蘇る彼と聖遺物   作:はるひよる

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更新頻度が低下したはるひよるです。

今回の話は今までで一番悩みました。文字が進まない。

最後まで読んでいただけると嬉しいです。


想いと特訓と

———奏サイド———

 

リディアンでは秋桜祭に向けて着々と準備が進む。そんな最中、二課へとクリス・翼・響の三名は召集された。仮説本部の長い通路を三人で並び歩く。

 

「しばらくぶりの二課だがやっと敵さんの情報でも掴んだのかねぇ?」

 

「恐らくはそうなのだろう。あれから数日間彼女達が何のアクションも起こさないのは不気味ではあるな。」

 

「私、今度こそ調ちゃんにこの気持ちを伝えたいんです。だって、人間は争うだけじゃなくて手を取り合えるって知ってますから。」

 

『それと大和に説明してもらわないとあたしは納得いかないねぇ。』

 

大きなモニターのある作戦司令室に到着した。既に弦十郎のダンナと緒川さんが座っていたので翼達も揃ってイスに座る。コンソールの前にあおいさんと藤尭さんは座っている。司令はおもむろに立ち上がり皆は注目する。

 

「今日君達に集まってもらったのは彼女達《武装組織フィーネ》について色々と判明してきたからだ。」

 

あおいさんはコンソールを操作するとモニターに太陽の様なエネルギーパターンが映し出される。

 

「こいつが岩国の米軍基地でノイズに襲撃され同時に検知したエネルギーパターンだ。照合の結果、彼のレーヴァテインであると判明した。そしてあれだけのノイズの襲撃にもかかわらず人的被害が出なかった。あの一件での被害は行方知れずのウェル博士とソロモンの杖くらい………と片付けるには大き過ぎる問題だがな。」

 

「確かにあの時のノイズはただの木偶の坊だった。奴ら前にゆっくりしか進まないしあたし等を誘ってやがったからな。」

 

クリスは苦い顔をしている。響や他の二課メンバーも同じ顔をしていた。

 

「コンサート会場の占拠からマリア・カデンツァヴナ・イヴの世界を救済するという宣言と組織名は世界へと発信されたが映画の撮影だったという事になった。米国が裏で色々と動いたようだ。」

 

大きなモニターに武装組織フィーネの構成員が映し出される。

 

「現在判明しているメンバーはマリアとそのマネージャーのセレナ。次に黒髪の調と呼ばれた少女と金髪のきりちゃんと呼ばれた少女、そして緒川の交戦した大和の五名だ。それと大臣からの情報によると米国の聖遺物研究機関のF.I.S.という組織の一部職員の暴走したものが武装組織フィーネを名乗っているらしい。F.I.S.とはフィーネが米国へ通謀して出来た組織なのだろう。ウェル博士はこのF.I.S.に所属していた事からこの件に何かしらの関係があるものと思われる。」

 

モニターに幾つかのアウフヴァッヘン波形が映る。その内の二つが合わさると見事に一致した。

 

「そしてマリアが纏ったガングニールの波形と響君の胸のガングニールの波形が完全に一致した。つまりは同じ欠片から造られたという事だ。そして、我々のデータに無い聖遺物のギアが三つ以上はあるという事でもある。その中でも異質なのがセレナの白銀のギアだ。響君と同様に手は何も握って無いがあの聖遺物殺しとも言える銀の光の盾への対策を考えなければならない。」

 

コンソールを操作していた藤尭さんは皆の方へと身体を向ける。

 

「その事ですがどうやら接触した際に固定化された筈のエネルギーが不安定に揺らいで弾けてしまったようです。そして、ここを見てください。」

 

あたしとセレナの戦闘時の映像が流れてあたしが黒いナイフで牽制しているところだった。

 

「天叢雲剣の小さな刃は盾に当たると爆発します。その爆発のエネルギーが全て奏さんへと向いているのに対して、こちらの地面に刺さり爆発して飛ばされた石を見てください。飛ばされ光の盾に当たると………こんな風に自然な動きで弾かれています。以上の事から聖遺物由来のエネルギーを操るまたは乱す事が出来るのではないかと推測されます。」

 

弦十郎のダンナは響を見ると皆が納得した面持ちで響に注目する。一人理解出来ていない響は首を傾げるばかりだ。

 

「つまりは響君の拳で打ち破れるって事だ。お前の想いを全てぶつけてみろ!」

 

響はようやく理解したようで勢いよく立ち上がる。ガングニールとは全てを貫く無双の一振りである。欠片となってもその一端は残されている。

 

「分かりました!私、セレナさんへと想いをぶつけてみます!」

 

そうなると後は誰を誰に当てるかだが翼はリベンジしたいのだろうかマリアの画像ばかりを見ていた。ならばあたしとクリスであの鎌と鋸を相手する訳だ。大和の相手はどうするのだろうか?

