東方滅身録   作:低蓮

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 本小説は非常に未熟な執筆者の手によって作られています。ご意見、ご指摘、ご批判等々、躊躇なく、オブラートに包むこと無く書いていただければ幸いです。
 *ただし、暴言などは他の方に迷惑になるのでおやめ下さい。
 また、様々な独自解釈や偏見などが含まれているため、苦手な方はブラウザバックでお願いします。
 


 皆さん初めまして、今作品が処女作となります低蓮です。
 さてさて、この度は本作品に目を通してくださってありがとうございます。この話は、幻想郷とか全く知らなかった一人の人間のお話です。原作知識を有した転生ものではないのでご注意下さい。
 なお、この作品は作者の卑屈さ発想力が9割込みですので、え、なんでそうなるの?といった場面が多発するかもしれませんがご了承下さい。


*2015年7月19日 サブタイトル名を 妖と成る から すべての始まり に変更しました。
 2015年8月17日 誤字と本文を一部訂正


Chapter0 「プロローグ、妖と人」
すべての始まり


 嫌な……とても嫌な予感がする。

 

 

 里からそこそこ離れたところで、俺は他の男衆とともに狩りをしていた。

 里から離れるとあって、里で一番の腕利き陰陽師(妖怪退治を生業にしている職業)に無理を通して着いてきてもらっている。だがしかし---

 

 

「何なんだよ……この寒気は」

 

 

 それは、狩りの途中。突然俺の体中を、恐ろしいまでの虚脱感が襲った。以前にも一度この感覚を味わったことが有った俺は、その瞬間顔を真っ青にさせた。

 この感覚は、そう---

 

 

---なにか、己の大切なモノを失ってしまった時の、虫の知らせ。

 

 

 あれは今から4~5年ほど前のこと。

 当時、まだ里から離れたところまで行く時には、連れて行ってもらえない程度の腕前しかなかった俺。いつも親父達が狩りに出かけるのを見送ってから、お袋の手伝いをしつつ家でゴロゴロしていた。その日も、いつもと同じように親父達を見送ってから、部屋でゴロゴロしていたんだ。そんな時、ふと……本当に、何の前触れもなく身体から力が抜けていくような感覚に襲われた。その時、俺はその感覚が何であるかわからなかった。

 ただ、ひどく胸が騒いでいたのを覚えている。

 

 

 数日後、予定より大幅に遅れて親父は帰ってきた。いや、『親父だったもの』というべきか。狩りの途中で妖怪に襲われたとかで、陰陽師たちは全員食われ、また他にも幾人かが襲われ怪我を負っていた。しかし、その時の俺にはどうでもいいことだった。

 

 

「おや……じ……?」

 

 

 親父は……俺の父親は、骸とかそういう生易しいものではなかった。帰ってきたのは、誰ともしれぬ腕一本のみ。それが親父の腕だとかろうじて判断できたのは、出掛けに着ていた衣服が腕にこびりついていたからか。しかし、それさえも血で赤く染まり妖怪の襲撃がいかに激しい物だったのかを物語っていた。

 

 

「すまねぇ……お前の親父さんは陰陽師たちと共に妖怪の足止めに加わってくれたんだ。そして、転んで襲われそうになった俺のことを庇って……」

 

 

 見覚えのある男が何かを言っている。こいつは……そうだ、狩りに行く時いつも「妖怪なんざ怖くねぇ」だとか何とか言ってたやつだ。

 俺は朧気な意識の中で必死に考える。

 こいつは、今なんと言った? 「転んで襲われそうになった俺のことを庇って……」? つまり、親父はこんな奴のために死んだっていうのか?

 

 

「……けんなよ」

 

 

 ふと、言葉が口をついて出てくる。こんなこと言っても何も変わらないのに、こいつを責めたって---親父は帰ってこないのに。

 

 

「ふざけんなよ! お前言ってたよなぁ?! 妖怪なんか怖くないって! じゃあなんで! なんでお前は親父に庇ってもらったんだ! 怖くないってんなら妖怪に立ち向かえよ! なんで逃げようとしたんだよぉ!」

 

 

 溢れてくる---激情。

 それは奔流のように止めどなく心のうちから溢れ出てきて、いいたくないのに、言っても仕様がないのに。後から後から溢れてくる。言われた男は、ただ「すまねぇ……すまなかった……」と繰り返すばかり。その時、俺の中で何かが切れるような音を聞いた。

 

 

「お前さえ……お前さえ居なければ親父は---ッ!」

 

 

