」

 

あれから30分後、現在時刻0815。俺達は無事にホームを出発していた。

アスナは不満そうな表情でグチグチと嫌味を垂れ流し、それを宥めるユウキの姿がある。

 

キレた姉を宥める妹のようにも見えるがユウキとアスナはしまいではないらしいので、見えるのところを強調せざるをえないのだ。

時折世界を狙えるような鋭いケリを入れていたが、自らの過ちであったとそれを甘んじて受け入れる情けないダッカーの姿は街のプレイヤーNPCどちらからも目撃されていた。

会議前にはこの癇癪も収まっていてくれると嬉しいが………

 

 

 

 

 

「これより会議を始める!」

 

血盟騎士団本部の大会議室で、有力ギルド5勢によるラフコフ掃討作戦会議が始まった。

五角形の空間を中央に作り、その一辺一辺には各ギルドの代表が座っていた。

血盟騎士団、団長ヒースクリフ。

聖竜連合、総長ディアベル。

風林火山、リーダークライン。

黒猫団、団長ケイタ。

そしてPKKギルド、shadow総長の俺ことジン。

久々のshadowメンバーとの再会だが、今回はそんな再開の喜びを言い合う暇も無い。

 

「まず、意見のある者は挙手を」

 

「はい!」

 

最初に手を上げたのはディアベルだ。

ヒースクリフが指さし発言を許可する。

ディアベルは立ち上がり、全員を見渡しながら言った。

 

「俺は聖竜連合、総長のディアベルだ!この作戦は敵の掃討が目的だ!だから逃がさないように包囲したのちに総攻撃をかけるべきだと俺は提案する!」

 

発言を終え着席すると、聖竜連合の団員からいいぞという声や拍手が送られた。

しかしその直後に挙手をする人物がいた。

クラインだった。

許可を得て立ち上がるとクラインは同じように見渡しながら言う。

 

「俺は風林火山、リーダーのクラインだ!俺は味方の安全を重視して包囲網は賛成だが、催眠ガスを詰め込んだ破裂袋を使った敵の燻りだしを提案する!」

 

クラインの方もまた着席すると風林火山メンバーから、よっ大将!!と支持の声が上がる。

続いて黒猫団からケイタが手を上げる。

 

「黒猫団のケイタです!俺は集団戦に優れたランス部隊を初撃に、攻撃範囲に長けた斧や両手剣部隊で蹂躙。弱った敵を片手剣やレイピア部隊で各個撃破という波状作戦を提案します!」

 

おお、中々に大人な作戦を立てたな。

ギルメンの成長を喜んでいると、今度はヒースクリフ自身が挙手をした。

場は静まりヒースクリフは発言する。

 

「私は血盟騎士団、団長ヒースクリフ。私は盾持ちとランスのパーティーで敵を囲み、徐々に近接し、敵が姿を現した時に遠距離からの投剣の一斉攻撃。陣形が崩れたところを狙い総攻撃という作戦を提案する!」

 

ヒースクリフも流石だ。

ランスだけでなく盾持ちを入れることでより密接な包囲網ができる。しかし近付こうがものなら槍と投剣で対応とは。

最有力ギルドのトップなだけはあるな。

ここらで俺も挙手しとくかな。

 

「俺はPKKギルドshadow総長ジン!言おうと思った意見は皆言われてしまったが、敵の戦法や各メンバーの戦力から作戦の再考を提案する」

 

俺は情報班から持ってきてもらった資料を中央に掲示した。

そしてポインターを当てながらその特徴について説明を始める。

 

「この男はラフコフのボスことPoh。その戦力はキリトやヒースクリフに匹敵し単独での戦闘は不利。

獲物は大型中華包丁系短剣<友切包丁>。

毒、出血、麻痺を仕掛けてくるので対応はキリトかヒースクリフに任せたい」

 

顔写真や武器のイラスト、それらをポインターで当てながら説明するが、この男は攻略組でもトップレベルでなければ相手にできないだろう。

 

「次に赤目のザザ。髑髏のマスクの敵幹部だ。だが状態異常系はそこまで使われた報告は無い!

装備はエストック。アスナ程ではないが凄まじい剣筋だ!

相手にする場合は3人ほどで挑むのが望ましい!」

 

純粋に戦闘技術だけで幹部にまで上り詰めた猛者だ。隠し持つ本領は計り知れない。

 

「そしてジョニー・ブラック。黒マスクを見たらこいつだと思った方がいい!

こいつはナイフ使いだがナイフには毒が塗布、その威力は48……ランクとしては最上級の5だ!

攻撃力はあまりないが、暗殺に特化している人物で、忍び足スキルはカンストと思われる!

また鎧の隙間から剣を差し込むという器用さを持ち合わせている!

だが集団戦ではあまり真価を発揮できないようなので集団で討伐してくれ!

