THE IDOLM@STER`s ~煌めく秘録~   作:Yuino

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2017年6月30日。
「多田李衣菜誕生日」記念作品


注意事項
・本作には、オリジナルプロデューサー及びオリジナルキャラクターが多数登場します。
・書き手がまだまだ李衣菜担当として日が浅いため皆様が思っている「多田李衣菜」とは若干異なる可能性があります。

以上のことを留意しつつ、楽しんでくださいませ!



多田李衣菜編01~不安なんて跳ね除けて~

 星が、輝いた。

 

 一つ、二つ、三つ。

 

 赤、青、黄。

 

 

 

 巧く歌うんじゃない、心を込めて歌えばいい。

 

 世界にたった一人の、キミに伝わりますように。

 

 幾重に流れる無数のキセキ、本当の自分の気持ちを見逃さず進むんだ。

 

 一回きりの旅だから、好きなものも痛みも全部集めて

 

 全部全部、感じていくんだ。

 

 連なって輝いて、止めどなくあふれ出て……

 

 その輝きが、軌跡となって、道を作っていく。

 

 

「さぁ、ロックに行こうぜー!」

 

 

THE IDOLM@STER`s ~煌めく秘録~

 

多田李衣菜編01~不安なんか跳ね除けて~

 

 

 

 放課後が始まるチャイムが鳴る。それに反応して僕は目が覚めた。部屋の中を見回すと、いつの間にか僕一人だけになっていた。時間を見る。時刻は四時半になろうかというところだった。それと同時に僕はデスクの上で大きく伸びをしてからさっき煎れてきたのに覚めてしまったコーヒーをすする。眠気が冷めるまでそのまま少しぼけっとしていると、扉がノックされる音が響いた。

「どうぞ」

「失礼しま~す」

 ほんの少し間延びした声で、一人の少女が中に入ってくる。きちっと制服を着ているが、少女が使用するには少しだけ憚られるような程、目を引く大き目のヘッドホン。 黒ベースにオレンジのワンポイントカラーのヘッドホンを首にかけながら、少女はとててっと僕のほうへ駆けてくる。

「先生。課題終わりましたっ」

 にこっと笑顔を浮かべながら彼女はずいっと課題のプリント五枚を重ねて渡してくる。僕はそれを「ン、確かに」といってから受け取り、ぱらぱらと中を見る。

 うん、よくできてる。

「オッケー。できてる。休んでたのによく解けたな」

「友達に教えてもらったし、それにプロデューサーにも休んでたところの部分、教えてもらいましたから!」

 握り拳を作りながら「やった!」と小さな声で喜ぶ彼女を横目で見ながら、僕は五枚のプリントに大きく丸を書いてから返し、さらに三枚プリントを彼女に手渡す。

「えっと先生? これは……?」

「追加のプリント。多田が休んでたところの分、お手製の解説付きプリントだ。近いうちに小テストやるって公言してるからな。アイドルやってて勉強疎かにしてました~、なんて言い訳は聞かねえぞ?」

「えぇ!? 先生、それは酷いよー!?」

 半泣きになりながら訴える彼女――多田李衣菜の額を指でぺしっとはじきながら「文句言う暇あったら仕事の合間にちゃんと勉強しなさい」と釘を刺す。すると多田は笑顔を浮かべながら「は~い」と返事をする。その顔を見てから、僕はふと時計を見る。時刻はそろそろ五時四十分を刻みそうな時刻。それを確認してから、僕は多田に向き直る。

「おい、多田。もうすぐ迎えが来るんじゃないか?」

「え? あぁ、そうでした!」

 わたわたとあわてながら準備を始める多田を見ながら、僕――綾波(あやなみ)(いずみ)はそれを見ながら準備を手伝う。

 バタバタと準備を進める彼女を横目に、僕も一通りの仕事が済んでいることを確認し、明日の自分への引継ぎ用のメモを書き上げてデスクのボードに張り付ける。そのまま椅子に掛けておいたジャケットを羽織り、誰もいなくなった職員室から出ていくのだった。

 

 

 職員用玄関から外に出て、校門のほうへと進むと、すでにそこには彼女と、そしてもう一人、見知った顔がそこにいた。

「あ、先生。こっちこっち!」

「よう、泉。うちの李衣菜が世話になってんぜ」

「そのセリフ、そっくりそのまま返してやんよ青井。それとも、今は青井プロデューサー、って言ったほうがいいかぁ?」

 にしし、と笑顔を浮かべながら言うのは彼女の担当プロデューサーである青井瑠衣。いつも笑顔を浮かべている泉にしては珍しく、かなり口調も荒っぽく、そしてその笑顔も何からくらんでいるような笑みだった。