---死なずにすんだのに。そう続けようとした口を、しかしなんとか歯を食いしばって抑えこむ。それを言ってしまえば、心が壊れてしまいそうだったから。それを言ってしまえば---人として居られる自信が、なかったから。

 だから俺は、踵を返して家に転がり込んだ。胸の内の感情を押し殺すため、ひたすらに泣いた。畳を殴りつけ、物にあたり、時には自身さえ傷つけて。

 俺は、三日三晩家の中で泣きわめいていた。食事も取らず、身体がいくら疲弊しようとも厭わずに。そして、三日目の夜。空腹と疲労から動かなくなってしまった身体を横たえ、俺はじっと天井を見つめていた。どうしてあの男は生き、どうして親父は死んだのか。どうしてこの時期に妖怪に襲われたのか。どうして陰陽師たちは敗北したのか。どうして、どうして---

 

 

---どうして、人間は妖怪に食われなければいけないのか。

 

 

 俺はそっと目を瞑った。そうだ、どうして人間は妖怪に食われねばならないのか。俺達は奴らの餌ではない。この世界に生き、この世界で死んでいくれっきとした『人』という存在だ。こんな理不尽な世界、許してもいいのか。こんな理不尽を、受け入れていられるのか。答えは、否だ。許してはならない。受け入れてはならない。それをしてしまえば、俺達は考えることを辞めた獣のような存在になってしまう。ちがう、俺達は違うんだ。俺達は考えられる。俺達は他人のために命を張れる。理不尽に対抗出来るだけの、知恵を持っている。

 そうだ、俺達は果てしなく弱く、だからこそ強くなれるものを持っているんだ。だったらそれを磨けばいいじゃないか。怖いからと、恐ろしいからと逃げまわるのはもうやめにしよう。俺が、俺達が、妖怪を倒せるだけの力を持てば、もう決して大切なモノを失うこともなくなるだろう。そう、失いたくなければ強くなれ、全てを守りたいのなら、全てを壊せるだけの力を持てばいいのだ。

 男は誓う、もう大切なモノは失わないと。

 そのためにはまず---

 

 

「腹、減ったなぁ……」

 

 

 この空腹をどうにかしないといけないとおもいました、まる。

 

 

 

 

 

 

 あれから、数年。俺達は腕利きの陰陽師を遠方から招き、妖怪に対する戦い方、逃げ方を学んだ。皆必死になって学んだおかげか、あれから幾度か妖怪に襲われたが、一人もかけること無く今日まで過ごしてこれた。だから、油断があったのだろう。慢心もあったのだろう。里が襲われるはずがないと、確信にも似た先入観も手伝って。もしかしたら、俺は---

 

 

「冗談……だろ……」

 

 

 里のそばまで急ぎ足で帰ってきて、目の前に広がるのは地獄のような光景。家々は炎に包まれ、道には人の死体や体の一部が散乱している。なにより、その周りに群れる下級妖怪たちが一層の恐怖を引きずり出す。

 

 

「なん……で。なんで里が襲われて……。陰陽師たちは何をしてたんだ……ッ!」

 

 

「…落ち着け。この数だ、あいつらも対処しきれなかったんだろ。それに、下級妖怪た

ちがこれだけ統率された動きをするというのは、どこかに親玉がいるに違いない」

 

 

「---だったら何だ! どうしろっていうんだよ!」

 

 

「落ち着けと言っている。俺だって腸が煮えくり返りそうだ。だけどな、何人死んだかよりも、何人助けられるか、のほうが重要だろ?」

 

 

「……それは」

 

 

「いいか、怒りや憎しみは判断を鈍くする。怒りを燃やすな、押さえ込め。相手への憎しみを外に出すな、内側で押し止めろ。怒るなとは言わない、憎むなとも。だが、それを力に変えられなければ身を滅ぼすだけだ。覚えておけ」

 

 

「……あぁ。悪い、取り乱して」

 

 

 俺が落ち着くのを見届けると、陰陽師の男は満足気に笑みを浮かべると。里の中へとかけて行った。いつの間にか、周囲に人はいない。皆それぞれに散らばり、妖怪を退治しつつ生存者を探しているのだろう。

 

 

「……そうだ、お袋」

 

 

 俺もお袋のことが気になって、里の中へと駆け込んだ。もう、手遅れかもしれない。そんな考えがふとよぎるが、頭を振って振り払う。

 冗談じゃない、もう大切なモノは失いたくないと決めたじゃないか。何のために力をつけたのか、これではわからないじゃないか。間に合って欲しい、いや、間に合わせてみせる。

