インフィニット・ストラトス【白と黒の雨模様】   作:レーゲン

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金髪貴公子と銀髪小兎

朝、俺は6時に起きてバスケットを片手に学園の敷地に向かう。クラス対抗戦以降、俺は誰も居ない学園の敷地で朝食を食べ、そしてのんびりするのが日課となっていた。

散歩をするように辺りを歩き、朝食を食べる絶好のロケーションを探す。暫く探し歩いていると小さなベンチがあったので其処に腰を下ろし、バスケットから朝食を取り出す。今日は簡単なツナサンドと卵のサンドだ。

一口かじり、目を閉じる。食パンに縫ったマスタードが舌に刺激を与え、マヨネーズで和えたツナの味を高める。ツナマヨの中には粗挽き黒胡椒を忍ばせている。マヨネーズのまろやかな味を引き締め、舌を刺激する。口の中を刺激が走る度に、食欲は増していった。

じいちゃんの店で好評だったツナサンドを食べながら、ルカスさんがじいちゃんの店に連れてきた軍人のことを思い浮かべる。中々個性的な人が多かったな。

そんな事を思い出しながら食べていると、背後に誰かの気配を感じた。しかし俺は意に介さず、サンドイッチを食べ進める。

 

 

「…碧?」

 

 

ふと、ドイツに居たときに聞いた声に目を見開き振り替える。其処に居た人物に、手に持っていたサンドイッチを落としそうになった。

銀髪に眼帯で片目を隠した少女に、俺はとても懐かしさを感じていた。

 

 

「…ラウラ…?」

「あぁ…久しぶりだな。教官が日本に帰る前にパーティーをして以来か?」

「そうだな…ルカスさんが誘っても来ないってボヤいてたぞ?と言うか、何でここに?」

「…中将には、申し訳ありませんでしたと伝えてくれ。私が此処に居るのは、この学園に編入することになったからだ。」

 

 

申し訳なさそうに頭を下げるラウラに少し戸惑うが、わかったと一言告げると頭をあげてくれた。

…そうか、ラウラもこの学園に来たのか…と思っていると、一つ懸念事項を思い出した。

ラウラは織斑先生を崇拝している。その織斑先生が二連続モンド・グロッソ制覇を出来なかった原因を作った一夏を恨んでいるのだ。

 

 

「…なあ、ラウラ。お前、一夏の事…」

「認めるつもりはない。アイツは教官の顔に泥を塗ったも同じなのだ。」

 

 

頑なに言うラウラに小さな溜め息を吐いてこめかみを押さえる。波乱が起こることが、容易に想像できるぞ…。

俺は胃薬の用意をしておこうと思いながら、校舎が開くまで久しぶりの再会を果たしたラウラと話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は転校生を紹介しまーす。しかも、二人も、ですよー。」

 

 

朝のSHR。山田先生のおっとりとした声で転校生がいると言うことを知らされると、クラス全体がどよめく。そんなクラスが落ち着かないまま、山田先生は外に居る二人の転校生を教室へと入るように促した。

金髪のナヨッとした男子服を着た人物とラウラ・ボーデヴィッヒが教室に入ると、クラスの視線を一斉に受ける。そんな中、金髪の男子が自己紹介を始めた。

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。よろしくお願いします。」

 

 

澄んだ綺麗な声で挨拶を始めるデュノアに、俺は余りにも声が綺麗すぎると思いながら観察をしようとしたが…。

 

 

「「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

「三人目の男子よ!」

「しかも守ってあげたくなる系の!」

「織斑くんや日下部くんとはまた違うわね!」

 

 

突如俺の耳を襲う轟音に耳を塞ぐ。前の席の一夏も同じように耳を塞いでいた。ってかお前らうるせぇ!ソニックブームでも起こすつもりか!?窓ガラスがビリビリ震えてるぞ!?

