東方滅身録   作:低蓮

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うぅ、世界が回る……目がかすむ……意識が飛ぶ……


はい、完全に寝不足ですどうもありがとうございました(


最近まともに寝た日はないんじゃないだろうか、というくらい睡眠時間が削られてしまっている今日このごろです。

吸血鬼異変もいよいよ終盤、と言うかさっさと終わらせろよ糞作者という言葉が今にも聞こえてきそうです(
今回、主人公の中で大きく何かが変わります。それにしたがって何や雰囲気が変わってしまうかもしれませんが……暴走してしまった結果ですのでお許し下さい(

気になる続きは、WEBで(本編で)


胎動

 パラパラと壁の破片が崩れる中、レミリアは自身の手を見つめながら考えに耽っていた。先ほど蹴られた箇所がズキズキと痛むが、それは無視している。高々骨が数本折れた程度(・・・・・・・・・・・)、そんな些細なかすり傷なら、気にするほどのことでもない。そのうち、勝手に治っているだろう、いや、すでに治っているのだから(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 元々レミリアに限らず、吸血鬼という種族は総じて身体能力が高い。腕が取れても体がちぎれても、時間が経てば再生し元に戻る。特に、満月の夜は格段にパワーアップし、首から下が全て消しとぼうが、ほぼ瞬時に回復してしまうのだ。だから、先ほどの攻撃も避けようと思えば避けられたし、寧ろカウンターを入れることさえ出来たくらいだ。だが、レミリアは避けることが出来なかった。

 

 

「糸が……可能性が、視えなかった……?」

 

 ポツリ、と呟く。

 

 

 彼女、レミリアの持つ能力は「運命を操る程度の能力」。レミリアから見れば、運命というものは複雑に絡み合った糸の様なもの。一つの事象から発生する複数の可能性のうち、能力によって好きな可能性を呼び寄せられる(・・・・・・・・・・・・・・)。無論可能性は可能性、たとえ「レミリアが勝つ」という可能性を引き寄せたとしても、それでレミリアがかならず勝つという保証はどこにもない。保証はないのだが、「レミリアが勝つ」という可能性が限りなく高まるために、よほどのことがない限りは負けることはない。

 そして先ほどの戦闘において、レミリアは「蹴りが逸れる可能性」を引き寄せようとしていた。避けるまでもない、蹴りが勝手に外れる可能性を。

 

 

「能力で邪魔されたのか、或いは……」

 

 

 その糸が見えなかった。可能性が存在しなかったなんてことはありえない、だからこれは能力で邪魔されたせいなんだろう。そう結論付けようとしてーーーレミリアは別の可能性を思いついた。それは、幻想郷(ここ)に来ようと思った最大の理由。フランドール・スカーレット(狂った妹)の運命が変わる、見えない可能性(・・・・・・・)。もしそうなのだとしたら、何が何でもあの妖怪と妹を巡りあわせなければ。そう結論を出し、視線を前に向けたレミリアはーーー

 

 

「ーーーどこを見ているんだ、戦いの最中に」

 

 

 再び飛んできた蹴りに、レミリアの体は更に深く壁に縫い付けられた。否、壁を突き破り館の中まで飛ばされるほどの威力。確実に内蔵が幾つか壊れた感触を確かめながら、蹴った張本人である妖喰い妖怪はレミリアを追って、館の内部へと侵入する。中の作りは中々豪華で、所々に置かれている調度品は気品の高さを伺わせるが、今の妖喰い妖怪にとってそれはどうでもいいことだった。

 

 

「確かに、ダメージは通ったと思ったんだがな」

 

 

「ああ、通ったさ。腹にじんわり重いのがね」

 

 

「なるほど、この程度ならすぐに回復すると?」

 

 

「そうさ、吸血鬼の回復力を舐めてもらっちゃ困る……痛いのには代わりはないから、あまり受けたいとは思わないがな」

 

 

 ニヤリと笑うレミリアに対して、妖喰い妖怪は僅かに思案する素振りを見せた。そして直後、先ほどの蹴りより遥かに速いスピードで腕が突き出される。レミリアの動体視力はそれをなんとか捉え、ぎりぎりのところで見を躱した。頬を掠って行った腕に内心冷や汗を書きながら、しかしその表情には余裕の笑みを張り付かせて妖喰い妖怪を見やる。その瞬間、自身に迫る三度目の蹴りの存在に気が付き、慌ててバックステップで間合いをとった。