 俺が家の近くまでかけて行くと、幸いにもまだ火はここら辺までは回っていなかったようで、無事な我が家が目に入る。

 

 

「……ッ。ハァ……ハァ……。間に……あった。……お袋! いるなら返事をしてくれ!」

 

 

 俺は家の中にありったけの声で叫んだ。どうか居てほしいと。どうか無事であってくれと願いながら。

 願いが届いたのか、家の奥で物音がする。それはだんだんと此方に近づいてきており---

 

 

「……おふく……ろ……?」

 

 

---ちがう、この足音はお袋じゃない。そも、人間ですらないのだろう。その一歩一歩が大地を踏みしめるように低く、それでいて重く響いてくる。

 

 

「なん……」

 

 

 驚きの声を上げる暇もなかった。突如として壁をぶちぬいて何かが俺の方へ飛んできた。完全に感だけで避けたのだが、すごい勢いだったからか、掠っただけで右腕が持って行かれそうになる。

 

 

「……ッつ、何なんだよ!」

 

 

「あぁん? 何だ、生きてるじゃねぇか」

 

 

 返事を求めていないひとりごとに、しかし返事はかえってくる。慌ててそちらへ顔を向けると、赤ら顔の大柄な身体が目に飛び込んでくる。

 

 

「何だ……お前は……」

 

 

「知らねぇのか? まぁ、ここいらじゃあんまし暴れてなかったからな。俺は鬼だ。」

 

 

「鬼……?」

 

 

「そうそう、鬼。まぁ何だ。坊主、なかなかに強そうだし、俺と一回戦ってみないか?」

 

 

「ッハ、今はそれどころじゃ……」

 

 

 いやまて、さっき陰陽師の男が言ってたではないか。下級妖怪たちを統率する親玉がいるかもしれない、と。もしかすると……

 

 

「なぁ、この惨状はお前が引き起こした……のか?」

 

 

「あぁ、まそうなるわな。強いやつを選別しようと雑魚どもをけしかけてみたんだが、どうにもけしかけすぎたみたいだなぁ」

 

 

 さらりと、頭を掻きながら困ったように言う鬼に対して、俺は燃えるような視線を送った。

 

 

「てめぇ……それだけのために里を!」

 

 

「馬鹿言うな。それだけだと? お前たちが獣を狩って食うように、俺達の強者との闘争を望むのも性なんだ」

 

 

「……ッ! ふざけんなぁ!」

 

 

 吊るしてあった短槍を構えると、手でえぐり込むように回転をかけ鬼へ突き出す。鬼はとっさに掴んで止めようとしたようだが、俺はほくそ笑む。回転をかけた槍をつかむのは困難。その一撃は確実に相手の胸元へ届き---

 

 

「なぁ?!」

 

 

 俺は驚愕の声を上げた。先端は確かに鬼の胸元へ届いた。だが、鬼の皮膚を貫通することはかなわなかったようだ、ポッキリ折れてしまったのだ。

 

 

「冗談だろ……ッ!」

 

 

「はっはぁ! 俺の皮膚に物を当てられたのは褒めてやるが……こんな程度じゃ、俺は殺せねぇぞ!」

 

 

「っく!」

 

 

 笑いながら殴りつけてくる鬼の腕に、とっさに短槍を手放して体の前で腕をクロスさせ、同時に後ろへわずかに飛ぶ。これで衝撃は吸収されるはず、だったのだが。

 文字通り、殴り飛ばされた。何の捻りもない、愚直なまでに真っ直ぐなパンチ。しかしそれは、恐ろしいほどの力を持って俺を吹き飛ばした。ガードした両腕はねじ曲がり、もう使えそうにない。痛みに悶絶しながらあたりを見回した俺は、今一番見たくないものを見てしまった。

 

 

「おふく……ろ……」

 

 

 その位置は、先ほど鬼が投げた何かが着弾した場所。その場所に、肉の塊のようなものが蹲っていた。他人には、ただの肉の塊と見分けがつかなかったかもしれない。しかし、俺はお袋と何年も共に居たのだ。見間違えるはずもない。

 

 

 それは、変わり果てたお袋の姿。

 何故? どうして? そういう感情は一切浮かばなかった。悲しみ? 憎しみ? そういうのも浮かんでこない。

 これはそう---どうしようもないほどまでの、虚脱感、無力感。今まで頑張って頑張って、ようやく守れるようになったと思った矢先、全てを失ってしまった、孤独感。

 

 

「あぁ? なんだなんだ、生きてるのか。人間にしちゃ頑丈…な…」

 

 

 鬼が何かをいいながら近づいてくるが、途中で戸惑ったように言葉を切る。どうしたのだろうか、瀕死の俺を食いに来たんじゃないのか。

 ……食いに来た? 俺のことを?

