蘇る彼と聖遺物   作:はるひよる

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日常を書きたくて堪えられないはるひよるです。

奏視点の話です。決して二課の装者が弱いのではなくてセレナのシールドビットが強過ぎただけです。神獣鏡とは違い中和ではないのですが対アームドギアでは最強ですね。

最後まで読んでいただけるとうれしいです。


正義と悪と

———奏サイド———

 

今日は翼の晴れ舞台。全世界へと翼の歌が響き渡るんだがそのライブのお相手が米国の………最早、世界の歌姫と呼んでもいいマリア・カデンツァヴナ・イヴだ。彗星の如く現れて米国を制覇し世界中での売り上げも凄まじく世界中からにファンクラブが出来ているらしい。そんな歌姫が日本で世界同時中継ライブを行うと宣言しそのライブで共演したいアーティストとして翼を直々にご指名だ。

そして今、あたしは翼の首に提げられている。

 

『あたしだけが脳内会話だなんて味気が無いな。翼は独り言の多い人だと思われないように気を付けろよ?』

 

翼はペンダントのあたしを目線まで引き上げると硬い表情が少し緩んだ。隣を歩く緒川さんは特に気にした様子もない。

 

「分かっている。ただ、奏とこうして一緒に居られると私はそれだけで嬉しくて会話したくて堪らないのだ。少しくらい変だと思われようとも私は構わない。」

 

そんな決めた顔で言われてもあたしが構うんだけどな。

 

『まあいいや。それで今から歌姫さんに挨拶に行くんだって?ビシッと決めてやれよ翼!』

 

頷く翼。そんな真面目顏な翼の前方から物凄く上機嫌のスーツ姿のスタイルの良い眼鏡の若い女性がケータリングと歌いながらやって来る。

 

『なあ翼、彼女の歌声は凄いと思わないか?』

 

あんな即興の歌であたしのエネルギーが回復している。一体何者だろうか?一方の翼は彼女の太陽のような温かくなる笑顔に釘付けだった。

 

「何て可愛らしい人なのだろうか。彼女の笑顔の所為なのか雪音とはまた違った庇護欲をそそられる。」

 

そんな事を話している内に彼女は歌いながら通り過ぎた。

 

「さっきスタッフの方にマリアさんが控え室に居ますと聞きましたので入れ違いにならないように向かいましょう翼さん。」

 

「そうですね。私も直接彼女に会ってみたかった。」

 

緒川さんに促されて進み始める翼はどうやら本当に歌姫さんに会いたかったようで足取りが軽い。あっという間に着いた歌姫マリアの控え室を翼がノックする。

 

「開いているから好きに入るといい。」

 

翼は失礼すると言って扉を開けるとイスに腰掛け無駄の無い綺麗で長い足を組みテーブルに軽く肘をつきながらも他者を圧倒する雰囲気を放つ歌姫が存在した。こちらを確認すると堂々と立ち上がる。傲岸不遜で一般人なら圧倒されて近付けやしないがあたしや翼はこの程度では怖気付いたりしない。

 

「今日は未熟な身の私を引っ張ってくれると有り難い。宜しく頼みます。」

 

翼は手を前に出して握手を求める。歌姫さんはこちらへとゆっくりと歩みを進めて手の届く範囲で胸を反らす。

 

「ええそうね、あなたが私の足を引っ張らないように精々頑張る事ね。ライブであなたを認めたら握手をしてあげる。」

 

決めた顔で翼を指差す歌姫に控え室の時間が停止する。その時に扉が開きさっきの歌の女性がこちらと歌姫さんを交互に見ながら入り口に立っていた。

 

「あなたがマリアさんのマネージャーですか?」

 

緒川さんは女性をマネージャーだと瞬時に判断したらしい。女性は少し固まっていたが直ぐに口を開く。

 

「はい、私がマネージャーのセレナです。あなた達はもしかして今回共演する風鳴 翼さんとそのマネージャーですか?」

 

「はい、風鳴 翼のマネージャーの緒川 慎次といいます。本日は共演させていただきますので挨拶に来ました。」

 

テーブルへ皿に盛られた数々の料理を置いてからマネージャー同士で挨拶をしているそのセレナというマネージャーを翼は見つめている。

 

『そんなに気に入ったのか?』

 

翼はじっとセレナを見つめながら小さく呟く。

 