 

「そして、彼は俺と緒川で食い止める。いや、彼とのケリをつけさせてもらう!」

 

「そうですね。彼に少しでも対抗出来るように色々と準備をしましょうか。」

 

何やら大人二人は打倒大和に燃えていた。あおいさんと藤尭さんは緒川さんまでと頭を抱えていた。燃える二人が落ち着いたところで新たにモニターに月と地球の図が映し出される。

 

「そしてここからが本題になる。F.I.S.のアジトが判明して徹底的に捜索したところ地下の研究設備跡に残されていた機器のデータを解析した。すると月の軌道データが見つかった。

ルナアタック後各国機関はNASAのデータに基づいて軌道を算出している。だが月の一部機能が低下若しくは停止してこれまでの月のデータは役に立た無くなってしまっている。そしてF.I.S.のデータによると、このままだと近い将来にも月が落下する。これが本当ならばフィーネによるルナアタックの脅威は終わっていないという事だ。」

 

フィーネの妄執は依然として人類を危機的状況に曝していた。魔塔は天を確かに突き穿つ事に成功していた。和解した彼女のあの微笑みと彼女の遺した傷痕はどちらも響達に強く深く残されていた。

 

「フィーネを名乗る組織は亡霊が暗躍しているのか、それとも予め用意されていたのかは判らん。だがF.I.S.は何らかの人類救済の計画を遂行しようとしているのだろう。わざわざご丁寧にこれを残していたくらいだ。データの最後に君達に向けたメッセージまで残してあったからな。」

 

———料理が上達したのか確認したいから料理を食べさせてくれないか?

 

モニターに映し出される一言のメッセージに益々困惑する。特にこの中に真の言葉が隠れている訳でも無さそうだ。色々と思うところもあるが約束を憶えてくれていたことが無性に嬉しい。そして、大和とのほんの僅かだったが温かかった時間は大切な日常だった。

 

「奏に向けた言葉だろうか………近々こちらに接触するかの様な言葉ですね。」

 

「そうだな。だが、後手に回って取り返しのつかない事態になるのは避けたい。こちらも全力で足取りを追っている。」

 

敵として追っているが本当にF.I.S.が敵なのか判断出来ない。F.I.S.の目的が人類の救済であり米国が月の軌道データを捏造していた場合に悪だと言いきれるだろうか?

 

「響君達には今後も予想されるF.I.S.との戦闘に備えてしてもらいたい事がある。」

 

ダンナは暗い雰囲気のあたし達の目の前まで来ると三人をそれぞれ見る。

 

「前回はしてやられたが今度こそ想いをぶつける為に、お前ら特訓だ!」

 

勢いよく立ち上がる響は張り切り、一方でクリスは困惑していた。翼は座りながら頷いていた。

 

 

 

翌日の日の出の時間に海岸沿いの公園に集められた。

 

「お前ら、今日は基礎体力の訓練だ!よく走り、よく食べ、よく映画を観てその後寝ればより強い自分を獲得出来るぞ!」

 

激しく燃える響と静かに燃える翼。クリスは戦闘の訓練だと思っていたようで少し不貞腐れている。

 

「こんな事よりギアを使った戦闘訓練の方が絶対いいだろ?」

 

司令は何か言いかけるが響が手で制止してクリスの両肩に手を置き顔を寄せる。突飛な行動にクリスは狼狽えている。

 

「安心してクリスちゃん!師匠の言う事は時々難しくて分からないけどこの方法でみんなと分かり合えた。私も頑張るから一緒に頑張ろう!」

 

「いや、やらないとは言ってないからな?あと、走り辛いから手を握るんじゃねぇ!お前も何便乗してんだよ!」

 

