Abyss Walker In The Magic World   作:城縫威

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寂寥

真夜中、辺が闇に沈み、誰もが寝静まった中、ウォーカーは喉に乾きを感じ、目を覚ました。一つ、水を飲もうと部屋を出て、階段を下りキッチンに向かうと、何や食卓の電気が付いている。誰が起きているのだろうか、アルトリウスは自分と同じく喉でも乾いたものがいるのかと思って向かうと、そこにはなのはがいた。椅子に座って足をぷらぷらとさせている。

 

「何だ眠れないのか?」

 

ウォーカーは聞く。なのはは、うんと言って頷いた。ウォーカーは取り敢えず何もいなぬことにして、流しの前まで行くと、上にある食器棚の中から薄い青ガラスのコップを取り出して水を注ぎ、それを飲み干す。冷たい水がほてった喉を通り、心地良いひんやりとした感触が下へ下っていくのを感じる。

 

「なのは、君も何か飲むか?」

 

なのははフルフルと首を横に振った。ふむ、どうしたものか、ウォーカーは一つ聞いてみることにした。

 

「悪い夢でも見たのか?」

 

ううん違う、なのははまた首をふる。ウォーカーはそうかとだけ言って、冷蔵庫の中から、牛乳や生姜、砂糖を取り出す。

 

「何か悩みがあるなら言ってみるといい、士郎や桃子、恭也に美由紀に相談できないことでも、私になら、言いやすいだろう?」

 

「なんで?」

 

「そうだな、士郎や桃子、君にとっての家族とは違って、私は違う、だからかな。」

 

「え?ウォーカーさんは家族になったんじゃないの?」

 

「どうなのだろうな、皆は本当に、私のことを家族と思っていてくれているのかもしれない、だが、私自身がそれを、受け入れられずにいる、拒んでいる、なんとも、説明しがたい。」

 

「……こばむ?」

 

「嫌だと思うことだ。」

 

「ウォーカーさんは家族になるのが嫌なの?」

 

「どうだろうか、ふむ、わからない。」

 

「そうしてわからないの?」

 

「家族、これが一体どういうものなのか、いまいちよく分かっていないからなのかもしれない。」

 

そんなことをいうウォーカーになのはは心底不思議な、理解できていない顔でウォーカーを見つめている。

 

「恐らく、なのはにはわからないかもしれないな。」

 

「ウォーカーさんも分かってないんでしょ、へんなの。」

 

「ふふ、そうか、そうだな、そうなんだ、私はへんな奴なんだ。」

 

ウォーカーは手に湯気の立つカップを持ち、なのはの横まで来るとそれをなのはの目の前に置く、そしてなのはの向かい側に座った。

 

「飲んでみてくれないか、大切な人に飲ませてやりたく練習していたんだ。感想が聞きたくてな。」

 

なのはは一つカップに口をつける。最初はあちっ、と舌をちろりと出してふぅふぅカップに息を注いでいたが、ある程度冷めると美味しそうにニッと笑顔になってコクコクと喉を動かした。

 

「どうだ、ホットミルク、美味しいだろうか。」

 

「うん!」

 

なのはは先程までの沈んだ顔とは打って変わって満面の笑でそう言った。よほど気に入ったのだろう、口の周りに薄い髭ができていることも気にしていないようだ。

 

「そうか、それはよかった。」

 

ウォーカーもなのはの笑顔につられて微笑む。

 

「ウォーカーさんの大切な人って、誰なの?」

 

「君さ。」

 

「え?」

 

「今、悩んでいる君に飲んで欲しくて作ったんだ。」

 

「……そっか。」

 

なのはは照れくさそうに顔を赤らめる。

 

「大切な君だからこそ、力になりたい、何を悩んでいるのか、教えてはくれないか?」

 

なのはは少しだけ黙った後、ポツリと零すように言い出した。可愛らしい悩み、甘えたくも甘えられない、そんな悩み。

 

「甘えればいいじゃないか。」

 

