正直小説を書き始めて一番悩んだ話でした。
その分自分の中ではお気に入りです。
次の話はもうできているのでここまでお待たせしないと思います!!
あとお気に入り500突破です!!
ほんとうにありがとうございます。
このまま「コメント欄で人気投票」という夢をかなえるため頑張りたいと思います。
「よっしゃレべルアップキター!!これであのボスも余裕でしょ!! ね!ご主人様!!こっちきてちょっとみてくださいよこのステータス!!」
満面の笑みではしゃぐ漣、連敗を喫してからレベルを5も上げたらしい。
相当ボスに恨みがたまっているらしく、自分が直接戦うわけでもないのにシャドーボクシングなんてしている。
「ハイハイこっちは仕事してんだから後でね。」
毛抜きで魚の肋骨を抜き取りながら返事。
地元の漁師さんのご厚意で市場に卸されない有名じゃない魚、いわゆる雑魚、という奴をたくさんいただいたので仕込みをしているところだ。
こういう細かい作業は苦手ではないが何とも疲れる。
フランス料理なんかはみているだけで疲れる。
作っている人の技術は単純にすごいと思うが、おせちやクリスマスじゃあるまいし普段食べるものをあんなに飾る必要はあるのだろうか。
だいたいあの皿に飾ってあるソース、何につけて食べるのかそもそも何かにつけるべきなのかただの飾りなのかわかんないんだよなぁ。
「えー!?ちょっとぐらいみてくれたっていいじゃないですか!」
おっと、いけないいけない、考えごとに集中して手元が止まってしまっていた。全部下拵えしてすり身にしないといけないからたいへんだ。
もうあらかた終えたとはいえもう一度骨が残っていないかどうか確かめないとなぁ。
「あー、なんて言ってたっけこの魚、変な顔してるけどおいしいっていってたけど…」
「話を逸らさないでくださいよ!!それとその魚はヒメジですヒメジ。」
よしだいじょぶそうだ。一日置いて味がでてきたところで
つみれにすれば良し。
「えっとじゃあ、あの、何だっけ。」
「もう一匹のほうならウシノシタ。平べったい奴でしょう?」
「ああ、そうだったありがとう。」
少し怒りながらもしっかりと答えを教えてくれる漣。
最近漣とは具体的な言葉を出さなくても話が通じることがよくある。
なんだか仲良くなったしるしみたいで少しうれしい。
手を洗ったら強くなったステータスとやらを見に行こうじゃないか。
アン「ざいりょうのけいりょうおわったです。」
「お疲れさん。それじゃあ夕飯前の時間にまた集合で。」
にー「さざなみさんとしゅにんさん、なんだかふうふみたいです。」
ウェン「つーかーのなか。」
夫婦とはまたおおきくでたものだ。
そもそも艦娘って結婚はできるのだろうか。
ここのみんなは今までは出会いのチャンスがなかったわけだけど、町に出てすてきな出会いの一つでも見つけてほしいと思う。
だって女の子だし。
「ご主人様と夫婦とか、まぁいろいろと大変そうですねぇ」
「おいいろいろってなんだ。」
背中を向けたままやめやれと首を振る漣、
あの向こうでは人をくった笑みを浮かべているのだろう。
みー「ぜったいにやにやしてますね。」
「してませんって!!ほらほらこっちきて見てくださいよこのステータス!!」
若干早口にまくし立てる漣、さっきまで少し怒っていたのに調子の良いやつめ。
さてステータスは? お!!!
「これは!?
元々を覚えてないからよくわからん。」
「ズコー!!