注意しようと立ち上がろうとしたとき、教室の入り口に立っていた織斑先生が出席簿で壁を叩いた。

 

 

「静かにしろ!バカどもが!男が此処にいるからどうした?お前らは色香にうつつを抜かす為に此処にいるわけではない!」

 

 

鶴の一声。織斑先生の一喝で教室が完全に静まると、先生はラウラに自己紹介をするように促した。

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

「ぼ、ボーデヴィッヒさん?それだけですか?」

「以上だ。」

 

 

短く、とても簡潔な自己紹介に吹き出しそうになる。

山田先生がおろおろしながら問いかけるも、ラウラはつっけんどんにしていた。

そんなラウラを見て織斑先生は溜め息を吐く。俺はこの時、物凄い厄介事に巻き込まれそうな予感を感じていた。

 

 

「お前はまともに自己紹介も出来んのか。」

「教官、申し訳ありません。」

「その名で私を呼ぶな。私はもうお前の教官ではない。一人の教師だ。」

「…了解しました。」

 

 

ラウラが小さく頷くと、近くの一夏と目が合う。ラウラは一夏の側まで歩くと、手を振り上げて振り抜こうとした。

俺は一夏の顔に平手が当たる前にラウラの細い腕を掴むと、小さく首を振った。

 

 

「碧っ!何故邪魔をする!」

「ラウラ、一夏に喧嘩を売りに来た訳じゃないだろ。お前に勝手されたら、俺やドイツの評価も下がりかねないんだよ。」

「っ…しかしっ…」

「い、いったい何が…?」

「っ!織斑一夏!私はお前を認めない!織斑教官の顔に泥を塗ったお前を、絶対認めない!」

「ラウラ!落ち着け!」

 

 

尚も一夏に敵意を見せるラウラに大声で一喝する。ラウラは少し肩をビクッとさせると、自分の席へと戻っていった。

 

 

「な、なんだったんだ?」

「悪い、一夏。後で少し話す。」

「そ、それではSHRを終了します。一限目は二組と合同でISの模擬戦闘を行いますので、遅れないように来てくださいね?場所は第二グラウンドですよー。」

 

 

一騒動あったSHRが終わり皆が支度を始める中、俺と一夏は荷物を纏めて立ち上がる。

 

 

「織斑、日下部。同じ男なんだからデュノアの面倒を見てやれ。」

「君達が織斑くんと日下部くん?初めま──」

「自己紹介は後でゆっくり聞くから。」

「早くしないと授業に遅れる上に女子達が着替え始める。俺はまだ変態扱いはされたくないからな。」

 

 

俺達はデュノアの手を引き一目散に教室から逃げ出す。

 

 

「な、なんで?」

「教室は女子が着替えに使ってるんだ。モタモタしてたら、女子が着替え始めるんだよ。」

「…あっ、そうだったね。」

「そういうこと。わかんな─」

「居たわ!転校生よ!」

 

そんな話をしていたら、転校生の話を聞いた女子達が大群で現れた。情報網が広すぎるだろ!

 

 

「織斑くんと日下部くんと手を繋いでるわ!」

「者共、出会えい!」

「な、なんなの?この子達?」

「男が珍しいんだろ!ここだと男は貴重だからな!」

「このままじゃ進めないな…」

 

 

小さくぼやきながらも女子のいない場所を探して走る。気分はまるで脱獄犯だ。

 

 

「金髪にアメジストの守ってあげたくなる美形!」

「二人のイケメンに手を取られて走る姿はまるで逃避行!」

「いい!いいわぁ!」

「「こえぇぇ!そんな妄想がすぐに出てくるのが凄くこえぇ!」」

「あはは…」

 

 

腐女子包囲網から逃げながら一夏と一緒に叫ぶ。デュノアはデュノアで苦笑いを浮かべていた。

 

 

「一夏、デュノアは任せた。それじゃ。」

「「えぇっ!?」」

 

 

このままでは間に合わないと決断すると、俺はデュノアから手を離して空いている窓から外に飛び出す。その場に居た人は目を点にしたり悲鳴を上げていたが、俺は地面に着く前に壁を蹴り、三角跳びの要領で一度跳んでから着地した。

軽く足首を回して異常がない事を確かめると、裏切り者ー!!と叫ぶ一夏を置いて第二グラウンドへと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

一夏を置いてきた俺は予定より早く第二グラウンドへとたどり着いた。まだまだ余裕はあるらしく、人は疎らだ。

体を伸ばして筋肉を解していると、箒と鈴とセシリアがやってきた。

 

 

