Fate/reminiscence-第三次聖杯戦争黙示録-   作:出張L

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第13話  遠坂冥馬の出陣

 遠坂冥馬とデイネス・エルメロイ・アーチボルトとの関係を表すのは簡単なようでいて複雑だ。

 宝石魔術を得意とする冥馬が籍を置くのは鉱石科で、デイネス・エルメロイ・アーチボルトは鉱石科のロードである。冥馬はデイネスの研究室に参加していたこともあるし、時計塔における恩師の一人であるのは確かだ。しかし主義主張の違いから『敵対』したこともあるし、同じ目的のために共闘したことも多々ある。彼の依頼でエルメロイ家にとって邪魔な外道の魔術師の討伐隊に加わったこともあった。

 命を救われたし、命を救った。

 恩を売られたし、恩を売った。

 つまるところ遠坂冥馬にとってデイネス・エルメロイは恩師、上司、好敵手、金蔓など様々な関係を内包した存在なのだ。敢えて冥馬とデイネス・エルメロイの関係を一言で表すのならば『腐れ縁』という表現が一番しっくりとくる。冬木から面識のある狩麻を除けば、冥馬にとって時計塔での交流が一番長いのがデイネス・エルメロイ・アーチボルトだった。

 そして現状の冥馬にとってデイネス・エルメロイは『上官』だ。

 時計塔がナチスと戦争状態にあるのは知っての通りだが、それが戦争であるのならば、両軍にそれを指揮する者がいるのが必定というもの。

 ナチスにとっての指揮官が『結社』に属するロディウス・ファーレンブルクであるのならば、時計塔における指揮者はデイネス・エルメロイなのである。冥馬がナチスの魔術施設を潰した件の半分以上は、彼の指示によるものだ。

 時計塔の貴族達には〝戦い〟やそれを生業とする戦闘者を蔑視する傾向が強く、そのため時計塔の君主(ロード)達の中にも戦いの経験が豊富な者は少ない。そもそも研究者である魔術師に戦闘力を求めるのは畑違いというものだ。

 その中にあってO.T.O.(東方聖堂騎士団)の首魁アレイスター・クロウリーを、冥馬を含めた弟子達と共に撃退したという華々しい『武勲』は、彼を魔術協会の対ナチス責任者という立場にするには十分過ぎたといえる。

 時計塔にとって幸運な事に、その人選に間違いはなかった。デイネス・エルメロイは魔術の才のみならず、軍人として大成出来たほどの将才を持ち合わせていたのだ。彼が司令官のポジションに着いてからは、押され気味だった戦線も持ち直してきており、今や時計塔の魔術師の殆どが彼のことを『将軍(ジェネラル)』と称え、畏怖している。だが当のデイネス・エルメロイはそんな荒事などに関わっている暇があるのならば、魔術の探求に時間を充てたいと考える典型的な魔術師だ。そのためここ最近はずっと不機嫌なのだが、それでも与えられた職務は完全にこなすあたり根は真面目なのだろう。

 

「――――次の仕事場は大日本帝国だ」

 

 冥馬が研究室に足を踏み入れた途端、余計な前置きは不要とばかりにデイネス・エルメロイは言い放った。

 

「日本……日本ですか。この前は連中がパリ地下に建設中だった秘密基地を焼き払ったりしましたが、お次は日本ときましたか」

 

「喜べ。これで晴れて帰国する理由ができたぞ。もう煩わしい視線に晒されることもあるまい」

 

「まぁそれは有難いことですがね。連中、今度はなにをやらかしたんですか? 封印指定の魔術師の次は、京都へ行って陰陽師でも味方に引き入れる算段ですかね」

 

