今回はイグナイトに影響されたのか書き終えると狂気に染まったウェル博士を狂気の無いウェル博士に浄化してしまいました。ウェル博士の過去はあの程度歪むには。そう妄想した結果です。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
参加した日の夜、私はヘリの近くで月を見ていた。
「おや、英雄様は自らの偉業を眺めているのですか?」
ウェル博士がヘリから出て来る。
「大和でいい。ただあの後の事が気になっていただけだ。」
ウェル博士は顎に手をあてる。
「ルナアタックによって世界は聖遺物の可能性を知ったのですよ。日本は仕方なく米国との聖遺物の平和利用という名目で聖遺物研究をする事にした。我々が所属しているF.I.S.もきっと関わると言えましょう。そして僕にはシンフォギアの適合係数を上昇させる技術がある。ならば必然、僕は日本の研究機関である二課へ出頭するでしょう!そしてサクリストSに触れるチャンスが!そして僕は英雄に!」
ウェル博士からは嫌な気配が漂っている。狂気に取り憑かれているようだ。邪悪を察知したのかアイギスへとエネルギーが流れて輝く盾が現れウェル博士を照らす。
「何だこれは!?やめろ!それを見せるな!僕は英雄になるんだ!英雄になって僕は———
そう叫びながら気を失い倒れたウェル博士。輝きが収まり淡く光るアイギスの鏡のような表面に映るウェル博士。その中の彼は今よりもずっと幼く3〜4歳くらいだろうか。
———ウェルサイド———
光に照らされた僕は昔の僕を木の高さくらいから見ている。というよりも身体が動かない。どうしようもないと諦めてその光景を見ている。
僕の家系は代々短命だったらしい。病気だったり事故だったり時には殺されたらしい。そんな僕の家系は殆どが何かしらの天才であった。そんな僕の両親も天才であったらしい。父は米国で五本の指に入ると言われる程の脳外科医で記憶の父は僕に英雄の素晴らしさを語っていた気がする。母は生化学者で当時学会で注目されている一人だったらしい。らしいというのは両親は僕が物心ついてすぐに死んだからだ。多忙な両親と初めて家族一緒に旅行の途中に交通事故に遭い両親と僕は意識不明になり搬送された病院で両親は死亡。僕は何とか一命を取り留めた。
それから身体が動かせるようになりリハビリをしていた僕に様々な親戚が訪ねて来て皆が僕を引き取りたいと言ってきた。後で気付いたのだが僕には莫大な両親の遺産が転がり込むらしくそれを狙っていたようだ。
僕は人の良さそうな老夫婦を選び一緒に生活した。
その暮らしは快適だった。好きな物を買ってもらえた僕は両親のしていた事に興味があったので専門書などを読み漁りどんどん知識を得ていた。学校での成績は常にトップで皆が僕を天才と呼んだ。老夫婦もそんな天才の僕を流石はあの人達の子だと讃えた。大学へ進学した時に老夫婦はメタボからの脳梗塞で死亡した。その時に両親の遺産を初めて確認したが老夫婦はだいぶ使い込んでいたらしい。大学卒業までの分が残っていたのは助かった。
大学卒業後は医師免許を持ちながらも生化学者の道を歩み始めた。そんな僕に政府から聖遺物の研究機関への誘いが来た。F.I.S.に参加した僕は様々な研究者と意見を交わしたりするがその度に一族や両親の事を讃えられる。どいつもこいつも僕をちゃんと見てくれない!僕の研究にはそれ程の価値も無いというのか!見返してやると決めた僕はフィーネよりもたらされたLiNKERを改良し見事三人にシンフォギアを纏わせる事に成功する。だが、それでも両親の影を払えなかった。
そんな僕はルナアタックを知りこの現状を打破するには一族の誰よりも偉大な英雄になればいいと答えを得た。だが英雄は二種類存在する。偉業を成し祭り上げられるが体よく使い捨てられる者と民草を力で支配し君臨する者がいる。僕は力で支配し皆に認めさせるんだ! 僕は誰よりも凄いと! さっきのあいつの声が聞こえる。
「本当にそれがお前がしたかった事なのか?」
「当然!そうすれば僕は両親の影から解放される!」
そうして僕は認められるんだ!