「碧、早いわね?一夏は?」

「女子に追われたから置いてきた。遅刻するのも嫌だったしさ。」

「酷っ!」

「それにしては早すぎないか?」

「そうですわ。碧さん達が着替えるアリーナの更衣室は、校舎からはかなり時間がかかるはずでしてよ?」

「ああ、それな。途中で窓から飛び出したんだよ。」

「「「…はあぁぁぁ!?」」」

 

 

俺の一言に驚愕の声をあげる三人に思わず目を閉じて体を強張らせる。女の子の頭に響く様な声は、あまり好きになれない。

 

 

「さ、三階ですわよね?」

「お、おう。」

「何で平気なのよ…」

「いや、パラシュート降下失敗の衝撃に比べれば可愛いもんだぞ?」

「鍛えればそんなことも可能なのか…うむ、勉強になった。」

「「こんなこと頭に入れるな!(入れないでください!)」」

 

 

一人納得する箒に、セシリアと鈴が突っ込む。女三人寄れば姦しいとは言うが、本当にうるさい。そうこうしていると、織斑先生がグラウンドに到着し、少し遅れて一夏とデュノアも到着した。

誰が号令をかけるまでもなく全員が整列する。織斑先生はピッタリと整列したのを確認すると、ISについての説明を始めた。内容はISの基本について。此が出来なければまともに動かすことも出来ないと懇切丁寧に解説してくれた。

 

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。───凰!オルコット!前に出ろ。」

 

 

織斑先生が鈴とセシリアを呼ぶ。二人は少し渋っていたが、先生が何か耳打ちすると一気にやる気を見せた。大方一夏を出汁に使ったのだろう。

 

 

「それで、わたくしが戦うのはどなたですか?」

「私はセシリアでも構わないけど?」

「慌てるな。お前らの相手は……」

 

 

何か飛行物体が近付いてくる音が聞こえてきた。

 

 

「ど、どいてくださーい!」

 

 

上を見ると、山田先生がラファール・リヴァイブを纏って…落ちてきていた。

俺は直ぐ様ISを展開すると山田先生を受け止める。ただ受け止めるだけだと衝撃で体を痛める可能性があったので、手を取った瞬間に踊るように回転をして着地をした。

 

 

「あ、ありがとうございます…日下部くん…」

「ふぅ…熱烈なダンスのお誘いは嬉しいんですけ──じゃなくて、気を付けてくださいよ?」

「は、はい。」

 

 

すっと手を離して立たせると、俺は列に戻った。途中ラウラに氷のような視線を向けられたが、気にしないようにした。

 

 

「凰、オルコット。お前達には山田先生と戦ってもらう。」

「山田先生と…ですか?」

「お言葉ですが織斑先生。先程の操縦技術を見る限り山田先生相手ではわたくし達は倒せないかと…」

「安心しろ。山田先生は代表候補にも選ばれた位の腕前だ。お前ら二人では手も足も出ない。」

 

 

その一言に二人の闘志が燃え上がる。

 

 

「はぁ…ありゃ負けるな。」

「碧、どういうことなんだよ?」

「どうもこうも無いって。まあ見てろ。」

 

 

合図と共に戦闘を始めた三人の動きを見て、小さく息をつく。鈴とセシリアは開始早々劣勢に立たされていた。

デュノアがラファール・リヴァイブの説明をするなか、俺は一夏へと言った意味を説明していく。

 

 

「あ…そうか!」

「わかったか?」

「ああ、アイツら…連携が出来てないんだな?」

「正解。」

 

 

ハッとして自分の考えを言う一夏に、正解だと告げてやる。

 

 

「互いが互いのスタンドプレー。自分が攻撃を仕掛けるタイミングでしかパートナーを確認しない。だから良いタイミングで攻撃できない。更には先読みされて、うまく誘導させられてもいるんだ。山田先生は本当に凄いよ。」

「…俺、明日から山田先生見る目が変わりそうだ。」

 

 

キラキラと尊敬の眼差しを向ける一夏に、思わず笑みが零れる。これでこいつの勉強意欲も少しは上がるだろう。

そうこうしている内に鈴とセシリアは空で激突し、纏めて落ちたところを山田先生に撃たれて呆気なくシールドエネルギーを0にした。

 

