THE IDOLM@STER`s ~煌めく秘録~ 作:Yuino
ぽちぽちと書いていきたいと思います
――夏
今日も誰よりも早く出社した俺は、手持ちの鍵で扉を開けて事務所に入る。
まだ誰もいないにも関わらず「おはようございます」と言ってしまうのは、社会人になったためにできた癖なのか、はたまた”ここ”に入社したために生まれたものなのか、定かではない。
「うおぉ、
もう七月も半ば。もうまもなく海の日を迎えるから当たり前か。そんな風に思った俺は、ひとまず窓を全開にして事務所内に溜まった空気と外の空気を入れ換える。
もあっとした空気が、わずかに改善されたように感じてから、すでに出社したときのルーチンワークと化している事務所の掃除を始める。
事務所のあるビルの入り口の掃き掃除から始まり、階段、事務所の入り口、事務所内と掃き掃除と簡単な拭き掃除をすませると、思った以上に時間が余っていることに気がついた。
「たまには本棚の整理もやっておくか」
そんな風に一人つぶやいて、俺はつい最近新調した薄型テレビの置いてある打ち合わせスペース。そこには、昔から変わらず、大切に使われ続けてきたステンレス製の小さな本棚があった。
本棚の前にしゃがみ、久方ぶりにそこを見てみると、そこには、自分たちが取り上げられた雑誌はもちろん、雑学書に実用書、小説等々とジャンル関係なしに綺麗に保管されていた。
この美しいまでの整理整頓、さらにはここまで長くこの”仕事”をやってきて、毎日が忙しいのにも関わらず事務所の掃除が簡単に終われるのも、きっと”彼女”の尽力あってこそだろう。
最初の頃、彼女はたまに俺よりも早く来ては事務所の掃除をやっていたくらいだ。今でも定期的に掃除はしているものの、それでも彼女の実力にはとうてい及ばないだろう。
「そういえば、俺も昔よく手伝ってたっけ」
そんな昔のことを思い出しながら、思わず喉の奥でくくっと笑いながら整理していると、本と本の間から、人目をはばかるような表紙の”薄い本”がヒラリと飛び出してきた。
そういえば、最近”彼女”が家の本棚が限界に近づいてきて~、とか言っていたけど、まさかこんなところに隠しているとは思わなかった。
全く、何をやっているんだか。俺は小さくつぶやきながら、そっとその薄い本を彼女のデスクの上・・・・・・は流石に”彼女”に先に見られたときに正座させられて説教に巻き込まれるのは怖いから、そっとイスの上に置いておいた。
そんなことがありながらも、俺はその後も本棚の中にある必要そうなものと明らかに不必要なものに分けていく。
保管されている雑誌の内訳は、もちろん仕事に関わるものが多かったが、それ以外、個人的に購入したというような感じのものも多かった。
ラーメンを中心に取り上げた食べ歩き雑誌、隠れ家的カフェを取り上げた雑誌、動物雑誌、有名ミュージシャンや新鋭アーティストを取り上げた音楽雑誌、ゲーム攻略雑誌、節約術などのエコ術を纏めた雑誌、国内外の名所を取り上げた旅行雑誌、古今東西の詩を集めた雑誌、スポーツ雑誌、そしてかなりの数を占めているファッション雑誌。
まさに『混沌』その言葉が最も似合う、そんな状態だった。
その中で、明らかにいらない雑誌などを抜き取っては綺麗に置いていく。そんな作業を繰り返しているとーー
「ん? なんだ、これ?」
本棚の端。何も書かれていないまっさらな背表紙。なぜか少しだけ、手作り感を思わせる本が置かれていた。
疑問に思った俺は、その本をゆっくりと取り出してみる。カバーは厚紙、裏表紙と思われる方から中を開けてみると、かなり大量のルーズリーフを一冊の本に纏めてみた、そんな手作り感あふれる一冊の本だった。
いったい、何だろう。そんな風に思って、俺は反対側、表紙の方を見た。
そこには、十三色というカラフルすぎる色彩のタイトルが、表紙めいっぱいに広がっていた。
そのタイトルは、『私たちの軌跡 by 765production』
まるで雷撃を打たれたような衝撃が、俺の体を走った。
はやる気持ちを抑えて、表紙をゆっくりめくる。表紙の裏には、おそらく”彼女”のものと思われる、綺麗な文字で『序文』が書かれていた。
『これには、私たちの今までの、そしてこれからの想いがいっぱい詰まっています。
嬉しかったとき、楽しかったとき、悲しかったとき、心が苦しくなったとき、挫折しそうになったとき、仲間を見失いそうになったとき、このアルバムを開いてみてください。
そうすれば、きっと明日も、また笑顔でアイドルをやれる、そんな元気を、私は、自分自身に、そして皆に、このアルバムを通じて届けられたらと思います。
そのために私は、このアルバムを2005年4月○日に、このアルバムを作り始めました。
将来は、目指せトップアイドル! 目指せ、ドームライブ!』
思わず零れそうになった涙をグイッと拭き取ると、その序文の下に小さく『笑顔ですよ、笑顔!』と書かれているのに気がついた。