こっそりクリスの手を握っていた翼の手も払われる。その表情は少し残念そうだった。

 

「お前ら戯れてないで走るぞ!」

 

数kmはある海岸沿いの道をひた走る。ダンナと響は大きく腕を振り、翼は無駄のない綺麗なフォームで走る。クリスは無駄のあるフォームで走るがこのメンバーで一人だけ息が乱れ始める。

 

『クリスは初参加だから無理せず頑張りな。走る姿勢は翼のを手本にするといい。』

 

「言われ………なくても………、わか………ってる!」

 

意地でもクリスは周りについて行く。何回か往復し終えてようやく少し休憩になるとクリスはベンチに座り深くもたれ掛かり天を仰ぐ。響とダンナは何か歌いながらまた走りに行った。クリスの隣には翼が静かに座っている。

 

「ふむ………歌いながらというのも悪く無さそうだ。」

 

息が整ってきたクリスは汗を拭いながら顔だけ翼に向ける。

 

「歌いながらねぇ………あたしはそんな余裕無いけどな。歌いたきゃこのペンダントであたしに運ばれてる奏に頼むんだな。」

 

クリスはペンダントの紐を持ち翼へと突き出す。翼はその言葉に激震が走ったようで目を見開く。途端に響達よりも元気になりペンダントを受け取り席を立つ。

 

「司令と立花も歌っているのだ。ならば私が歌っていても不自然で無いのは道理。気付かせてくれて有り難う雪音。」

 

『ちょっと翼とデュオしてくるからそこで休んでおけよ。』

 

ベンチで仰け反ったままのクリスは片腕の肘から先だけを挙げて力無く振る。そんなクリスに見送られて翼は走り出す。

 

「奏は何を歌いたい?」

 

『そうだな………、じゃああの時歌えなかったアレにしようか!』

 

翼は軽快に走りながらも力強く歌う。あたしもその歌声を壊さないように合わせ高める。久しぶりの翼とのデュオは凄く気持ち良くてもっと歌いたくなる。そこへ遠くから猛烈な勢いで響が駆けてくる。

 

「今のもしかして、もしかしなくてもツヴァイウィングのあの名曲ですよね!あたしこんな間近で聴けたなんて嬉しさでおかしくなっちゃいますよ!」

 

突然ペースを上げた響にダンナも追いつく。

 

「急に如何したんだ?見たところクリス君は休憩中か。なら次の特訓に移るぞ!それではクリス君の待つベンチまで向かうぞ!」

 

その後は腹筋や背筋などの基礎的なトレーニングをして1日目を終えたと思っていた。二課に戻り医療スタッフによるマッサージを終えて顔を綻ばす三名は扉から出て待ち構えていたダンナに捕まる。

 

「さて、トレーニングご苦労だった。諸君には俺から今日最後の特訓の為のプレゼントをやろう。さあ遠慮せず受け取れ。」

 

別々のパッケージが手渡される。響と翼は素直に受け取るがクリスは納得出来ないようでダンナに噛み付く。

 

「何で映画を観るんだよ!映画観て強くなれるのかよ!?」

 

クリス以外の三名は首を傾げている。

 

『まあ、結構馬鹿に出来ないぞ?ダンナがあそこまで強いのは間違い無く映画のおかげだからな。』

 

クリスは渋々ながらもパッケージをダンナの手から奪い引き下がると割り当てられた部屋へと戻る。色々言いながらも気になるようで早速銃を持つ男の描かれたパッケージを開封してディスクをプレーヤーにセットしてベッドに飛び込む。そして、横になりながら気怠そうにテレビを眺める。しかし、映画のアクションシーンでその様子は一変して食い入るようにテレビを観始める。

 

「銃で近接戦闘ってアリなんだな!映画だからって馬鹿に出来ないじゃねぇか。明日の訓練で早速試してやる!」

 

『クリスもあっち側に渡ってしまったか。あたしもゲームや漫画を参考にしてるから似たようなものか。』

 

何度も映画を見返してアクションシーンの動きを脳裏に焼き付けているようでこっちが呼びかけても反応が無い。十数回も見返してようやく眠気に襲われて目をこすりながら大きく欠伸をする。

 

