彼女達と出会ったオリ主です。原作空白期の一ヶ月目です。
最後まで読んでいただけると有難いです。
姉妹と想いと
冷たい場所をどのくらい漂ったのだろうか。どうやらここは海の中のようで水中から水面へと向いた時に揺れる太陽を見た。人外であるから水中で呼吸出来るというよりも呼吸はそもそも必要無いのだ。私の活動エネルギーは聖遺物と精神力のみだ。海を流れゆく私の耳へ、ふと何かが聞こえた気がした。心が温かくなる………歌だろうか。また意識が暗くなっていく。しかし、冷たい身体に少しだけ熱が蘇った。
波の音が聞こえる。ゆっくりと瞼を開けると久しぶりの青空と輝く太陽が視界に映る。手足は冷え切り感覚はエネルギー不足もたたりうまく力が入らない。Tシャツにジーンズとスニーカーの格好で浜辺の波打ち際で仰向けに寝ながらあの時から微かに聞こえる歌が少しずつ力を与えてくれている。濡れた衣服は瞬時に替えられるが今はこの状態が生きていると感じられて気に入っている。歌声があの時よりも大きくはっきりと聞こえる事からこの浜辺に歌の主が居るのだろう。以前は海の中でぼやけていたが今はこの歌声が二つだと判る。どこか哀しくも優しい歌につられて私も歌を口ずさむ。すると、歌が止み誰かがゆっくりと近付いてくる気配がする。こちらまでは随分と距離がある。何処の国ともしれないのだ。病院で検査されれば私の異常性に気付かれて研究施設に連れて行かれかねない。先程の歌でエネルギーは一割程まで回復した事で一人で逃げるくらいは余裕を持ち逃げられる。歌のお礼くらいは言うべきだろうとそのまま歌の主を待つ。もう10メートル程の距離で女性の声が聞こえた。
「おい、しっかりしろ!一体何があった!?」
砂浜に打ち上げられた状態の私を見て物凄く心配そうに肩を揺すり顔を覗き込んでくる女性。
『マリア姉さん………怪我してるかもしれないからあまり動かしたら危ないかもしれないよ?』
半透明な少女は姉の行動を止めさせようとするが姉には聞こえていないようだ。彼女は奏のような存在みたいだ。私は揺れる視界の中でマリアを見つめ口を開くと視界の揺れは収まった。
「心配させて済まなかった。怪我は無いし君達の歌に力を貰ったから大丈夫だ。ありがとう。」
彼女は安堵したようで笑みを浮かべるが、直ぐに暗い表情になる。何か悩みがあるようだ。少女もそんな姉を心配しているようで身体を腕に寄り添わす。
「そうか………あまり紛らわしい真似をして誰かを心配させないでくれないかしら?それに貴方には心配してくれる人が居るのでしょう?」
心配してくれる人は奏くらいだろうか。月の欠片を破壊した時、私は奏との繋がりを断ち天叢雲剣と奏を独立させて三人と繋がりを新たに構築。立花達からエネルギーの供給を受けられるようにした。きっと四人とも生きていると信じている。奏もこの少女のようだったと何となく少女を見ていると目が合った。驚く少女は姉から離れてこちらに近付いて来る。
『あなたには私が見えているのですか?』
首を傾げながらこちらの返事を待つ少女。
「ああ、見えている。君の歌にも助けられたんだ。ありがとう。」
少女は嬉しそうにしている。奏もしばらくあの状態で誰とも会っていないと言っていた。誰にも会えず話せないというのは寂しかっただろう。
「礼なら先程聞いたが? それに君達のや、君の歌にもとは、私の他に誰かいたのか?」
首を傾げている彼女。少女は私に頼みたい事があるようだ。
『私、姉さんとお話ししたいんです。貴方なら私の言葉を姉さんに伝えられる。だからお願いします!』
少しずつ能力が戻って来ている私は聖遺物の存在を目の前から二つ感じた。彼女達も聖遺物と関わりを持つ者か。
「少女の方だが私に出来るならそのくらいお安い御用だ。そしてマリアさん、君には妹がいたか?」
彼女は妹がいたのかと聞かれて驚き少し硬直するが直ぐに私との距離を取り警戒する。
「お前は一体何者だ!答えろ!」
いつでも反撃出来るようにこちらの様子を警戒しながら見る彼女に少女は苦笑いする。
『相変わらずもう………姉さん落ち着いて。ええと………あなたは?』
二人に答える。
「大和………葛城 大和だ。」
彼女は警戒したままだ。
「葛城 大和………日本人のようだが何故妹の………セレナの事を知っている!」
少女は話を続ける。