「やはり庇護欲をそそられる。雪音もあのように素直なら私も存分に甘やかせるのだが。」

 

あたしは彼女は世話を焼く側だと思うがまあいいか。緒川さんと話して何かに気付いた彼女はマリアの側へと向かう。

 

「姉さん、もう挨拶は済ませたの?」

 

いつもの事なのか彼女は少し困った顔をしている。当の本人は踏ん反り返っている。どことなく翼みたいで可愛かった。

 

「ええ、ビシッと決まったわ!」

 

すると彼女はやっぱりかと頭を悩ませている。こっちに歩いて来ると申し訳無さそうにしている。

 

「姉さんがすみません。このような姉さんですが本日はよろしくお願いします。」

 

姉さんと呼ぶって事は姉妹みたいだ。そう言われれば顔立ちは似ていて空のような澄んだ瞳が特徴的だ。あたしは妹のように翼を見ていたのかもな。

翼は差し出された手を握ると満足したのか嬉しそうに見えた。これから食事みたいであたし達は控え室をあとにする。

 

 

「彼女達はどうでしたか翼さん?」

 

「そうですね………可愛らしい姉と可愛がりたい妹ですかね。本当は泣き虫だけれど誰よりも強く在りたいと願っている姉とそんな姉が心配で放って置けない世話焼きな妹といった感じです。」

 

緒川さんは首を傾げるがあたしも翼と似たような印象だったな。特に歌姫さんはあの頃の翼みたいだったがそれよりか多少はマシだった気がする。あの妹が支えているから自棄にはなりそうにないからな。

 

『そうだな、あの二人みたいに翼はあたしにとって大切な相棒で泣き虫で放って置けない可愛い妹みたいな感じだな。今晩は翼と同じベッドで眠ろうかな?』

 

翼は顔を赤くしペンダントのあたしに向かって照れ隠しをするが隣の緒川さんはニコニコしていた。

 

「またそうやって奏は意地悪をして反応を楽しんでいるのでしょう!でも、奏と一緒の布団は魅力的………。そうだ、奏のお願いだから仕方なくだ!決して私から言い出した事ではない!」

 

あたしは笑いを堪えるのに必死だった。

 

『本当にお堅いな。翼はもう少し肩の力を抜いて自分に素直になろうな。最近のクリスは素直になってきたんだぞ?一緒に料理を作ったりしてるんだからな!』

 

翼は素直なクリスを想像して少し笑いがこぼれる。そしてあたしに恨めしそうな視線を送る。そんなにクリスと仲良くなりたいのか。

 

「本当に奏は………ずるい。私だって雪音に頼られたいのだ。」

 

そんな事を話していると翼の控え室に到着した。そこで翼はリハーサルの順番を待つ。

 

しばらく翼とクリス談義や響談義をしたり、翼のバイク自慢に付き合わされた。時間が経ちライブスタッフが控え室に来た。どうやら翼のリハーサルの準備が出来たようだ。翼はあたしを首に提げ胸元へと忍ばせると席を立ちステージへと緩んでいた顔を引き締めて向かう。

 

「それでは緒川さんリハーサルに向かいます。」

 

いつも翼を支え見守ってくれている緒川さんもその後について歩く。

 

『いつも通り翼は胸の想いを歌えばいいさ。あたしも翼の歌を聴きたいからな!』

 

先程の控え室で談義をしていた顔に少し近付いた。翼の歌は戦う為だけのものでは無い。だからあの時のように心から楽しんで欲しい。

 

「ありがとう奏、少し力み過ぎていた。」

 

スタッフに案内されてステージへと出る。今夜にはこの会場は人で埋め尽くされるだろう。スタッフのがリハーサルの開始を告げると曲のイントロが流れる。翼の表情はまだ硬いが歌い始めると実に楽しそうに歌う。あたしは安心して翼の歌を終わるまで聴いていた。

 

翼は胸の想いを歌に込めて歌い終えた。控え室に向かう翼の表情は歌っていた時のように晴れやかで本番が待ち遠しいようだ。

 

 

リハーサルも無事に終えた翼は本番まで控え室でゆっくりと温かいものを飲んでいた。

 

スタッフがもう間も無くライブが始まるからとあたし達をステージの裏へと案内する。歌姫さんの歌が始まりここまで会場の熱気が伝わる中で緒川さんが二課からの通信の後に眼鏡を外した。

