インフィニット・ストラトス【白と黒の雨模様】   作:レーゲン

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プロローグ

俺こと日下部碧は、ドイツ政府に用意された部屋でじいちゃんと一緒にIS学園についての説明を受けている。

事の発端は俺がIS展示会にてISを起動させてしまった事にあるのだが…

 

 

「どうしてこうなった。」

「これも人生じゃろうて。」

「そう簡単に割り切れないっての…」

「まぁ、この待遇を見るにワシは楽隠居が出来そうじゃがの。後は曾孫の顔が見れりゃそれで良いわい。」

「じいちゃん、頭の中涌いてるだろ。」

 

 

IS学園の説明を聞きながら、隣にいるじいちゃんと他愛ない話で暇を潰す。

頭の中が涌いているじいさんに見えるが、かなり昔にドイツに移り住んで以来、様々な事でドイツへ貢献してきたらしい。今でも政府や軍の上層部は、このじいさん…日下部柳に頭が上がらないみたいだ。そんなじいちゃんの職業は酒屋だ。俺も手伝わされている。

俺からしたら、単なる頭の涌いたじいさんなんだが…まぁ、親が死んでから引き取って育ててくれたから、感謝もしてるし尊敬もしてるけど。

そうこうしているうちに、軍服を着た男の人が扉を開けて入ってきた。

 

 

「ルカスさん!?何でここに!?」

「お前は俺にとって息子も同然だからな。何歳の頃から面倒見てると思ってるんだ。」

 

 

現れたのはルカス・ヴェーバー中将。ドイツ軍の軍人だ。俺が小さい頃から良く面倒を見てくれて、ドイツ軍の組手に誘ってくれたものだ。下手をすればドイツ軍に入っていたかもしれない。

俺がルカスさんの登場に驚いていると、なんとも自然にじいちゃんが手を上げて話始めた。

 

 

「おう、ルカス坊。」

「Hr.柳。貴方まで此処にいらっしゃるとは…。この度の事、祝福して良いのやら…」

「ワシの自慢の孫が女子(おなご)しか乗れん物を動かしたんじゃ。喜んでやってくれい。」

「しかし…」

「命を奪う道具になるって言いたいんだろ、ルカスさん。」

 

 

俺の言葉に黙って頷くルカスさんに、じいちゃんはカッカッカッと笑っていた。

 

 

「…お前さんの息子じゃろう?信じてやらんでどうする。それに心配せずとも、碧は十分理解しておるよ。」

「その先も含めて、ですか?」

「どのみち、行かなかったら研究所に連れていかれて解剖されるかモルモットにされるかホルマリン漬けにされるかだろ?」

 

 

政府の人間の説明から得た情報を、なるべく口を悪くして言う。

言い返そうと口を開いた政府の人間は、言葉も出せずに止まっている。じいちゃんも俺と同じ意見らしく、とんでもないプレッシャーを放っていた。

 

 

「…この先俺は、従軍するかISのデータを取る国のモルモットになるかしかない。でも、今の段階での話だ。IS学園に通っている間は、その辺りはまだ安心できるだろ?」

「…キチンと考えてるんだな。」

「政府や軍部の人間よりはマシな思考をしておるよ。全く、ワシも脱帽じゃわい。」

「じいちゃん、脱ぐ帽子どころか抜ける毛もな…あいだっ!」

 

 

じいちゃんに軽く茶々を入れると、拳骨で思いきりぶん殴られた。スッゴい痛い!防弾チョッキ着てて銃弾食らった時以上に痛い!

