Abyss Walker In The Magic World 作:城縫威
「しかしこの世界の料理というのは私のいた所とはだいぶ違うのだな。」
ウォーカーが料理を見てはじめに思ったことはそれだった。
「ウォーカー君の所ではどんな料理が出たんだい?」
ウォーカーの目の前に出されている料理は本来なら一般的な、誰もが食べたことが一度はあるようなそんな料理だ。それは野菜を切って並べたサラダに始まり、ご飯等々、ウォーカーも居るため量は少し多めに作ってある。
「私の所ではこんなに沢山の材料はなかったな。基本は狩りで獲ってきた獲物とかをそのまま調理するのが殆どだ。」
「ほぉ、材料とはどんなものを使っていたんだい?」
聞いた限り、士郎達からしたら少し原始的な料理ではある。ウォーカーの世界については何も知らない。本の中のお伽話みたいな世界なのか、はたまたもっと原始的な世界なのか、士郎はウォーカーの世界に好奇心を抱く。
「そうだな…例えばやけに腕力が強いキノコとかだな。」
「わ、腕力の強い?」
いきなり耳を疑うような言葉がウォーカー放たれる。
「ん?この世界には居ないのか?キノコ。」
「い、いや、キノコはあるが…腕力?」
「あぁ、こっちが油断すると一発重い一撃を食らうはめになるんだ。何人か私の友人がやられていたな…。」
過去を思い出し少しばかり目を細めるウォーカー。脳裏には必殺の右ストレートで殴り飛ばされていた騎士達とオーンスタインが映っていた。
──オーンスタインにはちゃんと油断せずに狩れと言った筈なんだが、彼奴、「問題ない、これくらい簡単さ。」と言って軽くキノコの方へ歩いて行って殴られたんだったな。あの時のオーンスタインはまだ駆け出しで狩りも初めてだった。私の注意不足もあったがあれは痛そうだったな。今、彼奴はどうしているのだろうか。
「へ、へぇ。キノコが、ね。僕は君の世界はよく知らないが、とても危険な場所が多い事は理解できたよ。」
顔に冷や汗を流す士郎。若干顔は苦笑いに引き攣っている。
「そうだな、危険な場所が多かった。だがまぁ、それが日常だったから慣れるしかないのだがね。」
軽い様子で答える。ウォーカーは桃子が出してくる料理に興味津々で今か今かと食べるのを楽しみにしている様子だった。
「そんなに食べるのが楽しみなのか?ウォーカー君。」
士郎のその問にウォーカーの顔がパッと明るくなる。
「あゝ!楽しみで仕様が無い。どの様な味がするのか、考えるだけで楽しくなる。」
ウォーカーは子供のように笑顔で言う。
「ならもう少し我慢だな。空腹は最高のスパイス、それに桃子さんの料理は絶品、美味しすぎて気絶するなよ?」
「勿論だ。気絶して美味しい料理が食べれないとなると嫌だからな。」
楽しそうに会話する士郎とウォーカー、そんな中一人いい顔をしていない恭也。
「……子供みたいな奴だな。」
ぼそりとそんなことを言う
。
「別段、子供であっちゃいけないって言うわけでもないだろう?」
その言葉を聞き逃さず答えるウォーカー。自分の悪口が本人に聞こえていたということに驚き戸惑う恭也だが、ウォーカーはそれに怒ることなく、唯楽しそうな表情で言う。
「陰鬱な中で食べる料理ほど不味いものはない。しかし楽しい気持ちの中で食べる料理というものは格別だ。子供は成長して、経験を積んで大人になっていく。だが大人になって子供の時の気持ちをなくしては勿体無い。大人は何時だって子供になることが出来る。簡単にな。ときめいたり楽しんだり。そうやって生きることが出来る。固っ苦しいだけが大人じゃないさ。君だって同じさ。」
ウォーカーの言葉に誰もが無言で聞く。士郎の顔は暖かく、美由紀はよくわからない様な顔で恭也は複雑そうな顔で、なのはは桃子の手伝いで楽しそうで、桃子もそれを見守りながら料理を作る。
「なんだよ自分が大人みたいな事言いやがって。」
「これでも一応は長く生きているんだがね。」
「嘘つけよ。一回鏡で自分の顔を見るといい。長く生きている割には若すぎるぜ。」
ウォーカーは驚いたような顔になる。
「士郎、私はそんなに若くみえるのか?」
「少なくとも十代後半位に見えるね。」
少し考えこむウォーカー。それもそうだろう。自分の容姿は確認はしていなかったが、元の世界と同じだと思っていた。しかし聞いてみればだいぶ若く見えると言う。
「ま、でも考えこんだりするのは今は止めて暖かいご飯を食べようか。」
何時の間にかテーブルの上には料理が並べられていた。
「それじゃ皆手を合わせて。頂きます。」
ウォーカー以外は手を合わせて士郎の言った言葉と同じ言葉を言う。だがウォーカーには何をやっているのかよくわかっていないようで少し困惑したような顔になる。
「もしかしてウォーカー君。頂きますを知らないのかい?」
「あゝ、頂きますとは何なんだ?」
「簡単なことさ、手を合わせて、今から食べる料理に使われた食材たちに感謝の意を示すんだよ。今やったみたいにね。」
「なるほど。」
ウォーカーは感心したように言う。ウォーカーの世界ではそういう習慣がなかったのだ。
「なら、私も。頂きます。」
手を合わせてウォーカーは言う。そこで料理を食べ始める、とはいかなかった。
「すまない士郎、この二本の棒はどうやって使えばいいんだ?」
ウォーカーが料理に有附にはもう少し掛かりそうだ。