 

『もう二人はソロモンの杖をとっくの昔に無事に届けたと思うが………なんかあったみたいだな。』

 

翼も緒川さんが眼鏡を外した事から二課が動き出したと察する。緒川さんはこちらに何でもないかのように笑顔だ。

 

「司令から今日のライブを頑張れと伝えてくれといった連絡でした。」

 

あたしも翼も緒川さんの癖を知っている。身内には隙だらけな気がするがそれだけ二課を信頼しているのだろう。翼は軽く溜息を吐き緒川さんをもの言いたげに見据える。

 

「眼鏡を外した緒川さんは二課として動くサインです。自分の癖くらい理解してください。」

 

緒川さんは頭を掻きながら謝罪する。

 

「すみません、ですが今日は翼さんのライブです。こちらは任せてくれませんか?」

 

あたしは不服そうに顔をしかめる翼に大切な事を教える。

 

『大丈夫だって、クリスや響がいる。それに二課の優秀なスタッフもいる。翼はあたしらを信頼していない訳じゃ無いなら任せとけってな?』

 

「………分かりました。私が今するべき事は今夜のライブを成功させる事ですね。」

 

少し口を尖らせて拗ねている翼だが首を縦に振る。緒川さんは軽く頭を下げてどこかへと駆けて行った。スタッフが翼の出番だと呼ぶ。剣をモチーフにした黄金のマイクを翼は受け取る。

 

『あたしが歌姫さんとのデュオを誰よりも側で聴かせてもらうから思いっきり歌えよ翼!よし、行ってこい!』

 

昇降式のステージの仕掛けには純白のドレスに銀のプロテクターのようなものを右肩に装備した歌姫さんが待機していた。こちらに気付いた彼女の頬は上気し少し赤くなっている。一曲歌い終えて気持ちが高ぶっているのだろう。

 

「さて、今の私に貴女はついて来られるのかしら?」

 

圧倒的存在感を放つ歌姫が翼を見据える。翼は臆する事なく歌姫と剣を携えて相対する。

 

「戦場に響き奏でる防人の歌を聞くがいい!」

 

二人のボルテージは高まりイントロが流れステージへと上昇する。あたしは二人の間で歌の始まりをペンダントから見守る。

ステージへと二人が登場すると会場を震わせる程の歓声が上がり歌の始まりを会場全体が待つ。

 

歌が始まると会場全体が一体となり歌を盛り上げている。やっぱり歌を思い切り歌うのは気持ちがいいだろうな。

ステージのセットから炎の柱が幾つも立ち上りその間を二人は駆け抜ける。二人は競演してしのぎを削っている。その姿に会場はさらに盛り上がる。

あたしはそのエネルギーを身に受けていつでも表に出られる状態になっていた。

競演はどちらも負けず劣らずのまま最高のフィニッシュを迎え会場は登場時よりも大きな歓声が上がった。マイクを手に持ったままの二人はそれぞれ観客に向けて言葉を放つ。

 

「みんなありがとう!今日は私がいつもみんなに貰っている勇気を少しでもみんなに分けられたらいいと思っている!」

 

翼は感謝を込めて歌っている。

 

「私の歌を世界全てにくれてやる!今日は全力全開で駆け抜ける!ついてこれる奴だけついて来い!」

 

歌姫さんは私の歌を聞けと世界を挑発する。

 

熱気溢れる会場のステージ上の歌姫さんと翼はお互いに歩み寄り差し出した手を握る。

 

「中々どうしてやるじゃない?私について来るでなく並び立つなんてね。」

 

嬉しそうにしているが相変わらず不遜な態度だった。翼も負けじと堂々と胸を張る。

 

「私は歌が好きだ。歌で世界知り世界を変えられたらどんなに素晴らしいかと夢見ている。貴女もそうなのでしょう?」

 

歌姫さんは目を閉じる。何故だろう、その姿に僅かだが悲しみを感じられた。

 

「確かに歌には力がある。その事を私達が世界に伝えていかなければならない。そして、もう一つ。」

 

歌姫さんは手を離してステージの前へと出る。堂々たる姿は会場の視線を集める。右の手を大きく右へ突き出しスカートはひらめく。

すると突如としてノイズが会場を占拠した。会場は先程までの熱気は消え去りノイズへの恐怖が支配する。逃げ惑う人々を見る歌姫さんは堂々としたままマイクを構える。

 

