ソードアート・オンライン 幻影の暗殺者   作:双盾

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まとめました


3人の夜

ユウキの誘いに乗ってサチとユウキの部屋の前まで来た。

 

コンコンコン

 

部屋に入る前には、例え自分の部屋であろうと3ノックこれ基本。

 

ガチャ

 

「あ、きたきたー」

 

扉を開いてユウキが飛び出す。

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「ジンってパジャマもしかして持ってない?」

 

「買う必要あるのか?」

 

極力出費は避けたい俺としては飢え死にすることのないこの世界では食事にすら金をかけたくない。ましてや服装なんぞ以ての外だったが彼女らにとっては違うらしい。

 

「じゃあちょーっと待ってて」

 

ガチャン

 

再び部屋へと戻るユウキ。そしてすぐにまた出てきたが今度は寝間着ではなく外着だった。

 

「それじゃあジンのパジャマを買いに行こう!!」

 

「そうか」

 

こう何かを決めたユウキを止めるのは困難を極めるのをここにきて理解した。よって俺も諦めた。

 

 

 

 

「これなんてどう?」

 

「さっきから言っているだろうが俺は「どれでもいいはダメだよ」ってユウキ、ホントにどれでもいいんだからユウキが勝手に選んでくれればいいんだ」

 

「ホントにいいの?」

 

「任せた」

 

そういって俺は少し離れたベンチに座る。

しばらくユウキはあれでもない、これでもないなと考えていたがやがていいものが見つかったのかこちらに向いて手を振る。

 

「これか?」

 

「うん!!」

 

フフン!!と胸を張るユウキから寝間着を受け取り会計を済ませるとギルドホームへと戻る。

ホームに着くとユウキに早く着てみてと急かされお手洗いへと向かい着替えた。

着てみた感想と言えば肌触りがよく、装備よりも軽いというくらいだ。シンプルな柄だった故に目立ち過ぎず、派手過ぎずちょうどいい雰囲気を醸し出していた。

再びユウキ達の部屋へと向かい、例に漏れず3ノックするとユウキが迎える。

 

「おおー似合う似合う。サチ、どう思う?」

 

「似合ってると思うよ?」

 

「そか。まあ今晩はよろしく」

 

 

 

「そういえばジンは5時間もあの樹海エリアに居たんだよね?武器の耐久値とか気にしてなかったの?」

 

「ん?ああ、短剣は殆ど使わなかったな。コレばっか使って」

 

「コレって、木の棒じゃん。もしかしてずっとこれで?」

 

「だからそういっただろサチ」

 

2人はこれを冗談ととったのか「またまた~」と言ってくる。仕方なく木の棒を構えてソードスキルを発動させると「え?」といった表情で固まった。

とりあえず2人にデコピンをかましてフリーズを解除する。

ユウキがメチャクチャ動揺、というより驚いて言った。

 

「さ、サチ、ボクいま変なものを見た気がするんだけど、それはきっとボクが疲れてるだけなんだよねアハハハ」

 

「わ、私も疲れてるのかなハハハ」

 

こ、壊れた!?もう1度(今度は強めに)デコピンをかますと2人は額を抑えつつもどうやら正気に戻ったらしい。

どういうこと!?と問い詰められたのでグエッとなりつつも答えた。

 

「木のっ棒でもスキルを発動ぅできるんだって。だから離してくれ、窒息するって」

 

「ご、ごめん」

 

首絞めから解放されたので新鮮な空気を目いっぱい吸い込んだ。

 

「短剣以外のスキルは試した?」

 

「いや、まあ多分発動できても片手剣あたりが限界だろうな」

 

斧や鞭のスキルは形や大きさからして無理だろうしな。と付け加える。

するとユウキの目がキラーンと光る。

 

「ほっほーう。それでは明日、試してみますか。フフフフ………」

 

ユウキがまた壊れてしまっているがしばらくすれば治るだろうと思って放置しておく。

すると今度はサチが

 

「ねえジン、相談に乗ってほしいんだけどいいかな?」

 

まだ寝るには早い。俺はサチの相談に耳を傾けた。

 

「私ってこのギルドに居ていいのかな?」

 

サチは俺に問う。

正直言ってしまうとなぜそんなことを思ったのかが疑問でしかない。ギルドメンバーに悪口でも言われたのだろうか。

 