 

「…さて、今の戦いでの改善点を…ボーデヴィッヒ、お前に言って貰おうか。」

「了解しました、教か「教官ではない。織斑先生と呼べ。」…了解しました。」

 

 

織斑先生の訂正の言葉に不服そうに頷き、ラウラは先の戦闘の解説を始める。

 

 

「先ず、あの二人は相手の戦力を見誤りました。そして持っている得物の事を考えずに相手の距離で戦ったことです。」

「それだけか?」

「はい。」

「50点だな。織斑、他に何かあるか?」

「えっと…二人が連携を取らなかった事とか?山田先生の動きからして、完全に二人の動きを読んで誘導してたし…」

 

 

いきなり一夏に話が振られ、拙いながらもラウラの説明に加えていく。一夏は山田先生の動きもキッチリ見えていたようだ。一夏の答えを聞いた織斑先生は満足そうに口許を緩め緩ませた。

 

 

「そうだ。ボーデヴィッヒと織斑の言った二つで正解だ。それでは、これから9人1班になって専用機もちにISの操縦を教えてもらえ。」

 

 

織斑先生が言うとあっという間に囲まれる俺達男子。お前ら、そんなことしてるとまた怒られるぞ?

 

 

「誰が一ヶ所に固まれと言った!もういい!出席番号順で決める!」

 

 

痺れを切らした織斑先生の雷が落ちる。怒号に眼を伏せながらラウラを見ると、やはり険しい顔つきのまま織斑先生を見ていた。

その後、女の子に囲まれながらも俺達専用機持ちはISの歩行や搭乗方法などを教えていった。

ラウラがドイツ軍式の教導方法を取っていたので、止めさせてラウラの班の面倒も見たのは織斑先生には内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

「だー…色々ありすぎて疲れた…」

「あはは、仕方無いよ。織斑くんの周りは何時も騒がしいから…」

 

 

授業が終わり、寮の部屋に帰ると疲れた体をベッドに投げ出す。そんな俺を見ながら、相川は苦笑いを浮かべていた。

昼休み。一夏の鈍感による一夏スキーの暴走、セシリアのデスランチ騒動等があり、ラウラが暴走しないようにと気を張っていた俺は完全に疲弊しきっていたのだ。

俺がベッドでへたっていると、突然扉がノックされる。誰だろうと思い起き上がると、そこには織斑先生が居た。

 

 

「相川、日下部。急な話で悪いが部屋割りを変えさせてもらう。」

「「はい?」」

 

 

いきなりの引っ越し宣告に、俺と相川の思考がストップする。あまりの出来事に、二人とも口が開かなくなっていた。

 

 

「相川、すまないな。荷物を纏めてくれ。」

「え?は?はい…」

「いやいやいや!待って待って待って!?いきなりなんなの!?」

「…色々とあってな。すまないがわかってくれ。詫びに学食のデザートチケットを持ってきた。」

 

 

そういう意味じゃないだろ!と突っ込みたくなるが、先生のお達しとあれば仕方ない。何時もみたく高圧的な態度ではなく、頼むような態度がそれを物語っていた。

 

 

「…わかりました。」

「すまないな。」

「相川、いつでも遊びに来いよ?」

「うん、ありがとう。荷物まとめるの手伝ってくれるかな?」

「了解。」

 

 

織斑先生の言葉に頷いた相川が荷物を纏めるのを、俺が手伝う。当然ながら服や下着は相川が、それ以外の荷物は俺が担当する事になった。

荷物を纏めると相川の新しい部屋に持っていくと、俺と織斑先生と歩いて自室に向かう。

一人になるということは、一人部屋になるということかと思って受かれていたが、直ぐにその希望は打ち砕かれた。

 

 

「日下部。お前はラウラと同室だ。」

「……はあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

波瀾万丈な日々はまだまだ続きそうである。じいちゃん…ドイツに帰りたいよ…

 

 




だいぶ空いてしまいましたね…大変申し訳ございません!レーゲンです!
はい、今回はラウラとシャルの登場回です。影が薄くなりがちですね…気を付けねば。
さて、それではご意見ご感想など、お気軽にしてくださいね?それでは!
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