相変わらず、”彼女”らしいなぁと思いながら次のページを開こうとすると、がちゃりと事務所の扉が開く音が響いた。
その音に反応して立ち上がり、扉の方を見ると、そこには茶色いスーツに黒いサングラスをかけた、初老の男性が額にかいた汗をハンカチで拭いながらそこに立っていた。
「おはようございます、社長!」
「ん、あぁ、キミか。今日は、ずいぶんと早いんだね」
そんな会話をしながら、俺は手に取ったその”アルバム”を打ち合わせスペースのテーブルに置き、給湯室の冷蔵庫の中にある缶コーヒーを社長に手渡す。
社長は一言「おぉ、ありがとう」と言ってそれを一気のみし、ふぅと一息ついてからじっと俺の方を見て言った。
「朝早く来て、キミは何を?」
「えっと、なんと言いますか。昨日の夜から高ぶってしまってて、随分と朝早く出社したので、たまには掃除でもと思って本棚の整理をしていたら・・・・・・」
あれを、と言いながら俺は打ち合わせスペースのテーブルに置かれているノート大のそれを指さす。
それを見て、社長は「ほほう、やっとキミも見つけたか」と、いつも通りのやんわりとした笑顔を浮かべて言った。
「そのアルバムはね、”彼女”がここに所属になって少し経って、仲間が集まりだしたときに彼女一人で作ったものなのだよ」
「え・・・・・・?」
聞けば、彼女はこの仕事をやっていて、笑顔は絶やさなかったものの、何度も何度も彼女は心がくじかれそうになった。そんなときに、今まで撮ってきた写真や、記録に残しつけてきた日記を少しずつそのノートに書き記していったのだという。
それを見た仲間が、いつの間にかそのノートをアルバムにしていき、そして今ではここまでの大きさになったのだという。
言うなれば、このアルバムはこのプロダクションを一つに纏めた結晶であり、彼女たちの”絆”の証し、なのかもしれない。
アルバムの中を見ると、まだデビューしていない頃のレッスン風景や、デビューして間もない頃、そして俺が来てからのこと、メンバーが11人から13人になって今の形になった頃、社長と因縁のあるプロダクションと幾度ものオーディション争いやフェスを繰り広げていた頃、毎日の何でもない日常や、幾つかユニットを作って試行錯誤していた頃、別のプロダクションと合同で「シンデレラ」を探し始めた頃、そして、新規プロジェクトであり、現在は別の”担当者”が受け持っている”劇場”が完成した頃。まさにこのプロダクション10年間の”歴史”や”想い”すべてが、この一冊に収められていた。
嬉しかったことや楽しかったこと、辛かったことに挫けそうになったこと。本当にいろんな感情が、何もかも綺麗に。
アルバムを何か懐かしさを感じるような瞳(サングラス越しだが)で眺める社長を見て、俺は改めて思った。
誰かに元気を、夢を与えるっていうことは、どんな形でもいいのかもしれない。
そして、きっと彼女たちの仕事が、その中でも最たるものなんじゃないか、と。
がちゃり、と扉が開き、そこからにぎやかな声が響いてくる。その数は14。
集合時間の一時間以上前に全員集合とは。やはり、思うところは皆同じなのだろう。
「皆、一緒に来たんですね」
「あぁ、そうみたいだね」
さぁて、これからもまだまだ忙しくなるよ。そう言いながら社長は執務室へと戻っていく。
その彼を見送って、俺は彼女たち――765プロ所属のアイドル13人と事務員一人にまっすぐ向き合って、大きな声で挨拶を交わす。
「おはよう、皆!」
『おはようございます、プロデューサー!』
夢は夢で終われない。輝く日のために、光り始めた少女たち。
自分だけの星を探して、彼女たちは夜空へ足を運んだ。
鈍なときでも終われないからこそ、精一杯輝く星になれ。そう彼女たちは願い、走り出す。
仲間から届いた「がんばろう」のメールで、いつでも全力を出せた。
虹色の看板、夜遅くまで残ってやっと完成した”武道館”は、彼女たちの原点。
「さぁ、一緒に歌おう!」の一言でつながった彼女たちは、自分たちが出会えた奇跡を、笑顔の虹に変えていく。
伏し目がちな昨日はいらないし、一番大好きな私になりたい。だから少女たちは自分の道を、前を向いて走り出す。
夢だけでは終わらせたくない。どんなに遠くても、その場所へ絶対たどり着ける。
変わらない夢を描き、自分の世界を変えるため、その夢へと駆け出す。少女たちの物語は、始まったばかりだ。
夢へ向かって、少女たちは今、新たな物語への一歩を踏み出す。
その物語を作っていくのは、彼女たち。支えていくのは、あなたなのかもしれない。
THE IDOLM@STER`s ~煌めく彼女たちの秘録~
彼女たちの夢は、始まったばかりである。
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「(アイドル名)で書いてください!」的な感じでもオッケーですが、より細かく書いていただけると嬉しいです。
それでは、次回の更新をお待ちくださいませ