えぇーー!?ひどくないですかぁ?」
そんないつもの感じで話していると後ろに影が落ちた。
背中に伝わってくる冷たく乾燥した敵意。
少なくとも時雨さんではない。
落ち着け。笑顔だ笑顔。
「いらっしゃ「うざい。」」
顔の横に響く鈍い音。揺らぐ視界とともに世界が傾ぐ。
遅れてきた鈍痛と頬に伝わる床の冷たさに
顔を蹴られて倒れている、という自分の状況を知覚した。
「ご主人様ッ!!」
一拍置いて状況を理解した漣が駆け寄ってくる。
「いきなりご主人様に何するんですか北上さん!!」
北上さん。巡洋艦、だっただろうか。
漣より少し年上に見える黒髪の少女で
気だるげにこちらを見下ろしている。
「いや、なんか楽しそうでうざかったんだよねぇ。」
だから、と言い加えて彼女は屈む、そして手に取ったのは
「やめっ!!「はいドーン。」」
ゲーム機のコード。
見たとたん何をしようとしているのかがわかった。
やめさせようと駆け寄ったところにまた蹴りが飛んでくる。
視界の端でテレビ画面が真っ暗になるのが見えた。
畜生、漣の努力と楽しみを無駄にしやがって。
「大丈夫ですか!!」
あぁごめんな漣、もうちょっと早くステータス見に行ってたらセーブぐらいはしてたかもしれないのに。
じっと見ていた北上さんが気にいらなそうに鼻を鳴らす。
「ずいぶんと良い関係だね。蹴られることがわかっていても止めるために飛び出した奴と、
さっきまでゲームではしゃいでたのにそのゲームなんて眼中にないほど心配してくれる奴。
羨ましくてむかついちゃうよ。」
怒りと悲しみ、いろんな感情が凝り固まって暗く沈んだ瞳。
「あんたはいったい何なのさ。」
吐き捨てるようにそういい残すと北上さんは寮のほうに去っていった。
足音が遠のく。
「あー、ウェン。袋に氷水入れて持ってきて。」
ウェン「はい!」
どうだろうか口の中は切れていないし内出血していないと良いけど…
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ああたぶん何ともない、けど、」
「「せっかくの5レベルが…」」
二人そろってため息をつく。
結構時間かかるんだよなぁ…
と、そこに
「ただいま、ゴシュジンサマ。」
遠征にでていた時雨さんが帰ってきた。
ってことはそろそろ夕飯を支度しないと。
「ゴシュジンサマ、お帰りのちゅー。」
はぁ、全くこの人は、
まぁいつも通りで安心したともいえる。
「そんなこと夫婦でしかしませんよ…」
「そんなことはないよ?たとえば疲れて帰ってきた従順なペットにとか。」
「夫婦みたいって先ほど例えられた私となら、ね!ご主人様?」
「さっきその例え嫌がってたじゃん…」
みー「しゅにんさんとふうふになるのはわたしです!」
それにしても時雨さんに蹴られた後がばれてないってことは
そこまで腫れてないってことか。
ばれなくてよかったなぁ。
時雨さんすごく心配しそうだし。
ウェン「しゅにん、けられたあとはどこですか
たのまれたものもってきたのではやくあててください。」
「蹴られた?ゴシュジンサマが?」
あ……
そのあと、北上さんの部屋に殴り込もうとする時雨さんを止めたり
なぜ話してくれなかったのかと涙目になられたりで大変だった。
こんなに心配してくれる優しい子だから話したくなかったんだけどなぁ。
時刻は九時少し前
漣や時雨が手伝ってくれたおかげで片づけもいつもより少し早く終わって今日の業務は終了となった。
さて、ここからが問題だ。
意を決して声をかける。
「じゃあ、二人ともお疲れさまでした!おやすみなさい!」
「え、僕はここに残るよ?少なくともゴシュジンサマが寝るまでは。」
「以下同文です。」
「でもお風呂とか、ほら、ね?」
「食事前に二人ではいってきた」
「以下同文です。」
「えっと、でも」
「ねぇ?ゴシュジンサマはぼくたちがここにいると邪魔?」
「ちがっ!そういうことじゃ…」
「じゃあここにいてもいいよね?」
「…はい」
完全敗北、そんな言葉が頭の中に浮かんだ。
アン「つめしょうぎみたいでした。」
まさにそんな感じだ。
ふと窓の外を見る、雲一つない夜空に煌々とした月が
堂々と、それでいて一人で寂しそうに浮かんでいる。
あぁ、なるべく帰らせたかったんだけどなぁ。
だって、何の根拠もないただの推論だけど、
あの人はまたここにくる気がする。
その目の中に隠れていた
「やぁやぁ、良い夜じゃん?」
寂しさと決別するために。
微笑みを保ったまま振り返る。
「いらっしゃい。本当に月がきれいですね。」
目線の先にはひらひらと手を振る北上さん
ゆっくりとこちらに歩いてくる。
と、時雨が北上の前に立ちふさがった。
「北上ッ…!」
「時雨さん、下がってください。」
北上さんをにらみつける時雨、
北上さんの顔にはっきりとした苛立ちが浮かんだ。
「駆逐風情が何の権利があってアタシを睨んでんの?