『すみません葛城さん。優しいマリア姉さんは家族想いで少し思い違いをしているんです。先程の続きですがどうして私が見えるんでしょうか?』
マリアとセレナの方を向きながらそれぞれの目を交互に見る。
「マリアさんそれは貴女の横に居るセレナさんに直接聞いた。そして何故見えるのかというと私はそういった存在を見る事が出来るからとしか言えない。」
私の言葉に辺りを見回すマリアだが彼女には見えない。その様子を見ているしか出来ないセレナは悲しそうだ。私は彼女達を見ていて会わせたくなり提案した。
「今は君には見えない。だが私は君達を会わせる事が出来る。しかし私にはエネルギーが不足しているんだ。先程の君達の歌をしばらく歌ってはもらえないか?そうすれば必ず会わせると約束する。」
マリアは我慢ならなかったようだ。何よりセレナを弄ばれたと、私は彼女の逆鱗に触れてしまったらしい。彼女が歌を歌うと立花のガングニールによく似た黒いギアを纏い襲い掛かって来た。
『姉さん!お願いだから私の話を聞いてよ!』
必死に姉へ訴えるがその声は届かない。彼女は襲い掛かって来るが殺意は感じられない。恐らくは私を取り押さえるつもりなのだろう。真っ直ぐにこちらへと迫るマリア。重い身体を動かし戦うよりも一撃で制圧する方がいいと判断しモードアイギスへと変わる。その変化に驚き隙が出来たマリアへと鎖を伸ばし拘束する。逃れようとするが力を奪われて徐々にへたり込む。そんな姉の様子に慌てるセレナ。
『葛城さん!姉さんは———
「わかっている。」
ついにギアが解除されたマリアを解放する。力を奪われても尚こちらを睨み付ける。そんな彼女のポケットから鎖で反応のあった聖遺物を少しだけ拝借する。
「それはセレナの!?それをどうするつもりだ!」
私はセレナへと近付きながら借りた聖遺物と私を繋げ融合する。この聖遺物は《アガートラーム》というのか。不安そうに見つめるセレナへと私は問いかける。
「君はお姉さんと一緒に居たいか?私の繋げる能力でアガートラームと君を融合させてこの世に蘇らせる事が出来る。蘇らせたからといって君に何かを要求する事は無い。これは私が君を蘇らせたいからそうするだけなんだ。君達姉妹の事は分からないが君も彼女もお互いに大切に想っている事はあの歌から伝わっていたんだ。蘇れば人では無くなる。それでも君がいいのなら私は君を蘇らせたいんだ。」
力が入らずへたり込んだままのマリアは信じられないといった顔でこちらを見ている。そして、涙が溢れて頬を流れる。
「私とて出来るならもう一度セレナに会って思い切り抱きしめたい!でもあの日セレナは命懸けで私達を救ってくれた!私は瓦礫に消えるセレナを救えなかったッ!」
悲しみに暮れる姉の想いを感じたセレナも涙を拭いながらも決意したようだ。姉の下へ行き隣に寄り添う。私も彼女達の下へ向かう。
『私も姉さんに思い切り抱きしめて欲しい!あの日瓦礫の下敷きになってもう手足の感覚も無くて寒かった………優しくて温かいマリア姉さんに最後にもう一度抱きしめられたかったよ!もう姉さんとお話し出来ないって諦めて見守ろうって思った。でも、やっぱり私は姉さんと一緒に歌を歌いたい!』
想いを聞き届けた私はモードアイギスとなりセレナを鎖で吸収する。そしてアガートラームと繋がりを増やして強化していく。セレナと融合したアガートラームを出現させると一振りの銀の剣とそれを握る銀色に輝く左腕の義手が現れる。
『無事に融合出来たかセレナさん?どこか違和感は無いか?』
すると銀の剣と義手は輝きを増して一人の少女へと生まれ変わった。その姿は少女の隣で泣き崩れている彼女の面影があり姉妹だとわかる。
「大丈夫です葛城さん。それよりもマリア姉さん、私だって会えて嬉しいんですからもう………本当に姉さんは泣き虫でそれでいて頼りになる優しい自慢の姉さんなんですから………私だって会いたかったよ姉さん!」
私は互いに泣きながら抱き合う彼女達をしばらく離れてそっとしておいた。海を眺めながら私は呟く。
「奏には殴られるだろうな………。」
未だに抱き合う姉妹へと近付いている複数の人影にまだ気付かないのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
主要キャラを救いたい作者です。
次回はフィーネの構成員達と出会うお話しと最後に主人公の軽い能力の設定です。
次回もよろしくお願いします。