 その瞬間、突如俺の意識は鮮明になる。またか、と。また、俺の前に理不尽が立ちふさがるのか、と。

---すべてを覆す力が欲しかった。理不尽なんてもの、運命なんてものを寄せ付けないような力が。なにより、妖怪どもから大切なものを守り抜けるだけの、力が。けれども、もうすでに俺には何も残っていない。守りたいものも、守るべきものも全て、理不尽という運命の前に失ってしまった。

 どうしてこうなった。なんで俺は生かされた。なぜ、運命は俺を殺さず、周りだけを奪っていくのか。

 

 

「……はは」

 

 

 俺の笑い声に、鬼はぎょっとした表情を浮かべる。どうしたというのか、瀕死の人間の一挙手一投足に驚くなんて、妖怪らしくもない。けれど、そんなことももうどうでもいい。俺は、ようやく悟った。

---俺が生かされた、その意味を。

 これも運命なのだろう、俺を散々苦しめてきた理不尽なのだろう。いいさ、だったらどこまでも乗ってやる。その運命に、その理不尽に。もう失うものなんてなにもないのだから。だから、なぁ?

 

 

「お前さ……やりたいんだろ? 第一回戦、いっとくか」

 

 

 妖怪を食う妖怪に。俺は、憎い相手を殺すために、自らを相手と同じ存在まで落とす。たとえ今後、人に忌み嫌われ、孤独で過ごすことになろうとも。得たものを失う孤独を味わうよりは、そんなもの持たないほうが楽だから。いつの間にか治っていた両手で大地を掴みながらゆっくりと立ち上がった俺は、元人間は。

 

 

「いただきます」

 

 

 獰猛な笑みを浮かべながら、鬼へと襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 荒れた、元々人が住んでいたであろうその場所に、一人の少女が佇んでいる。服はボロボロ、それも男用のものを着ているようで、丈があっていない。髪は僅かにピンクがかった赤。その目に光はなく、ただ濁った瞳が呆然と地面を見据えている。その視線の先にあるのは、肉の塊。恐らく、生前はちゃんとした人間の形だったのであろうそれは、しかし今は面影すら無く、腕は関節など関係なく様々な方向へねじ曲がり、足は強い衝撃を受けたのか、胴と一体化している。ふいに、少女の目から一滴の水滴が滴り落ちる。その瞬間だけ、少女の瞳に光が戻り、淡く透き通るような青色顔をのぞかせる。

 少女は肉の塊の前に跪くと、泣きながら何事かつぶやいた。そのまま涙を拭きつつ立ち上がり、どこぞへと立ち去っていった。

 数年後、少女は遥か遠方の方で名を轟かせることになる。

 

 

---妖喰い妖怪。綺麗な髪と、透き通るような瞳。華奢な見た目に反して、恐ろしいほどの力を有する妖怪。彼女は、自らを「名もなき者」と呼ぶそうだ。ただ、彼女を見たものは口をそろえてこういう。「あんなに悲しげな妖怪は、見たことがない」と。

 

 

 

 忘れ去られた里の跡地。そこに一つの墓が立っていた。墓標も何もない、誰が眠っているのかもわからない奇妙な墓。しかし、分かる人には分かるのだろう。なぜなら、その墓には鬼の角が一本、一緒に埋まっているのだから。




 いやぁ、ここまで読んでくださった方(いるかどうかわかりませんが)、有り難う御座ました! いかがでしたでしょうか? 誤字脱字は気をつけていますが、もしあったら感想欄でご指摘下さい。その他の感想もお待ちしております!
 改めて見直すと、自分の文才の無さに涙が出てきそうです。これでも一応本とか読んでるんですよ?ラノベとか、歴史書とか。いやぁ、悲しいなぁ(血涙)
 さて、更新は不定期ですが、月に4本は投稿していこうと思ってます。暇なんで。ハイ
 音沙汰もなく1ヶ月以上更新が停止していましたら、著者は幻想郷に旅立ったのだと遠い目で思い出して下さい。
 感想にはなるべく返信したいとおもいますが、如何せん自分でもいまいちどうなるのかわからないので、この先の展開とかNGだよ! 絶対だからね!
 まぁ、こんなかんじで更新していきますので、次話(があったら)もよろしくお願いします。
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