蘇る彼と聖遺物   作:はるひよる

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今回は彼のチートな移動能力のお話です。感知力もチートですが。

宜しければ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※【風鳴る戦場と】と纏めました。


災害の爪痕
日常と戦場と


———眩しい。

 

静かに目を開く。茶色い、木目、これは天井だろうか。

鼻へと独特の青い匂いが吸引される。これは確かそう………実家でよく嗅いだことのある匂い。畳の匂いだ。畳を新たに敷いた時の爽やかな匂いに段々と意識が覚醒する。

 

ゆっくり起き上がると首を鳴らす。小規模な空気の破裂する小気味いい音が連続して鳴り、より一層意識がはっきりとする。

周りを見ると黄土色の壁と黒の重そうな金庫があった。大きさは1㎥くらいだろうか。黒い箱に近付き取手を握る。すると、重厚感のある黒い箱の扉が勝手にゆっくりと開く。中には見たこともない量の現金の山と手紙が入っていた。手紙を開くとそこには彼女からのメッセージが書かれていた。

 

この手紙を読んでいるという事は無事目覚めたようですね。そこが貴方の住居の一つです。他の住居については地図を用意してますのでリビングのテーブルの上を確認してください。資金は別の住居のにある金庫にも同じ額保管されてます。それとこちらが用意した住居全てに特殊な加工を施しております。外部から聖遺物のエネルギーを観測出来なくし、エネルギーが漏れ出ないので精神修業によるエネルギー等がこの建物から漏れて捕捉される心配はありません。能力に関する修業は地下の核シェルターにて位相をずらして修業してください。

 

それではよき人生を。

 

読み終えた手紙は段々存在が薄くなり最後は音も無く消えた。

 

リビングの地図を確認してみる。日本中に拠点はあるようで首都にまである。これらは後々向かうとしてリビングにある3人掛けのソファーに座る。電気は通っているようでテーブルにあったテレビのリモコンで電源を入れた。テレビではあのライブの事をしている。その内容は、あのライブでの死因は逃げ惑う人々による傷害致死が大半を占めているという事だった。

 

死ぬ直前の会場は確かに大混乱であった。

ある観客達は我先にと出口に向い他者を押し退けていた。あるところでは人間同士で殴り合いの喧嘩まであった。またあるところでは人間同士がドミノ倒しになっているにもかかわらず、その上を大量の観客が踏み進む。

ヒトの醜い部分がさらけ出された地獄のような光景に唖然としていた。そこをノイズの一突きで私は死んだのだ。

 

自身の最期を思い出しているとテレビで被災者をバッシングする流れになっていると聞いて眉をひそめる。ネットを中心に被災者バッシングが過熱しているらしい。国庫からの補償金も影響しているようだ。

確かにあの時、我が身可愛さに他者を死に追いやった者が生存者には居るだろう。しかし、あの地獄でどれだけの者達が冷静だっただろうか。突然、目の前で炭化し崩れるヒトだったモノ。その光景に嫌という程死を印象付けられる。その濃い死の気配に必死に逃げる者や私のように驚愕の余り動けない者。徐々に死が迫る恐怖に人々は更に混乱する。あの地獄を体験してない者が好き勝手に語ってよい問題では無いはずだ。

 

観ていて気分のいいものではなかった。

気分転換に他の拠点を把握しようと地図を持ち能力を発動する。光に包まれあっという間にモード鳥之石楠船神に変身する。そしてハデスの兜を発動し不可視になり家を出た。

 

上空から自宅となった建物を眺める。日本特有の武家屋敷のようだ。屋敷の周りには他の一般的な住宅も沢山存在した。そんな日常の風景を見て改めて蘇ったのだと実感する。

 

そして私は今宇宙に向かって進む。宇宙に出たい訳ではなく能力の行使に都合がいいからだ。

延々と上昇し、貰った地図と同じサイズになる日本列島。鳥之石楠船神の能力を行使する。人外の視界は広く遠くまで視える。人までは見えないが町などをここから判別できる程度までなら可能だ。

目標地点を見つめそこに空間跳躍する。それを繰り返して全ての拠点を確認した。

もう夕日が傾いていたので拠点の中でも特に気に入った最初の武家屋敷に帰ろうと再び日本列島が見える高さまで上昇する。

 

