インフィニット・ストラトス【白と黒の雨模様】   作:レーゲン

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ドイツからの贈り物

「日下部。お前に客が来る。職員室で待っているように。」

 

 

と織斑先生に言われ、山田先生と一緒に応接室のソファで待っている。オルコットの宣戦布告から4日。一夏も参考書の大半を覚えてくれたので、一人でも授業に着いていけるようになっていた。

待てど暮らせど来ない客にイライラすること無く、のんびり過ごしている。

 

 

「山田先生はレバーとか苦手ですか?」

「レバーですか?私は好きですよ。あの苦味が良いんですよねー。」

「そうですか、ならあのソーセージが良いかもしれませんね。」

 

 

唐突な質問にも軽く答えてくれるので、話がしやすい。

俺はここに来て二日目に作っていたソーセージの試食用を取り出すと、山田先生へと差し出した。

そのソーセージはとても赤黒く、見た目は熟成させたサラミに似ていた。

 

 

「な、何ですか、それは?」

「ソーセージですよ。俺が作った、血のソーセージです。」

「ち、血でソーセージが作れるんですか!?」

「作れますよ。前にも言いましたが、これも材料を余すこと無く使う技術の一つです。おひとつどうです?」

 

 

山田先生が驚いている。あまり馴染みの無いものだから無理もない、とほくそ笑みながらスライスされたソーセージを差し出した。

 

 

「で、では一つ…」

 

 

山田先生は恐る恐る手を伸ばしソーセージを一切れ摘まむと、勢いのまま口に放り込んだ。目を閉じ、体を強張らせてモグモグと噛んでいる姿に癒される…。暫くすると、信じられないと言わんばかりに目を見開いた。

 

 

「お、おいしいです!濃厚でねっとりとしたコクがあって…それでもくどくなく、獣臭さもない!このプチプチした食感は…」

「はい、皮や舌の角切りです。面白い食感でしょ?」

「はぁ~…おいしいです~…」

 

 

ほわーんとしている山田先生を見ていると年上と言うことを忘れてしまう。とても教師には見えない。良くて妹か?

そんな事を考えていると、ノックの後に応接室の扉が開けられた。

 

 

「失礼するよ。」

「あ、これはこれはようこそいらっしゃい「ルカスさん!」へ?」

 

 

山田先生が挨拶をする前に、俺は応接室に入ってきた客──ルカス・ヴェーバーさんへ近付くと嬉しそうに笑った。

半年も経っていないのに、この人に会うのが凄く嬉しい。ルカスさんも嬉しいのか、俺を力一杯抱き締めてきた。

 

 

「碧、元気でやっているか?」

「ああ、元気だよ。ルカスさんこそ、じいちゃんに迷惑かけられてないか?」

「Hr.柳も息災だ。お前の手料理が食べれないと愚痴っては居たがな。」

 

 

ドイツに居るじいさんの事も聞けて、子供みたいにはしゃいでしまう。俺もルカスさんの背中に手を回して、思いきり抱き付いた。

 

 

「えっと…あの…」

「あぁ、すまないね。懐かしくてつい抱き締めてしまった。」

「あ、いえいえ、良いんですよ。日下部くんも嬉しそうでしたし。」

 

 

山田先生が居るにも関わらず抱き付いてしまった。顔から火が出そうだ。

 

 

「大人ぶっていても、やはり子供らしいところもあります。先生、これからも碧をよろしくお願いします。」

「勿論ですよ。何て言ったって、私は先生ですから!」

「も、もういいって!で、ルカスさんが来てくれたって事は…」

「あぁ、待たせたな。お前の専用機を届けに来た。フォーマットとフィッティングをしたいのだが、アリーナは使わせてもらえるかな?」

「はい、今でしたら第4アリーナが空いていますね。…そうだ!良かったら1組の皆に見てもらったらどうでしょうか!」

「山田先生、待って。皆の授業中断させられないって。」

「あ、そうですね。ごめんなさい。」

「……ふむ、碧。俺達は友達数人呼ぶくらいは構わないぞ?」

「いや、その友達が勉強しないとヤバイやつなんだ…」

 

 

何かルカスさん凄い乗り気なんだけど?息子の友達見るって気満々なんだけど。

 

 

「それなら仕方がないな。では行くとしようか。」

 

 

少し残念そうなルカスさんを率いて、俺達は第4アリーナを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

第4アリーナへ辿り着くと、ISが入っているであろうコンテナとハンナが待ち構えていた。どうやらルカスさんが先に手配してくれていたみたいだ。

 

 

「ハンナ、久し振り!」

「碧さん、お待ちしてました。ドイツの国と企業が心血を注いで造り上げた機体ですよ。」

「お前のアイゼンでの戦い方を見て、徹底的にチューンアップしておいたぞ。」

 

 

にかっと笑って親指を立てるルカスさんに頭が上がらない。俺達はドイツの話をしながらアリーナのピットへと入っていった。

早速コンテナから下ろされた純白の機体に優しく触れる。アイゼン・ホッフヌングのような武骨感は無く、洗練された刀剣の様にさえ感じた。

 

