貧乏食堂今日も頑張る!! 受験凍結中   作:くずゆ

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すごい難産でした。

ボリュームもいつもの二倍近くあります。

まぁとりあえず
さいきん妖精さんへの愛が止まらない男の駄文をお読みください


そぼろあんかけとオリーブオイル

アン「いってらっしゃいです」

 

 

「いってきやがれですご主人様。」

 

 

ウェン「ほんとうにおともしなくていいですか?」

 

 

「はい、きょうはあいにくの雨ですからね。みんなの体にあったサイズの傘があればいいんですが。」

 

 

午後二時、曇天の下に小雨が降りしきる。

だがこの時間は調理班が買い出しにいけるわずかな空きの時間

ここから五時までの間に数日分の食料を買わなければならない。

 

財布と鍵、それと傘を持ち買い出し用のバンに乗り込もうと鎮守府正面の扉を開けた。

 

 

少女はそこに立っていた。

 

 

「なにしてるんですか?時雨さん」

 

時雨さん、犬の耳のようにはねた髪と駆逐艦にも関わらず冷静さをたたえた涼しげな目をした女の子。

 

 

「とくに…なにも…」

 

確かに彼女はなにもしていなかった。小雨の降る中傘もたずに立っていただけだ。

 

 

「なにをしてるんですか!冷えちゃいますよ!ああもうこんなに濡れて。」

 

 

小雨とはいえ雨は雨、彼女の髪は濡れ、寒さから鼻は赤くなっていた。

急いで傘の下に入れ片手でハンカチを取り出し濡れた部分を拭いていく。

 

 

「だいじょぶだよ、今日は出撃も遠征もないから。」

 

 

「風邪を引いたらどうするんですか!?」

 

 

「大丈夫、僕らは人間より丈夫にできている。そうそう病気になんてならないものさ。」

 

そう話す彼女の目は冷たくて、まるで心まで冷えきってしまったようで

 

「それでも女の子が体を冷やしちゃいけませんよ!!ああもうハンカチじゃ足りない!」

 

 

「え?ちょっ、ちょっと!なにを?」

 

傘を肩と首で挟み両手で彼女を抱えあげる。

やはり体も冷えてしまっているようだ。

 

 

そのままバンまで彼女を抱えあげたまま運び、後部座席に放り込んだ。

暖房をつけ、シートの下に常備してあるブランケットを取り出す。

 

 

「ほら、これにくるまって。乾くまでじっとしていてくださいね?」

 

 

「別にいいのに、変な人」

 

そうつぶやく彼女、どうにかして元気づけてあげたいがなにができるだろうか。

 

まぁとりあえず

 

「今日は出撃も遠征もないんですよね?」

 

「うん、」

 

「じゃあ買い物につきあってくださいな、今日は本当は漣さんがついてきてくださる予定だったんですが演習が入っているようで」

 

 

「……兵器はこの敷地内からでることはできないよ。」

 

 

「保護者同伴なら外出オッケーです。それと兵器じゃなくて女の子ですからね?」

 

 

アクセルを踏み、車は静かに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、隣に置かせてもらいますね?」

 

 

商店街で買ったりもらったりしてきた荷物をこれまたいただいた大きな段ボールに詰め、時雨さんの隣に置く。

 

ちなみに、傘が一つしかなかったので時雨さんには車内で待っていてもらった。

 

「ずいぶんとたくさん買うんだね、」

 

段ボールの大きさに少し驚いている様子の時雨さん

何事にも興味を持つことはいいことだ。

人間らしいし話の種になる。

 

 

「それはそうですよ。なんたって鎮守府の皆さん全員分の食料ですからね!特売の野菜に少し割れてしまった卵、パンの耳や挽き肉など、買っておきたいものはいろいろありますからね。」

 

 

「ずいぶんと安いんだね、やっぱり……」

 

 

そういうとうつむいてしまう時雨さん。

せっかく話題になりそうだと思ったのに…

まぁたしかに育ち盛りの女の子にこんな貧相な食材ではつらかったかもしれない。

あの安かった干物ぐらい買っておけばよかったな…

そう思いながら次の目的地にむけて出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、つきましたよ!」

 

 

やってきたのは少し車を走らせたところにあるショッピングモール。

食品は商店街に比べると少し割高だが、商店街ではそろわないものやパンの耳を格安で商品にしているパン屋さんがあるので重宝している。

 