「んで、今日は何かの収録か?」

「あぁ。こいつの――」

 がし、と彼女の頭を、若干乱暴に、だけど優しく撫でるように動かす。それを受けて多田は「ちょ、セットした髪がぁぁ」と慌てながらも笑顔で言っているのはここではひとまず無視し、彼の言葉を待つ。

「新曲の収録だよっ」

「おぉ、新曲か!」

「そう――っなんですよ!」

 わしゃわしゃー、とされていた腕を振りほどいて、多田が目を輝かせて泉に言う。

「収録が終わったら、その週のうちに発表も兼ねたミニライブもあるんです! 綾波先生も、ぜひ来てください!」

「そうなのか。でも、僕も仕事が……」

 ちらり、と胸元から手帳を出してここ二週間分の予定を確認する。

 その仕草を見てか、青井はにかっと不敵な笑みをこぼして僕に耳打ちする。

「大丈夫だ。もとよりお前は俺の特権使って誘うつもりだったからな。それに、リリースイベント且つ李衣菜きっての希望で地元のバンドを使っての生演奏でお披露目会だ」

 この日な、とトンと指定された日付は、自分の予定も副顧問をしている部活の予定も、何の偶然かしっかりきっかりきれいな空白ができていた。

(こいつ、職権乱用もいい加減にしろよなぁ)

 そんなことを心の中で思いながらも、僕はどこか嬉しさを隠しきれなさそうだった。

 担当を受け持っているクラスの子が実は結構な人気アイドルで、しかも近い週に新曲発表を兼ねたミニライブがあり、それを見れるというのは、何か「彼女の新しい一面が見れる」「考査表にも何か一言書けるかな」とか思っていた。

(これも職業病かな。とにもかくにも――)

 ふぅ、と一息。頭の中を切り替えて、「フム、空いているなら仕方ないな」と、仕方なしに引き受けるように、しかししっかり「うれしい」という表情を混ぜるのも忘れずに、笑顔を浮かべて多田に向かう。

「その日、ものの見事に開いてるみたいだからな。こいつの言葉に乗って、見に行こうかな」

「ほんとですか! よっし、当日まで頑張ってきますよー!」

 ぐっと拳を空に突き上げて叫ぶ多田を見て、互いに苦笑を浮かべる僕と青井。

 その後、ほんの少しだけ雑談をかわして互いに分かれたのだった。

 ただ、その後のシングル「Sparkling Girl」のリリースイベント。まぁ、僕が言ったリリースイベントなんだけれど、そこでまさかあんなことが起こるなんて、誰も予想しなかっただろう。

 

 

 リリースイベント当日

 イベント開始まで、あと四時間。

 移動中の車の中で、俺――青井瑠衣は電話越しに思わず叫んでいた。

「えぇ、まじ、かぁ、?」

 電話の相手は、今日のリリースイベントで李衣菜の新曲である「Sparkling Girl」で演奏してくれる『予定だった』バンドのリーダー。この時間に電話がかかってくるということは、今日のイベント内容に関しての最終確認かと思い、意気揚々と電話に出たものの、内容はその正反対。

 まさに、最悪。ほんの少しだけ、予想していたけれど、まさか現実になるとは思っていなかった。

 バンドメンバーの五人のうち、ギター、ベース、ドラムの三人が風邪でダウン。何とか生き残っていたボーカルの一人が電話をかけて、今日の出演を辞退したい、という内容だった。

 風邪ならある意味仕方ないし、協力を申し出たのはこっちだから強要はできない。

 ひとまず、了承の答えを出し、ひとまず電話を切る。大きく息をつき、少し考え込む。

 隣で僅かに不安の表情を浮かべる李衣菜に、自分の不安を伝播させないためにも――

「大丈夫だ。向こうのバンドがチョイと事故ったっぽいけど、リリイベは通常通りやるからな。ひとまず、生演奏からカラオケ音源に切り替えて――」

「プロデューサーっ」

 凛とした声が車内に響く。

 はっとして隣を見ると、そこには自信満々な表情を浮かべてこっちを見る李衣菜の姿があった。

「プロデューサーがテンパってどうすんのさ。こういう時こそ、アイドルとプロデューサー、一緒に考えるのがベストです、だよ」

「――ははっ。それ、武内主任の受け売りだな?」

 バレましたか、と笑顔を浮かべる李衣菜。それにつられて、思わず俺も笑顔を浮かべる。

 こういう時こそ、頭はクールにだ、青井瑠衣。ひとまず、この後のリリイベのことだけ考えるんだ。

「とりあえず、カラオケ音源に切り替えてやる準備をしておくとして、生演奏は――」

 無理か、と思わず思ったものの、ふと何かが閃いた。

 今回のイベント会場、イベント開始までの時間。そして、『アイツ』の住んでいる場所からイベント会場までの距離。

 そして、すべてが繋がった。

「李衣菜。イベントはそのまま生演奏で決行だ」

「何か手を思いついたんですか?」

「あぁ、ほんのちょっとだけ――」

 裏技、だけどな。

 そんな風にいたずらっぽく笑みを浮かべ、俺はケータイを取り出し『アイツ』へと電話をかける。

 