ちょっと前まで自分も同じような目をしていたくせにさ。」
「過去の自分は殴れないから、かわりに君を止めるだけだよ。」
「時雨さん!!下がりなさい!」
時雨さんがこちらをじろりと睨む
「彼女は昔の僕と同じだ。だから僕がわからせる。」
「下がりなさい。」
「でも…」
「下がりなさい。」
有無を言わせぬ口調で言い渡す。
時雨さんも不服そうではあるが従ってくれた。
時雨さんには未だに自責の念が残っているのだと思う。
たまに夜中、泣きながら部屋を訪ねてくることがある。
嫌われ、見捨てられる夢を見るらしい。
そしてたぶん原因はあの日、あの雨の日に彼女が言ったこと。
何度気にしていないと言っても優しさ故に罪悪感を持ってしまうんだろう。
でもね時雨さん、
昔の時雨さんや今の北上さんは間違っているわけじゃない。
こちらからわからせることはなんて何もないんだよ。
できることはただ一つ、
心を開いてくれるまで 傍に在る ということ。
一瞬ためらうような素振りを見せた後、
北上さんが口を開く。
「あの、さ。私のことをさ。
どうしようもなく、嫌いになってほしいんだ。」
悲しむような、あきらめるような微笑み。
「嫌です。お断りします。」
彼女は 「そう。」 とつぶやくと
机の上に置いてある箸入れから一本引き抜き
無造作にこちらに投げ渡した。
やまなりの軌道を描いて飛んできた箸を胸の前で受け止めた
時にはもう彼女のつま先が顔の横に迫っていた。
側頭部を蹴られ視界が一瞬ぼやける。
自分が傾いているのがわかるような間延びした感覚
頭をぶつけないようにして、あと。
「漣ッ!!!」
「…!!」
どうやら伝わったようだ
弾かれるように飛び出した時雨さんを漣が後ろから羽交い締めにして止める。
「漣!離して!!何で!!」
それでいい。彼女たちが傷つけあう必要なんてない。
「アタシはさ、ここで生まれて
辛いことも苦しいこともたくさんあった。
それでやっとわかったんだ。」
悲しい童話を語り出すような小さな声
「この世には三種類の人間しかいないって。
私たちを鉄と硝煙の固まりとしてみる奴
``おにんぎょう``と変わらない欲の対象としてみる屑
テレビの向こうのの病気の捨て猫を哀れむような傍観者
それだけが全てなんだって。」
立ち上がろうとついた手を払われ再びしりもちをつく。
「それが解ってからはね、幸せだった。」
「辛いことも悲しいこともなくなったんだ。
望まなければ失望しない。
信じなければ裏切りはない。
やっと平穏を、幸せを手に入れたんだ…!」
蹴りが鳩尾に入り息ができなくなる。
彼女の顔がゆがみ
瞳に折れそうなほどに切ない悲しみが浮かぶ。
「それなのに…幸せだったのに…!
あんたが幸せを壊したんだ!!
何度見てもどの種類の人間でもなくて、
同じなかまだと思っていた子たちも
幸せそうに笑ってて!!
やっと見つけたアタシの平穏を!幸せを返せ!!」
整った顔を激情にゆがめて狂ったように叫ぶ北上さん。
その中に抱えていた悲しみに締め付けられた心臓が痛い。
蹴られた痛みよりもずっと、心の奥が痛い。
振り出された彼女の足を両手で受け止める。
「…!!」
「違います。絶対に違います。
悲しみがないことが幸せなんじゃない!
そんな空っぽの幸せなんて僕は認めない!!
そんなものあなたにふさわしくない!!」
気圧されたように彼女が少し身を引く。
瞳の中の光が靄がかったようにぼやける。
「良いですかよく聞いてくださいよ…!
こんなんで嫌われるとか思い上がらないでください。
なんで蹴った人が蹴られる人よりも辛い顔をしてるんですか?
間違うなら堂々と間違ってくださいよ!!
そんな悲しい顔をされたら説教すら出来やしない!」
北上さんの顔が屈辱と怒りで真っ赤に染まり
次の瞬間には押し倒され彼女にマウントポジションをとられていた。
そのまま拳を振りおろしてくる。
「うる…さい…!
アタシは間違ってなんかない!!
つらくなんてない!!」
両腕で顔を守る。
むちゃくちゃに腕を振り回す彼女は
殺したいほど憎い相手を殴っているようにも、
幼児がだだをこねているようにも見えた。
「ふざけんな!!