ちなみに時雨さんはさっきからだんまりだ。

いろいろ話しかけてみるもそっぽを向かれてしまう

 

「先に走っていってますから、この傘を差してあとから来てください。」

 

 

「もういいよ。」

 

冷めた瞳ではき捨てるように言う時雨さん。

 

 

「そんなこと言わずに行きましょうよ、きっと楽しいですから!」

 

 

「善人ぶるのはもういいっていってるんだ。」

 

 

「君に僕たちの何がわかるんだい?わかるはずがない。わかろうともしていない。」

 

 

「それもそうだよね。君が考えているのはいかに材料費を安くして自分たちの取り分を増やすか、そんなところだろう?」

 

じぶんたち……か…

 

「僕たちにそんなご飯を食べさせて自分たちは何を食べているのやら、本当に失望するよ。

そのうえ善人ぶって僕たちからも好かれようとするなんて、都合がよすぎると思わないかい?」

 

 

一つため息を吐き出すと窓の外を眺めだす時雨さん。

 

 

 

偽善者、確かにそうかもしれない。

彼女たちの悲しみを完全に理解することも、肩代わりをすることも僕にはできない。

 

いってみれば部外者に等しいのだ。

 

あの食材をみて彼女が誤解をしたのも無理はない。

ただでさえ少ない予算をさらに削って買い物をしているのもまた事実だからだ。

 

 

 

 

ただ、

 

ただ一つだけ許せないことがあった。

 

 

 

「このショッピングモールには洋食店などが入っています。」

 

 

「…」

 

 

何を言っているのかわからないといった様子の時雨さん

かまわずに言葉を続ける。

 

 

「そこで食事をすると平均で800円ほど、三食だとこれぐらいです。」

 

仕入れ用の電卓に数字を打ち込み彼女に見せる。

 

「一方私たちの食堂の一日分の食費を計算するとこの程度、私も含めて一人当たりはこの程度です。」

 

 

「これで、一日分の食事を用意しなきゃいけないの?」

 

少し驚いた様子の時雨さん

 

「今は備蓄のお米や商店街の皆さんのご厚意で何とかやっていけています。」

 

 

「いざというときへの備蓄や年中行事への蓄えを考えるとこれくらいしか予算が残りません。たとえばお花見もできないなんて悲しいじゃないですか?」

 

 

「……ごめんなさい。」

 

うつむいたままそう言う時雨さん。

厳しい言い方になってしまっただろうか、でも本当に言いたいのはこのことじゃない。

 

 

「いいんですよ、ただでさえ少ない予算を削っていたのは事実ですし、それに、

僕は偽善者と言われても仕方がありません。」

 

 

「僕は皆さんの悲しみを完全に理解することはできないんだとおもいます。端から見て同情してるようなものだと言われても仕方ありません。

 

僕のことは信じてもらえなくてもかまいません。

でも、

僕を否定しても、僕たちのやってきたことを否定しないでほしい。」

 

 

「僕たち…?」

 

 

「そもそも僕は、低予算で多くの燃料を作れと言われてここにきたんです。そのときに迷っていた僕の背中を押してくれたのが妖精のみんなでした。」

 

 

「彼女たちは僕がここに来るずっと前から皆さんのことを心配していました。君たちのために涙を流してきました。

今の食堂のメニューはだいたいは僕が考えたものですが、みんなが夜遅くまで考えて作ってくれたレシピもあるんです。」

 

 

「そんな彼女たちの思いを無駄にしないでほしい。」

 

 

僕は否定されてもいい。

ただここまでみんなでがんばってきた日々を否定されるのがどうしようもなく悲しかった。

 

 

彼女はしばらくきょとんとしていて

 

 

「ふふっ」

 

 

寂しげに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「………ほんとうに失望されなきゃいけなかったのは僕だね。」

 

 

「勝手に全部を諦めて、見守ってくれている人に気づきもしないで」

 

 

「手をさしのべてくれた人の、

あなたの優しさを踏みにじった。

 

取り返しのつかないこと、言っちゃった。」

 

 

「こんなんじゃ一人になるのも当たり前だよね。」

 

 

まるで自分をあざ笑うように言葉を紡ぐ時雨さん。

その瞳は悲しげで、まるでふれたら消えてしまいそうに見えて、

 

抱きしめることも、言葉をかけることも怖くって。

何もできずにただ見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

でも、きっと彼女は泣いている。

つらくて、悲しくて、どうしようもない気持ちを抱えながら

全部自分のせいだと考えることで涙をこらえている。

 

 

 

声をかけろ

 

手を伸ばせ!