 冗談めかして、洒落にならないことを言う冥馬。

 魔術の総本山たる時計塔だが、決して全ての神秘が時計塔に集っているわけではない。呪術の分野ではイスラム圏に大きく遅れをとっているし、東洋に根付いた独自の魔術基盤は西洋魔術を主とする時計塔とは相容れない間柄だ。ナチスがそんな連中までも味方に引き入れてしまえば、最悪の場合、勢力図が一気にひっくり返ってしまう。ただでさえ時計塔に並ぶ三大部門の一角たる『彷徨海』がナチスに近付くような姿勢を見せ、トゥーレ協会に至っては完全に取り込まれているのだ。これ以上の戦力がナチスに集うのは、時計塔としては看過できないだろう。

 

「心配無用だ。既に法制科や呪詛科が連中との話はつけている。彼等がナチスに参加することは有り得んよ。組織に属さない一部のはねっかえりは知らんがな」

 

 戦争など碌でもないものだが、敵対派閥とも利害を超えて団結できるのが唯一の利点だ。デイネス・エルメロイは皮肉交じりにぼやいた。

 時計塔には血統主義の貴族派、才能主義の民主主義派、派閥抗争に無関心の中立派の三つの大派閥があるが、うちデイネスのアーチボルト家は貴族派に属している。

 だが現在は時計塔全体がナチスとの戦争状態にあるため、一切の派閥抗争は休戦状態にあった。そのため貴族派のデイネスが、さしたる代価もなしに中立派の呪詛科に指示を出すという事も今は可能なのだ。共通の敵を得る事で団結するのは、表社会も魔術社会も同じだったといえるだろう。

 

「私がお前に依頼するのは、ナチスに所属するとある魔術師…………いいや、怪物の討伐だ」

 

「……! 怪物、ということは」

 

「ああ、察しの通りだ」

 

 封印指定を喰らった魔術師達や、戦場を渡り歩いてきた魔術使い達。そんな彼等の中にあってなお怪物と称される男。そんな者は冥馬の知る限りにおいても多くはない。中でもナチスに属するという条件を加えれば、該当人物の名前は一つだけである。

 デイネスがテーブルに置いた一枚の写真。そこに美少年にも美少女にも見える中性的な容姿の怪異が写っていた。

 

「〝死徒〟ベルンフリート・V・D・ローゼンハイン。奴が極秘裏に日本へ入国したという情報が、こちら側のスパイから伝えられた」

 

 この世界に血を吸って生きる吸血種は数多くいるが、その中で最も教会が敵視するのが死徒だ。

 その力は生身で鋼を引き裂くほど強く。その目は光なき世界ですら万象を捉え。その肉体は人間の血を吸い続ける限りにおいて不滅。

 一般人が抱く吸血鬼というイメージに、彼等の特性は合致する。細かな差異はあれど、そのものとすら言っていい。特にベルンフリートという『吸血鬼』はそれが顕著だ。

 

「ナチスは魔術師以外にも異端の化け物をも自陣に取り込み勢力を拡大したが、ベルンフリートはその中でも指折りだ。なにせ一時期は〝死徒27祖〟入りすら噂された真正の怪物だからな。噂では思想が根本から祖と相容れず破綻したらしいが。ともあれ純粋な強さという点ではロディウス以上。ナチスにおける最大戦力の一人といえる。

 ベルンフリートだけではないぞ。ロディウス・ファーレンブルクや、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアなども日本へ向かっているらしい。果たして何のためだと思うかね?」

 

「まさか――――」

 

「そうだ。連中の目的は〝聖杯〟だよ。遠坂の四代目」

 

 アーネンエルベが主導で行っている世界各地の聖遺物の収拾。中でもナチスと最大幹部のヒムラーが血眼になって探している特一級の聖遺物こそが〝聖杯〟だ。

 そして今正に極東の島国では『聖杯』という偽りの願望器を巡った殺し合いが繰り広げられようとしている。

 

「ナチスが聖杯戦争に介入してくると?」

 