 

 ほんと、無茶振りもいい加減にしてほしい。

 そんな風に僕――綾波泉は思いながら即席の練習スペースで譜面を見ながら一心不乱にスティックを振る。

 青井から電話が来たのがだいたい三時間ほど前。その内容が、今日のイベントで演奏するはずのバンドがこれなくなったから、代わりにドラムを叩いてくれ、というもの。

 無茶振りもここまでくれば度合いを超えている。富士山どころかエベレストクラスだ。もちろん、最初は一度断ったがその後の多田の若干泣きそうな声を聴いて、足が勝手に動いていた。

「お願い、綾波先生以外に頼れそうな人いないから、とか言われちゃあ、教師心が若干揺れるなぁ、まったく」

 苦笑しながらも譜面を必死に頭の中に叩き込む。

 イベントのメイン、新曲発表の開始まで、残り一時間を切っている。すでに彼女はCDの手渡し会に出ていてこの場にはいない。

 でも出発する前に、彼女に言われた言葉が脳内で反復する。

「巧くなくてもいいから、心を込めて、か。そんなこと言われた日には、俺だってやらなぁいけねぇよなぁ」

 ふぅ、と一息ついて思わず家から持ってきた水色のバンダナを頭に巻く。こうするのも久しぶりだなぁ、とか思いながらもう一度最初から高速で通していく。

 一通り通し終わったところで、後ろから肩を叩かれる。つけていたヘッドホンを外して後ろを向くと、そこには急遽ギターを担当することになったロックアイドル――木村夏樹さんが愛用のギターをもって、そして彼女の隣にはベースを担当のアイツがいた。

「こうやってお前とコンビを組むのは大学以来か」

「そう、だな」

「へぇ、青井プロデューサーとだりーの担任さんって知り合いだったんだ」

 ちょっとした腐れ縁だけどな。そんな風に青井が言うと、彼女は「へぇ」とどこか楽しそうな表情を浮かべて、僕のほうへ拳を向ける。

「まぁ、今日一日だけのバンドだけどさ、思い切り楽しんでやっていこうぜ」

「……あぁ、よろしく頼むよ、木村さん」

 こつん、と軽く拳が当たる。そんな時、楽屋にあわただしくスタッフの一人が入ってくる。そして、よくとおる声で「準備お願いします!」と一言。

「んし、じゃあ行きますか!」

「だりーと青井プロデューサーの頼みだからな。思い切りやっていくぜ!」

 意気揚々とステージに上がっていく二人を追いかけるように、僕もステージへと向かっていく。

 そして、ステージに立った瞬間、強烈な熱さのスポットライトに照らされていた。

 

 

 ステージは、三人が上がるタイミングでほぼ完全に温まっていた。

 すでに李衣菜が二曲ほど披露したおかげで観客の緊張も完全に溶け、まさにその場はロックフェスさながらな盛り上がりを見せていた。

 そして、そんな盛り上がりの中にロックアイドル木村夏樹が登場すれば、盛り上がりの上限は簡単に撤廃される。むしろ、半ばサプライズ気味に登場した彼女に、観客も李衣菜もあっけにとられていた。

「な、なつきち!?」

「おうともさ。だりーのイベントに助っ人登場、ってね。今日はラストだけど、そのラストも思い切り盛り上げていくんでよろしく!」

 わぁぁ、と盛り上がりが最高潮に達する。

 その様子を見て、瑠衣は二人の緊張はもはやないものと判断。あとは次の新曲が無事成功すればイベントも大成功になる、と考える。

 しかし、横目でちらりと彼を見て、観客に見られない角度で思わず舌打ちする。

(くそ、泉の奴完全に『飲まれ』やがった)

 一見冷静にドラムのスタンバイをしているように見えた泉だったが、完全に会場の盛り上がり、熱気、そして圧に気圧されてしまっていた。

(やべ。緊張でうまくスティック握れねぇ。さて、どうしたもんか)