 

早くしろ!!

 

みんなを笑顔にするって決めたんだろうが!!

ここで何もしなかったら彼女は一生自分を嫌ったままだ

救うことを怖がってどうする!!

 

 

 

 

後部座席に足を踏み出す

震える左手をそっと伸ばし、彼女の肩に触れた。

大丈夫、消えたりなんかしない。

まだ間に合う。

 

 

「一人じゃありません。」

 

「一人だよ」

 

「僕も、妖精のみんなもあなたを一人になんかしません。」

 

肩においた手を背中に回しゆっくりと引き寄せる。

 

「やめて、ください。僕はあなたにひどいことをいってしまいました。その事実は消えないんです。」

 

敬語は相手と距離をとりたいときにも使う。

そんな言葉が脳裏をよぎった。

 

でも、彼女の顔は寂しいままだから

 

「そんなことは昔の話です、それよりもあなたが悲しい顔をしている方がずっとつらい。」

 

「ほんとうに、やめてよ。君の顔を見る度に、僕が君にしたこと、君の親切を踏みにじって君に失望されたことを実感するんだ」

 

「たとえ時雨さんが僕に失望しようとも、僕が時雨さんに失望することはありません。だから、悲しみを一人で抱え込まないでください。」

 

彼女の細い腕がゆっくりと動きしがみついてきた。

 

「ごめんなさい。ほんとうにごめんなさい。」

 

「いいんですよ。」

 

 

「いつもありがとうって、サプリメントなんかよりみんなの一生懸命考えて作ってくれた料理の方がずっとうれしいって言いたいのに、今日食べた昼ご飯も思い出せないんだ。」

 

「今日の晩ご飯はカボチャのそぼろあんかけとニラ卵スープです。一生懸命作るのでたくさん食べてくださいね。」

 

 

「ひどいこといってごめんなさいって、償わなきゃいけないってわかってるのにあなたの名前さえ知らないんだ。」

 

「蜜瀬葵です。償いなんていらないので笑っていてくださいね。」

 

彼女は頭ごとこちらにもたれ掛かり

 

 

「少し胸を貸してくれないかい?次に顔を上げたときにはきっと笑っているはずだから」

 

静かに響く泣き声、その声がやんだときに僕がみた笑顔は、雨上がりの太陽のように明るく輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「葵さん、あっちでオリーブオイルが6割引だったよ。」

 

「ならパンの耳のガーリックトースト風とかもいいかもしれませんね。」

 

ショッピングモール内、やはり人と並んでする買い物は楽しい。

妖精さんとの買い物も楽しいのだが、どちらかというと肩にのせる感じなので隣を歩いてくれるだけでずいぶん変わるものだ。

 

「あとここで買い物が終わった後で行きたいところはありますか?すこしなら時間はありますよ?」

 

「本当?なら……ひとつだけわがままをいいかな。」

 

そう言って手を引かれてきたのは食料品店の向かいにある雑貨屋。

その中の装身具などがおかれているコーナーの一角を彼女は指さした。

 

「ここにあるものなんだけど、その、そんなに高くないと思うんだ。

だから、えっと、ひとつ僕に合うものを選んでプレゼントしてくれないかな。それだけで明日からがんばれそうなきがするんだ。」

 

「ええこれくらいならおやすいご用ですよ!」

 

ファッションセンスはあんまりないんだけどなぁ

そんなことを思いながら彼女に似合うものを選び始めた。

 

 

いろいろあったけれど今は彼女のそばに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前八時四十分

 

「それでは片づけも終了!!朝の作業」

 

「「「「「「おつかれさまでした」」」」」」

 

妖精さんたちとのミーティングも終了。

 

残りの時間はどうやって使おうかと考えていると食堂の方から声がかかった。

さわやかな笑顔をした少女、時雨さんだ。

 

「お疲れさま、今日もおいしかったよ。」

 

にー「ありがとうございます」

 

スー「きょうのおひたしはじしんさくです」

 

「ありがとうございます。早速つけてくれたんですね。それ、」

 

「葵さんにプレゼントしてもらったんだよ?いつでも身に付けていたいじゃないか。どうかな、なかなか似合ってると思うんだけど。」

 

 

