ほぼ一人しかしゃべんないけど
「ウェン!お皿もっと持ってきて!みー!味噌!!」
ウェン「いわれたときにはすでにこうどうはおわっているのです!」
みー「みーがみそをもってくるってちょっとしゃれっぽいです!!」
食堂が始まって三日目の土曜日、十一時四十分、配給前の厨房はいつも戦場だ。
みんなもトテトテとがんばってくれている。
「「「「「「完成!!」」」」」」
今日のお昼ご飯は、ご飯と大根の皮のすまし汁、大根と八百屋さんでただでもらったキャベツの外側の味噌いための、予算に優しいながらもご飯が進むメニューとなっている。
後は食べに来てくれるみんなを待つだけなのだが
アン「きょうもですかね……」
三日目にしてすでに大きな問題にさしかかっていた。
にー「おつかれさまです、どうぞです!」
「……ます。」
「…」
「……」
「……」
食堂内にいっさいの会話がないのだ。
全員が食事には来てくれる。だが本当に食事のためだけでなにも話さずに食事をおえ部屋に帰っていく。
いまの彼女たちは本当に兵器のようであった。
二時十五分
出撃や遠征がある子たち以外が食事を終えたことを確認し清掃にはいる。
家にあった自分の本やゲームなどを置いてみてはいるがこのままでは誰も使わないだろう。
スー「せいそうおわったのです。」
「ありがとう、では全員集合!!」
厨房から少し歩いたところにある部屋、元は第二食品貯蔵庫として使われていたところにベッドと棚を置いた自室に妖精さんたちと移動する。
「ではこれから、食堂班総員会議を行う。議題は「まじどうする?」だ!!」
アン「おいしいごはんつくってもあじわってもらえなければいみがないです。」
にー「おもっていたよりじたいはしんこくです。」
「そこでだね諸君、前々から話していたあれを明日作ろうと思う。」
すー「ついにあれのでばんですか」
みー「まいにちしゅにんといっしょにかよっただけあってけっこうあつまったです。」
「じゃあみんな、明日の試みが成功して少しでも艦娘の皆さんのちからになれますように」
「「「「「「えいえいおー!!」」」」」」
翌日午後二時三十分
普段なら片づけも終わりつかの間の平穏な時間であるはずの厨房には香ばしいにおいが漂っていた。
「第二陣あがったよー」
みー「さとーふるですよー」
作っているのは食パンの耳のラスク風
パン屋さんに何件もかよいもらったり安く売ってもらったパンの耳、
それを揚げて砂糖をかけただけの料理だが、
自分にとってはよく食べた味でありおやつにぴったりだと思っている。
「さてと、じゃあ決戦に行きますか!!」
すー「ぜんいんのおへやのばしょのちずです。」
アン「きょうはぜんいんにちようびだからいるとおもいます。」
できあがったラスクを袋詰めし、ワゴンに乗せる。
「よしっ!」
深呼吸を一つすると歩きだした。
「……はい」
ノックをしてしばらくたつと艦娘が顔を出した。
精一杯明るく言う。
「こんにちは青葉さん、きょうはいつもがんばっている皆さんにおやつを持ってきました。部屋の皆さんにもこれ、渡してあげてくださいね!」
そういって部屋の人数を再度確認、3つの袋を渡す。
「食堂に来てくだされば揚げたてのお代わりを用意しますよ!」
「……どうも」
「いえいえ、では!」
扉が閉まる。
「これで最後の部屋だよね?」
アン「そのとーりです。」
受け取ってもらえはしたがみんないまの青葉さんみたいにあまりよろしくない反応だった。
甘いものが好きじゃないってことはないだろうが、女の子だし。
「とりあえず帰ろうか、そんでみんなでラスク食べようか?僕たちにもおやつあってもいいよね!」
そういって笑う。
ウェン「むしろなければならない、これじゅうよう。」
みー「しゅにん!らすくげーむしましょう。りょうはしからたべるやつ!」
スー「みー、おちつくです。しゅにんとみーじゃくちのさいずちがうです。」
みんなもテンションが上がったようだ、おんなのこ?だし。
ウェン「じゅっぷんごなのです。」
アン「だれにむけてはなしてるですか、うぇん?」
みー「わたしのくちのおおきさじゃくわえるのがやっとでたべすすめることなんてできなかったです」
スー「だからいったです。」
みんなで残りのラスクを食べていると(みんなには細かく割ったものを)
食堂の扉が開く音がした。
「「「「「「!!」」」」」」
思わずぜんいんでそちらの方をみてしまう。
入ってきたのは
「……」
桃色の髪を持つ駆逐艦、漣さんだった。
彼女はうつむいたままでこちらまで歩いてくると、
「…………おかわりください、」
自分の罪を吐き出すかのようにそういったのだった。
うれしい、やばい、めちゃくちゃうれしい。
お代わりをする。つまりはおいしいと思っていたわけで。
「はい!お代わり揚げたて、すぐ支度します!」
にー「もう油加熱OKです!」
ウェン「すでにこうどうははじまっているです!」
「よくやった!!優秀!」
調理班のテンションもアゲアゲのままお代わりの制作は完了したのだった。