「どうしてそう思った?」

 

「私って臆病だから戦闘に出てもきっとみんなの足を引っ張っちゃう。みんなは攻略組を目指してるけど私が居たらきっとトップギルドにはなれないから…………」

 

「臆病なのは知ってる」

 

「そうなんだよねー。少し前に盾を持たせてみたけどやっぱりだめだったんだ」

 

「サチが他の皆と違うところは1つだけなんだが、その1つが無いだけで最早戦闘には出ない方がいいものなんだ」

 

「何が欠けてるの?」

 

俺は少し迷った。

これを指摘することによってサチを傷つけてしまうのではないだろうか?サチの目標を、努力を無意味だったと思わせてしまうのではないだろうか?

いや、今までの努力は無駄ではない。目標が無くなれば新しく作ればいい。傷ついて心が折れたとしてもまた立ち直ればいいじゃないか。

なら伝えてあげよう。現状と未来への可能性を。

 

「サチに欠けているのは生存本能からくる自己防衛行動だ」

 

「自己防衛行動?」

 

「そうだ。例えばもしユウキのHPが殆ど無い時に敵が攻撃してきたらどうする?」

 

ユウキは何言ってんの?という視線を送りつつも答えた。

 

「その攻撃を防ぐに決まってるじゃん」

 

「そうなんだが、サチの場合は恐怖で身体が動かなくなってるんだ。こればっかりは自分で克服するか慣れるしかない」

 

「…………」

 

サチは無言で話を聞く。反論はしない。間違っていないから。肯定もしない。認めたくないから。

 

「多分サチはこのゲームがクリアされてもそれを直すことはできないと思う」

 

「そんなことないよ!!」

 

ユウキが勢いよく立ち上がって反論する。

 

「サチだってがんばっていれば「ユウキ、いいの」サチ…………」

 

「だって間違ってないもん。きっと私はずっとこのままだから」

 

悔しそうに、涙を堪えながら、無理矢理笑顔を作りながら言った。

サチのその笑顔は俺も悲しくなるような悔しさを孕んでいた。

 

「戦力にはならないだろう。だがこの世界は戦闘能力が全てじゃないんだ」

 

「「え?」」

 

「サチは見たことないか?鍛冶師とか薬師、料理人や裁縫士を」

 

「あっ」

 

この世界は戦線に参加する者だけで出来ているわけではない。

武器の手入れや強化を行う鍛冶師、ポーションなどを調合する薬師、防具を作る裁縫士、戦闘者の戦意を落とさないように料理を作る料理人。

戦線に参加せずともメンバーを支援し、癒すことはできる。

 

「今スキルスロットに入ってる槍スキルが無駄になってしまうが…………」

 

「いいよ、無駄になっても。だって」

 

少しの間を開けて、

 

「これからも皆を支えていけるから」

 

迷いのない、希望に満ち満ちた、華やかな笑顔でそういった。

 

「「!?」」

 

「え、どうしたの?2人とも」

 

「サチのそんな顔見たことなかったから」

 

「あ、え。変だった?」

 

「全然!!とっても可愛かったよ!!」

 

「そうだ。今の笑顔なら並大抵の男共なら一目で惚れちまうぜ?」

 

実際の所、俺もうっかり惚れてしまいそうだったからな。

とりあえず俺は、サチに言った。

 

「サチ、お前はもっと自信を持った方がいい。自身を持ってればきっと良い方向へ向かっていける」

 

「ありがと。そうしてみるね」

 

「サチ、だったら早く寝て明日皆に言ってみようよ。きっとみんなも納得してくれるよ!!」

 

「そうだね。フフッ」

 

楽しげに笑うサチに「何が楽しいんだ?」と聞いてみた。するとサチは

 

「明日がこんなに楽しみだったことなんてなかったから。明日が楽しみなことが楽しいの」

 

と返ってきた。

先ほどからサチが別人のようにイキイキとしている。

布団に入ると右腕にユウキが抱き着いてきた。サチも左手を握っている。

 

「「お休み。ジン」」

 

「ああ、お休みユウキ、サチもな」

 

そういって俺達は意識を手放した。

こんなに楽しく眠れたのは久しぶりだった。俺はこのギルドに会えて本当によかった。




ユウキもユウキの声優さんも好き。
もちろんサチも、その声優さんも好き。
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