━俺は、色々な日々を過ごしてきた。辛いとき、嬉しいとき、沢山あった。でも、私は、この色々な日々を
━忘れることはないだろう。
俺等は双子の姉弟だ。姉の秀華、弟の俺、母親、父親と暮らしている。いたって普通の家族に見えるかも知れない。だけど、俺の両親は本当の両親じゃないんだ。
━俺等は児童養護施設で育てられた。だから、親が居ないとかなんやらでいじめを受けた。
俺は小学校5年生のとき、いじめの中心になってた奴を殴ってしまった。それを学校側は100パーセント俺が悪いとしたのだ。きっといじめの事実を隠すためだろう。そのせいで俺は残りの1年間をさらに悪い環境で過ごすことになったのだ。
中学生になると、友達が多くなった。とてもいい生活だった。
━あれが起こるまでは。
いじめの中心になってたあの奴が、俺と仲の良い人を半殺しにしたのだ。これで俺に近寄る人は居なくなった。
このころだったかな。今の両親が俺等を引き取ったのは。
時は少し飛ぶが、受験が終わった帰り道のことだったっけ。人気のない公園で、金を取られる少年を助けたのは。金を奪っていたのは、アイツだった。
その少年は俺と同じ歳で、同じ高校を受験していた。いかにも運動をしていそうな体つきだったけれど、ボクシングを習っているアイツには敵わなかったのだろう。その少年とは今では仲良くなり、一緒に遊んだりしている。今では柔道を習い始めたそうだ。
そして、俺は高校生になった。俺は、さまざまな過去を持つ人と知り合った。今はとても充実していて、楽しい。ただ、またあんな風にはなりたくない。ならないとは思うけど、だけど…
「夏雄、難しい顔してどうした?」
「いや、なんでもない」
ああ、こんな風に会話が出来る。幸せだ。
そう思っていたときだった。
━夢と疑いたいくらいの轟音が鳴った。
「なんだよ今の…」
━そこから、俺の長い一日が始まったのだ。
窓から外を見れば、第一校舎の昇降口が燃えている。さっきの轟音からすれば、爆発が起きたと考えられる。
「なんで燃えてるんだ!?さっきはもの凄い音がしたし、なんなんだ!?」
そう隣で言っているのは、佐之佑だ。彼は相当落ち着きが無く、どうすればいいのか分からない状態だろう。しかしどうであれ、この状況は
━拙い。ここは四階とは言えど、火がやって来るのは時間の問題だ。逃げなければ。
「おい、逃げるぞ」
そう言ったときだ。
「助けてくれ!」
俺等に声を掛けてくる人物がいた。その男は息を切らして、こっちを見ている。
「なんだ?」
「変な野郎が俺を追いかけてくるんだよ!どう考えても俺をぶっ殺そうとしていやがる!」
変な野郎…?一体どんな奴なんだろう。
「一体どんな奴だ?学生か?」
「学生じゃねぇ!背が高いし、大人に決まってる!」
相当焦っているようだ。彼の言ったことと、様子から考えても、いずれこっちに来てもおかしくないだろう。
そう考えていると、またも轟音が耳を劈くように鳴った。今度は音が近い。もしかして…
「おい、そいつは属性をもっているか?」
「多分をもってる!アイツ、昇降口を爆発させやがった!」
やっぱりそうだったか。きっとその野郎はこっちに向かってきてるだろう。拙い。これだと、四階にきてここまで爆発させるだろう。
「クソったれが。遭遇は避けねぇとな…」
「逃げるしかないな!俺は死にたくねぇよ!」
だが、どうしようか…ここから逃げるには、飛び降り…いやいや、死ぬな。
「おい、能力使ったほうがいいか?早く逃げないといけないし」
「いや、大丈…」
もしかしたら、佐之佑の能力を使えば逃げられるかも…!
「…やっぱり頼む。おいお前、ここから飛び降りるぞ」
「はあ!?死ぬに決まってんだろ!狂ってやが…」
「ああ、大丈夫。俺がなんとかするさ」
「無理に決まってんだろ!」
「お前は死にたいのか?」
「んなわけねえだろうが!」
「じゃあ、少しの可能性に賭けてみようぜ?」
「…クソが。死んでも知らねぇ!」
そう言うと、男は飛び降りた。俺等も続いて飛び降りる。飛び降りると、どんどん下へ落ちて行く。
「佐之佑、減速だ」
「わかってる」
佐之佑がそう答えると、俺等の落ちるスピードが落ちた。俺等はゆっくりと地上に降りた。
「…ちょっと待て!いきなりスピードが落ちたのはなんなんだ!?」
「俺がやった。あのスピードのまま落ちたら死ぬぞ?」
「そういうことじゃねぇ!なんでスピードが落ちるんだ!」
「俺の特殊能力の『速遅』だよ。もののスピードを変えられるんだ」
「訳がわかんねぇぞ…」
「まあ、それでいいと思うよ。深く考えても分からないものだし」
佐之佑と男がそんな会話をしている内に、俺は周りを見渡していた。ほかの生徒がグラウンドへと逃げていくのが見える。目の前にある第一校舎の昇降口は激しく燃えたままだ。おそらく、中央廊下を使って第二校舎の昇降口から非難しているのだろう。四階に中央廊下があれば、安全に逃げられたのに…そもそも、四階は通常教室がなく、机などが廊下に置いてある倉庫みたいなものだ。俺等は転校生のために机を持ってくるために四階にいたのだが、まさかこんなことになるなんて…
「おい、夏雄。俺等も早く逃げないと。ここも危ないよ」
「ああ、そうだな…」
しかし、そうはいかなかった。
━さっきの男が血を流して倒れていた。
「おい、しっかりしろ!」
返事がない。そして、出血が止まらない。
「どうしてだ…!?ついさっきまで話してたのに!」
おかしい。声も何も出さず倒れるなんて…しかも、なんで俺等は気付かなかったんだ?
