コードギアス 反逆のルルーシュL.E.~贖罪のネームレス 作:餌屋
これは昔の話だ。
クロウ・サーシェスは元々孤児だった。
そんな彼を拾ったのが当時影の兵団と名乗る前、傭兵団「鴉」のリーダーであるジャック・レイブンだった。
ジャックは世界各地を飛び回っていたが、偶然クロウが住むスラム街を通りかかった際、噂を聞きつけたクロウに仲間にしてくれと頼み込まれたのだった。
元々孤児などを拾っては施設に預け、毎月幾ばくか名前を名乗らず支援金を送るといった事をしていたジャックに取って、最初は孤児を引き取る位にしか考えていなかった。
ましてや傭兵団の後継者などにするつもりは毛頭無かった。
考えを変え、本当に後継者にしようとし出したのはクロウを拾って3年目。
それまでクロウはどれだけしごかれ、どれだけ辛い思いをしても自分を高めることを辞めずどんどん団の中で中心的な存在になっていくクロウを見てある疑問が浮かんだ。
ジャックは尋ねた。
どうしてそこまで強くなろうとしているんだ?
その問いにクロウは真剣な目で宣言した。
ブリタニアという国を倒して、俺のような子供を生まないようにするんだ!
それから時が経ち、何故ルルーシュに心酔し、何故思い違い、何故妄執に捕らわれ、何故このような愚行に及んだのか。
気づくことのできる者はクロウ、ただ独りだけ。
*
クロウの銃撃がこめかみ辺りをかすり、鋭い痛みが走るのを感じた。
そして俺が付けていた仮面が取れる。
「・・・嘘だ」
クロウが信じられない、といった目で俺を見ている。
「嘘だああああああああああああああああああああああ!!!」
「嘘じゃない。正真正銘、俺は本物のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ」
「何故・・・何故生きて・・・!」
「死に損なった、という所だな。秘密裏に治療が施され、俺はこうして生き残っている」
勿論真っ赤な嘘だ。だが、こればかりはそう簡単に教えることができない。
「・・・どうして!何故!あなたは一体何を考えて!」
悲痛な声で俺に問いかけるクロウ。
もはやそこに影の兵団、Cの面影はない。
「・・・俺は力による支配など元から目指してはいない」
「そんな・・・」
「俺が目指したのは、皆が他者に対し優しくあれる世界。それを実現する為、自ら悪役を買って出た」
「優しい、世界・・・」
「それまでの世界は至る所に悪意が満ちていて、弱者が強者に理不尽に虐げられる世界だった」
「・・・」
「そんな世界を変えるためには、シャルルを打ち倒すだけでは変わらない。変えられない。世界の悪意を一つに纏め、消さなければならない。そうすることで悪意から解放された世界は話し合いというテーブルにつくことができる」
「・・・」
「・・・だが、そう簡単に事は運ばなかった。まさか本気で悪役に味方する物が出てくるとは思っていなかった。人を歪ませるとは思わなかった」
クロウはもはや何も言葉を発しない。
ただただ俺の言葉を聞いている。
「俺がわざわざ生きていることがバレる危険を犯してまでお前と敵対したのは、そんな俺の罪を購い、自らの手で幕を降ろすためだ」
そうして俺は頭を下げる。
「・・・すまなかった。お前を狂わせたのは俺だ。もう、辞めよう」
そうして頭を下げ続けていると、クロウは未だ取り乱しつつ少しずつ口を開く。
「・・・俺は、俺は一体・・・今まで何を・・・」
「クロウ・・・」
「俺は何をして・・・そうだ・・・新しいゼロ、ルルーシュ様側近のその後・・・そしてあの扇の反応・・・少し考えれば・・・あぁ・・・ああああ・・・」
ポツポツと呟く声が言葉にならなくなってくると、クロウは絶望した声を上げながらその場に崩れ落ちる。
「っ・・・ナナリー!」
それに素早くスザクとカレンが反応しナナリーに駆け寄り車椅子のまま急いでクロウから距離を取る。
「怪我はないかい・・・?」
「ええ・・・殆ど手荒な事はされませんでしたから・・・」
ナナリーはスザクに微笑みを返しながらも、俺の方にちらちらと目線を送っている。
やはり俺の事で未だ動揺しているのだろう・・・いずれきちんと話さなければな・・・
「・・・はは、ははは」
そんな事を考えていると、クロウが力の無い乾いた笑い声をこぼした。
「・・・申し訳ありませんでした、ルルーシュ様。私はどうかしていた・・・こうなってはもはや・・・」
どこか自嘲めいた笑みを浮かべながらクロウは自分の頭に拳銃を突きつける。
「!?おい!待て!待つんだ!そんな事をしても・・・!」
俺は焦って思いとどまらせようと声をかけるが、クロウはそれに対し静かに首を振った。
「いいえ・・・私に生きる資格はない・・・生きて罪を償い切ることなど出来やしない・・・」
「おい!やめろ!」
「待つんだ、C!」
「この・・・どこまでも勝手な!」
俺に続きスザク、カレンもクロウを止めようとする。
だが。
「あぁ・・・」
もはや遅かった。
「・・・どこで間違えたかなあ」
そして、その場に再び乾いた銃声が鳴り響いた。
*
オオサカ奪還作戦は、作戦開始から2時間24分後に終了を確認。
同時刻より、連合軍は本隊の撤退行動に移行。
残存部隊は本件の事後処理任務を開始。
・・・
連合軍の損害は当初の予想を超えてはいたが許容範囲内である。
対して敵軍の損害は極めて甚大となった。
合計して死者は数百名に昇ると推定。
また、本件の主犯Cは突入部隊に追い詰められ自殺。
遺体は幾つかの証拠物件と共に回収され、現在新日本・トウキョウ地区総合病院にて保管中。
・・・
敵巨大航空戦艦「黄泉比良坂」は突入部隊の活躍により、その機能を停止。
投降した技術員の協力により安全に着水を成功させ、現在解析作業中。
後日解体される予定。
・・・
以下、補足事項。
新日本・ブリタニア連邦共同技術チーム「ノーディ・ラビット」(責任者:ロイド・アスプルンド)所属、民間協力員、通称ネームレスは、作戦終了後チームの名を冠する艦、「ノーディ・ラビット」へ帰投せず行方をくらませている。
新日本防衛軍第三師団主導で捜索を行うが、足取りを掴む事が出来ず打ち切る事が決定。
その後、現在に至るまでネームレスが現れたという情報は入ってきていない。
―「オオサカ奪還作戦に関しての最終報告書」より抜粋―
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さてこれにて事件の幕は下り、そしてこの物語の幕ももうすぐ下ろす事となります。
完結まで、残り2話。
次回、「BIRTH23:紅の 想い」ご期待ください。