初霜と潮と一緒に食器と野外炊具一号を片付け終わった吹村は二人と話していた。
「俺は明々後日にも横須賀に帰るつもりだから明日には準備を開始する。お前たちも準備しとけよ。」
「あの・・・私たちは私物なんてないので・・・。」
「ん。そうか、じゃあそのことだけ覚えておいてくれ。」
彼が立ち上がって野外炊具一号を74式特大型トラックに接続しようとしたときに陸軍兵士と神通、綾波が来た。
「提督大変です!」
「どうした神通、そこの士長も。」
「自分は上等兵なんですが・・・それより提督殿!現在門前に団体がいるので注意してください!」
団体と聞いて「?」を一瞬頭に浮かべる吹村だがすぐに理解したのか指示を出した。
「神通、兵長。指示を出す。神通は俺とトラックに乗ってついてこい。上等兵は上の人間と一緒に、この子たちを綾波と安全な場所に連れて行ってくれ。」
「「「了解!」」」
吹村は指示を出した直後トラックに飛び乗り神通が乗ったことを確認するとトラックを動かした。
『艦娘をー!こき使い!人間と扱わない!軍隊はー!』
「「「「「いらない!撤退しろー!」」」」
『艦娘をー!救えー!』
「「「「「救え!」」」」
民衆が門前で密集している中、門前に到着した吹村はトラックを止めて降りる。
そして刈谷中尉に言った。
「刈谷中尉!現状を報告しろ!」
「はっ!現在『艦娘解放団体』が門前に集結してデモを行っています!」
「この64式と89式を持った部隊は!?」
「警備のために・・・。」
「馬鹿野郎!余計刺激するだけだ!二名だけ残してあとは武装解除!盾でも持たせろ!」
「了解!」
大きい声で指示を出し終わった吹村は装備を確認した。
「提督!何をなさっているのですか!?」
「見ての通りだ、いざというときに備える。生憎暴徒鎮圧用装備を持ってきていないんでな。」
彼は民衆に見えないようにトラックの陰で神通に説明しながら防弾チョッキ2型と88式鉄棒を着用する。
「ならばこれも。」
神通が持ち出したのは89式だった。
「神通、鎮守府規定では勝手に持つなとあるし、自衛隊法では・・・。」
「ここは横須賀ではありませんよ?提督。それに身を守るために持っていてほしいのです。」
神通の真っすぐな目を見た吹村は素直に89式を手に取った。
「分かったよ。秘書艦の吹雪に現状を報告してくれ。」
「了解です。」
神通は敬礼をして去っていった。
吹村も事態を何とかするために89式を肩から掛けて走り出す。
「報告!小銃要員の装備交換完了しました!」
「よし!全員門前に集合させろ!」
「了解しました!」
刈谷中尉は部下の元へ走った。
「(ったく、どうしてこうも問題がくっついてくるんだ!)」
吹村は現状を知るために門前に走る。
門前では団体の長と思しき男が拡声器をもっていた。
『軍隊!いらない!』
「「「「軍隊!いらない!」」」」」
『軍隊!撤退!』
「「「「軍隊!撤退!」」」」
『平和を!守れ!』
「「「「平和を!守れ!」」」
吹村は驚いた
それは拡声器を持った男が10代後半らしき容貌で団体の半数近くが学生らしきものだということだ。
「(あっちゃー学生か・・・こりゃ下手に手を出せないぞ。)」
吹村がそう考えながら鉄帽をクイっと上げていると団体の一人が叫んだ。
「おい!軍人がいるぞ!」
その声が響くと一気に矛先が吹村に向かった。
すると拡声器男が言い出した。
「私たちは軍隊などいらない!撤退しろ!」
吹村は話に応じることにした。
「撤退はできません。」
「何故ですか?腑に落ちる説明を!」
吹村は静かに言い始めた。
「・・・・・貴方は何歳ですか?」
「18ですが?」
随分偉そうに言う男に吹村は言う
