誰もが寝静まった夜。
廊下から足音が聞こえてきたと思えばドアが開けられて部屋にパジャマ姿かつ両腕に大きめの枕を持っておどおどしているネプギアが入ってきた。
「お兄ちゃん、よかった……まだ起きてた」
彼は枕元に電気スタンドを点け、ベッドの上で小説を読んでいたが、ネプギアがやって来ると小説を閉じて【どうした?】と聞く。
「あ……あのね……私、さっきすごく怖い夢見たの……それで、一人で眠れなくちゃって……」
「それで……お兄ちゃんがよかったらなんだけど……今夜だけ、お兄ちゃんと一緒に寝てもいい?」
「……いい?ありがとう!じゃあ、早速お兄ちゃんのベッドにお邪魔するね」
ネプギアがこちらのほうに歩いてきてベッドの中に入ってくる。
しかし彼が使っているベッドがシングルなせいで二人で入るには狭く、ほとんど密着状態になる。
「えへへ、お兄ちゃんのベッドあったかい。ちょっと狭いけど、お兄ちゃんのいい匂いがする……」
ネプギアが腕に抱き付いてきてますます身体を密着させてくる。
そうしたせいでネプギアの発展途上の胸が彼の腕に当たるが、ネプギアは気にしていなかった。
「お兄ちゃん、顔真っ赤だけど、私にこうされると、意識しちゃうの?」
当然だ。
ネプギアは数多くの女の子の中でも美少女の部類に入るのだから意識してしまうは必然だ。
おまけにそんな美少女に一緒のベッドの中で腕を抱き付かれていてはますます過剰になってしまう。
「そっか、意識してくれてるんだ。ふふっ、でもやめないよ。だって私、お兄ちゃんとこうするの大好きだもん」
「え?どういう意味なのかって?もう、お兄ちゃん、何度も言ってるのにまた言わせるの?」
「私が……お兄ちゃんのこと大好きだってこと、知ってるくせに……」
顔を耳まで真っ赤にして恥らう。
「な、なんだろう……こう言ってると、急にこうしてるのが恥ずかしくなってきちゃった……」
それに、何だか熱くなってきたような……」
「え?それなら部屋に戻ったら?って……だ、ダメ!今日はお兄ちゃんと一緒に寝るって決めてるんだから!今日はここでお兄ちゃんと一緒に寝るの!」
どうやらネプギアは彼に抱き付いているのが恥ずかしいと言いながらも自分の部屋に戻る気はないようだ。
たしかにネプギアは怖い夢を見るのが怖くてわざわざ夜中に自分の部屋に来たのだから追い返すのは忍びない。
だから彼はそれ以上【戻れ】とは言わないことにした。
追い返したくないというのはもちろんあるが、何よりネプギアが自分を頼りに来てくれたのが嬉しかったからだ。
でも、だからこそ知りたかった。
ネプギアがどういった怖い夢を見てここまで来たのかを。
「え?何の夢をさっき見たのかって?えっと……ね、口にするだけでも怖いからあまり言いたくないんだけど……絶対皆には言わないって約束してもらえる?」
ネプギアの言葉に彼は【絶対に言わない】と断言する。
断言するとネプギアはその夢について眉毛を八の字にさせながら話し始めた。
「私が見たのはね……世界を救うためにお姉ちゃん以外の女神を皆を殺しちゃう夢……」
何故か妙にリアリティのある内容だ。
ネプギアが世界を救うためとはいえ、皆を殺すわけないのに……。
「私も何でそうしなきゃいけないのは分からなかったんだけど、でも、誰かが
私にそうしろって囁いてきたの。そうしないと、世界は犯罪神っていうすごく
すごく悪い人によって滅ぼされるって……」
「それに、お姉ちゃん達が言うの……それで世界を救えるなら、私の命なんて惜しくないって……私、すごく悲しくなって……でも、身体が勝手に、お姉ちゃん達を刺し貫いて……」
「それで、平和になった世界で私は呟くの。お姉ちゃん達を殺してまでこの世界を守る価値はあったのか?って……その時私、すごく悲しい目をしてた……」
「だから目が覚めた時、私も泣いてた……同時に一人で寝るのが怖くなった。だから、お兄ちゃんのところに……」
ネプギアはその時見た夢のことを思い出しているのか、両目には涙が溢れていた。
自分の大切な人達がいなくなる。
自分にはそういう経験がないのでこういう時ネプギアに何て声をかけたらいいのか分からない。
だから彼は言葉よりも行動を示そうと、拘束されていない手でネプギアの頭を優しく撫でる。
これでネプギアの恐怖心が和らぐとは思えないが、こういうことでしか和らがせる方法が思いつかなかったのだ。
「ふふっ、お兄ちゃんは優しいね。私のこと、和らげようとしてくれてるんだ。こういう優しさがあるから、私はお兄ちゃんのこと、好きになったのかも」
「でもごめんね、こんな遅い時間なのに来ちゃって。でも、今日お姉ちゃんお仕事でいないし……あ、でも勘違いしないでね?決して消去法で来たんじゃないよ?ここに来たのはお兄ちゃんが教会にいる中で一番頼りになるからだよ?ホントだよ?」
「分かってる?よかった……それで嫌われたらどうしようって思っちゃった。えへへ」
ネプギアが笑う。
目は泣いていたせいで赤くなっていたが、もう涙は流れていなかった。
「ふぁ~あ、お兄ちゃんに撫でられたてたら安心して眠くなってきちゃった。そろそろ寝よ?そして、一緒に起きよ?あ、でもその前に……」
ネプギアが彼の顔に自分の顔を近付け、そのまま唇を重ねて離す。
つまりキスだ。
「ふふっ、驚いたよね?でも、これだけは寝る前にやっておきたかったんだ。おやすみのキスは好きな人同士じゃ普通でしょ?」
「え?これだけじゃ足りない?もう一回して欲しい?もう、お兄ちゃんってば見た目に寄らず甘えん坊なんだから。でもいいよ、その代わり、今度はお兄ちゃんからして?」
ねだるネプギアに今度は彼がネプギアに顔を近付けて唇を重ねる。
だが、そのキスはただのキスではなかった。
深いディープキスだ。
「んっ……ちゅっ……あっ……んぅ、ふぅ……はぁ……もう、お兄ちゃん、大胆すぎだよぉ……。でも嬉しいな、ここまで私を求めてくれるの。これでますますお兄ちゃんのこと好きになっちゃった」
屈指の笑顔で言うネプギア。
その笑顔は天使のようで、太陽のようだった。
「それじゃあ、今度こそ寝よっか。このままじゃ本当に寝られなくなりそうだし」
「お兄ちゃん、さっきのこと、絶対お姉ちゃんには内緒だよ?もちろん、チューしたこともだよ?」
「え?どうして隠す必要があるのかって?もう!そんなの恥ずかしいからに決まってるよ!それぐらい察してよね!もう……」
「……じゃ、もうそろそろ寝るね。こうやってお兄ちゃんに抱きつくと、いい夢が見られそう。その夢の中で、お兄ちゃんに会えるかな?もし会えたら嬉しいな」
そう言って、また彼の腕に抱き付き、身体を密着させて両目を閉じる。
「大好きだよ、お兄ちゃん。これからもずっと、一緒にいようね」
「それじゃ……おやすみなさい」