今回で3話前半までになります。ザババ組はニコイチなイメージで別行動がさせられず、思ったより悩みました。強固な絆、または共依存ともとれますが。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
私は救助任務を終えた調ちゃんと切歌ちゃんを追跡する。物陰に隠れながら移動する中で、不意に背後へと気配を感じた私は振り返る。
「こんな所に少女が一人だなんて、悪いヒトに襲われちゃうかも。こんな風に、ね?」
見知らぬ青いメイド衣装の少女。その人形めいた顔が眼前にまで迫って来ています。急な出来事に思考が停止しそうになりました。ですが、顔が衝突する寸前にこの火災を引き起こした襲撃者かもしれないと両手が動きはね退けることに成功です。驚いた表情を浮かべるメイドの少女。
「やめて下さい! あなたは何者ですか!?」
その場でバレエのように一回転して愉快そうに口を歪めて笑う。
「あらら? 私がフラれちゃうなんて初めて………いいわ。あなた面白いから特別に教えてあげる。自動人形が一体、ガリィ・トゥーマーン。でも、どうせここで死んでしまうのだから関係無いわね!」
青いヘキサゴンの集合体から大量の水が放出されて私の足下に当たる。すると、そこから地面が凍り始めて私の足を氷が覆い動けなくなってしまう。視線を落とした時、ガリィの膝が人間ではあり得ない人形のような造りだと気付く。やっぱり普通の人間などではない。喜色を帯びた顔で一歩ずつ近付いて来る。平気で誰かに危害を加える彼女は危険です。他者を見下す青い瞳を見据え、私は歌い金と銀の輝きを纏った。そして、ガングニールの脚部ギミックからエネルギーを氷へと撃ち込むと砕けたので脱出しました。
「ちょっと、こんなの聞いてないって。簡単な仕事のハズなのに………予定変更。あんたの相手はコレで十分。私は忙しいんだから。」
赤い小さな玉をばら撒き、地面を凍らせながら滑り去るガリィを追いかけようとする。だけれど、地面から生えてきた大量のノイズに阻まれてしまう。野放しにはできません。私が杖を掲げて力を込めると輝きを増す。十分なエネルギーを帯びた杖を振るえば、目映い金の雷が放たれノイズを貫き倒す。とはいえ、出力を絞らなければ周囲の建物や木々に甚大な被害が及ぶので、討ち漏らしたノイズは盾や小規模な雷を操作して倒すしかありません。視認できる限りでは20体くらいでしょうか。すると、よく知った声が聞こえてきました。
「あたしたちも加勢するデス!」
「貴女はそっちをお願い。私はあっちのを。」
私が頷くと調ちゃんは円形の大きな鋸の内側に乗り、タイヤのように回転させノイズを両断する。切歌ちゃんはここから右側を担当して、私はその反対側です。盾を幾つも展開しては調ちゃんの鋸のように高速回転させて飛ばしノイズを両断するのですが、どうしてか違和感を覚えます。
「何か変です………二人とも、ただのノイズだって油断しないでください!」
私の知るノイズと違い赤い粒子を散らし崩れたり、淡く白に輝く器官を伸ばしたりするのです。それに触れた盾は赤い粒子へと変えられ脆く砕け散ることから、それに触れないように立ち回りました。担当した方面を片付け終えた私は戦況を確認しますが———。鎌が赤い粒子へと変えられて絶体絶命の危機の切歌ちゃん。向こうでは、頭部から伸びた二本のアームの鋸の片方を砕かれ転倒した調ちゃんが目に飛び込んだのです。あれでなければ間に合わない!