俺が頭を抱えて悶えていると、ルカスさんは大声で笑い出した。それに吊られて、俺もじいちゃんも、政府の人間も笑い出す。

 

 

「…すいませんでした、碧さん。ですが、我々ドイツ政府としても君をモルモットやホルマリン漬けにだけはしたくないんです。色々と辛いでしょうが、頑張ってください。」

「はい。此方こそ…迷惑のかかるじいちゃんをお願いします。」

「Hr.柳。我々ドイツ政府とドイツ軍の誇りにかけて、貴方とお孫さんは守ります。」

「うむ、まあ、お主らに守ってもらうまでもないかも知れんがのう。」

 

 

違いない、とルカスさんが呟くと室内は笑いに包まれた。

斯くして、俺はIS学園への入学が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程の部屋から出て、俺は軍のIS訓練所に居る。どうやら、IS適性を調べるためにISを動かしてほしいとのことらしい。

ドイツの第二世代量産機、アイゼン・ホッフヌングを前に立ち見つめる。武骨な機体ながら、第三世代が開発されるまでずっとドイツを支えてくれていた機体だ。日本語訳で希望の鉄と言うように、この機体を開発した人はこの機体に希望を見ていたのだろう。

暫く見つめていると、視線に気付いて目をやる。そこには白衣を身に纏った、俺より年上くらいの一人の女の子が居た。

 

 

「貴方がHr.柳のご令孫、碧様ですか?」

「な、何かスッゴいやりにくいんだけど…普通に話してくれない?」

「私は問題ないのですが…わかりました。ですが敬語は口癖の様なものですので、お許しください。私はハンナ・オイゲンです。」

「おう。知ってるとは思うが、俺は日下部碧だ。」

 

 

手を差し出して握手を求めると、それに応じてくれた。

軽く話してから俺はアイゼン・ホッフヌングに乗り込む。背中を預けて暫くすると、目の前のモニターにシールドエネルギーと武器の項目が表れる。

 

 

『今回、ハイパーセンサーは切ってあります。適性検査ですので。』

「おう、了解。」

 

 

ハンナの言葉を受けて頷くと、軽く体を動かしてみる。バク転、バク宙、側転と繰り返してアイゼンに体を慣らしていった。

 

 

『そ、そこまで動けるなんて…』

 

 

モニターに写ったハンナが驚いて居たが気にしない。

改めて自分の纏っているアイゼンを見ていると、訓練用の的が現れた。

 

 

『では、アイゼンの武器を駆使して30のターゲットを破壊してください。』

「了解っ!」

 

 

俺は初めのターゲットを見据えながら、アイゼンのスピードを徐々に上げていく。対装甲用ナイフを三本投げ付けると、一本が当たりターゲットを破壊した。

 

 

「ちぃっ!狙いが狂う!」

 

 

生身でする投擲と違い照準や力の入れ具合が狂う事に歯噛みをする。モニターに写るハンナが驚いたような顔をするが、俺は満足していなかった。

 

 

「はあぁぁぁっ!」

 

 

腕部マシンキャノンを呼び出し、眼に写るターゲットに対して撃ちまくる。反動で腕がブレそうになるが、アイゼンがカバーしてくれているのか、腕は安定していた。

スラスターを噴かし、更にスピードを上げる。密集したターゲットにはグレネードを投げ付け、近くのターゲットにはマシンキャノン、ナイフ、近接格闘を行い、順調にターゲットを破壊していった。

 

 

『流石Hr.柳のお孫さん…』

「次っ!」

 

 

ハンナの呟きすら耳に入らない程集中している俺は、スピードを上げ続ける。それに伴い、ターゲットを破壊するスピードまでも上がっていった。

 

 

「ラストォっ!」

 

 

最後のターゲットを蹴り壊すと、今度は空に大量のターゲットが現れた。ちょっと!聞いてないんだけど!?

 

 

『そのターゲットでラストです。今の貴方になら効率的な倒し方が出来るはずです。』

「だーもうっ!やりゃ良いんだろやりゃあ!」

 

 

グレネードのピンを抜き、数秒カウントした後、ターゲットの真ん中目掛けて投げ付ける。そのグレネードは、俺の想像通りの場所で爆発しターゲットの大半を消し飛ばした。

 

 

「まだだっ!Regen von Eisen!(鉄の雨)

 

 

肩の装甲の上の部分が開き、大量の砲身が顔を出す。そこから発射される銃弾は正に鉄の雨。空に出現したターゲットは全て破壊された。

 

 