 思い切り深呼吸するも、手の震えは収まらない。

 このまま叩き出したら、絶対に失敗する。そんなイメージしかなかった。

 やばい、やばい、やばいと脳内に負の言葉があふれ出る。

 これ、絶対ミスるなぁ。そんな風に思って思わず空を仰ぎそうになった時――

「それじゃあ、行きます。新曲「Sparkling Girl」!」

 李衣菜がタイトルをコールした。

 やばい、始まる。緊張という負のオーラに包まれたまま、前を向く。

 そんなとき、身体ごとこちらを向いていた李衣菜と、泉は目が合った。

 そして、今このステージの上にいる四人にだけ聞こえる声で、彼女は言う。

「大丈夫、失敗しても大丈夫! 心を込めてやろうよ、全力で!」

「そうだぜ、担任さん。思い切りやろう。それがロックだ!」

「李衣菜と夏樹の言うとおりだ。久しぶりだからって緊張してんのかぁ?」

「んなこたぁ……」

 ねぇ、と言い返そうとした瞬間、彼を取り巻いていた震えが止まる。

 思わず呆けてしまう泉。そんな彼を見て李衣菜と夏樹、そして瑠衣が笑顔を浮かべる。

 何に緊張していたのだろう。ミスが怖くてロックが出来るか。そんな風に思えて、李衣菜の笑顔につられてなのか、震えも緊張も吹っ飛んだ。

「よし、いける」

 李衣菜に向けて、泉は自信に満ちた笑顔を浮かべる。それをうけて、李衣菜もまた笑顔を浮かべ、隣に備えた夏樹へ合図を送る

「うん――なつきち、お願い!」

「よっしゃぁ、行くぜだりーッ!」

 夏樹が奏でる、軽快なギターのリフとともに、曲が始まる。

 そして泉は、今日一番の笑顔を浮かべて、思い切りドラムを鳴らし始めた。

 

 

 イベント終了後。

 新曲発表も、生演奏のまさかのアンコールを加えて大盛況に終わった。

 その後、別の仕事があるからと言って、瑠衣と木村さんは先に移動し、僕は多田を寮の近くまで送ることになった。

「いやー、今日は楽しかったなぁ」

 満足げに笑顔を浮かべる多田を少し後ろから追いかける僕。少し考えながら、思わず僕は彼女に問いかけていた。

「なぁ、多田はどうしてアイドルを?」

「どうして、かぁ。少し前までは、ロックなアイドルやりたい、って思ってたけど、武内主任とか、青井プロデューサーとかといっしょに仕事してきて――」

 ロックな仕事、外見とかだけじゃなくて、ファンの夢を、しっかりきっちり、真正面からかなえてあげたくなったんです。

 そんな風に、笑顔で言う多田を見て、思わず素の笑顔がこぼれた。

 しかも、教師になってから封印してきた「かかっ」という爺さん臭い笑い声とともに。

 「そっか。だったら、これからも応援していかないとな。ファンとして」

 そう言って、彼女に対してぐっと拳を前に突き出す。それに合わせてくれるように、多田もまたこつん、と拳を突き合わせる。

 こうしてまた、僕、綾波泉という一人の教師が、アイドルという遠い存在であり、また一人のかけがえのない教え子である多田李衣菜との距離を、一歩だけ縮めた日となったのだった。

 

 

 なお、この日以来、泉は彼女を含めた346プロダクション所属のアイドルのCDをぽつぽつと集め始め、瑠衣から「生演奏のドラム担当として」ちょくちょくイベント会場に呼び出されることになるのは、また別の話……

 

 

 

 

 不器用だけど真っすぐに、この思いは伝えて見せる。

 

 それが、私なりの伝え方。

 

 どんな服を着ていても、私は私なんだって。

 

 今なら笑って言えるから。

 

 どんなことがあっても、ゼッタイにブレないものが出来たから。

 

 何に試されてたって、直観信じて進むんだ。

 

 生まれて弾けて輝く想いを、エイトビートのリズムに乗っけて……

 

「さぁ、もう一曲行くよー! 曲は――「Jet to the future」!!」

 

 ツバサ作り出して、飛び立つんだ。




 楽しんでいただけたでしょうか?

 多田李衣菜誕生日記念作品として、投稿させていただきました。

 最初と最後の謎ポエム(?)は、李衣菜の持ち歌「twilight sky」と「Sparkling Girl」をモチーフに作らせていただきました。どこをどう持ってきたかは、皆さんで探してみてください。

 自分、結野Pと彼女との出会いは――まぁ何はともあれ長くなるので省きましょう。

 こんなロックで笑顔がまぶしいアイドル、多田李衣菜とは、現在好評配信中「アイドルマスター シンデレラガールズ」及び「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」の二作品にて出会うことができます。是非とも、一度ご覧になってください。

それでは、次回更新をお楽しみに!
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