「間に合って、お願い!」
反射的に私はノイズとの距離が近い切歌ちゃんを先に選択。背部のバーニアを使い最大速度で駆ける。速く、もっと速く。ガングニールのエネルギーを臨界まで高めます。ギアが、身体が金の輝きを帯び始める。全身のエネルギーをアガートラームで制御しますが、体表面からは黄金の稲光が迸ります。そして、臨界まで高めたエネルギーで身体を一度に雷へと変成。迅雷の如く一直線に遠くのノイズへと体当たり。瞬時に赤い霧に還しました。続いて調ちゃんの方へと飛ぶ。鉤爪を備え、正中線から丸鋸の生えたノイズが三体も跳び上がり、今にも調ちゃんへとトドメを刺そうとしている。調ちゃんの前に下り立ち、巨大で半透明な白銀の盾を造り出し守る。ノイズが盾を喰い破ろうと侵食しているのが透けて見えます。手に込めた雷を盾へと解き放てば、取り付いていたノイズ諸共雷の餌食にしました。
「もう、大丈夫ですよ。」
調ちゃんは無事で、私を薄紅鳶の瞳で黙り見詰めています。少し離れた位置の切歌ちゃんは大きく口を開き、唖然とした顔で私を見ていました。衝撃波で揺さぶられたのかもしれません。雷へと変成した身体をアガートラームで元に戻します。ですが元通りとはならず、纏えたのは白銀のギアのみ。あれを使用した反動でガングニールは強制解除され、しばらく纏えなくなってしまいました。治療はできませんので調ちゃんへと手を差し伸べます。誰も口を開かず静かな中で私は見詰め返す。
「私と大切な友だちを助けていただいて、本当にありがとうございました。」
手を掴み立ち上がった調ちゃん。では、次は切歌ちゃんですね。手を繋いだまま、私たちはまだ惚けたままの切歌ちゃんの目の前まで到着です。調ちゃんが呼びかけると、一度肩を強張らせたあとに周囲の様子を確認していました。どうやら、こちら側に戻れたみたいです。
「無事で本当によかったよ、調! どこか痛いなんてことないデスか?」
「大丈夫だよ、切ちゃん。私も切ちゃんが無事でよかった。」
切歌ちゃんは調ちゃんに怪我がないか入念にチェックして、無事だと判ると抱き着いていました。満更でもない表情をしています。すると、調ちゃんは切歌ちゃんを引き剥がして私に向き直りました。丁寧にお辞儀をする調ちゃん。同様にお礼を述べた切歌ちゃんもお辞儀をする。
「改めて、ありがとうございました。ところで、貴女のお名前は?」
「あらためてアリガトデス! それにあたしだってとーっても気になってたのデスよ!」
ここでの私の名前は、丁度夜の空で銀に輝く身近な天体の名称。人類の不和の象徴であり、同時に人類の監視装置でもある。それでも、私は違う一面を知っている。だって、今も優しく私たちを照らし見守る存在だから。
「二人が無事で何よりです。私のことは快傑うたずきん ルナと呼んでください。」
安心したのも束の間、遠くで何かが壊れたような大きな音が聞こえました。それと時を同じくして、前の二人も顔を上げて通信に集中しているみたい。顔を見合わせた二人。
「先輩方が危ない。」
「でも、燃えたマンションの方にはあの葛城 大和って人がいるんデスよね?」
私の他にも大和が交戦しているみたいです。姉さんは様子見しているのでしょうか。急を要するのは大和の方で、それにガリィの去った方向からの大きな音ですから。
「ここでお別れですね。二人はクリスちゃんの方へ向かってください。」
大和が居るのなら無事だとは思いますが、万が一ですから。炎が燃え盛る光景に怯えてなんていられません。私は銀の輝きに守られているのですから。そうして私は再びマンションの方へと駆け出しました。
———大和サイド———
火災現場であるマンションから数名救出した後、立花をステルス状態で追っていた。神楠によれば英国の風鳴達が何者かの襲撃に遭っているという。ライブを観に行っていた奏がそこへ向かい交戦中だ。襲撃者は装者が狙いなのかもしれず、遠く離れたこの地で人命救助に駆けつけた立花達も危ないかもしれないのだ。各国はシンフォギアを兵器またはそれに極めて近い物であると認識している。月の欠片を破壊せしめ、フロンティア事変でも聖遺物の強過ぎる力を目の当たりにしたのだ。表向きはS.O.N.G.という各国監視の目が届く位置に置きはしたが、水面下では良からぬ輩が装者誘拐を企てていてもおかしくはない。杞憂であれば何も問題ないが………。