変なことばかり喋って!!何も知らないくせに!!」
さすがに頭がぐらぐらしてくる。
意識が遠くなり床に頭をゴロリとつける。
少し視界が広くなった気がした。
あぁ、時雨さん。
そんなに叫ばないでください。
声が枯れちゃってるじゃないですか。
漣。
そんな顔をしないで。
唇をかみすぎて血がにじんでる。
あぁ…
「北上さん…。
泣かないでください。」
「泣いてなんかない!!」
少し勢いをなくした拳と一緒に熱い滴が降ってくる。
次第にその数は拳より多くなって、
少し赤くなった拳はだらりと垂れ下がった。
「わかってるんだ。」
「間違ってるのは、自分だって。
私が、手にしたのは幸せなんかじゃないんだって。」
嗚咽と一緒に言葉が漏れてくる。
ゆっくりと体を倒し肩に顔を埋めてきた。
熱くて、湿った息が伝わってきた。
「漣や時雨が羨ましかった。
でも、怖かった。どうしようもなく怖かった。」
「こんなことしておいてみっともないけど、
お願い、おねがいだから。」
ゆっくりとこちらを向いた目と視線がある。
おびえて、ふるえていた。
「 嫌わないで 」
のどの奥から絞り出したような小さな声
「はい。」
「見捨てないで」
「はい。」
ふるえる指先がゆっくりと伸びてきて、頬にふれた。
触れているのかわからないほど、優しい指先だった。
「ごめんね、痛かったよね、ごめんね。」
「大丈夫ですよ」
「嘘だもん、こんなに腫れてる。」
そっと彼女の頬に触れ、指で涙を拭う。
「大丈夫です。嫌いになりません。見捨てません。」
「ごめんね。ごめんね。」
彼女が泣きやむまではこうしていようか。
翌日朝、昨日の夜空のまま、今日も快晴だ。
「スー、状況報告。みー、かつぶしよろしく。漣、味噌汁」
「がってん!」
みー「あいあいさー!!」
スー「あとはしあげともりつけだけです。」
今朝はおひたしとお味噌汁、卵焼きと和風のメニューだ。
というかパンは高いのでほぼ毎日和風だ。
「えっと、おはよう。」
「おはようゴシュジンサマ。」
実は来てくれるんじゃないかと待っていたりした。
「おはようございます時雨さん!北上さん!」
「おはようございますです。」
まだ少しとまどっているように見える彼女、
でも、彼女が本来持っているであろうゆったりとした空気をまとっていた。
「朝から二人でなかよくとは良いですね。」
「んー。さっきちょうど出会ってね。一発殴ってもらってきた。」
「なんでもないような顔して何言ってるんですか!!」
時雨さんも当然のような顔してるし!!
「いや当然だと思うよ?むしろ大事な人にあれだけ手を出されてこれだけで許してもらえるなら、ねぇ。私ならもっと酷い仕返しするし」
「まったくだよ。」
全く理解できない次元でわかりあっているらしい。
頭がぐらぐらしてきた。
でも二人は意外と仲良くできるかもしれないのか?
「それでさ、漣のゲームのデータなんだけど埋め合わせしたいんだよ。
どのカセットをどれぐらい進めればいい?」
奥で黙々と味噌汁をよそい続けていた漣さんがうれしそうにこっちを向く。
やっぱりやさしいなぁ。
「それじゃ、朝の仕事が終わったらみんなで雑談しながらやりましょう!!」
今日も良い日になりそうだ。
「あのさ」
「はい?」
「嫌いになってない?」
「もちろんですとも。」
「好きでいてくれてる?」
「はいもちろん!」
「……!!北上、やっぱりもう一発殴らせてくれない?」
二人の間で火花が散っているような気がする。
やっぱりあの二人はダメかもしれない。
「ゴシュジンサマ!!僕は、ねぇ僕は!?」
「わたしは言われなくてもわかってますよ?ご主人様。」
「あ、あと敬語じゃなくていいよ。むしろ敬語じゃない方がいいかな~」
北上さんって緩いようで鋭くて、ストレートでいて裏がありそうで
魅力的かつ難しいキャラですね。
実のところ、漣さんは話の展開上動かしやすいということで入れたんですが、
最近可愛くてたまりません。
きっとすごく賢く優しい子なんだろうと書いていて思います。
時雨さんは、優しくて、芯が通ってて、KENZENです。
少し暗い話を、大変申し訳ないのですが、評価の1をつけていただいた方はどこが悪いかをコメント欄に書きこんで頂けると幸いです。
そこまでの駄文という評価なら謹んで受けますが
そうなのか辻斬りみたいなものなのか悩んで落ち込んでしまうんです。
平均評価も下がってしまいますし。
書き込んでいただいた後は二度と読まないでいただいて構いませんので!
こんな思い上がったことを書いてすいません…
少し明るい話を
時雨さんが犬なら北上さんは猫でしょうか。
友でありライバルである。という感じです。
これからどんどんにぎやかになっていきますぜ!?
感想評価お待ちしてます!!!
本文に関係のある感想でも、まったく関係ない雑談でもOKです!!