『明日もあるんだ、だからもう歯を磨いて寝た方がいい。』

 

「………うん。」

 

船を漕ぎ始めているクリスはその状態でも難なく磨き終えてベッドに潜り込むとすぐに眠ってしまった。クリスの手に握られたままのあたしは安らかな寝顔に癒されながら意識を深く沈めた。

 

 

 

誰かの声が聞こえる。海の底から海面へと浮上すると響がクリスの顔を覗き込み黄色い声を上げていた。

 

『程々にしときな響。でないと寝起きのクリスに噛み付かれるぞ?』

 

「あ、おはようございます奏さん!昨日師匠に貰った映画を見返していたらいつの間にか寝ていました。クリスちゃんは貰った映画を気に入ってましたか?」

 

朝から元気な響の声にクリスは少し反応して布団を深く被る。

 

『そいつはもう食いついて何度も見返していたくらいだ。響と同じであのまま放置していたらそのまま寝入ってしまうところだった。因みにその状態のクリスは凄く素直だ。』

 

クリスを挟んで交わされるクリストーク。時々寝顔を二人で眺めていると気配に気付いたのかゆっくりと目を開く。上体を起こし半目で周りを確認する。響を認識した途端に意識が覚醒してベッドから飛び起きる。

 

「朝から何であたしの部屋に居るんだよ!びっくりするだろ!?」

 

響はクリスの目を見詰め静かに口を開く。

 

「おはようクリスちゃん!今日はクリスちゃんお待ちかねの訓練だよ。昨日の映画を気に入ったみたいだし何かしてみたい事あるんだよね!」

 

そのうちバレるのだからあたしを睨むのは止して欲しい。

 

「はぁ………、とりあえずおはようさん。あたしも用意して食堂に向かうから先に行っててくれ。」

 

「わかったよクリスちゃん。私クリスちゃんが来るまで待ってる。でも、急いでくれると嬉しいな〜………お腹すいて倒れそうだよ。」

 

本当に力が出ないのか背中を丸めてゆっくりと退室した。クリスは普段より心持ち急いで身だしなみを整えると響の待つ食堂に向かった。

 

『まだ呼ばないのか?まあいいけどよ。それよりもクリスの寝顔は何だか守ってあげたくなるよな。』

 

「そんなもの見てたのかよ………あんまり見ないでくれると恥ずかしくなくて済む。」

 

長い廊下にはクリスしかいない。それを感じ取り話を切り出す。

 

『………クリスの家で初めて寝た時には悲しそうに苦しそうな顔で寝てたんだ。それが今ではあんなに安心して安らかな笑みを浮かべて寝てるんだ。ま、あたしは気長に待ちますかね。』

 

響はすぐにでもクリスを引っ張り出してくれそうではある。もう居場所はある。後はクリスの心の問題であるが、もうあと少しだろう。

 

「………あたしには温か過ぎるんだ。本当に居てもいいのかな?だってあたしは………。」

 

クリスが葛藤しながら食堂に辿り着くと空腹を堪えてテーブルに突っ伏している響を見つけた。クリスが食堂の入り口に到着した事を何かで察知したのか素早く席を立ち駆け寄って来る。

 

「待ってたよクリスちゃん………。早くしてくれないともう私、空腹で立てないよ………。」

 

響は右肩に寄り縋るがクリスは溜息を吐きながらも好きにさせている。どうやら答えは出ているようだ。後は受け入れるだけだろう。

 

 

食事を終えて訓練シミュレーターの大きな部屋に集まった装者三名とダンナ。

 

「よし、それでは訓練内容を伝える。前回の戦闘データに基づいて様々なパターンを詰め込んだ仮想F.I.S.装者達を見事倒してみろ!」

 

対戦カードは翼とマリア、響とセレナ、あたしとクリスと鎌と鋸になった。訓練シュミレーターの中で翼がギアを纏い構える。あたし達は部屋の外から観戦する。

 

「気を抜くなよ翼、奏君のガングニールの戦闘データも詰め込んである。だから仮想装者の中でも手強いぞ。お互いの何方かが致命傷を負った判定が出ればその時点で終了だ。」

 

「必ず勝ってみせます。それに昨晩の映像の中に試してみたい技もあります。」

 