立花は燃え盛るマンションの方を見上げる。何かに気付いたのかギアも纏わずにマンション前の傾斜に造られた階段を駆けのぼる。
「そんなところに居たら危ないよ。今迎えに行くから待ってて!」
立花の視線の先。棟と棟の間。風がよく吹き抜けそうな十数メートル程の連絡通路。その転落防止柵上に佇む小さなシルエット。炎に照らされた姿はおとぎ話の魔法使いのように先が尖った鍔の広い帽子をかぶり、西欧中世の趣のある紺瑠璃の外套は首元以外の前面を大きく開いた状態。その裾周りには白練のような色をしたフリルがあしらわれている。それに似た祭服のストルのようなものが首から下へ二つ伸び、左右それぞれに蛇が描かれている。大腿の付け根付近までの丈のワインレッドのドレスを着た金髪の少女。編まれた後ろ髪は長く、足下付近まで到達していた。立花の声に気付き袖で顔を拭った少女。逃げ遅れて泣いていたのか、それとも別の理由からなのだろうか。すると、立花を見据え手をかざす。
「黙れ。」
かざされた指先で円の軌跡を描く。それに緑の六角形が集合し形成された大きな六角形から渦巻く風が放たれる。立花はその場から後ろへ跳び退く。それは地面に衝突しコンクリートを抉った。当たって欲しくない事柄が的中してしまったようだ。だとすれば、皆の方も襲撃なのか。
『神楠、皆の状況は?』
『現在も奏はノイズらしきものと交戦中。マリアはクリスちゃんの監視中にエルフナインと名乗る少女と接触。セレナは切歌ちゃんと調ちゃんの近くで警戒中です。』
ノイズを使役する敵とエルフナインと名乗る少女。そして、目下の風を操る少女からはシンフォギアとは違った力を感じる。少女の背後に目を凝らすと、弱々しく今にも風に吹かれ消えそうな薄青い何かが居た。生きている者には聞こえない声無き声で何かを訴えている。それを聴き取るには直接触れるのが一番だ。
「て、敵?」
立花はインカムを装着した耳へと目を向けて通信を聞いていた。そして、ギアを纏おうともぜずに戸惑った表情で少女を見上げた。明確な敵を前に何故構えぬのか。立花はフロンティア事変の最終局面にマリアAのガングニールを解放し纏った。誰かを助け日常を守る為に立ち向かってみせた。なのに纏わない。
「構えろ。お前のその力は、ただの飾りではなかろうて!」
先程よりも数を増した六角形の緑の輪が宙に展開される。さっきの力は小手調べだったのか。明らかに本領を見せた少女にも、立花は構えようとはしない。
「戦うなんて嫌だよ! それに、この力で誰かを傷付けたくない!」
戦意を微塵も示さない立花に、私は即時障壁を展開させられるように備える。それと、あの薄青い何かに近付くタイミングも見計らう。少女は最後のピースをはめ込むように緑の模様を出現させて六角形の輪の中央へと移動させる。その瞬間に、輝きを放つ六角形から渦を巻いた暴風が立花へと襲い掛かる。今からギアを纏ったところで間に合わない。アイギスを纏った私はその間に割って入り幾重にも障壁を展開させて防ぐ。これは生半可では破られかねない。障壁へと更にエネルギーを供給する。障壁により逸れた暴風が地面を抉り、私達の立っていた場所と大きな落差が作られた。
「お前が例の………退け! オレの邪魔をするのなら容赦などしない!」
「え、あれ………あなたはあの時の!?」
少女は忌々しさを存分に声音へと反映させていた。さらに、視線は私に集中しており視野が狭まっていることだろう。戸惑う立花をそのままに、私は少女の背後へと狙いを定めて跳躍した。少女は突然の出来事に即座に反応できず硬直していた。その背後を取り、薄青い何かへと鎖を伸ばし接触吸収させる。頭の中へと幻のように浮かび上がった目の前の少女と同じ髪色の穏やかな印象の男性。
———キャロルを、娘を助けて下さい。
しかし、念話のように頭に直接響く男性の悲痛な声。その声に私は分かったと返す。満足したのか、衰弱したのか鎮まったそれを心象内に保護した。目の前の小さな背中に向かって声をかける。
