コードギアス 反逆のルルーシュL.E.~贖罪のネームレス 作:餌屋
陛下が現れた時、まさにこの世の救世主だと思った。
この腐った世界を破壊してくれる。
よりよい世界に導いてくれる。
しかし、その想いは踏みにじられてしまった。
だから俺は許さない。
俺の想いを縛った馬鹿な奴らは制裁を与えた。
次は・・・こいつらだ。
***
「ネームレス?名前が無いという意味か・・・?」
突如俺とCの極秘通信に割り込んできた男。
この時俺は内心焦りを覚えていた。
ただでさえ影の兵団に悩まされている所に新しい不審人物。
しかも今度は映像さえ無いと来た。
これだけでも焦らない人間は中々いないだろう。
しかしこの声・・・
変声機で分からないようにしてはいるがこの独特の雰囲気・・・どこかで・・・
『・・・ネームレス、と言ったか?誰かは知らんが貴様は何をしているのか分かっているのか?状況を理解しているか?』
Cがネームレスに対して不快感を隠さず話しかける。
『どうやら扇首相の仕込みではないようだから良かったが、それでも我々の大事な話し合いをぶち壊しにしてもおかしくない行為なんだが?』
『それは申し訳ない。驚かせようと思って突然お邪魔させて貰ったがお気に召さなかったようだ』
『・・・まあ良い。それで?面白くも無いサプライズをわざわざ用意してくれたネームレス君は一体何の用で邪魔をしに来たのかな?』
『ああ・・・勝手とは思ったが、扇首相の助太刀にね』
『何?』
「助太刀?」
『そうだ扇首相。私は独自のルートで貴方が今日この時間Cと極秘会談を行う事を知り、状況的に貴方の旗色は悪いと考えた。そこで私が手に入れた情報を貴方に提供することでCの言う「話し合い」を円滑に進めようと思いお邪魔させて貰ったという訳だ』
「情報だと?君は俺達が知らない事を知っている・・・そう言いたいのか?」
『その通りだ。その情報は、知り得ることは非常に難しい、そして今後を左右する非常に重要な物だ。そう例えば・・・Cの正体』
「何!?」
俺とCに動揺が走る。
『貴様・・・一体どうやって俺の事を!』
『おや?一人称が変わっているが・・・大丈夫かな?』
からかうような発言にCが歯をギリギリと噛みしめているのが分かる。
ここで俺は気づいた。
ネームレスの声を聞いた時、聞いた覚えがあった訳を。
彼に似ているんだ。
ネームレスは更に続ける。
『影の兵団、前身は神聖ブリタニア帝国時代、各地を渡り歩いて反ブリタニア勢力に雇われ戦い続けていた傭兵団「鴉」・・・随分対ナイトメア戦が上手かったそうだな?烏丸慎司、いやクロウ・サーシェスと呼んだ方が良いか』
「烏丸・・・?その名前確か」
俺はその名前に覚えがあった。
『そうだ。Cの名前は烏丸慎司・・・新日本政府外交部主席外交官の一人。政府では襲撃事件で行方不明となっているが見つからないのも無理はない。何せ襲撃犯なんだからな。
そして本名は、クロウ・サーシェス。国籍は不明。傭兵団「鴉」の2代目リーダーで噂じゃ悪逆皇帝の崇拝者だったらしいが、その通りだったようだな』
『・・・ふふ、はっはっはっは!まさかそこまで俺の事を調べ上げているとは・・・全く驚きを通り越して笑えてくる』
Cは苦笑しながらフードとマスクを外す。
そこには確かに会議などで見覚えのあった男の姿があった。
「何故だ・・・どうしてこんな事を」
『どうして?それを貴様が言うか?ルルーシュ様を黒の騎士団から追い出し!その地位と名誉を奪い!挙げ句の果てに最後まで抗った貴様が!』
言葉が無かった。
顔見知りでもあったはずの目の前の男、この男の内面が全く理解できない。
『これは・・・もはや崇拝を通り越して狂信だな・・・』
どこかネームレスが複雑そうな声を出す。
狂信。
理解できそうにない。いやしたくないと言った方が正しいか。
『俺にはもう分かっている!初期のゼロ、その正体はルルーシュ様だ。初めは正義の味方気取りのいけ好かない男だと思っていたがそう考えると納得がいく。