「その通り。だからこそ君を呼んだのだよ、四代目。連中の目的が『聖杯』となれば、君も知らんぷりはできまい。ナチスが『聖杯』を使って何をしようとしているのかは分からないが、どうせ奴等の事だから碌なことではないだろう。我々時計塔としても極東の魔術儀式程度に目を向けている余裕などないのだが、物が聖杯でそれをナチスが狙っているとなれば目を逸らすわけにもいかん。

 主君(ロード)の一人として正式に依頼しよう。直ぐに日本へ発ち、連中の企みを阻止せよ」

 

「―――――――」

 

 正直な話、この依頼を断るという選択は冥馬には元からありはしない。

 令呪が宿らなかったことで聖杯戦争から戦わずして脱落した冥馬にとって、歪んだ形でも聖杯戦争に参加する最後の機会である。なによりもナチスの企みが冥馬には気にかかった。

 ここ最近の戦いでナチスの連中がどれほど危険なのかは身に染みて理解している。父に限ってよもや遅れをとることはないと信じたいが、戦いに万全はあっても完全などありはしない。ナチスの動きによっては、父・静重を含めたナチス以外の全マスターが全滅ということも大いに有り得るだろう。

 ロディウス・ファーレンブルク、ベルンフリート・V・D・ローゼンハイン、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。この三人はそれだけの恐ろしさを秘めた魔人達だ。

 だが、

 

「それでちゃんと『見返り』は弾んで貰えるんでしょうね、エルメロイ教授」

 

 冥馬はニヤリと口端を釣り上げ、エルメロイ教授に報酬の催促をする。

 幾ら遠坂の四代目として受けることが確定した依頼でも、無料働きというのは御免だ。搾り取れる時にきっちり搾り取る。それが遠坂冥馬なのだから。

 

「これから相手するのはナチスの暗部に君臨している化け物どもだ。そんな化け物どもとこれからやりあうかもしれないんです。アーチボルト家の七代目ともあろう御方が、まさか褒賞をケチるなんて見っとも無い真似はしないでしょう?」

 

「―――――〝王冠(グランド)〟の階位。それでどうかね?」

 

「ほう」

 

 これには冥馬も目を丸くする。王冠の階位は魔術協会における最高位の称号だ。時計塔の歴史上でも授与された者は数少ない、最高峰の魔術師の証である。

 その下には『色位(ブランド)』と『典位(ブライド)』があるが『王冠(グランド)』を与えられた者は極端に少なく、幻の階位の扱いを受けており事実上の最高位は『色位(ブランド)』だ。現在の冥馬は色位(ブランド)。いずれ将来的に『王冠(グランド)』を目指すつもりだった冥馬だったが、こうも早く機会が訪れるとは流石に予想外である。

 

「クロウリーを追い払って『色位(ブランド)』を得た時も思いましたが、時計塔も階位を安売りするようになりましたね」

 

「……戦時だからな。利己的な魔術師を戦いに駆り立てるには、それなりの餌が必要になる。金や領土は有限だが、称号は無料(タダ)だ。それと一つだけ断っておくが、確かに私は階位を安売りしているが、能力の伴っていない者には売ることすらせん」

 

「嬉しいことを言ってくれる。お蔭で――――この依頼、引き受けない理由がなくなった」

 

「よく言う。私が逆に『関わるな』と言ったところで、無視して向かっただろうに」

 

「足は用意して下さるんで?」

 

「ああ。チェンバレン首相に話をつけておいた。空の旅を楽しんでくると良い」

 

「途中で撃墜されないことを祈りますよ」

 

 飄々と言いながら、派手な紅いテンガロンハットを深く被り直す。

 家訓の手前、余裕気に軽口を叩いてみせたが、今度の仕事は嘗てないほどに危険なものだ。遠坂冥馬の中の客観的な思考回路は、五割の確率でもう自分が時計塔へ帰って来れないと判断している。残り四割は死体すら残らず死ぬ可能性で、生きて戻れる確率は一割といったところか。しかし死ぬことを恐れていては、魔術師なんて異端者はやってられない。

 