「キャロル、どうしてこんな事を………どうしても、涙を流してまで成し遂げたい想いがあるのか?」
僅かに肩を強張らせた後、勢いよく振り返る。キャロルの大きく見開いた青い瞳には赤々と猛る炎が映る。私はその怒りの形相にキャロルの抱く激しい憎悪と、どうしようもなく深い悲しみを垣間見た。キャロルは左手の平から竜巻を放つ。
「見たなッ!」
だが、私は放たれた直後に一歩キャロルの懐へと踏み入れる。右腕を掴み、背後へと障壁を足場に回り込んで捻り上げる。逃れようとするキャロルの左腕も同様にして、鎖で両腕を拘束。なおも暴れ抵抗するキャロル。この小さな少女が何を背負い、何を思い、何を求め目指すのか。恐らく全てを知るキャロルの父親は休眠状態でしばらく起きないだろう。
「離せ! オレは錬金術にて世界を壊してでも識りたい真実がある。万象黙示録を完成させねばならんのだ!」
「どうしてこんな事をするのか教えてよ。話せばきっと分かり合える!」
キャロルの必死の叫びに立花は当然のごとく尋ねる。話して分かり合いたいという純粋な想いで聞くのだ。
「………父親に託された命題だ。誰しもあるだろう。だから歌え! 纏え!! 戦え!!!」
声の限りを尽くし言葉をぶつける。何だ。立花の様子がおかしい。向き合おうとしていた姿勢が崩れ、俯き小さく呟く。
「私は何も………託されて、ない。」
私も託されてはいない。一般的な家庭には必要とされる存在であるが、私にはよく分からない。無いも同然の存在。キャロルの涙はあの父親に関係していたのかもしれない。そんな考えが頭を過った時、何かが私目掛けて迫る気配を感じた。
「そいっと!———華麗に可憐にガリィ参上ですよ。さしずめ、囚われのお姫様ってトコですかね、マスター?」
青を基調とした西洋の女性使用人のような恰好をした少女が私とキャロルの間に鋭く尖った氷柱で切り込む。私は鎖を切り離して飛び退く。キャロル達は立花と同じ高さまで落下を開始する。逃がすものかと空中の二人を拘束するために鎖を操り伸ばす。
「このままだとガリィ達捕まっちゃいますよ!?———なんてね。」
だが、鎖が触れた瞬間に水へと変わり崩れ去る二人。未知の異端技術なのか。周囲を警戒して見ると、いつの間にかマンションの屋上に移動していたのだ。こちらを見下ろすキャロルとガリィと名乗る少女。
「退くぞ。今日はもう十分だ。………次こそ歌え。でなければ、お前の全てを壊せないからな。」
「もう邪魔をしないでくれるとお仕事が楽で助かりますけれど。あの金銀の子にも伝えておいてくださいよ? それでは、サヨウナラ。」
ピンクの小瓶を落とし一瞬にして消えた二人。私は立花の傍へと寄り、念の為と治療を施す。未だ俯き、心ここに在らずの状態の立花。だが、父親関係の問題に私がなんと声をかければ良いのか分からず立ち尽くしてしまう。父親など必要ないとは言えない。だからとて、絶対に必要なのだとも。そういえば、このような立花を私は目にした事がある。元の世界の秋桜祭で開催されたのど自慢の終了後だ。どちらも立花の親娘の事情は同じだろう。ただ傍らに立つだけの私の方へ、セレナがギアを纏った状態で駆けつけた。
「大丈夫………ではなさそうですね。」
セレナに事の顛末を語り聞かせると、立花の手を両手で包む。立花は顔を上げてその手の持ち主を不安が色濃く表れた瞳で見詰める。それに対し、仮面で明かせない目元以外の口元を柔らかく曲げて微笑む。すると、立花は瞳に僅かな光を取り戻した。
しばらくして、S.O.N.G.関係者らしき人達が遠くに見えた。先にセレナを帰し、マリアの方へと空間を裂き繋げる。父親関連での大きなストレスからなのか口を噤み、ただ空を見上げる立花。
「ままならない、な。」
この先、キャロル達の襲撃は必ず起こるだろう。その際、正しく力を使い立ち上がってもらわなければならない。白銀と黒の空を見上げ、私は裂け目を潜るのだった。