「狼狽えるなッ!!」

 

歌姫さんの一喝で会場は再び支配される。

 

『流石にこれは予想外だが人質を盾にされちゃ手が出せねぇ。ここは堪えろよ翼!』

 

翼は今も飛びかかる機をうかがっている。

 

「だが、このまま何もしないなど防人には到底許せない!」

 

怒りを抑えきれない翼を歌姫さんは向いて人質をちらつかせる。

 

「今の私は会場の全ての命を握りそして、貴女のこれからも握っている。だから少し大人しくそこで燻っていなさい。………貴女のような人が多ければ世界はもう少しまともだったのかもしれないわ。」

 

呟くような歌姫さんの本心とも聞こえる言葉に翼は動揺している。

 

『これで飛びかかる心配は無いと思うがあいつは何を考えてやがる?あたしはいつでも動けるようにしとかないとな!」

 

そう翼に忠告し歌姫さんは世界へ向けて声高らかに宣言する。

 

「我々はノイズを操る力でこの会場を占拠した。そして世界へと要求する!」

 

あたしや翼もよく知る聖詠が歌われる。

 

『こいつは本気かよ………ったく冗談キツイぜ全くよ!』

 

光が収まるとあたしや響が纏ったガングニールよりも圧倒的に黒いガングニールを纏った彼女が立っていた。

 

「我々は武装組織フィーネ!世界を救済する者だ!」

 

会場は歌姫さんの思うがままにされて誰も彼女に逆らえない。だが、あたしと翼はそんな事は認められないし堪えられない。そんな私達に緒川さんから通信が入る。

 

「会場はノイズに占拠されました。ノイズに対抗出来るのは今は翼さんと奏さんだけです。制御室で世界中継とライトを消す事が出来れば翼さん達は自由に動けるようになります。両翼揃ったツヴァイウィングに不可能なんてありませんから。だから信じて待っていて下さい!」

 

翼もあたしもその言葉に思い止まる。

 

「そうだった、私には信頼する仲間が側にいるのだ。」

 

『ならそれまで時間を稼がないとな、出来るよな翼?』

 

翼は戦場に立つ凛々しい顔となり黒いガングニールの少女と対峙する。

 

「先程までの歌が好きな歌姫であったお前は何故そうまでしているのだ?私にはお前がこのような事をするとは到底思えない。」

 

彼女の顔には先程よりも悲しみの感情が浮かび上がる。

 

「貴女にはどうしようもない巨悪に立ち向かう勇気があるのか?私はたとえこの身が悪だと世界に断罪され焼き尽くされようとも果たさねばならない事がある!誰に阻まれようとも止める事など出来はしない!」

 

彼女は本心を剥き出しにして翼へとぶつける。

 

「私は私の守りたいものの為に戦っている。その巨悪が私の守りたいものを脅かすのなら私は斬り払う為に剣を振るう覚悟がある。そして今、私の守りたいものを脅かす目の前のお前を許す事など出来ない!」

 

翼も本心をぶつける。

 

「ならばその覚悟を私に見せてみろ!」

 

翼に襲いかかる瞬間に突如会場は暗闇に包まれる。月の光も雲に阻まれほとんど何も見えない中で翼に緒川さんからの通信が入る。

 

「大和さんの妨害もありましたがこれで何ものにも縛られずツヴァイウィングは翔べますね。先ずは観客の避難をお願いしますね奏さん。後でそちらに———

 

そこで通信が途切れた。この襲撃には大和が絡んでいるらしい。

 

『翼は少し待っててくれ!取り敢えずあたしはノイズをちゃっちゃと駆逐してやるよ!』

 

あたしは二人の歌で溜まったエネルギーを解放し歌を歌う。翼の胸から朱い閃光となりギアを纏い会場を全速力で駆けてすれ違いざまにノイズを斬り伏せる。

全て斬り伏せステージに上がったあたしは今まで動けなかった苛立ちと大和が関わっている事による怒りからかなり語気を荒げて観客へと命令した。

 

「さっさと会場から出て行け!ただし誰かを押し退けたりするんじゃねぇぞ!分かったらさっさと出ろ!」

 

叫び少しだけスッキリしたあたしは黒いガングニールと対峙する。黒いガングニールと黒い天叢雲剣なんてどこか似てるなどとそんな事を思う。

 