この訓練ではホログラムの敵を相手にする。よって鍔迫り合いなどは出来ない。こちらの攻撃がホログラムの防御を突破したと判定された場合は防御が崩れる仕様だ。

 

室内はあのライブ会場に塗り替えられてマリアが登場する。マリアは登場するなり渦巻く風を纏った槍を翼へと投擲しその後に続く。翼は横へと回避に移るがそこで槍が複製されて回避先にも迫り来る。それを床に手をつき更に横へと回避する。槍を手に戻して翼へと飛び掛るが剣で受け流す。背を斬りつけようとするがマリアは振り向かずにマントを操り翼を牽制し駆け抜けた勢いのまま壁を蹴り渾身の力で翼へと槍を投擲する。予想していた翼は腰へと剣を構えて抜刀するように素早く蒼い斬撃を放つ。槍は僅かに逸らされ翼の横を通り過ぎるがマリアの手元へと戻される。

 

二人は再び対峙して仕切り直す。翼はマリアが動き出すのを待っている。今度はマントを回転させて身体を覆い5m程の黒い竜巻となり襲い掛かる。

 

「貴女と私、どちらが強いか決着をつけましょうか!」

 

両手に剣を携え、脚部の剣状のギミックを稼働させ全ての剣に蒼い炎を纏わせると上空へと跳ぶ。10m程で脚部の剣を僅かにずらして足下で合わせる。剣から炎を噴射して高速で回転しながら黒い竜巻へと突撃する。蒼い炎の渦と黒い竜巻が激突するとマリアの竜巻は壊されて致命的な一撃を与える事に成功しマリアは崩れ去った。

 

「目には目を、歯には歯を、竜巻には竜巻をってとこだな。よくやった翼、見事だったぞ。」

 

「はい、有難う御座います。ですが慢心する事なく気を引き締めて参ります。」

 

 

続いて私とクリスが鎌鋸コンビとの対戦だ。誰かが脱落した時点で終了のルールだ。さっきの翼の戦闘でエネルギーも溜まってある。

 

「翼が頑張ったんだ、負ける訳にはいかないよなクリス?ところで数的には二人の方がいいけれども戦力的にはデュアルの方が攻防一体だ。あたしも制御するから二人のようなものだけどな。」

 

クリスは悩むが恐らくはデュアルするだろう。昨日あの映画にあれだけ食い付いていたのだから。案の定クリスとデュアルしてシュミレーターを開始する。

 

鎌鋸コンビが出現するとクリスはハンドガンを両手に携えて突撃する。相手は前衛緑の後衛ピンクのバランスの良いコンビだ。鋸の刃が無数に飛来するがあたしがレーザーで撃ち落とし八基使用した爆破レーザーで二人諸共薙ぎ払う。滑らかな動きでピンクには回避され緑にはバーニアで跳ばれて回避されるがそこをクリスが狙い撃つ。鎌を回転させて防がれピンクの鋸の刃が飛来する。あたしは青を四基使い大きな水の壁を造り鋸を全て沈める。そして、その壁を操作し水のカッターを無数に造り後衛のピンクを襲撃させる。緑は行かせまいとするがクリスが銃で牽制して思い通りにはさせない。

 

『さて、一気に畳み掛けるのか?向こうも四基だけじゃ仕留める事は出来ないしな。』

 

「おう!アシストは任せた。」

 

緑に銃を撃ちながら真っ直ぐに突き進んで行く。黒い球体を二基緑の背後へ飛ばして小刻みにレーザーで狙い撃つ。回避されるがクリスのハンドガンも避けるのは辛そうで堪らず上空へと逃げた。

 

「行くぞ、奏!」

 

『応ともさ、クリス!』

 

クリスはリフレクターを解放する。あたしは全てのビットを戻して八基の黒を造りリフレクターを飲ませて緑の更に上へと打ち上げる。そして爆発的に拡げて緑を丸ごと飲み込み黒い球体に閉じ込める。クリスは止めに黒い球体へ一発撃ち込むと球体に飲まれて内部で多数の爆発に曝されて緑は脱落して訓練は終了した。

 

「随分と呆気なかったな?まあ、大和ってのが強いんなら早く応援に駆け付けられるからいいけどな。」

 