ルルーシュ様は最初からブリタニア帝国による腐った世界を破壊しようと考えていた!しかし貴様らは陛下を疎んで追放した!それで別の方法でせざるを得なくなったんだ!』
Cは目を見開き怒りに任せてまくし立てる。
『だが貴様らはそれさえも邪魔をし、全くの別人をゼロに仕立て上げルルーシュ様を葬った!・・・許さん。陛下の崇高な理想を理解できない猿達め・・・』
そこまで叫び通し、ふと我に返ったようにCは落ち着きを取り戻した。
『・・・少し熱くなってしまったな。とにかく。俺はルルーシュ様の理想を実現させる。今回の件はその為の前段階といった所だ』
「・・・そのような事、させやしない!」
『口ではどうとでも言える。だが今の貴様に一体何が出来る?どうやって俺達を捕まえる?・・・さあ、話がそれてしまったが話し合いを再開しようか』
「・・・くっ」
Cの事は絶対に認められない。
第一ルルーシュの理想を勘違いしている時点で到底許容できるものではない。
しかも、それが悪い方向に曲がりきっている。
しかし・・・Cの正体が分かったところで如何することも・・・
『まだ話は終わっていないんだが?』
しばらく黙っていたネームレスが突然しゃべり出した。
Cがうんざりとした様子でネームレスに反応する。
『ネームレス・・・一体この上何があると言うんだ?』
どこか嘲笑を見せるC。
そして、次の一言でそれまでどこか持っていたCの余裕が完全に消し飛ぶことになる。
『海上を西へ進んでいるな・・・いやレーダーや観測隊に発見されていないということは海中を進んでいるのか?』
『!?』
「どういう事だ?」
『何故私が正体を暴き、ここまで貴様の話を黙って聞いていたと思う。時間は掛かったが、ようやく発信元を見つける事ができた。今は丁度ワカヤマ地区の南か』
『・・・そんな馬鹿な、海外の通信基地を多数経由し更に暗号通信までかけていたのに・・・それをクリアした?』
『私の手元には少々インチキな秘密道具があってね。素性もそのおかげで調べる事ができたよ。さて、扇首相』
「な、なんだ?」
『たった今貴方の端末に影の兵団の位置情報を送信した。すぐ防衛軍に追跡を開始させた方が良いだろう』
その言葉に端末を見ると丁度データが届いた所だった。
送り主の情報は・・・見るまでも無い。ネームレスの方は追えるとは思えなかった。
「わ、分かった。すぐに部隊を動かそう」
そうして部屋の外に待機していた側近に目線を送り指示を出す。
数時間もかからず補足する事が出来るだろう。
『・・・』
『C、これは我々にとって反撃の狼煙・・・まだ序の口だ。もう思い通りにはさせない』
『・・・』
Cはうつむき黙っている。
一瞬もはや諦めたか?とも思ったが、そんな筈はなかった。
『くくっ・・・くははは・・・』
Cが肩を震わせ笑い声をあげる。
『何がおかしい?』
『いやあ・・・反撃の狼煙だの、思い通りにさせないだの・・・簡単に言ってくれるなあと思ってねえ・・・』
ニンマリと邪悪な笑みを浮かべるC。
『・・・何を言ってる?何か企んでいるのか』
『すぐに分かるさ・・・貴様らが反撃の狼煙を上げるなら俺達は反抗の狼煙をあげてやる。そう、すぐにな・・・
扇首相、こうなってしまっては交渉は決裂だ。俺達はすぐ行動をおこさなければいけないのでな・・・また会おう。二人とも』
そう言い残し、Cは突然通信を切った。
「奴は・・・」
『通信が切られたか。まあ居場所は分かったから追跡は簡単に・・・ん?』
「どうしたんだ?」
『この進路・・・何故オオサカ湾に・・・待てよ。今までの速度から考えると・・・まさか!』
その時、執務室のドアが勢いよく開かれ補佐官が焦った様子で飛び込んできた。
「なんだ!?」
「お、オオサカが・・・」
「オオサカ地区が大規模武装集団に攻撃されていると連絡が入りました!!」
驚異の3000文字突破回、如何でしたでしょうか。
頭の中で整合性が取れていても文章にするとやっぱり中々難しいものですね。
それではまた次回、ご期待ください。