注意してほしいのは以上三名だが濃霧の中での戦闘も考えられるので警戒は怠らないでくれ!!」

 

はっきり言って連携は壊滅的に取れていない敵なので集団戦で連携攻めすれば勝てるとは思うが濃霧がどんな影響を及ぼすか分からない。地の理は向こうにある。

こちらはレベルと装備、連携と数で攻めるしかない。

あとは参加者の覚悟の程に頼るしかない。

 

「以上の点を踏まえて、彼らへの対策も含め作戦を考えてくれ!」

 

考えるべきは作戦というよりも戦闘員の配置だろう。

主力を一か所に集めれば陣形にムラが出来てしまう。だが広げても一人一人がカバーできる範囲は限られている。

それをどう他の戦闘員がカバーできるかが勝負の決め手となるだろう。

まず最初の挙手はケイタ。

 

「じゃあ斧部隊を初撃にして両手剣で斧の硬直をカバー。両者共に硬直してしまいそうになったらランス部隊での一斉攻撃で幹部以上の敵を炙りだしてそれをキリト達に仕留めてもらうでどうですか!」

 

ふむ、斧と両手剣で敵を内へと押し込んで一気にランス部隊で壊滅、残った幹部共をキリト達にやらせようって策か。無理にキリト達を温存する必要は無いだろうが、初っ端から出しまくって疲労困憊になられても困るな。

 

「いやいやそこはタンクの包囲網からの破裂袋と投剣での――――」

 

「やつらは今の今までその拠点を隠し切れたんだ!時間をかければまた姿を暗ます!!」

 

「包囲網からそう簡単に抜け出せるものか!!」

 

ここまで来て会場は荒れ始める。

確かに時間を掛ければそれだけ逃走の可能性は上がる。

だが時間をかけないようにするならばそれだけ被害が大きくなる。

相手は下手なギルドよりも厄介だ。

それこそ規模なら血盟騎士団以上かもしれない。

大半は雑魚かもしれない。しかし、だ。幹部級ともなればキリトやヒースクリフでなければ対処できないほどに強い。

 

「静粛に!」

 

騒然としていた会議場に、ヒースクリフの声が響く。

その刹那、先程の喧騒はまるで嘘のように消え去る。

周囲の視線が一か所に集まる。中心にいたのはヒースクリフ。

 

「さて、一度着席して冷静になりたまえ」

 

凄いな。

たかが一声で周囲を支配しきる力があるとは。

まるで、世界の支配者みたいに―――――

 

「まず、皆の意見から考えるに、攻撃を優先か、身を守りたいかの二択のようだ」

 

しかし、とヒースクリフは言う。

 

「今回はラフィン・コフィンの掃討が目的にある。

 だが、身を案じて攻撃を疎かにすれば敵は姿を暗ますだろう。

 けれども我が方から死者を出すのは本望ではない。

 ならば!自らの身は自らが守るべきである。

 更なる死者を出さぬ為にも、ここで総力を以てここで討つべきである!」

 

「…………」

 

ヒースクリフは、自らは自らの力で守れと、総攻撃すべきだと表明した。

死者を出さないことがアインクラッド100階層攻略の常であれというのに、意外も意外である。

だが、それだけの心を、覚悟を持たなければラフコフの掃討などできない。

 

「俺達は………」

 

俺もここらで発言をしようじゃないか。

 

「この戦いは、文字通り。比喩無く。命を掛けた殺し合いだ。

 人殺しになる覚悟を、死する覚悟の無き者は、真っ先に命を落とす。

 生涯この戦いを忘れることはできないだろう。

 改めて問う。

 覚悟は、できているか?」

 

場は静まり返る。

俯き、目を瞑る。

静寂。

それでも、彼らの心の内は、常に動いている。

まず最初に、その内を明かしたのはディアベルだった。

 

「愚問だ。死ぬ覚悟も無いのに、人を殺す?

 そんな生半可な気持ちなら、こんな所にはいない!!!そうだろ!皆!!!」

 

「そうだぜ総長!!」

 

「こんなところで死んでらんねぇぜ!!」

 

ディアベルのギルドメンバー達は、拳を掲げ、同意であると雄叫びを上げる。

その様は、古代に有った最果ての海を目指した勇猛なる戦士たちと重なる。

有能なる勇者と、その元にありし猛き戦士達。

俺達は、そんなにも勇ましい姿を見せることはできない。

俺達は、暗闇に潜み、影に隠れて、命を刈り取る。

悪を切る為に悪になった。勇者にはなれない。

 

「我々も同じだ」

 

ヒースクリフも、静かに立ち上がった。

 

「俺達だって同じだぜ!!」

 

ケイタ達も立ち上がる。

彼らもまた覚悟を示す。

後、残っているのは…………クライン率いる、風林火山だけだ。

だが、クラインは目を瞑り、思考する姿勢を崩さない。

風林火山は、攻略組で唯一、死者の無いギルドとして、名を馳せている。

そんな彼らは、死の覚悟を以て人を殺すことなどできるのだろうか?

 

「…………」

 

クラインは口を開かない。

険しい表情で、動かない。

何を葛藤し、何を選ぶのか、俺には分からない。

ただ、この場の全員が彼の意見を尊重するだろう。

 

「俺は………」

 

重々しく、クラインは無精髭に囲まれた口を開いた。

 

「俺ぁ……本当は参加したくない。だがよ………

 俺達が動かなけりゃ、これからも死者が出るってんなら

 命を掛ける価値はあるってモンじゃねぇか!!」

 

「よっ!よくぞ言ってくれまやしたぜ旦那!!」

 

クライン達もまた、覚悟を決めているようで、勢いよく立ち上がった。

背後の仲間達も立ち上がり、クラインへの支持の声を上げる。

周囲からも拍手が鳴り響く。

 

「ならば、全勢力を結集し、ただ一つの敵を討ち取る!!」

 

覚悟は決まった。

いまここに、ラフコフ討伐隊が結成された瞬間だった。

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