そこでふと思い出したもう一つの能力を行使してみようと発動させる。異能を感知するレーダーのようなものを発動すると視界の中に赤と青の淡い光が幾つも視えた。

その中でもはっきりした物が日本に幾つも存在した。みるからに弱々しい淡い青色の反応は未だ埋まっている聖遺物によるものだろう。その中で濃い青色の反応の周囲に淡い赤色の反応が集まっている場所があった。赤色で群れているこれは感知できるもう一つの対象であるノイズだろう。その中にある蒼色は私と同じように聖遺物をなんらかの方法で起動してノイズと戦っているのだろうか。

私は一目見てみたい好奇心でその場所へと跳躍した。

 

———そして私が目にしたのは初めての戦場だった。

 

跳躍したのは反応のあった場所の200m程上空。そこから私は見下ろす。

そこには大量のノイズと一人の蒼い特殊な全身スーツを着て戦う者がいた。鋭い気配を持ち、手には剣を携えた少女がいた。

ノイズは次々に少女へ殺到するが少女はその手の剣を巧みに振るいノイズを斬り伏せる。更に彼女は上空から小型の剣を生み出し敵に向かって射出する。

 

これは助太刀する必要は無さそうだと思っていると少し離れた木々の間より一体のノイズが槍のようになり彼女の死角から迫る。それに彼女は気付いていない様子である。

今この身に宿る力を使わずしていつ使うのだ。私は咄嗟にガングニールを発動しノイズが彼女に直撃するより速く投擲し追いつき貫く。見事彼女に直撃する前にノイズを崩壊させた。

 

そこで私は気付く。いくらハデスの兜とはいえガングニールの励起状態のエネルギーは隠せない。彼女一人で戦ってはいるが、おそらくバックアップが存在する。それに今はガングニールのエネルギーを捕捉されているだろう。

私は直ぐさま戻ってきたガングニールを身体に戻し基底状態にすると念の為にデタラメに跳躍する。

しばらく続けてから上昇し日本列島の遥か上空より最初の武家屋敷に跳躍した。

 

家に帰り能力を解除して金庫から一枚取り出す。今日見た彼女達はどのような組織なのだろうか。しばらく活動を監視するか。

そのような事を考えながら上空から見かけたコンビニへ向かった。

 

 

その頃、とある地下にある特異災害対策機動部、その中でも対ノイズ戦闘に特化した二課では全体的に赤い男と青い髪の少女が一つの部屋にいた。赤のカッターシャツとピンクのネクタイのガタイの良い男が少女に尋ねる。

 

「ところで翼、先程の戦闘中に突如現れた正体不明の二股の槍を投げた奴を見なかったか?あの槍の持ち主は死角から翼に迫るノイズを槍で貫いて助けたようなのだが………。」

 

顎に手を置き唸る。

その様子を見ながら翼と呼ばれた少女は淡々と答える。

 

「すみません司令。槍がノイズを貫くその瞬間に気が付き振り返りました。しかし、槍の速度が速く何処か上空へと飛んで行った先は暗くて持ち主の姿を捉える事が出来ませんでした。」

 

司令はそうかといい二人とも手掛かりがないかと唸る。

するとそこにアップに髪を纏め眼鏡をかけた白衣の女性が入ってきた。

 

「どうしたの二人とも。難しい顔して?」

 

櫻井に司令が訳を説明する。

すると彼女は胸を張りながら

 

「そうそう。さっきの正体不明のが投げたであろう槍だけど、あれの発するエネルギーを解析したのよ。すると、ガングニールと全く同じエネルギーパターンだったの!出力は二課が保有していた物が霞んじゃうくらい差があったけどね。」

 

非常に楽しそうに彼女は話す。その事実によって更に唸る司令と動揺する翼。新しい研究対象に上機嫌の女性。何か深く考え事を続ける司令。

 

「ガングニール………何故、奏の………。」

 

そう呟いた後、俯き続ける翼だった。




最後までお読みいただきありがとうございます。

あまりキャラを喋らせられなかったです。
多分こう言うのだろうで書いてるので物凄く不安です。

次回は同じ過去を持ち、生き残った少女と生き返った彼が出会います。ガングニールが導きます。

次回もよろしくお願いします。
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