コードギアス 反逆のルルーシュL.E.~贖罪のネームレス 作:餌屋
レムと対峙してどれくらい時間が経っただろうか。
恐らく体感ほど経過してはいないだろう。
だが、私は久しぶりの難敵に短時間であろうと疲労を感じずにはいられなかった。
レムが長刀で斬りかかるのを特斬刀で捌き、隙を狙って輻射波動を打ち込むのを読んだレムは避けて至近距離からの回し蹴りを狙う。それを防いだと思ったら目の前には長刀が迫っている。
何とかそれを避けて反撃をしある程度のダメージを与えることは出来ているのだろうが、中々捉えきることが出来ない。
とにかく動きがトリッキーなのだ。
これではパイロットにも相当な負担が掛かっているはず・・・
そう考えていた時、突如海面から巨大な航空艦が浮かび上がってきた。
「あれ何!?」
私は戦闘中であることを一瞬忘れ、驚愕の声を上げる。
そして、レムも動きを止め航空艦に視線を送る。
「そうか・・・黄泉比良坂を出すまでC様は追い詰められたか・・・」
ボソリと呟いたその言葉を境に、レムの雰囲気ががらりと変わる。
その冷たい雰囲気に身震いを感じるほどだ。
紅蓮のコクピットに映像通信がオープンチャンネルで入ってくる。
そこに映し出されたのは見た目私と年齢が変わらないくらいの色白い男の子だった。
「申し訳ありません。紅蓮のパイロット、紅月カレンさん。これ以上悠長にあなたと戦ってはいられないようです。」
そうして彼は取り出した注射器を自らの首に刺した。
すると。
それまで一見穏やかだった瞳が大きく開かれ、眉間に血管が浮かび上がり、明らかに常軌を逸した様子になる。
「あんた・・・何をしたの!!」
言葉とは裏腹に、私は大体の予想をつけていた。
薬物。それも非常に危険な部類の物。
私はこれから起こる苦難を想像し焦ると同時に、怒りがこみ上げてくるのを感じていた。
◆
海面からせり上がるように浮上してきた超巨大浮遊航空艦・・・いやもはや戦艦と言って良いだろう。
・・・黄泉比良坂(よもつひらさか)。日本神話に描かれる伊邪那岐大神と伊邪那美大神にその縁が近い土地の名だ。
流石にダモクレス程の大きさは感じないが高天原の2倍か3倍はある。
そして甲板上には多数の砲門とナイトメアの発着口。
そこから丁度一個100機ほどのナイトメアが続々と出てきていた。
「まさか、ここに来て更に戦力を温存していたか・・・」
俺は影日向の相転移砲を前線の要所に打ち込みながら焦りを感じていた。
数的有利は作り出している。
黄泉比良坂が出てくるまでに殆どの敵ナイトメアは片付けた。
いくら相手が戦闘のプロであってもナイトメア同士の戦闘経験は少なかったようで、こちらの被害も予想より多いが許容範囲内。
またCの乗る専用機、伊邪那美は黄泉比良坂に後退していった。役目を終えたからだろうか。
敵艦から新たに出てきた数を入れてもこちらが勝っている。
しかし、イレギュラーが起きた。
専用機2機に加え、途轍もない戦闘能力を秘めているであろう黄泉比良坂。
更に新たなナイトメア部隊の練度は恐らくここまで温存していたことから考えてかなりの物と考えて良い。
今まで俺はブリタニアを倒す為に最適な方法を作るため、必要では無いその筋の知識は必要最低限まで除外してきた。
今まで見向きもしなかった側からの反撃。
・・・あの一番の難敵であった奴は知っていたのだろうか。
ばらばらの組織が一つになり、ここまでの力を蓄え襲いかかってくる・・・
この状況を作り出したのも、俺が・・・
「・・・ん?」
と、そこで一つの疑問と違和感が浮かんでくる。
裏社会がどれだけこちらが想像する以上に巨大で強大なものだったとしても、元はばらばらの組織としてそれぞれ活動していたはずだ。
そして影の兵団の母体は元々そこまで大きい物ではない。
つまり、今の奴らは影の兵団を中心に寄り集まった組織・・・
なら彼らが集まった理由は?
集まるメリットは?
Cはどこまで他と思想を共有している?
そこまで考えた時、一つの考えが頭に浮かんだ。
調べる価値は、ある。
◆
俺は高天原ブリッジで必死に部隊指揮を行っていた。
彼がいない理由は既に把握し、了解している。
なら今自分に出来ることは、とにかく被害を少なくしつつ状況打破の糸口を見つけることだ。
「藤堂さん!後どれくらいで近くにいる部隊を再編できそうですか!」
『すまんな、元々相手取っていた奴らに少し手間取っている。もう直ぐ片付くから周りの兵を近くまで集めておいてくれ』
「分かりました。申し訳ありませんがそちらが片付いた後は出現した黄泉比良坂への攻撃に入ってください!十分用心を!」
『承知!』
「ジェレミア、アーニャ。近くの残存兵力を掃討したら、すぐに敵艦攻撃部隊に加わってくれ!新たに出てきた奴らはエース級のようだ。君達の力がいる!」
『了解した!』
『了解・・・』
「扇、聞こえるか。」
ネームレスから通信だ。
「何かあったのか!」
「今から少しの間、調べることが出来たので戦線から後退する。10分で良い。時間を稼いでくれ」
「調べる事って・・・あの巨大戦艦が出てきていつ戦線が崩壊するか分からないんだぞ!そんな悠長な」
「必要な事だ!俺の予想が正しければ奴らを崩す一手が手に入るかもしれない!」
「・・・分かった。10分だな」
「頼む。後、あいつを含めた黄泉比良坂突入部隊の編成をセシルに頼んでいる。それまでに手に入った情報は全て送ってくれ」
「了解した」
ネームレスとの通信が切れ、影日向は後退していく。
「扇首相、あんな奴信用して良いのですか?」
側にいたクルーが不信感を露わにぶつけてくる。
その疑念は当然だ。
だが、俺は迷い無しにこう返した。
「ああ。問題ない。万が一の時は俺が全て責任を取る」
◆
黄泉比良坂、最深部。
そこには戦艦の中とは思えないような、草花に囲まれた庭園が作られていた。
見る者が見ればこう思っただろう。
ダモクレスの『あの』部屋に似ている、と。
そして少ないその内の一人であり、現在進行形でこの部屋に閉じ込められている彼女も、そう感じていた。
勿論全く一緒という訳では無いし、偶然にもダモクレスの真実を知らずにこの部屋は作られている。
だが彼女にとっては、何の嫌がらせなのかと言うようなものだ。
気分が落ち込まずにはいられない。
ここは、彼女・・・ナナリーの監禁部屋だった。
ナナリーは式典で拉致されて以来、ここへずっと閉じ込められていた。
そこに食事の時以外滅多に来ない来客がやってくる。
ドアを開けて入ってきたのは、明らかに不機嫌と分かる表情のCだった。
Cはナナリーの前に立ち、問いかける。
「答えろ、貴様とシュナイゼル以外に生きているブリタニアの皇族はいないのか」
お待たせして申し訳ありません!
最新話如何でしたでしょうか。
感想、評価お待ちしております。
次回、「BIRTH19:黒 と 白」ご期待ください。