さわやかに微笑を浮かべる彼女の首もとを飾っているのは黒いチョーカー

彼女には落ち着いた色が似合うと思って黒を選んだのは正解だったようだ。

 

シンプルな金属の留め具のみのデザインを持ち、しっとりとした光沢を放つそれは彼女の落ち着いたかわいらしさをいっそう強めているように感じた。

 

 

「ええ、とてもお似合いです。」

 

彼女はよかった、と微笑むと

 

「はい、僕にはこんな償いしかできないけど。受け取ってほしいな。」

 

小さめの紙袋を差し出してきた。

頬が少し赤らんでいるように見える。

 

「本当に償いなんていいのに、でもありがたくちょうだいします。」

 

紙袋を開けると中からは、

 

「鎖?」

 

ウェン「くさり」

 

アン「くさりですね、」

 

銀色の輝きを放つ、中指ほどの太さを持った鎖がでてきた。

少し戸惑っていると時雨さんが近づいてきておもむろに鎖を手に取り

 

 

カチャリ

 

 

鎖の先端についていた金具を自分のチョーカーの金具につなげた。

 

彼女の髪型と合わさってなんだか首輪を付けた犬みたいな……

感想を期待するように上目遣いでこっちを見てくるし…………

 

 

「せめてもの償いは僕、なんだけど気に入ってくれなかったかな……」

 

 

!!!!???

 

 

「いやちょっとまってください!!?せめてもの償いに自分を捧げるとか自分を安売りしすぎですから!!」

 

 

「いや、その、ね?人権を捧げようか、心を捧げようか、それとも体を捧げようか迷ったんだよ?でもやっぱり全部がいいかなって。」

 

 

「その三択がおかしいですからね!?え、今全部受け取っちゃったんですか私?」

 

スー「おどろきのあまりしゅにんのいちにんしょうがぶれてるです」

 

 

「返品は受け付けないよ?人権を捧げたから僕はもう君の命令にしか従わない、死ねと言われたらその場で死ぬよ。心はもうゴシュジンサマのものだから僕の世界はゴシュジンサマかそれ以外かの二択で分類されるし。」

 

「体ももちろん、今晩にでも使いたければ部屋に呼んでもらっていいよ?いつでも準備OKさ。むしろ呼んでほしいな。」

 

 

「やめてください年頃の女の子がはしたない!それにゴシュジンサマってなんか漣さんの呼び方と違うニュアンスを感じるんですけど!!?」

 

 

「ああ、なんていうかこの、すべてを捧げちゃった感、イイ。」

 

そう言うと、上気した頬に手を当てうっとりとする時雨さん。

そのしぐさ自体はとても可愛いのだけれども

彼女は今首輪をした状態で、しかもこちらが恥ずかしくなってしまうようなことばを、たぶん本気で言っているわけで。

 

 

「イイ、じゃありませんよ!!とりあえずその鎖外してください!」

 

「だってゴシュジンサマもさっき似合ってるって言ったじゃないかこの首輪」

 

「言ってませんよ!似合ってるっていったのは首輪じゃなくてチョーカーですから!」

 

 

みー「でもしぐれさんくびわびっくりするぐらいにあうです」

 

すー「みーはだまってるです」

 

 

「おまえには俺の雌犬ぐらいがお似合いだって、」

 

「それも言ってない!!!それに至っては完全な捏造ですよね!?」

 

「おっはよーございまー………          」

 

「ほらー!漣さん固まっちゃったじゃないですか!」

 

 

「このあと時間があったらこの鎖を引いてお散歩につれていってくれないかな」

 

「うん話きこう?」

 

「さすがに四つん這いは恥ずかしいかな、するなら夜に、ね?」

 

「きいて!?」

 

 

 

騒がしい食堂、うん理想の形ではあるんだけど

なんか違うような……

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと、飼い主がペットに敬語なんておかしいよね?」




と、いうわけで 冷静で堅実そうな人ほどボケに回ると面白い論者の小説でした。

書きにくいなぁと思っていると理由に気が付きました

妖 精 さ ん の 出 番 が 少 な い 

本当に優秀なコメディーリリーフですよ彼女らは、、

諸事情でしばらく感想の返信がしにくいのですが
実は一番楽しみにしているのが皆様からの感想を読むことなので大いに批評を、指摘を、要望を、感想を、ボケをしていただけるとありがたいです。


最後に!、、、、時雨さん、、あんまり暴走して小説にR15がつかないようにしておくれやす、、、
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