そう考えていたときだ。
「知りたいかい?」
そんな声が後ろから聞こえた。
後ろを見ようとしたが、ナイフを突きつけられてるため、むやみに動けない。
とりあえず、コイツの行動で、これからどう動くかは決めようか。
「ねぇ、お兄さん」
声からすると、女の子のようだ。ナイフの位置から考えれば、身長はやや高めかな。このくらいの身長と考えると、自分と同じくらいの歳だろう。声質もそれっぽい。
「知りたいでしょ?」
「何を?」
「わかってるでしょ?」
クソ、ムカつく。でも、むやみに動けない。困った。この状況じゃ携帯なんて使えるわけがない。
「おい、夏雄に何して…」
「そこのお兄さん、動いたらこのお兄さんをぶっ殺すよ?」
冷静な口調で、そんなことを言うと、俺にナイフを強く突きつけ始めた。刺さらないように手加減はしているようだが、痛みを感じる。佐之佑、じっとしててくれよ…
…ん?そういえば、さっきの男は身長が高い大人だろうと言っていた。
しかし、俺と同じ歳くらいだということが分かった。
なんでさっきの男は大人と判断した?見間違えだろうか。いや、あり得ない。
待て、この子がさっきの男の言ってた奴ではないかもしれない。しかし、普通いきなりナイフを突きつけて来る生徒なんているか?
大人の姿…女の子…この二つを結びつけるものなんてあるわけ…
いや、ある…『化身』だ!この能力を使えば、自分の姿を変えられる!
「なあ」
「なに?」
「アンタ、『化身』を持ってるよな」
「…なんでわかるのよ」
「今が本当の姿だろ?さっきから考えていたけど、アンタ、男性に化けていたみたいだし、怪しすぎるんだよ」
すべて勘付かれたかのように、彼女は舌打ちをした。
「アンタ、いい加減…」
「喋るな。殺すよ?」
仕方ないかな。
そろそろ、属性使ってもいいだろ。そして、彼女はナイフを完全に刺そうとしている。
拙いな。早く動かないと。
「殺す」
「じゃあ、俺も」
そう言うと、俺は彼女に固体化させた光をぶつけた。彼女が痛みと衝撃で離れる。
「…ッ!痛い…」
「随分と痛がってるね。佐之佑、警察呼んで。救急車もね。」
「クソ…」
そう言った瞬間、彼女は逃げようとした。しかし、体が痛みで動かないようだ。
「テメェ…どうなるかわかってんだろうな…」
「こっちの台詞だ。残念だねぇ。君は結構な重罪かなぁ。放火に傷害に…面白いね、なかなか」
佐之佑が彼女の感情を煽るように口を開いた。彼女も腹が立っているのか、唇を嚙んで睨み付けている。しかし、何も出来ない。
「くっ…」
「おやおや、可愛い顔が台無しだなぁ。ま、出直してきな」
まったく、佐之佑の言う通りだ。意外と可愛い顔立ちで、結構スタイルも良いのに。
もったいないなぁ。頭が悪いんだな、きっと。
「そういえば、止血はしてあるんだよな?」
「まあな。固体化させた光で止血してる」
まあ、男は死にはしないだろう。きっと無事なはずだ。
燃えている昇降口を見つつ、少し笑って見せた。そんなことをしていると、警察がやって来ていたのだった。
ああ、もうこんなに日が経つのか。早いものでもう二年が経つ。振り返ると、意外と短いが、あのときは凄く長く感じたなあ。今頃、あの女の子は何をしているんだろう。まだ警察にお世話になってるかね。ちなみに、彼女があの男を殺そうとしたのは逆恨みが原因だとか。逆恨みって怖いねぇ。
時計を見れば、六月九日の午後十一時を指していた。
暇だ。寝てもいいのだが、寝てもどうせ一時間で起きてしまう。今日は午後二時に起きたんだ。まだ寝るのには早い。早すぎる。
…はあ。もう寝よう。めんどくさい、色々と。
さて、
明日は何が起こるかな