『情報が不足してたんじゃないか?だから油断は出来ないぞ。』

 

「よくやった。本来クリス君達は派手な戦い方で窮屈だったろう?相手のデータも不十分であるから過信しすぎないようにな。」

 

 

最後に響の番である。響のトレーニングは少し違い回避しながら接近するものだった。

 

「それでは響君には仮想敵であるセレナの盾を全て回避しながら懐に潜り込む訓練を受けてもらう。本体近くの盾以外に触れれば一発アウトだ。無数に繰り出される盾をわざわざ全て壊していてもキリがない。本体を叩くのが一番だ!」

 

「はい、師匠!私頑張ります!」

 

あのライブステージに景色が変わり白銀のギアを纏ったセレナが登場する。無数の盾が展開されると響は拳を握り締めて脚部のジャッキを引き絞り爆発的な加速でセレナへと迫る。あまりにも正直に真っ直ぐに突き進んで迫る響の前面に光の盾が複数展開される。響は勢いそのままで腕部のバンカーからエネルギーを噴出させて僅かに方向を変えて盾の横を潜り抜けるが今度は壁のような盾が展開される。響は盾を睨み付けると駆けながらパワージャッキを引き絞り強く両足で地面を蹴りジャッキを使い大きく跳び壁を越える。そして、続けてパワージャッキを使用して空気を蹴り込みバーニアを噴かせて盾を造られる前に懐へと潜り込む。セレナの身体を守る最後の盾を拳を握り締め引き絞り力を溜めたバンカーを解放して打ち抜く。セレナは崩れ去りシミュレーションが終了する。

 

「よくやったぞ響君、その調子で想いをぶつけてみろ。だが、ジャッキの連続使用で疲れているようだが大丈夫か?」

 

額に浮かぶ汗を拭いながら笑顔を見せる。セレナの盾のエネルギー消費がどれ程のものかは判らないがあまり響だけで戦うのは厳しいようだ。

 

「へいきへっちゃらです。でも師匠、お腹が空いて力が出ません!みんなでお昼にしましょう。」

 

「分かった、メディカルチェックが済んだら飯にしよう。皆、ご苦労だったな。それでは先に食堂で待っている。」

 

ダンナに続いて翼とクリスも部屋を出て響を迎えに行く。

 

「あいつまた腹減ってるのか。朝から沢山ご飯を食べてたのにどこに入ってるんだか。」

 

『まあ、美味しそうに食べるから見ていて気持ち良いだろ?それで太るでもないならいい事じゃないか?』

 

翼と弦十郎のダンナは何かを考えているようで唸っていた。ダンナは用事があったと言いどこかに向かった。響が居るであろうシャワー室前で待っていると少し経ち響が出てくる。

 

「あ〜お腹が空いてもう立てない………助けてクリスちゃん!」

 

またもやクリスの肩に縋るとクリスは何か違和感を感じ響の頬を触る。

 

「ひゃあ!?どうしたのクリスちゃん、私のほっぺたに興味があるの?」

 

「いや、何か朝よりも温かい気がして確認しただけだ。シャワーの後ならそれも普通か………悪りぃな、気にしないでくれ。」

 

クリスに縋りながら響は食堂まで着くと元気を取り戻して朝よりも多く食べていた。そんな様子を翼は黙々と観察するかのように見ていた。食べ終えた頃に艦内放送でダンナにあたし達は作戦司令室へと呼び出される。到着するとそこには緒川さんも居た。

 

「お前ら、先程F.I.S.からハッキングを受けた。そして、こんなメッセージだけを残して去って行った。」

 

———明日、月の夜0時にカ・ディンギルで待つ。そこで決着をつけさせて貰う。

 

「想いをぶつけて届けてみせろ!明日は決戦だ!」

 

三人は真剣な眼差しでメッセージを見つめる。その場に居た者は胸の内に闘志を燃え滾らせていた。

 

翼は歌の力を信じ世界へ羽ばたく為に、クリスはみんなの夢を守る為に、響は胸の想いを届け手を繋ぎ合う為に各々は明日へと備えるのだった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

クリスの近接戦闘は少しお預けとなりました。二課vsF.I.S.の時に暴れさせられると思います。
次回はF.I.S.側のお話の予定です。

次回もよろしくお願いします。
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