「さて、あなたが相手をしてくれるみたいね天羽 奏?」

 

あたしを知っているって事はやっぱり大和はそっち側なのか………。

 

「大和は元気か?元気なら勝手に居なくなった事で怒ってるから一発だけ殴らせて欲しいんだけどな!!」

 

そして、自分を大事にしろともう一発お見舞いしてやる。あたしは大剣を両手で肩あたりで構えて跳び勢いに任せて振り下ろすがマントで剣を弾かれステージの床を砕く。本来ならばここで爆発を起こして攻撃するが観客もまだ避難出来ていないから仕方なく体勢を立て直そうと剣を引き戻そうとする。

 

「喧嘩っ早いヒトだこと。答えてあげる、大和は元気にしている。だがもうあなた達の仲間ではない………私達の仲間だ!」

 

だが既にガングニールを構えこちらに鋭く突きを放たれていた。何とか穂先を回避するが胴に重く削られるような一撃をもらってしまい観客の席の方へと回転しながら吹き飛ばされる。

 

「しくじっちまった………あたしもよく使ってたじゃねぇかよ!」

 

それにしてもあたしよりも範囲が広かった気がする。時限式じゃ無さそうだ。

月が会場全体を照らす。回転しながら観客を確認するがもう誰も残っていないみたいだ。

 

「やるじゃないか!………どうやらそろそろ本気を出せそうだ!」

 

背中にあるバーニアを噴かせて空中で体勢を立て直して翼を見ると目が合った。

 

『それじゃあ、デカいのぶつけるからアレ頼んだぞ翼?』

 

翼は目で答えて了承する。

 

「やるじゃないか!………どうやらそろそろ本気を出せそうだ!」

 

あたしはバーニアを噴かせ歌姫さんに向かいながら大剣を振るい先程よりも大きな斬撃を飛ばす。歌姫さんは槍を構えて紫のエネルギーを溜め解き放つ。エネルギーは激突し爆発を起こして彼女は爆煙に包まれる。あたしは爆煙の上をバーニアを噴かせて翼と反対の上空にて大剣にエネルギーを溜めていく。

 

翼がギア纏うと月を背景に上空から剣の雨を降らせていた。ガングニールの黒いマントに防がれているが目的は達成したようだ。あたしは上空で黒い大剣を巨大化させて翼のように片足で踏みつけながらバーニアを使い加速しながら落下させる。

 

「少し大人しくしてもらうぜ、歌姫さん!」

 

インパクトの瞬間に大剣のエネルギーを先に収束させてぶつける。これならマントでは防げないだろう。当たる瞬間に銀に輝く何かが見えて爆発が起こる。爆発が思ったよりも小さい気がする。何かで防がれたようだがガングニールにはそんな事が出来るのか?という事は新手だろうな。

 

「どうやら第二ラウンドらしいぞ翼?」

 

あたしは大剣を片手で構えて警戒する。隣に翼が降り立つが翼には光る物が見えていなかったようだ。

 

「何があった奏?確かに当たった筈だが………。」

 

突風が巻き起こり煙が晴れるとそこには彼女と隣には白銀のギアを纏った彼女のマネージャーが立っていた。

 

「我々と言った筈。遅かったじゃないセレナ?」

 

あたし達に威張ったあと直ぐにマネージャーの彼女に少しだけ気が緩んだのか声音が優しくなる。

 

「ごめんなさい。取り残されていた少女達を会場の外へと連れ出していました。」

 

「あなたらしい。でももう少し早く来てくれると助かるのだけれど?」

 

申し訳なさそうに謝っているが内容から考えると無差別な殺人や人質をとり何かを要求するのが一番の目的ではないみたいだ。

 

「なあ翼、あいつらは世界を敵にしているやつに見えるか?あたしはそれだけには見えねぇ。」

 

翼は剣を構えて様子を窺う。

 

「確かに、折角の人質を全て逃すのはそれが本当の目的に必要無いからだろう。とにかく私達は彼女等を捕らえて詳しく話を聞くしか無いだろう。」

 

白銀の女性の周りに無数の銀に輝く光の盾が展開された。

 

「セレナは奏を任せた。私は歌姫ともう少しデュエットしようかしら!」

 

翼の方へと黒い彼女が一直線に跳び突き出された槍が迫る。助けに入ろうとするが銀の壁に阻まれる。

 