「・・・・・私は陸上自衛隊なのです。なのでここの撤退権は有していません。さらに言えば撤退は内閣総理大臣か海軍元帥が指示し、大本営に通達して初めて行使されます。なので『日本国海軍』敷地内で『日本国陸上自衛隊』の私が出来るのは特例で認められている階級が下の物への指揮のみです。」
「陸上自衛隊?そんなものは10年前に無くなりましたよ?嘘をついてい逃げようなんて・・・。」
「逃げようなどしていない!!」
吹村の怒号に男はたじろぐ。
「失礼。自分は間違い無く『陸上自衛隊』の自衛官です。ところで・・・貴方たちは今、この世界で海に出ましたか?深海棲艦を知っていますか?」
「貴方達軍隊のせいで行けませんが?授業で知っていますが?」
「では教えてあげましょう、深海棲艦は食べるんですよ。」
「何を?」
「・・・・・人間を。」
吹村の言葉に全員の血の気が引く。
「な、なにを言って。」
「公表はされていませんが正式な記録に残っています。『旧海上自衛隊』の資料では出撃した護衛艦「あけぼの」の航海科、補給科合わせて20名が死傷しています。その内殉職者9名は頭部や身体を食いちぎられていたそうです。負傷者も身体の一部を欠損するという状態です。ならこの状態で軍を撤退した場合どうなるか?高校生のあなたなら分かりますよね?」
「・・・・。」
「無言は分からないんですよね?では教えましょう。陸に上がって人々を襲いますよ?当然軍は一帯を封鎖するので助けはきません。恐らく京都府は壊滅して辺りは血と内臓の海と化すでしょうね。」
全員が金縛りにあったように動きを止めた。
「どうします?」
「こ、このことを大本営や国会に聞きます!どうせあなたの嘘でしょう!」
「ご勝手に、私は『陸上自衛隊』なので管轄外ですし。」
「あ、貴方を訴えます!」
そう言い残して男と団体は引き上げた。
「全く、なんでこんな事を公表できないんだか・・・。」
吹村が溜息をついていると刈谷中尉がやって来た。
「・・・・大丈夫でしょうか?」
「大丈夫、こういうのには慣れているから・・・。」
「そうですか・・・では自分は指示を下すので。」
「あぁ・・・何かあったら報告してくれ。」
吹村は鉄帽を脱いでトラックに乗り、動かした。
その夜ニュースでは今回の団体騒動が報じられていた。
『団体長は「あの男性の対応は不適切だった。嘘で脅し我々を強制撤退させた。権利の侵害だ。」と話しており陸軍兵士を起訴する考えを示しました。官房長官は・・・。』
「なんなんだよ!司令官は何もしてねえじゃないか!」
「そうです!司令官は何もしていません!」
「・・・・・・少し教えてあげた方がいいのでは?
「落ち着けよお前ら。後、神通は黒いオーラが出てる。」
休憩室でニュースを見ている吹村は怒る艦娘達を宥める。
「(とは言ったもののヤバいかもな。)」
『~~~~♪』
そんなことを考えていると彼のスマホがアニメ版艦これのED曲である「吹雪」をならし始める。
「誰だ?・・・うげっ鏡子の奴かよ・・・もしもし?」
『はぁ~いマイハニー♪』
「よし、狙撃するから待ってろ。」
もはやお約束となった返しをする吹村。
電話口ではいつもの光景だ。
『ははは、冗談。今日はかなり荒れたねぇ~。』
「昔っからあぁいう何も知らないくせして知った口で言う奴は嫌いなんだ。」
『まぁ、私の方からも手を回しとくから安心しなよ。』
「はいはい、ご苦労なこって。」
『じゃあ今度お礼にディナーでも・・・。』
「・・・・・空いている日を教えてくれれば空けとくぞ。」
『無理だよね~・・・って、嘘!?』
「叫ぶなよ・・・本当だ。たまにはご褒美位良いと思った。」
『いよっし!じゃあ、さっさとこの案は終わらせるよ!それじゃ!』
鏡子はブツッと電話を切った。
「忙しいやつだな・・・。」
吹村はリモコンをとり望月たちが見ていたアニメを「報○ス○ーション」に変えた。
そして第一次リモコン争奪大戦が開戦された。
もし駄目な内容なら早急に削除します。