 

 

「何だ、そっちからは攻撃してこないのか?」

 

 

「生憎、私の動体視力だと、お前の攻撃を避けるのが精一杯のようなのでな」

 

 

 だから、と続けながらレミリアは妖喰い妖怪都の間合いをどんどん広げていく。

 

 

「なるべく、距離を保って戦わせてもらうぞ」

 

 

「一端の主人であるお前が、そんな姑息な勝負をするのか?」

 

 

「姑息? 真剣勝負において、姑息も何もないだろう。私には目的がある、それを達成するためならどんな手を使うのも厭わんさ」

 

 

 徐々に間合いを広げつつそう言うと、レミリアは弾幕を巻きながら後方へと加速した。妖喰い妖怪はそれを逃すまいと追いかけるが、レミリアの放つ弾幕に邪魔されて思うように進めない。レミリアと妖喰い妖怪は暫くの間、館中を破壊しながら奇妙な間合いを保ったまま移動し続けた。あるところまで来た時、レミリアはそれまでずっと放っていた弾幕をやめ、同時に間合いをとるのもやめた。追っていた妖喰い妖怪は訝しげに歩調を緩めると、レミリアと一定の間隔を置いて対峙する。

 

 

「なんだ、もう鬼ごっこはおしまいか?」

 

 

「鬼ごっこか、面白いことを言うな。東方では、鬼を追いかける鬼ごっこがあるのか?」

 

 

「さぁな、だが無駄話はここまでだ。いつまでもこんなことを続けていても埒が明かない」

 

 

 最早逃さないと息巻く妖喰い妖怪に、しかしレミリアは余裕の表情を崩さなかった。その笑みは、とても ”狩られる側 ”には見えずーーーいや、それどころかその何かを確信しているかのような笑みは、自身が ”狩る側 ”だということを言外に告げているように思えた。その表情に妖喰い妖怪は違和感を覚えたが、些細なものだと切って捨てた。レミリアがどのような能力を使っているのかは未だに理解できていないが、使ってこないところを見ると妖喰い妖怪(じぶん)には効果がないらしい。だから、レミリア(あいて)にこの状況を覆せる策はないと。結果から言って、それは大きな過ちだった。

 

 

「そろそろ、覚悟をーーー」

 

 

 

 

 

「みぃぃぃいつぅけたぁ♪」

 

 

 

 

 

「ーーーッ?!」

 

 

 レミリアに対して戦闘態勢をとったまさにその時、妖喰い妖怪に向けて凄まじいまでの威圧が放たれた。響く声は怨嗟のように割れていて、しかし込められたものは純粋さそのもの。放たれた威圧感は、狂気(よろこび)にして喜び(きょうき)。全ての存在に均等に、別け隔てなく ”破壊 ”を振りまく狂乱の箱入り娘(フランドール・スカーレット)は、視界に入った妖喰い妖怪(おもちゃ)にも平等に破壊をもたらす。

 

 

「今回のおもちゃはぁ……どれくらい、持つかなぁ」

 

 

 幼い顔を愉悦に歪ませながら、その瞳を苦痛に歪ませながら。つきだした右手を、妖喰い妖怪に向けて伸ばされた右手を。まるで助けを求めるかのようにつきだした右手に、確かに ”ナニカ ”を掴みながら、少女はそれをーーー躊躇いなく、握りつぶした。

 

 

「ドカーン♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一定の間隔を保って逃げ続けるレミリアを追いかけながら、俺は内心で悪態をついていた。先の先代巫女との戦闘の様子から、レミリアはかなりの近接攻撃の技術を持っているように思えたが、それを全く使おうとしてこないばかりか近づくことさえ許さない。弾幕が俺の進路を妨害するように飛んで来るので、思うように進めないのもイライラした。最初の方は能力で弾幕を消しながら突進しようかとも考えていたのだが、実行しかけてみてすぐに不可能だということを悟った。俺の「すべてを無に帰す程度の能力」は連続使用には向いていないらしい。弾幕を幾つか消し去ったところで異変が起き始め、弾幕を完全に消すことができなくなった。簡単にいえば、能力の効きが悪くなった(・・・・・・・・・・・)。スタミナが切れるかのように能力が息切れを起こしたのを認識し、俺は改めて自身の能力に対する認識の甘さを思い知った。なので現状、能力を使わずに弾幕を回避しながらレミリアを追っているのだが……