キャロル達の襲撃の後、フロンティアへと帰還した私達は各自好きなように過ごす。暗い出来事をずっと引き摺るより、前向きになるよう努めた方が良い。私は櫻井のラボへと足を運ぶ。そこでは櫻井が相変わらずの調子で、緋色のゴーレムだったモノへと手を加えていた。なのだが、それはどこからどう見てもバイクである。私はバイクに明るくないのだが、風鳴の乗っていた物に色以外そっくりであることは分かった。それから受ける印象は剣の雰囲気を帯びた燃えるような緋色のバイクである。私が近付くと櫻井は振り返った。
「ようこそ、私のラボへ。それで、聞きたいことって何かしら?」
「錬金術についてだ。」
あちらでの出来事の記録を観ながら話す。どうやら櫻井は錬金術自体を知っているようだ。だが、櫻井の知らない部分も多いらしく目を輝かせていた。自動人形へは強い興味を抱いているらしく、是非とも自作して助手にしたいのだそうだ。
「相談というのはノイズモドキの発光する謎の器官についてだ。あれの対策を講じなければマリア達のギアが分解されかねない。」
すると、櫻井は懐へと手を入れ何かを探す。探る動作が止まり、取り出したるはバビロニアの宝物庫へのアクセスキーであるサクリストS。忌むべき完全聖遺物、ソロモンの杖だ。
「これはノイズを操る物だろう。これではあのノイズモドキは操れないぞ?」
「そうじゃなくって、これでそのノイズモドキをぶっ刺してこっちの宝物庫に回収して欲しいの。あのノイズモドキは本家本元の造り方を錬金術で成した物でしょうから、ノイズとして貯蔵できる筈よ。それじゃ、頑張ってちょうだいね。」
手渡された杖を持つ。この杖は宝物庫を開閉する鍵である。ならば、出すだけではなく入れることも可能であるそうな。つまりは私がノイズモドキをバビロニアの宝物庫へと繋ぎ放り込むのだ。それで、対ノイズモドキ用の防御機構を構築し組み込めれば奏達の身の安全が確保される。ギアすら破損させる攻撃が奏やセレナに与える影響が分からない。現状、最悪の想定ではそのまま消滅しかねない。しばしの間、前へは私が出ることになるだろう。ノイズモドキへと触れず、近付かず一方的に攻撃を行えるのだから。もう一つ、立花達装者を用いた呪術もあるにはある。ただ、あれはその対象の様々な感情に依存し、味方になるとも限らない不安定なものだ。今の立花に使用すれば十中八九敵愾心を燃やした状態で顕現してしまう筈である。立花を立ち上がらせるだけならば彼女に———そんな考えが浮かぶ。それは誰かを傷付ける方法。もしも、立ち上がらないのならば荒療治ではあるが………。
そういえばと、たった今思い出した特に関係のない質問を投げかける。
「私が櫻井に怒りをぶつけた時、およそ人の域から外れていただろうか?」
櫻井は首を傾げている。印象に残らない程度なのだろうか。
「………ああ、アレね。あの程度で怯えていたら、魔塔を建てて月の破壊なんて実行しないでしょ? それに、大和君が気にする程ではないから安心なさい。」
櫻井のお墨付きを得た私はラボを後にする。杖を手に携え通路を歩く。広大なフロンティア内部の居住区画は静かであった。
誰とも出会うことなく自室に到着し、テーブルへとソロモンの杖を置く。それをただ何となく、ベッドで横になり視界に収めていた。この世界の脅威は同じ世界の住人が片付けるべきだろう。私達はその手助けをするだけである。非情に、冷淡に思える程に。しかし、現状では装者六名の内、三名が戦装束を奪われ窮地に立たされている。再度キャロル達の襲撃に遭えば立花、調、切歌の三名では数、力量ともに敗北は必至だ。何よりも、キャロルの目的は世界を壊し真理を識る事。それが万象黙示録なるものの完成と同義かは定かでない。黙示録も世界の破壊もマイナスイメージの言葉であり、キャロルの行動がどのような悲劇や惨劇を引き起こすのか皆目見当がつかない。
私は目を閉じた。その瞼の裏に見たのは、炎に涙する少女の叫ぶ姿だった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
オリ主大和に次いでチート気味のセレナさん。装者中最高値のフォニックゲインですが相性次第では劣勢に。
戦場ジャンケンなら、セレナが守りのパー、翼さんが恰好いいチョキ、ビッキーが全てを貫くグー。弱点の近接戦闘。それを克服するために大和との特訓にて雷変成モードを獲得。
次回は3話後半と未定です。
次回もよろしくお願いします。