「あなたの相手は私です。姉さんの邪魔はさせません!」

 

あたしは先手必勝とばかりに黒い斬撃を放ちその後を追い銀の彼女に大剣を上段に構えて迫る。斬撃をあえて当たる前に爆発させて意表を突き視界が塞がった彼女へと横薙ぎに斬撃を飛ばすと爆発が起こるが何故かあたしを爆風が襲う。吹き飛ばされないように踏ん張り爆風の発生源を睨むと銀色の光の大きな盾に守られた彼女が無傷で立っていた。

 

「さっきもあたしの天ノ逆鱗を防いだ盾かよ!?ああもう面倒くせぇ!それなら直接盾を叩き割ってやらぁ!」

 

バーニアを使い一気に彼女に大剣が届く範囲まで突進し振り下ろすが盾に阻まれる。そして大剣には亀裂が走り砕け散った。

 

「嘘だろ!?トンデモな盾じゃないか!」

 

武器殺しの盾から取り敢えず距離を取る。だが追撃してこないのは何故だろうか?彼女はこちらも見ているがステージの方も見ている。あたしも見てみると翼がマントで手足を拘束されて身動きが取れずに紫の閃光が迫っているところだった。

 

「追い詰められてるじゃないかよ!待ってろ、今助けに行くからな!」

 

あたしが駆け出そうとするとまた銀の壁に阻まれる。あたしは大剣を造り力の限り大剣を振るうがまた砕け散った。

 

「あなたの相手は私と言った筈です。だから通しません。」

 

翼は天ノ逆鱗を閃光との間に落とそうとするが銀の光が接触した途端に蒼い光となって崩れ去る。だが上空から頼もしい仲間が助けに入りクリス黒い彼女をガトリングで狙い撃つと翼の拘束を解いてマントの傘でガードする。響は拘束が解けたと同時にバーニアの勢いそのままに翼を引いて閃光を回避させる。

 

あたしは向こうを三人に任せてこちらは時間を稼ぐ事にする。あの盾を突破するには悔しいがあたしだけでは届かない。

 

「だけどな………時間くらい稼げる!」

 

銀の彼女の周囲を縦横無尽に駆けて手のひらサイズの黒い刃を投げつけて爆発させて牽制する。予想通り盾に阻まれ爆発が起こるがそれだけだ。

 

翼達の方から大きな爆発が起こり思わず振り向くと頭に生えた二本のアームの先にあるプロペラみたいな物で身体の上下を挟み飛んでいるピンクのギアの少女がいた。

 

あたしは嫌な予感がして大きく飛び退くと緑の刃がさっきまで立っていた場所を通り過ぎる。

 

「デェス!」

 

飛び退いたあたしへ鎌を振り上げてバーニアを使用して突っ込んで来る緑の少女をあたしは地面を転がり回避する。

 

「まだデス!」

 

背中からアンカーを四本地面に深く打ち空中で返ると鎌をもう一つ手に出して合体させた大きな鋏を構えて再びバーニアを使用しての急加速でこちらを狙って突っ込んで来る。

 

「しつけぇぞこんちくしょうめ!」

 

回避しようとしたその時に光の壁に右と背後を阻まれ仕方なく残った左に回避する。緑の少女は光の壁に突っ込むが当たる前に消えて着地して一つに戻した鎌を振り上げ刃を二つ飛ばしてくる。それを大剣を出現させて手に握り迫り来る刃へと振るい弾いた時にあたしは気付いた。

 

「しまった、いいからみんな散らねぇとこのままじゃ!?」

 

時すでに遅く一ヶ所に集められていたあたし達は光のドームに閉じこめられた。

 

「剣が砕ける。これは先程と同じ?皆気を付けろ!この銀の障壁はアームドギアを無力化する!」

 

翼もこれにやられたようだ。

 

「これに当たった攻撃を全て触れた瞬間に壊されて面倒くさいったらありゃしねぇ!それにあたしの爆発を反射してくるから手に負えないぞ。特にクリスは絶対にここでバリアを撃ったりするなよ!」

 

ガトリングを構えていたクリスは頭を掻きむしる。

 

「マジかよ!こうなりゃ地面に穴を開けるか?」

 