 

 

「(クソ、どこまで逃げる気だよ……ッ!)」

 

 

 追っても追っても、レミリアは止まる気配がない。俺とは一定の間隔を維持して進んでいるのを見ると、本気で逃げようと考えているわけでもなさそうだった。まるでどこかに誘導するかのように進み続けるレミリア、けれども俺は罠かもしれないと分かっても追うのを止める気はなかった。ひとつ下の地下に来るに至って、漸くレミリアが弾幕を止め、逃げるのも中止した。俺は油断なくレミリアから距離をおきながら、探るような目つきでレミリアを見やる。

 

 

「なんだ、もう鬼ごっこはおしまいか?」

 

 

「鬼ごっこか、面白いことを言うな。東方では、鬼を追いかける鬼ごっこがあるのか?」

 

 

「さぁな、だが無駄話はここまでだ。いつまでもこんなことを続けていても埒が明かない」

 

 

 レミリアがここで止まったのも何かの罠かもしれない。罠かも知れないが、俺の目標は一つ、紅魔館の当主(レミリア)を討つことだけだ。どんな罠を貼ってこようが、それらをすべて消し去りながら必ず倒す、そう考えて構えを取ったのだが、レミリアは余裕の表情のまま構えをとろうとしない。そのことに対して違和感が湧いてきたがーーー今は切り捨てた。やはり何か策があるのだろうが、あったとしてそれごと全て消し去るのみ。何があっても対応できるように警戒を深めながら、レミリアに対して宣戦布告をしようとし。

 

 

「そろそろ、覚悟をーーー」

 

 

 

 

 

「みぃぃぃいつぅけたぁ♪」

 

 

 

 

 

「ーーーッ?!」

 

 途方もない悪寒に身をすくませた(・・・・・・・・・・・・・・・)。人としても妖怪としても、その深いところにある本能をふるわすような、そんな悪寒。力の差や技量なんて関係なく、全てを押し潰さんとする圧倒的なまでの“狂気”と“破壊”。恐怖は消した、いや、己の行動の不利益となるものは全て消したはずだった。なら、何故俺は、俺の身はこんなにも竦んでしまっているのだろうか。わからない---消したりなかったのだろうか? わからない---何故こんなにも体が震え。

 

 

 わかってしまう---一瞬の後、死んでいたかもしれないことを。

 

 

 目の前の少女が何かをつぶやき、右手を握りこむ。たったそれだけの動作で、俺の本能とも言える部分が最大限の警笛を鳴らした。“このままでは死ぬ”と。俺は咄嗟に能力を発動し、己の存在を限りなく薄くした。下手をすれば自分が消えてしまいかねない程、薄く薄く。自身に襲いかかる圧倒的破壊から逃れようと。しかし

 

 

「あぐぅッ……!」

 

 

 己に向けられた右手が完全に拳を形成したところで、俺の左腕がはじけ飛んだ。左腕だけならば、時間が経てば元通りになる。そう、だから問題ないはずだった(・・・・・)。しかし、俺は左腕がはじけ飛んだ瞬間に苦悶の声を漏らした。起こるはずのない痛みが、はじけ飛んだ左腕の部位から這い上がってきたのだ。ありえない、理解できない。何故、いや、そんなことよりもあの少女だ。アレは危険過ぎる。ごちゃごちゃした思考の中で、それでもこれ以上の混乱は避けようと目の前の少女(てき)へと目を向ける。しかし、そこには心底不思議そうな顔で拳を突き出しているものしかいなかった。

 

 

「あれ……? なんで、壊れてないの(・・・・・・)?」

 

 

「……っく!」

 

 

 不思議そうに、心から不思議そうに(・・・・・・・・・)小首を傾げる目の前のソレ。まるで、自分が手を握りしめれば何もかもが壊れるのが当たり前とでも言いたげな……いや、実際そうだったのだろう。かくいう俺も、能力の発動が間に合っていなかったらどうなっていたかわからない。俺がどうすることも出来ない中、ソレが自身の手に落としていた視線を俺に向けてきた。その瞳に宿っているのは、純粋たる狂気。どこまでも混じりけのない、どこまでも濁った色。視線が合う。ソレが嗤う、嘲笑う、笑う……どこまでも耳障りな音で、どこまでも狂った声音で、どこまでも悲しげな調子で。

 

 