ウォーカーはくすりと笑ってそう返す。なのはは自分の話しを聞いていたのかとい言ったふうな顔をしてウォーカーを睨んだ。

 

「なんだ、甘えて怒られたことでもあるのか。」

 

ウォーカーが聞くとなのはは首を降る。

 

「なら良いじゃないか。」

 

「でもお父さんお母さん、とっても忙しいんだよ?」

 

「忙しいから甘えちゃいけないルールはないだろう。」

 

「でも、やっぱりだめだよ。」

 

「ダメか?」

 

「うん……。」

 

なのはは寂しそうに俯いてしまった。

 

「ふむ、優しすぎるのも時として罪だな。……そうだ、なのは。」

 

なのはの視線がウォーカーに戻る。

 

「私に甘えてみないか?」

 

「……ウォーカーさんに?」

 

「あゝ、だめか?」

 

「でも、ウォーカーさんも忙しいし。」

 

ウォーカーは呆れ顔になる。

 

「なのは。」

 

「なに?」

 

「今日は一緒に寝よう。」

 

「え?」

 

「そうだな、最初からこうしておけばよかった。」

 

ウォーカーはスクと立ち上がって、カップを片付けると、目が白黒しているなのはを抱き上げて自分の部屋に向かった。驚いたなのはが、きゃっと声を上げて多少じたばたとしたがそれを気にせずに運んでいった。そしてウォーカーのベットになのはを寝かせる。なのはが起き上がるよりも先にウォーカーは毛布を掛けてやった。なのははこのまま同じベッドで一緒に寝るのかと思うと照れくさい気持ちでもじもじとする、けれどもウォーカーはそんななのはの心とは裏腹に布団をベッドの横に敷いてそこに入った。なのはは自分の想像が外れた恥ずかしさを隠すためか毛布を頭まで被る。

 

「いやぁ、思い出すな。」

 

真っ暗になった部屋の中でウォーカーが呟くように言う。

 

「何を?」

 

「ずっと昔、キアランという少女を世話していたことがあってな、その時もこうして一緒に寝たものだ。」

 

「へぇ。」

 

「一度決めたことはやり通そうとする頑固さは、なのは、君のそっくりだ。」

 

「頑固、かな。」

 

「あゝ頑固さ。まあ、それが君の良さでもあるが。」

 

「そう、かな。」

 

「そうさ。」

 

「……ねぇ、ウォーカーさん。」

 

「なんだ?」

 

「ウォーカーさんが生きていた前の世界の話しをしてくれない?」

 

「ん?別に構わないが……そうだな、まず私が共に肩を並べた、四騎士の話でもしようか。」

 

ウォーカーはアルトリウスであった頃の話しをする。勿論血腥い話しは一切省いて。例えば、タマネギ頭の騎士の話だったり、太陽を追い求める騎士の話だったり、はたまたしゃべるきのこの話だったり、なのはからしたらお伽話の様なものであったが、昔を懐かしむように、そして楽しげに話すウォーカーの言葉に引き込まれていって、二人で楽しく夜を明かした。

この時以来、なのははウォーカーに少しだけ甘えるようになった。ウォーカーからしたら、まだまだ不十分のような気もしないでもなかったが、妥協点といったところだと納得した。しかし問題なのは、ウォーカーに甘え出したなのはに対して、士郎や美由紀がウォーカーに嫉妬の念を持ち始めたことか、普段忙しい家族に、優しさにより甘えてこなかったなのは、甘えてほしいと思っていたその家族たちは、新しく加わったばかりのウォーカーに、家族の誰よりも先になのはが懐いた事に幾許かの嫉妬は隠せない、だが、ウォーカーに甘えるなのはの絵は、なによりも微笑ましいものだった。




構想を手帳に書き込んだものを、特に手を加える事なく起こしただけ、故にこんなにもなんだか会話ばかりなものになってしまいました
それでも楽しんでいただけたなら幸いです
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