響は相手が人間だからと対話を試みているが相手も確固たる信念があるようでそう簡単にはいかないだろう。その時ステージ上に緑の気持ち悪いうごめく物に覆われた巨大なノイズが出現して敵の装者四人が一ヶ所に集まる。

 

「どうしてこんな事するの!私達話し合おうよ!そうすればきっと分かり合える!」

 

ピンクの少女は響の言葉に怒りを露わにして響へと言葉をぶつける。

 

「誰かを守る為にあなたは誰かを傷付ける覚悟があるのッ!?そんな綺麗事ばかりの———偽善者なんて大っ嫌いッ!!」

 

響はその言葉に動揺して俯き呟く。

 

「私は誰かを傷付けたくなんてない!私はただ私の守りたい日常を守る為に戦って………。この拳は傷付ける為の拳じゃないのに………。」

 

ピンクの少女は響への怒りを何故か現れたノイズへと執拗にぶつける。緑のうごめく気持ち悪い物が散乱するとそれが新たなノイズとなりあっという間に増殖していく。

 

「調………もういい。皆撤退だ!」

 

調と呼ばれた少女はノイズへの攻撃を止めると装者四人は会場の外へと逃走した。

 

「あいつらとんでもない物残して逃げやがって!」

 

クリスが銀の壁に蹴りを入れていると突然に障壁が消え去りバランスを崩したクリスは大股になり踏ん張り堪えた。会場に残された分裂して増殖するノイズに対抗するには闇雲に攻撃しても意味が無い。

 

「さて、こいつは分裂して増殖するがどうする翼にクリス?」

 

「このノイズには広範囲へと一瞬で攻撃して倒さねばならんだろうな。」

 

「かといってもあたしや奏とのデュアル状態でもこの数じゃ16基で足りるかあやしいな。」

 

三人で立花を見ると気付いた立花は先程のショックのダメージを抱えたままで太陽のような笑顔が曇っていた。あたしは響の頭を少し手荒く撫でると頭を両手で守って抗議してくる。

 

「私にはこのノイズをぶっ飛ばせ無いが………クリスと翼が響と手を繋げばぶっ飛ばせるだろ?」

 

抗議している両の手をそれぞれ翼とクリスへと差し出させ二人に目で意思を伝える。二人はその手を確りと握り立花の目を見つめて待つ。

 

「あたしには出来ないことを響に頼んだぞ!」

 

ペンダントへと戻り響の首から提げられる。響は一度大きく息を吸い深く息を吐くと先程までの暗さは隠れていつもの表情になる。

 

「やりましょう、三人での絶唱を!」

 

響は力強く宣言する。

 

「ああ、任せたぞ立花。」

 

翼は手を強く握る。

 

「ったく、やってやるよS2CA・トライバーストをな!」

 

クリスも手を強く握る。三人は目を合わせると呼吸を合わせて絶唱を口にする。

歌い終わると三人から高められた暴力的な程の虹色の輝きが溢れる。

 

「スパーブソング!」

 

翼の歌を聴きに来てくれたみんなを守る為に叫ぶ。

 

「コンビネーションアーツ!」

 

クリスは未だ夢の途中の人々を守る為に叫ぶ。

 

「セットハーモニクス!」

 

響は守りたい大切な日常の為に想いを束ねて叫ぶ。聖遺物同士の共振・共鳴により破壊衝動が込み上げる。

 

『あたしらがついてんだ!胸の歌を信じろ!みんなを信じろ!そして何よりも自分を信じろ!』

 

響は破壊衝動を抑えて虹色のエネルギーを会場全体に一気に拡散させて増殖する緑の物を殲滅し尽くすと背骨のような本体が剥き出しとなったノイズだけが残される。

 

「見せてやれ立花、私達の想いを!」

 

「力を束ねたその拳で!」

 

響のギアは幾つかの機能が解除され左腕のパーツが右腕に融合して一つとなりエネルギーが右腕に集まり虹のリングが出現する。バーニアを使用し爆発的な加速でノイズへ迫り右腕を構える。

 

「S2CA・トライバースト!これが———私達の絶唱だッ!!!」

 

ノイズの頭らしき部位に突き刺さると融合したパーツから四つパーツが飛び出して腕部のパーツが高速で回転を始めて虹色の竜巻が天高く轟く。

 

 

絶唱後という事もあり私服に戻った三人。響はその場に膝をつき涙を流す。クリスと翼は心配して駆け寄って来る。クリスは優しく響の肩に触れて顔を覗き込むともらい涙をする。