「『王冠(グランド)』を獲ったら、次は三原色の『赤』でも頂きにきますよ。では教授、少なくとも来年には戻りますよ」

 

 まるでこれから旅行にでも行くような気軽さで、けれど心の内では鉄の覚悟を決めて、遠坂冥馬は出陣する。

 

「――――四代目、忠告だ」

 

 背に届いてきた恩師の文言に、足を止める。

 

「〝結社〟には気を付けろ。特にその〝長〟にはな」

 

 

 

 これまでに召喚されたサーヴァントは六騎。

 聖と狂の二つの貌をもつ剣の英霊。

 原初にして至高の鍛冶師たる槍の英霊。

 英雄の代名詞たる華々しい弓の英霊。

 真白き世界を支配する妖しい騎乗兵。

 人知れず闇に潜みし暗殺者は召喚されており、アインツベルンは災厄の復讐者(アンリ・マユ)を呼び寄せた。

 つまり現世に召喚されているサーヴァントは全部で六騎。そのことを聖杯戦争の監督官を仰せつかった言峰璃正は掴んでいた。

 といっても別にサーヴァントを招いたマスター達全員が、律儀に教会に報告に来たわけではない。

 聖杯戦争の参加者は教会に予め届出をする決まりが、この第三次聖杯戦争からは定められているが、嘆かわしい事に現状でそれを守っているのは始まりの御三家のマスター達だけである。

 だが監督役にはマスターの報告がなくとも、召喚されたサーヴァントのクラスと数を知るため『霊器盤』という道具が与えられていた。これがある限り何処で何を呼び出そうと、監督役には筒抜けだ。

 

「召喚されたのはセイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、アサシン。そして復讐者(アヴェンジャー)なるイレギュラークラス。残る基本枠はキャスターとバーサーカーですが、どうするのですか? 遠坂静重殿」

 

 璃正はサーヴァントを呼び出すための魔法陣を前にして佇む『男』に視線を向けた。

 皺の多い顔と完全に色素の抜け落ちた白髪は明らかに老人のそれ。だがその男がもつ巌のような佇まいが、彼のことを『老人』と呼称することを躊躇わせていた。

 男の名前は遠坂静重。遠坂冥馬の実父にして、遠坂家の先代当主である。

 

「最弱のクラスと呼ばれるキャスターは論外。魔術を得意とするキャスターでは、対魔力をもつ三騎士には到底勝てん。かといってバーサーカーというのも難しい。息子ならまだしも、あれの制御は儂のような老骨には手に余る。

 となればアインツベルンがやったように儂もイレギュラークラスを呼ぶ他あるまい。あの英霊を呼ぶに最も相応しいセイバーが、既に埋まってしまったのだからな」

 

 遠坂冥馬が入手し、静重に譲った聖遺物は『鎧の破片』だ。

 その鎧の持ち主の名はアーサー・ペンドラゴン。ヘクトール、カエサル、イスカンダル、シャルルマーニュなどと共に九偉人に数えられたブリテンの伝説的君主だ。

 円卓を束ねた騎士王であるのならば、最も相応しい器はセイバーなのは疑いようがない。けれどサーヴァントのクラスは原則として重複しないため、もはや騎士王をセイバーで呼び出すことは不可能だ。

 かといって騎士王をバーサーカーで招いても真価を発揮させることは出来ないだろうし、キャスターの適正もないだろう。

 であれば基本七クラスから外れたイレギュラークラスで呼び出すしか方法はない。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 言峰璃正は遠坂静重が行う召喚を黙して見守る。

 中立の監督役である璃正が、特定のマスターの召喚の儀に立ち会うというのは助力行為と受け取られてもおかしくないことだ。だが聖堂教会に忠実な璃正がこんなことをしているのには理由がある。

 

〝聖杯が最も相応しい者、つまるところ教会にとって不都合にならない者に渡ること。それを選定するのも君の仕事だ〟

 