「あは、あははははハハハハハ! 壊れてない! コワレテナイ! コワレナイ? だったら、壊さナキャ!」

 

 

 そこから、連続して振るわれる“破壊”という名の暴力。少女の手が握りこまれるたびに、俺の身体の何処かが弾ける。そして、消したはずの痛みが俺の意識を刈り取ろうと猛威をふるう。けれども、ここで意識を手放してはいけない。ここで手放せば、俺は確実に死んでしまうだろう。運命に飲み込まれていただろう。そして何より---

 

 

「あは、あははは!」

 

 

 破壊を振りまく一人の少女は、どうしようもなく此方側(・・・)だったのだ。そうでなければ、説明がつかない。こんなにも嗤って、こんなにも残虐で、こんなにも破壊を振りまいて……それでも、少女の瞳からは、涙が滴っているのだから。嗤って、壊して、泣いて……ただ、運命に流されるがままに(・・・・・・・・・・・)

 

 

「---ッ!」

 

 

 嗚呼、また少女の手が握りこまれた。今度弾けたのはどこだ? 腕か? 脚か? もう体中がボロボロで、無事な箇所なんて一ミリもない。次、ソレの---彼女の(・・・)手が握りこまれたら、生死すら危うくなってしまう。

 ふと、何で俺はこんなことをしているんだろうという考えが浮かんできた。嬲られて、弄ばれて……それでも、生を諦めない(・・・・・・)のは何故だろうと。そして思い出す。かつて身に降り掛かった出来事を、遠い過去に運命に弄ばれ、運命に抗ってやろうと必死になったことを。

 

 

 ---いや、違う。そうじゃない、そんなんじゃなかった。

 

 

 俺は、俺の考えを否定する。間違ってはいない、運命に抗おうとしたこと自体は(・・・)。なら、それは誰のため? 運命によって大切なモノを失った、哀れな自分のためか? 違かっただろう(・・・・・・・)? 俺は納得できた。確かに思うところはたくさんあったし、妖怪を憎んでいた時期もあった。けど、俺はあの時たしかに生き残った。他の皆が死んだ中、恐らく俺だけが生きて帰ってこれた。生きて妖怪と成った俺と、生きれず屍を晒したほかの人。果たして(・・・・)どちらの運命が理不尽だろうか(・・・・・・・・・・・・・・)

 そう、あの時。第二の家族(・・・・・)を失ったあの時、誓ったじゃないか---

 

 

「あ……あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

「え……?」

 

 

 ---他人が抱える理不尽な運命に、一緒に抗おうって!

 

 

 直前まで死に体だった俺が突如怒号を発したので、少女が驚いて握りこむ姿勢のまま一瞬だけ硬直した。ほんの一瞬、わずかコンマ以下の出来事だったのかもしれない。だけど、せっかく貰った猶予の時間だ。無駄になんて決してしない。俺は少女と俺の間の空間(・・・・・・・・・)を無に還し、一瞬で距離を詰めた。そのことに、こんどこそ驚愕した表情を見せる少女。嗚呼、無理な能力の行使のせいで、またどっと体の怠さがました。もしかしたら、俺はもうこのまま助からないのかもしれない。直前に助けるだなんだと言っておいて、実に情けない。だが、それでも。目の前の、この少女だけは放っておけない。純粋に、ただ純粋に狂気だけに染まっているなら、まだなんとかなるかもしれない。身体の動く部分を使って、必死に少女手を伸ばす。左腕はもう無いし、右腕も先の戦闘で使い物にならなくなっている。けれど、少女は怯えたように身をすくませた。

 

 

 ---何だ、そういうことか。

 

 

 俺は内心小さく笑うと、使えなくなった右腕を少女に突き出す。それに対して、少女は小さく息を吸って目を瞑った。まるで、来るべき何かに耐えるような(・・・・・・・・・・・・・)格好。けれど、次の俺の行動は彼女思惑を外すことになるだろう。

 

 

「……な、に……?」

 

 

 ぽすっ、という軽い音がし、少女の小さな身体が俺の右腕に絡め取られる。緊張のせいで身体がガチガチになっていたのか、何の抵抗もなく俺の胸に飛び込んできた。そして、そこでわけがわからないというふうに目をパチクリしている。そんな少女に、俺は安心するようにと笑いかけようとしたが、できなかった。表情だけは都合よく消えたままのようだ。俺は笑いかけるのを諦めると、一層強く力を入れて少女を抱きしめた。