 

「大丈夫か立花!」

 

顔を上げて平気だと翼へと笑顔を取り繕うが涙が溢れて止まっていない。

 

「へいき………へっちゃらです。」

 

「大丈夫なもんか!まさかさっきの負荷でどこか痛いのか?」

 

三人の負荷を一人で背負った響を泣きながら心底心配するクリス。響は止まらない涙を必死に拭いながら呟くように疑問を口にする。

 

「私のしている事って偽善なのかな………?私のした事で胸が痛む事も知ってるのに………。」

 

響が大和に助けられた一件が大きく絡んでそうだ。という事はあたしが不甲斐ないばかりに起きた事でもある。

 

『それでもその痛みを受け入れて響がどうしたいのか………それが重要じゃないかな?』

 

響は少しだけ何か見えそうなのか先程よりも多少持ち直した。

 

「奏さん………それにクリスちゃんや翼さんもありがとうございます。少しだけ考えたい事があるんです。いつか答えを出してみせますから待っていてください。装者としての出動はいつも通りにしてみせますから!」

 

みんな空元気だと気付いていたが響を信じて待つと心に決めた。その間のフォローは先輩たちに任せればいいのだから。

 

 

その後二課へと回収されて三人がメディカルチェックを受けに向かう中で緒川さんも治療を受けてもう意識が戻っていると知らされた翼達三人は検査の後様子を見に向かう。

 

扉を開くと緒川さんは患者服を着てベッドで横になっていた。翼達の足音聞こえていたのか入るなり身体を起こしてこちらを笑顔で出迎える。

 

「皆さんお揃いでわざわざありがとうございます。何とか僕の役目は果たす事が出来ましたがその後にやられてしまいました。」

 

バツが悪そうにする緒川さんに翼はゆっくりと近付きベッドの側で立ち止まる。

 

「いえ、緒川さんが無事で何よりです。緒川さんが居ないと二課も私も大変ですから。ですから今は絶対に無理をしないで下さいね。」

 

緒川さんは少し照れくさそうに笑う。そして、大和と戦った時の事を話す。

 

「制御室の前にステルスで待機していたであろう大和さんを間一髪で察知して飛び退きました。そして直ぐさま違和感のある壁に向かって発砲して右の何も無い空間を蹴ったら何かに掠りました。すると、何も無かった空間から大和さんが現れたんです。」

 

あたしもステルス体験しているから分かるがアレは普通見破れないと断言できる。私とクリスならある程度の対処法はある。

 

「対峙する僕は三発撃ちます。一番的の大きい胴を狙いましたが難無く躱されてもう目の前に拳が迫っていました。狙いは顎だと何とか身体を捻り紙一重で回避に成功し横へと飛び退き壁を蹴り再び間合いを取り今度も同じように胴めがけて二発撃ちその中に落ちる弾丸を混ぜました。撃つと同時に制御室を目指して全力疾走します。今度も二発は難無く躱されましたが落ちる弾丸で揺さぶれましたがそれも回避され狙い通りに影を射抜きました。

そして、大和さんの手の届く範囲を影縫いで鈍らせて通過し制御室の機器を撃ち抜いて世界中継を切り会場の照明を全て落としました。その後の背後からの攻撃を避けきれなくて少し掠っただけですが感電し意識を失いました。」

 

緒川さん程の手練れを倒せる奴なんて中々いないだろう。大和が関わっていると知ってそれぞれ思うところがある。中でも今の響には辛いだろう。昔の事で救ってくれた恩人で正義のヒーローのように思っている部分もあるだろう。それに加えてあたしが大和との短いけれども楽しかった話を聞いて人柄も知っているから余計にだろう。

 

『本当にどうしてだよ………私にくらい話してくれてもいいじゃないか大和。』

 

 

 

それから一週間後にあたし達は大和に再会する事になる。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

セレナが防御チートキャラになってしまいましたが攻略法はあります。聖遺物由来やオカルトっぽい力のエネルギーベクトル操作ですので純粋な物理に弱い。
響の雷パンチか弦十郎のパンチで盾は砕けます。
大和のガングニールの場合は貫通特性が勝つので貫きます。後は処理しきれない程のエネルギーくらいですね。

次回は二課装者達の一週間になると思います。

次回もよろしくお願いします。
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