インフィニット・ストラトス【白と黒の雨模様】   作:レーゲン

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招かれざる客

 

突如現れた謎のISの相手をしながら、一夏は俺達がいるピットへと連絡を入れる。この状況で冷静に並列思考が出きる一夏に感心しながら、俺はモニターで状況を確認していた。

 

 

「生徒達の避難を急がせろ!」

「織斑くん!凰さん!あなた達も避難を!」

『山田先生!避難誘導が終わるまで俺達は逃げられません!もし避難中の生徒に向かったらどうするんですか!』

「確かにそうですが…」

「各通路の隔壁がロックされて、更にはレベル最大で止まってる。避難は難航しそうですよ…」

 

 

山田先生の会話に割り込むと、出来るだけ冷静に現状を簡単に述べる。アリーナの出入り口は隔壁によって塞がれ、尚且つロックがかかっていた。信じたくはないが、これが現実だ。

一夏は謎のISから放たれるレーザーを避け、凰と連携を取りながらISを取り押さえようとしていた。

 

 

「日下部。お前のISで隔壁は壊せるか?」

「出来ます。」

 

 

俺は一切の迷いもなく肯定だと答える。織斑先生は口許に拳を当てて考えると、ゆっくりとその口を開いた。

 

 

「…では、オルコットと日下部の両名は隔壁を壊し生徒を避難させろ。責任は私が取る。」

「「了解!」」

 

 

織斑先生の号令のもと、俺とオルコットは観客席に向かって走り出す。途中ある隔壁は、ヴァイザー・レーゲンのRot Schuneideを部分展開して切り裂いていく。

 

 

「オルコットは西と南の客席を頼む!俺は北と東を受け持つ!」

「了解ですわ!」

 

 

短く要件だけを言うと見えてきたT字路を別れて走る。俺は一夏の様子を気にしながらも、全力でアリーナの通路を駆け抜けていく。

アリーナの観客席に着くと、やはりパニックになって逃げ惑う生徒でごった返していた。

 

 

「皆!落ち着いてくれ!人を押したりして怪我人を出すな!俺が隔壁を壊すから、落ち着いて避難をしてくれ!」

 

 

キャーキャーと悲鳴が木霊するなか、俺は有らん限りの声を絞って叫び出口を封鎖している隔壁へと近付いていく。隔壁近くにいる生徒を少し離させると、俺はISを足に部分展開して隔壁を蹴り抜いた。しかし、ゴガンッと鈍い音がするだけで蹴破るには至らない。 俺は小さく舌打ちすると、Rot Schuneideを使って隔壁を切り裂いた。

 

 

「皆、絶対に他の人を押すな!落ち着いて避難しろ!誰か、落ち着いている奴が指揮を執れ!俺は北の観客席に行くから!」

「ありがとう!日下部くん!」

「頑張ってね!」

 

 

その場の人間に軽く指示を出して俺は北の観客席に走る。恐らくこれほどまで人を避けながら走ることは今までなかっただろう。

 

 

「かんちゃん、無理はダメだよっ…」

「でもっ…」

「布仏、どうした?」

「あおいん!かんちゃんが…かんちゃんが足を挫いちゃって…!」

 

 

北へ向かっている途中、足を押さえて踞る水色の髪の生徒と布仏を見かける。俺は迷わず近付いて声をかけると、布仏は涙を浮かべながら現状を説明してくれた。しゃがんでかんちゃんと呼ばれた人物の足首に軽く触る。

 

 

「痛むか?」

「っ…少し…。」

「そうか。悪い、北の隔壁も壊さないといけないから、今すぐ運んでやることは出来ないんだ。」

「…大丈夫。これくらいはなんともないから…。」

 

 

かんちゃんと呼ばれた人物の答えを聞くと、自分のワイシャツを脱ぎ始める。二人は目を白黒させていたが、構わず足に巻いてテーピングのように足を固定してやった。

 

 

「これで少しはマシなはずだ。ゆっくりで良い。二人で避難しろ。布仏、後を任せるけど良いか?」

「うんっ。任されたよーっ」

 

 

ピョンピョンと跳ねながら手を挙げる布仏に笑みを浮かべると、俺は親指を立てて走り去る。北側の隔壁に集まっている生徒達を西側同様退かせると、Rot Schuneideで切り裂く。そうして出来た道から生徒を先導しながら、俺は織斑先生へと通信を繋げた。

 

 

『こちら織斑だ。首尾はどうだ?』

「途中負傷した生徒を助けていたので手間取りましたが、西側と北側の隔壁を壊して避難をさせています。」

『ご苦労。オルコットはどうだ?』

『此方セシリアです。此方も先程終わりましたわ。』

『よくやった。続いてお前達は外へ向かえ。侵入者が破り入って来た場所から、織斑を援護しろ。』

「『了解!』」

 

 

俺とオルコットは力強く頷くと外へ向かい走り出す。一夏達の事を気にしながらも、あいつらなら大丈夫と何処か確信めいた物を持ちながら、俺はシールドの穴を目指して走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