 冬木へ赴く前に璃正が上司から念押しされた言葉である。そしてこの密命には言峰璃正も頷いていた。

 中立の監督役という立場にいるものの、璃正が最も重視するのは聖杯戦争の参加者が正々堂々と快適に殺し合いができる場を提供することではない。聖杯戦争が過不足なく、犠牲者少なく終わることだ。

 聖杯がもしも御三家の宣伝通り万能の願望器としての力を持つのならば、危険な思考をもつマスターには決して渡してはならない。それこそ中立の立場を放棄しても止めなければならないだろう。

 その点、遠坂静重は安心だ。

 彼が聖杯を用いて行うことは『根源の渦』――――真理への到達である。『根源』へと至ることは魔術師の悲願ともいうべきものだが、対する教会の側は『根源』には一切興味がない。重要なのは遠坂静重の願いが、この世界そのものには何の影響も与えないという一点である。

 人柄に関しても静重は魔術師としては異端なほどの人格者なので問題はない。自らの責務と義務へのひたむきな真摯さは、本来魔術師の敵であるべき璃正すら尊敬の念を覚えた程だ。

 遠坂静重ならば聖杯を手に入れても問題ない、否、遠坂静重こそが聖杯を得るべきだ。璃正がそう思ったことは至極自然なことだっただろう。

 故に璃正はこうして静重のことを微力ながら援助しているわけだ。召喚されたサーヴァントの情報を流しているのもその一貫である。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ」

 

 詠唱は進む。

 これから訪れる強力な魂を察知してか、霊器盤がカタカタと忙しなく震えている。

 溶かした宝石で描かれた赤い魔法陣は、それが招きよせられる英霊の魂の色なのか蒼色に発光し始めていた。

 そして魔法陣へ集まったエーテルが弾ける。

 

「天秤の守り手よ―――!」

 

 遂に霊器盤が最後のサーヴァントが召喚されたことを告げる。

 まず目についたのは夜空で光る星を思わせる金砂の髪。瞳は海のように青く、清廉な風を思わせる。手に持つのは、黄金の刃。

 がしゃん、と無骨な音が酒蔵に響き渡った。

 

――――息を呑んだ。

 

 見た目こそ人間の形をしているが、その身に宿す魔力の密度が桁違いだ。

 これこそがサーヴァント、人間の身でありながら魂を精霊の粋にまで昇華させた者。

 蒼と銀、二つを基調とした甲冑を纏う『騎士』は、静重を値踏みするように見据えた。

 

「サーヴァント、キャスター。召喚に応じて参上した」

 

 魔術師(キャスター)という騎士王にあるまじきクラス名を、さも当然の如く蒼い騎士は名乗る。

 静重と璃正は驚愕し、霊器盤へ視線を送り――――蒼い騎士の言葉が真実であるという証明を目の当たりにした。

 

「馬鹿、な……。騎士、王が……キャスターだと?」

 

 一つの境地に達し並大抵の事では動じない静重だが、これには動揺を隠す事が出来なかった。キャスターはそれを見抜いてか嘆息しながら口を開く。

 

「…………さて。この様子だと『アーサー王』がキャスターとして呼ばれたことに驚いているらしいな。だがお前たちの質問に応えてやるのは後だ。手始めに通過儀礼をこなさなくてはならん。なんとも阿呆臭い上に面倒そのものだが、こういうものは一度通らねば事を始められんからさっさと済ますぞ。

 では気を取り直して問おうか。そこの老い耄れ、お前が俺のマスターだな?」

 

 これにて七騎全てのサーヴァントの召喚が完了する。

 集まった者は七人の魔術師と七騎のサーヴァント。求めし聖杯は一度きり。

 汝、聖杯を欲するのであれば。自らをもって最強を証明せよ。

 此処に第三次聖杯戦争は開幕した。

 

「そして――――」

 

「終わりだ」

 

 未来にて盤上を回想する黄金と、未開にて盤上を予想した白金は共に哂った。

 

 

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