「はい、どうぞ!!熱いので気をつけて!」
「…ありがとうございます」
コップにさしたお代わりを渡す。
彼女は小さくお礼をいうと、
その場で一つ口に含んだ。
サクサクという音が響く、下を向いたまま飲み込むとコクリと小さなのどが動いた。
「……甘いです。」
「そうですか。」
「…甘いです。」
「よかったです。」
「いいのかなぁ……しあわせで。」
「いいんですよ。甘いものを食べると幸せになるのが女の子。そしてあなたは女の子です。兵器じゃない。」
「…甘いです。…おいしいでず。……じあわせです。」
床に落ちる涙は彼女に心がある証拠だ。
にーが無言でタオルを持ってきてくれた。
「ほらほら、涙を拭いてください。女の子の涙は軽々しく見せちゃいけませんよ。」
そういってタオルを渡そうとすると、腕を強くつかまれて引っ張られた。
タオルが受け取ってもらえず床に落ちる。ごめんよ、にー
「肩、かしでください」
「あなだが隠してくだざい。おんなのこが泣いていたらかだをかすものでず。」
なるほど、これは配慮が足りなかった。
無言で小さいからだを抱き寄せる。
「ほら、どこの世界にこんなに暖かくてかわいらしい兵器がありますか。」
彼女の体は思い切り抱きしめたら折れてしまいそうなほど華奢で、それでいてしっかりとした暖かな熱をもっていた。
少し高めの体温。 彼女が生きている証拠。
「あだじっ!!へいぎじゃなぐでっ!!でもていどぐはへいぎっでいっで!!かなじくでっ!!つらぐっで!!でもわだじはみんなをまもなあぎゃっでおもっで!!がんばって!!やっばりづらぐって!!」
幼子のようにしがみつき、言葉をぶつけてくる彼女。
どれだけ彼女がつらかったのかなんてわからない。
だけど
彼女の背中を軽くたたき空いた方の手で髪の毛を梳くように頭を撫でる。
「うわぁあぁあぁぁぁぁーぁ!!つらがったです。がなじがっだでず!!じぶんがほんどうにへいぎ、なんじゃ、ないかっで!!」
彼女の悲しみが少しでも消えるまで、この涙が止まるまで、そばにいようと思った。
月曜日 朝四時半
「アン、状況報告。スー、骨持ってきて骨。」
アン「かわむきあとすこしでおわるです」
スー「いえっさーですしゅにん」
この時間はまだ余裕があり、下拵えや冷めてもいいものの調理を笑いながら進めている。
これが一時間後には戦場に変わるのだから不思議なものだ。
と、
「ご主人様働きはじめハッヤー!!こちとら寝起きどっきりのつもりだったのになあ……」
「おはようございます!!これぐらいに始めないと間に合わないんですよ。それよりもその格好は?」
彼女か厨房に顔を見せたこともびっくりしたのだが、一番驚いたのは彼女の衣服、黒を基調としたメイド服? だろうか。
「これは、まだ元気だった頃にネットで頼んだ本物のメイドさんも使うメイド服、デザイン、機能性、耐久性、そのすべてがコスプレ用なんかとはけた違いなのですよ!!」
なるほど、確かによけいなフリルなどがなく洗練された印象を受ける。
「そして、ご主人様を手伝うのはメイドとして当然のことなんです!
というわけでご主人様、仕事プリーズ!!」
?
「手伝ってもらえるのはありがたいのですが、私は上司ではないですよ?どちらかというと提督さんの方が立場的には主人かと?」
「もぅ!鈍い人ですねぇ、メイドって言うのは自分の好きな主人に仕えるんです。あと敬語いらないです。」
「私、漣は今日からあなただけのために戦います。私を兵器から女の子に戻してくれたあなたのために。
女の子としての私はすべてあなたのものです。」
そういって柔らかく笑う漣さん
やはり女の子には笑顔が似合う。
「お力になれてよかったです。忙しいので覚悟してくださいね?」
「……あるぇー?いまので何で気づいてくれないかなぁ?結構一世一代の覚悟だったのになぁ……」
ウェン「どんかんはひっすすきる」
アン「ふつうになかよくなれたぐらいにしかおもってなさそうです」
みー「さざなみさんとはこいのらいばるです。」
スー「みーはむりだとおもうです。」
急に後ろを向いて何かをつぶやき出す漣さんと、その周りに集まる妖精のみんな、ガールズトークという奴だろうか、男はいるべからずみたいな空気が漂っている。
「さて、皆さんあと一時間です。がんばっていきましょう。」
厨房にはまた忙しい音が響き始めた。
たった一人だけど大きな一歩!!
「支度も片づけも早く終わったらスマブラやりましょう!異論は認めないです!」
ウェン「ようせいようのこんとろーらないかな……」
二時間後
「これ、これから片づけも……ご主人様たちの体力がやばい、いい意味でやばい。」
つぶれた蛙のようになって突っ伏す漣さんが一人できあがった。
「さて、早めにおわらせてスマブラと行きましょうか!!」
「は、はひぃ」
「あと、、敬語いらないで、、、す、、がくっ、、」
やっぱり妖精さんもヒロインでいいんじゃないかな(開眼
前回はたくさんの感想と評価をありがとうございました!
身に余る光栄です!!