侵入者のISの腕部からレーザーが放たれ、一夏を狙う。一夏は軽くレーザーをかすらせながら避けて、距離を取った。

 

 

「危なっ!」

「一夏!何やってんのよ!射線に立たないように動きなさい!」

「お、おう!悪い、鈴っ」

 

 

一夏を狙わせないように鈴が衝撃砲を撃つ。侵入者も当たらない様にスライド移動する。

 

 

「…何かおかしいんだよな。」

「何がよ!っと!」

「いや、あいつだよ。何か機械的って言うか…」

「そりゃISなんだから、機械的なのは当たり前でしょ?」

 

 

一夏は止まらず、牽制を仕掛けながら侵入者を観察する。規則的な防御。緩急をつけない攻撃。一夏はその一つの推論を口にする。

 

 

「多分アイツは…無人機じゃないのか?」

「はぁ!?」

「動きが規則的過ぎるんだよ。確かにアイツは強いけど、動き自体は読みやすい。ただ、俺達が反応しきれてないだけだ。」

「…オーケー。あんたの言う通り、あれが無人機だったと仮定しましょう。でも、だから何だって言うの?」

「俺の単一能力…零落白夜が最大限使える。一撃でも当てれれば、絶対にアイツを切り落とす。」

 

 

力強く言う一夏に鈴は少し微笑みを浮かべると一夏の側に寄る。

 

 

「そこまで言うからには、ちゃんと作戦は考えてるんでしょうね?」

「もちろんだっ」

「なら、ビシッと決めなさいよ?フォローは私に任せなさい!」

「ああっ。鈴、俺が合図したら龍咆を最大出力で撃ってくれ。」

「そんなの当たんないわよ?」

「良いんだ。行くぞ!」

「ああもう!あんた昔より強引になってない!?」

 

 

一夏が雪片弐型を振り上げて突進する。侵入者は一夏に合わせてレーザーを放つが、一夏が横にスライド移動して射線から外れる。一夏はこの短時間で侵入者の動きを見切り、無駄のない動きで避けれるようになっていた。

 

 

『いちかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

 

アリーナに響く怒号。その声に鈴も一夏も侵入者さえも振り向く。そこには、放送席のマイクを使って叫ぶ箒の姿があった。

 

 

『男なら、男ならそのくらいの障害を乗り越えずしてなんとする!』

「箒っ!」

「なに考えてんのよ!」

 

 

箒の怒号に侵入者は腕を向け照準を合わせると、レーザー特有の集束光が始まる。

 

 

「鈴!今だ!撃てっ!」

「わかったわ!」

 

 

一夏の指示と共に龍咆を最大出力で照準を合わせる鈴。その前に一夏が立つ。

 

 

「一夏!退かないと当たるわよ!」

「これで良い!早く撃て!」

「あぁぁぁもう!どうなっても知らないわよ!」

 

 

一夏に言われるがままに鈴は龍咆を撃つ。射線上の一夏に衝撃砲が当たり、一夏は苦悶の表情を、鈴はやっぱりという表情を浮かべる。しかし、一夏の瞳には闘志が溢れていた。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

背中に伝わる衝撃と痛みを雄叫びで吹き飛ばし、エネルギーをスラスターから取り込む。一夏の視界に映るモニターには、120%と記された数字があった。

 

 

「これでも…食らいやがれぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

気合いと雄叫びを乗せ、一夏は侵入者に向けて突撃する。雪片弐型の刀身がスライドし今までに無い出力で零落白夜が展開され、侵入者に切りかかった。

侵入者はレーザーの集束を止め避けようとするが、僅かに反応が遅れたため片腕を切り落とされてしまった。

 

 

「あーもう!避けられてるじゃない!」

「いや、これで良いんだ。」

 

 

喚く鈴に落ち着いて言う一夏。そんな一夏に侵入者の剛腕が振りかぶられるが…

 

 

「狙いは?」

『バッチリだ。』

『バッチリですわ。』

 

 

剛腕を振り下ろす前に、実弾、レーザーでの狙撃、プラズマブーメランによる一斉攻撃を受け、侵入者は大きく仰け反り倒れた。

その射線を辿っていくと、侵入者が入ってきたシールドの破損部分に碧とセシリアがおり、狙撃体勢でサムズアップをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイススナイプですわ。日下部さん。」

「レーゲンがアシストしてくれてるからな。最近の特訓で、漸く俺の癖を覚えてくれたみたいだ。」

 

 

侵入者への狙撃をしながらセシリアとの会話。緊張感がないと怒られそうだが、実際は背中に極度の緊張で嫌な汗をかきまくっていた。

セシリアにこの位置から援護を頼むと伝えると、俺は割れたシールドからアリーナへと入っていく。俺は一夏の隣に降り立つと、Gespenst Messerを格納して侵入者を見詰めた。

 

 

「ナイスファイト、一夏。だけど背中に衝撃砲受けるのは無理があったんじゃないか?」

「随分な言葉どうもサンキュー…あてててて…」

 

 