 

 

 ---そう、簡単なことなんだ。少女の純粋な狂気と、先ほどの反応を見る限り。彼女は、他人(ひと)生き物(ひと)として触れ合ったことがないのだろう。過去に暴力か何か、不当な扱いを受けたがゆえの怯え、他人と触れ合ったことがないからこその純粋な“狂気”。できれば……もし死ななければこの娘を助けてあげたい。自己満足にすぎるかもしれないが、あまりにも不憫すぎるから。だから---

 

 

「良いか、お前がどういう扱いを受けてきたかはしらないが、一つだけお前に言いたいことがある」

 

 

 ---どうか、この言葉が届きますように。

 

 

「世界はここだけじゃない。此処の外にも、沢山広がってる」

 

 

 ---どうか、俺の意識が持っているうちに。

 

 

「そこは、お前が体験したこともないような面白いことがゴロゴロ転がってる」

 

 

 ---どうか、この幼気な少女に。

 

 

「壊すだけが楽しみじゃない……お前はもっと、外を……知る……べ……」

 

 

 ---嗚呼、伝わっただろうか。伝わっただろう。伝わると、良いな。

 混濁していく意識の中で、俺はそう祈り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前で倒れ伏している妖怪を見ながら、少女は考える。

 ---今、この玩具はなんと言っていた? 壊すだけが全てじゃない? だけど、壊せば全てそこで終わるじゃないか。何も発展しない、自分が痛みを味わわない。何故、それがいけないことだというのか。

 

 

「……あぅ」

 

 

 唐突に、少女の頭に一つの光景がよぎる。過去に父から受けていた暴力(・・・・・・・・・・)、思い出したくもないそんな嫌な毎日だったが、そんな中でも少女にとって嬉しいことがあった。姉、レミリア・スカーレットの存在である。父親が(フラン)を邪険に扱うのこそ止めることは出来なかったが、合間を縫い、父親の目を盗んで何度も会いに来ていた姉。バレたら自分と同じ、いや、更に酷い運命が待ち構えているだろうに、姉は笑って「私には運命が見えるから」とごまかす。何度も、何度も何度も。妹が壊れないように、父親が行き過ぎないように、家族を守らんがために……結局、姉の願いは叶わなかった。妹は壊れ、父親は死に、だだっ広い屋敷と虚無だけが残された。

 

 

「……ぅあぁ」

 

 

 少女は知った。いや、今まで知ろうとしてこなかった。怖かったから、姉が、自分のせいだと責めてくるんじゃないかと思ったから。だから、狂気に身を委ねた。苦しみたくないから、もう考えたくなかったから。他人と触れ合う期間がなく、見た目だけでなく精神まで幼いその吸血鬼は、漸く過酷な現実を受け入れる。切っ掛けは、目の前の妖怪の言葉だったかもしれない。もしくは、それ以前に何かあったのかもしれない。けれど、一番の決め手は。

 

 

「お帰り、というべきなのかしらね? ……フラン」

 

 

 目の前で笑っている、大好きだった……いや、今も大好きな姉の姿を見たからなのだろう。少女は涙する。溜め込んでいたものをすべて吐き出すように、今までの孤独を解消するように。そして、迷惑をかけてしまった姉に懇願するように。

 

 

「お姉……さま……う、ぅあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

 

「良いのよフラン、泣いて、全部吐き出して……そして、忘れなさい。今までのは、悪夢だったのだから……」

 

 

 館の中に一つの鳴き声が響き渡る。溜まっていたものを吐き出すように、長く、激しく、悲しく、喜々として。己の過去を省みて、精算するために少女は泣き叫ぶ。やがて静まり返った時には、寄り添い合って眠る二人の少女の姿がそこにはあった。片方は目を赤く腫らしながらも、憑物が取れたかのようなすっきりとした寝顔で。片方はあどけない寝顔を晒しながら、此方もどこか満足気に。こうして二人の吸血鬼は肩を寄せあい、ともに歩き出す道をとれたのであった。




何やもうよくわからないという人挙手。



ちょっと調子に乗って書いているうちによくわからないものに仕上がってしまったような……取り敢えず、フランちゃんが暗黒面に落ちなくてよかった(

あ、因みに主人公は瀕死で自然に転がってますが、そのうち助けられて一命をとりとめますので。まだ終わりじゃないです(

※嘘つきました、ごめんなさい。
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