 

「これが日下部くんの専用機…」

「碧さん、私達が用意したISスーツを来てください。ドイツのISメーカー、フッケバイン社のフルオーダースーツです。」

「ん、ありがとう。直ぐに着替えてくるよ。」

 

 

ISスーツを受け取ると、俺は更衣室に入る。服を脱ぎISスーツの袖に腕を通してみると、するりと着ることが出来た。ドイツの技術者に感謝をしながら下も履き替えると、鏡で全身を見る。全体的なカラーは黒で統一され、各所に赤のラインが入っている。中々かっこいいデザインなので、ついカッコつけてしまう。

その後軽く体を動かして動きを確認すると、俺はピットへと戻った。

 

 

「ごめんルカスさん。少し体動かしてた。」

「構わんさ。此方も今終わった所だ。…ほう、中々似合ってるじゃないか。」

 

 

ISスーツを来た俺を上から下まで見て言うルカスさんに、俺は少し照れてしまう。こうして、如何にも親子っていう会話は好きなんだけど、何故か照れ臭い。

そうしているとハンナも準備が終わったらしく、機体に乗るようにと言われた。

 

 

「この機体の名前はWeißer Regen(ヴァイザー・レーゲン)です。呼んであげてください。」

「よろしくな、Weißer Regen。」

 

 

機体に触れながら搭乗する。アームユニットとレッグユニットに手足を入れると、ピッタリと体に合った。続いてヘッドギアが量子展開され、装着される。すると、視界が強制的に広がる感覚に思わず頭を押さえた。どうやらハイパーセンサーの機能である、全方位視界接続が行われたようだ。

 

 

「ああ、やっぱり気持ち悪くなりましたか?安心してください。誰もが通る道です。」

 

 

淡々とキーボードを操作しながら言うハンナを軽く睨む。わかってるなら最初に言ってくれよ。

俺は手首を軽く回したり、握り拳を作ったりと邪魔にならない程度の動きをしながらファースト・シフトをするのを待つ。

待っている最中、ルカスさんと山田先生は雑談を始めた。

 

 

「ヴェーバー中将は日下部くんのお父さん代わりをされていたんですか?」

「ええ、小さな頃から良く遊んでやっていたものですよ。今ではこんなに成長して…」

「ご苦労されているのですね…」

「会う度会う度家事のスキルが上がっていって…女性隊員に嫁にくださいと言われたときは、息子の成長を感じて嬉しいのやら嫁と言われて悲しいのやら…」

 

 

よよよ、と涙を流すルカスさん。今更ながらこんな人が中将で良いのか、と甚だ疑問に思えてくる。

 

 

「あぁ、日下部くんの作るソーセージ、とても美味しかったですよ。血のソーセージ何て初めて食べました。」

「ほう…あれは碧の得意料理でしてね。」

 

 

更に始まる息子自慢に顔が熱くなる。ルカスさんってここまで子煩悩だったの!?

暫く羞恥プレイに耐えていると、モニターに確認ボタンが出てきたので指先で押す。すると機体が更に俺に合わせて変化する。ファースト・シフトだ。

白を基調とし、間接部に赤のラインが入っている。純白の機体で一際目立つのはアンロックユニットである両肩の巨大なスラスターで、ルカスさんが要請してくれているのであればこのユニットにはあの武装が入っているはずだ。

次に目を見張るのは足の爪先。非常に尖った形に伸びており、格闘戦向きだと思った。

両腰にもアンロックスラスターが着いており、機体のスペックを確認するに瞬発力も中々高い。そして、アンロックスラスターに付いている十字のパーツ。これは一体何なんだろうか?

 

 

「それでは説明しますね。先ずは爪先の武装ですが、プラズマ刀・Rot Schneide(ロート・シュナイデ)になっています。」

 

 

説明を受けるとロート・シュナイデを呼び出す。すると爪先の部分に、赤いプラズマが纏う。軽く足を振り、カポエイラの要領で足技をして機能を試すとプラズマを消した。 取り回しの効く、良い武器だ。

 

 

「続いて、両肩のアンロックユニットにはStahl von Regen(シュタール・フォン・レーゲン)が搭載されています。アイゼン・ホッフヌングに積まれていた武装の改良版で、中に銃器の類いは入っていません。その代わり、射出口からは無数のベアリング弾が発射されます。」

 

 

俺は説明を受けながら、両肩のユニットに触れる。本当に積んでくれたんだ…ありがとう、ルカスさん。

それからも武装の説明は続いた。

中でも一番驚いたのが、ショットガン・グラナートアプフェルだ。名前が酷い。日本語訳でザクロなのだ。どうしてこんな名前になったのかと問い詰めたら、開発者の一人が呟いた「ショットガンで射たれたらザクロみたいになるよね」、からだそうだ。

他にもアサルトライフルとスナイパーライフルの間の子みたいな銃を乗せてあるらしい。これについてはデータを送ってほしいとの事だった。

説明が終わり、ヴァイザー・レーゲンを待機状態のチョーカーに戻してその場に座り込む。慣れない全方位視界接続で、少し感覚が狂ったようだ。

目頭を押さえていると、突然濡れたタオルが顔に押し当てられた。

 