「ならば何故両親と同じ分野へ進んだんだ?あの時のお前は何を思ってその道を選んだ?」
「そんなのは両親の仕事に興味があっただけだ!」
「何故興味があった?」
何故?それはもうおぼろげな両親の事を僕は………。
「………知りたかったのか。僕は両親との唯一残された繋がりの生化学と医学を学び二人に認められたかったのか………?でもそれは叶う筈無いじゃないか。」
父が語ってくれた英雄は己が信念を貫き裏切られても最後まで駆け抜け皆に認められたそんなお話だった。そんな英雄に憧れた頃の僕は今や欲望のままに暴れる悪役じゃないか。いつから悪役でもいいと思ってしまったのだろうか?
「叶わない夢を追いかけて気付いた時には悪に堕ちていたなんて馬鹿にも程がある。」
何をすればいいのかもう分からない。そんな僕へと声が聞こえた。
『お前の活躍はいつも遠くから見ていた。[あなたに優しい]なんてテーマ流石は私の息子だ。命の重みを分かってるじゃないか。もう少し被験者との接し方は変えた方が良いがな。』
これは父さんの低くどこか安心をおぼえる声。
『私では思いつかないような方法で聖遺物を起動させるなんて流石は私の息子ですね。この調子で続けなさいね。ただ、女性をあまり気軽に触れないように。』
そして母さんのこちらを想っている事が伝わってくる声。
「僕は一体どうすればいいんだ?」
『それはもう分かっているだろう。お前の夢を思い出せばいい。』
僕の夢はあのお話のように自分の信じた道を貫く事。
『私達が認めたあなたならもう大丈夫。』
たとえ悪だと世間が僕を認めなくても僕の正義を信じて進むのみ!
「ありがとう父さんに母さん。本当にしたい事をもう見失わないように進むよ。それじゃあ行ってきます。」
視界が白で塗り潰される。
次に見た景色は夜空に輝く綺麗な月だった。今の僕に英雄への執着はない。英雄になりたいのでは無くあの英雄のように信じる道を貫くだけ。
「目覚めたか?君の両親に息子を頼むと言われた。それで博士はこれからどうする?」
決まっています。世界の危機から出来得る限り多くの人類を救う為に行動します。
「まずフロンティア起動のためのキーである神獣鏡はエアキャリアに搭載済みです。もう一つの鍵であるネフィリムの確保は容易なのですが問題は励起させる為のエネルギーです。一度起動に成功するものの暴走し失敗。さらに暴走を抑えてくれたセレナさんはバックファイアと施設の崩落によって死亡という最悪の結果に終わりました。ですがネフシュタンの前例に則れば暴走することなく起動させられるでしょう。それが失敗した場合には二課の奏者達に歌っていただく必要がありますが彼女達が歌うのはノイズと戦う時です。」
ノイズを操る必要が出てくるのか。
「つまり、ソロモンの杖でノイズを出現させて操作し彼女達から相応のエネルギーを確保するというわけだな?」
ウェル博士は頷く。
「そうです。立花 響さんは対人だと鈍られますから最終手段ですね。」
ここである事に気付く。
「だが時間の無い中でそんな都合のいい舞台を用意出来るのか?」
ウェル博士は苦笑いする。
「そこですがナスターシャ教授がレセプターチルドレン達が米国により始末されようとしていると情報を掴んでおりマリアさんを二ヶ月で米国の歌姫にして風鳴 翼とともに日本でライブを行いネフィリムを起動させる時に全世界へ月の落下の危機とそれを隠蔽し自分達だけが逃げようとした米国を弾劾し、人類救済の新たなプランの提示をする。そして我々の存在を知らしめて米国がレセプターチルドレンを始末しにくくするそうです。あまりに無謀ですがフロンティア計画はこの程度出来なくて出来はしないでしょう?」
確かに無茶無謀を貫き徹せずには成し遂げられはしないだろう。
「そうだな。その程度出来なくてはな。私は何をすればいい?」
「先ずは貴方が出来ることを教えていただけますか?それを考慮して計画をより成功に近付けたいですから。」
その夜は生まれ変わったウェル博士と朝まで計画を練るのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ウェル博士が主人公のようになってフロンティア計画もスムーズに進行できそうです。これからも思いつくまま勢いで書いていきます。
次回もよろしくお願いします。