起き上がる素振りや奇襲の素振りを見せない侵入者を警戒しながら一夏を凰に預ける。

 

 

「凰、お前は一夏と箒を連れて避難してろ。もう後はないと思うけど、こいつが動き出したときの事を考えて残っておくから。」

「日下部だっけ?良いの?アイツ、かなり強いわよ?」

「教師部隊が来るまで持ちこたえれば良いさ。それに、優秀なスナイパーが居るからな。」

 

 

親指でセシリアを指差すと、微笑んで手を振っている。鈴は納得したように頷くと一夏を連れ、箒の元へと急いで行った。

 

 

『あぁっ!わたくしも一夏さんと一緒に行きたかったですわ…』

 

 

悲痛な声を出すセシリアに若干ゲンナリとしながら、未だ動く気配すら見えない侵入者に注意を払う。Leberechtを手に持ち構えて居ると、織斑先生から通信が入った。

 

 

『日下部。教師部隊が到着するまでにそのISの両手両足を破壊しておけ。先程の織斑の攻撃で、その侵入者は無人機と特定された。遠慮は要らん。思いきりやれ。』

「…了解です。」

 

 

織斑先生の言葉に頷くと、Leberechtを振りかぶり腕を狙って振り下ろす。

しかし、俺の一撃は無人機に当たる前に止められた。無人機が刀身を握り、氷のようなセンサーアイが俺を見つめていた。

 

 

「なっ……!?」

 

 

その無人機は凄まじい力で俺を抱くとものすごいスピードで飛び上がり、シールドの割れ目から出ていこうとする。

俺は何とか逃げ出そうと、スラスターの出力を最大まで上げてシールドの割れ目に行かせないように足掻いた。

 

 

『碧さん!!』

「セシリア!こいつのスラスターを狙い打て!」

『わかりましたわ!』

 

 

俺は短くセシリアに伝えると、スラスターを上に向けて下に降りるようにする。すると、無人機の動きがかなり遅くなった。上に行く力と下に行く力が相殺されたのだ。もっとも、その分の負荷は勿論俺にかかっているが。

一瞬動きを止める無人機。セシリアにとってはその一瞬で良かったようだ。

 

 

『終幕前の前奏曲ですわ、お受け取りあそばせ!』

 

 

スターライトMk-Ⅲから二条のレーザーが放たれると、無人機のスラスターを破壊する。当然上に向かう推進力が無くなった無人機は、俺の下に向かう推進力に負けて急降下を始める。

俺は体勢を入れ換えて無人機の胸に手を置くと、自分のISの重さ、重力加速度、スラスターの推進力を全て使い、無人機と共に落ちていく。無人機は俺を離そうとするが、今度は俺が離さない。

 

 

「さっきまで抱き締めてくれてたろ?いきなり離すなんて寂しいことすんなよ。」

 

 

ニヤリと悪どい笑みを浮かべてそのまま加速していき、無人機を地面へと叩き付ける。地面にはクレーターが出来、無人機は衝撃に耐えきれなかったのかバラバラに砕け散った。

 

 

「いってぇ…」

 

 

勝利の余韻を楽しむ暇もなく、俺は痛む体を地面に投げ出して大の字に寝転ぶ。体は負荷によって軋んでいたが、動けないほどではなかった。

 

 

『日下部、お前と言うやつは…』

『だ、大丈夫ですか!?』

「山田先生…大丈夫っすから大声出さないでください…」

『無茶のし過ぎだ馬鹿者が。』

「へーい…」

『碧さん、立てますか?』

「少し休んだら大丈夫だよ。俺は良いから、一夏の所に行ってきな?」

『…見くびらないでくださいな。このオルコット、例え一人の異性に心を奪われていようと、傷付いた目の前の友人を投げ出して行く程落ちぶれてはいませんわ。』

 

 

凛とした声で言い返してくるオルコットを見る。さっき一夏と行きたいと言っていたのは、空気を和ませる為なのか?

暫く一人で思考を巡らせていたが、シールドから顔を覗かせるセシリアに手を挙げて手招きをする。

 

 

「じゃあ、ちょっと手伝ってくれるか?」

『勿論ですわ。』

 

 

セシリアは今日一番の素敵な笑顔を浮かべると、俺の側に降りてきて歩くサポートをしてくれた。本当に感謝しないとな。

 

こうして、クラス対抗戦はうやむやのままに終わった。

そして数週間後、俺は思わぬ人物と再会することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『さっきまで抱き締めてくれてたろ?いきなり離すなんて寂しいことすんなよ。』

 

 

何処かのラボ。モニターいっぱいの碧の笑みに、束は身悶えしながら白式のデータを入力していた。

 

 

「いっくんの成長って凄いねー、束さんもびっくりだよ。でも…あーくんもすごいんだよねー。束さん、本当に心奪われちゃってるや。」

 

 

小さく笑いながらモニターに触れる。束の瞳には碧がどう映っているのか、それは誰にもわからない。

束は見る度に欲しくなる碧にキスをすると、モニターの電源を落として眠りについた。

 

 

 




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