「……だぁー…終わったぁ…」

『お疲れ様です。まさかここまで動けるなんて…。』

「最後のRegen von Eisenは、完全に語感からの勘だけどな…。」

『時には勝負に出る事も必要ですよ。結果が出るまでゆっくりしていてください。尤も…出来れば、ですけど…』

 

 

モニターのハンナが気まずそうに目を逸らす。首をかしげて問い掛けようとしたが、その理由に気付いた。

 

 

「あ、あれがISを動かして初めての人間の起動だと!?」

「すっごーい…」

「お、男なのに中々やるわね…」

「今の内に唾つけとこうかしら…」

「是非ともお兄様と呼ばせてください!」

 

 

訓練所のアリーナ席には、何時の間にやら沢山の女の子が居た。おい、最後の奴ら頭涌いてんだろ!

 

 

『あ、あはは…。シュヴァルツェア・ハーゼの方が居ない分マシですが…』

「こりゃ、ちょっとした見世物だな…」

『この戦闘データは後程キチンと保管しておきます。見た方にも箝口令を敷きますので、ご安心を。』

「助かるよ、ハンナ。」

 

 

俺は軽く笑いかけて礼を言うと、アイゼンをしゃがませてから地面へ降り立つ。

慣れない操縦に疲れを感じたのか、足がフラついてしまった。

 

 

「は、はは…疲れた…。」

 

 

そのままアイゼンに背を預けて座り込むと大きく息を吐く。暫くそのままにしていると、凄まじい地響きと共に大量の女性隊員が現れた。

 

 

「あー…なに…?」

「疲れたでしょ?はい。」

「「「「「「「「「スポーツドリンク!」」」」」」」」」

「そんなに飲めるか!!」

 

 

差し出された十数本のスポーツドリンクを見て突っ込みながら立ち上がる。すると、ハンナが近付いてきてタオルを差し出してくれた。

 

 

「お疲れ様です、碧さん。」

「ハンナっ。結果が出たのか?」

「はい、こちらです。」

 

 

差し出された書類を受けとり、内容を確認する。其処には、IS適性B+と書かれた書類があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にお前には驚かされるよ、碧。」

「平和に暮らせりゃそれで良かったんだけどな…。じいちゃんの店手伝って、店で飲み始める客の飯作って…近所のガキどもにお菓子作って…。そうだ、学園に行くんならミートグラインダーとソーセージスタッファー持ってかないと!」

「許可が下りるかどうかはわからんが、取り敢えず荷物に入れておけ。俺も、なるべくお前の望む通りにしてやりたい。」

 

 

ルカスさんの運転する車に乗り、自宅を目指す。

ISの操縦と女の子に追いかけられた事でくたくたになっていた俺は、シートに体を預けるようにしてだらけていた。

 

 

「そうだ、これは内緒なんだがな。お前には専用機が当てられる事になったぞ。」

「マジで!?ドイツには10個しかコアが無いんだろ!」

「データ収集が目的なんだろう。機体自体は、イグニッション・プランで上がっていた機体案を使うそうだ。」

 

 

男のIS乗りの為にそこまでするかと唖然とする。そんな俺に、ルカスさんは笑みを浮かべながら問いかけてきた。

 

 

「碧、アイゼン・ホッフヌングに乗っていた武装で使いたい武装はあるか?」

「え?あ、あのRegen von Eisenが使いたい。あれ、気に入った。」

「わかった。お前の専用機に組み込んでおくように言っておく。」

「ありがとう、ルカスさん。」

「ああ。専用機は、恐らくお前が入学した後に届くと思う。俺が届けに行くよ。」

「とかなんとか言って、女の子が目当てじゃないだろうな?」

「馬鹿もん。」

 

 

笑いながら怒るルカスさんを見て、同じように笑う。

こうして、俺の慌ただしい一日は終わっていった。

 

 

その日から俺は、店の手伝いをしながらIS学園へ入寮する支度と、ISについての事前予習をしていった。

さてと、頑張らなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、作者です。
この作品はオリジナルな物が沢山有ります。どうか生暖かい目で見てやってください。
御意見、御感想をお待ちしております。

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