 

「うおっ!?や、山田先生?…ビックリした…」

「ふふふっ、ごめんなさい。でも、それで目を冷やしてください。少しは楽になりますよ。」

「ありがとうございます。それにしても、ヴァイザー・レーゲンは凄い機体ですよ…」

「遠、中、近距離をマルチに対応していながらも機動力を備えている。中々トリッキーな機体になりましたね。」

 

 

そう、ヴァイザー・レーゲンは苦手距離がない。後は俺の技量次第で何とでもなる機体なのだ。

本当に俺には勿体無い代物だと思いながら、首にあるチョーカーを擽るように触った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァイザー・レーゲンのフォーマットとフィッティングが終わってルカスさん達を見送った後、丁度昼飯時だったので俺は食堂でサンドイッチを食べていた。途中一夏とすれ違ったが、今日はパンを食べながら勉強するとの事だ。

サンドイッチをかじると、しゃきしゃきとした瑞々しいレタスが口のなかで踊る。こんなうまいサンドイッチを食べれる幸せをサンドイッチと共に噛み締めながら食べていると、食堂に居た篠ノ之と目があった。だが、どうもよそよそしい。

あの一件以来、篠ノ之は俺を避けて居るようだ。まぁ、無理もないか。

 

 

「(切腹しようとしたくらいだからな。)」

 

 

最後のサンドイッチを口の中に放り込むと立ち上がり、気配を消して篠ノ之へと近づいていく。どうやら気付かれていないようだ。

篠ノ之の背後に着くと、お茶を飲み終わった所で脇腹を思いきり擽った。

 

 

「ひゃわっ!?ちょ!はははははは!」

「何時もの仏頂面はどうしたよ、篠ノ之。」

「ちょっ、やめっ、ふふふふふふ!や、やめてくれぇぇ!」

 

 

一頻り笑わせた後に手を離す。篠ノ之は息を整えるとじとっとした目で睨んできた。

因みに周りの目もあったが、二人とも気にしていない。

 

 

「初めに会った時の邪魔したら殺すみたいな目はどうしたんだ?」

「あ、あれはだな!その…」

「わかってるよ。大好きな一夏の側に居たかったんだよなー?」

「き、貴様ぁ!」

 

 

真っ赤になる篠ノ之をからかい、こちらのペースに乗せていく。いつの間にか先程のようなよそよそしい態度では無く、何時もの篠ノ之に戻っていた。

 

 

「…お前はどうしてそうなのだ…。私が自分を戒めようとしていたら、ふざけて私を乗せて…落ち込んだ私をからかうのがそんなに楽しいか!」

「うん。」

「むがぁぁぁぁぁ!」

 

 

ポニーテールを振り乱して頭を振る篠ノ之に手刀を落とす。

 

 

「俺の額に木刀ぶちこんで反省してるって事は、それがどれだけ悪いのかって、キチンとわかってるんだろ?それさえわかってれば、お前は二度とあんなことは起こさないよ。」

「…日下部…本当にすまなかった。」

「もういいって。篠ノ之は頭が固いな?」

「ぐぅ…言い返せないぞ…」

 

 

勢いよく頭を下げる篠ノ之の頭を軽く叩いてやる。篠ノ之は顔をあげると、俺と出会ってから初めて自然な笑顔で笑ってくれた。

 

 

「それに、一夏の奴が元気のない篠ノ之なんて篠ノ之じゃないって言ってたしな。」

「一夏がか?…そうか…そうかそうか!」

 

 

嬉しそうに笑う篠ノ之は手元のお茶を飲み干すと、勢いよく立ち上がった。

 

 

「よし!これから一夏を鍛えに行ってくる!」

「い、今は勉強してるみたいだぞ?」

「む、ならば私が教えてやろう。ではな、日下部!ああそれと…」

 

 

教室に向かおうと足を出した篠ノ之が動きを止め、此方に顔を向ける。

 

 

「私の事は箒で良いぞ!」

 

 

飛びっきりの笑顔でそれだけを言い残すと、食堂から駆けて出ていった。

 

 

「…なーんだ、普通に可愛い顔出来るんだな。」

 

 

小さく笑いながら呟いた俺の言葉は、食堂の喧騒にかき消されていった。

 




はい、と言うわけでドイツからの贈り物はIS、ヴァイザー・レーゲンでした。
機体の外見は、シュバルツェア・レーゲンをベースにしてもらえれば分かりやすいかと思います。
そして、空気な箒を少しばかり登場させてみました。
額に一発入れて以降、彼女は彼女なりに苦悩していたのです。箒の脇腹を擽りたいのは作者の願ぼ(ry
さて、次回はセシリア戦ですね。恐らく一夏戦はカットされます←


皆様、この様な小説を読んでいただいて誠にありがとうございます!感想、指摘など受け付けておりますので、何時でもしてきてください。
これからもこの小説をよろしくお願いします!
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