ストライク・ザ・ブラッド~王の吸血鬼~   作:ルートE

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ちょっと原作通りすぎかな?


聖者の右腕Ⅱ

カルマはベッドに寝ころびながら、剣巫について考えていた。

 

(獅子王機関から剣巫が来たとなると古城の正体がばれたのだろう、恐らく俺はまだばれてないと思うけど、どうせすぐにばれて俺にも監視が付くんだろうな。ああ~、できれば巻き込まれたくないなぁ)

 

監視が付いた古城の正体はちまたで噂になっている第四真祖だ。

そしてカルマはまだばれていないが、伝説上最強とされる王の吸血鬼(デウスブラッド)だ。さらに古城とは違いカルマは誰かから受け継いでなったわけでもないの年齢は軽く300を越している。こうした秘密がカルマにもあるのだ。

 

考えても仕方がないとした、その瞬間だった。

 

「―――っ!?!」

 

強力な魔力の波動を感じたカルマ。それもこの感覚は吸血鬼が眷獣を使う時の感覚。そこまで感じ取ると考える間もなく、カルマはすぐさま飛び起き家を飛び出して行った。

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

 

 

 

雪菜は魔力を感じ現場に来ていた。

 

「あれは...」

 

目の前では闇を切り裂き、虹のような色に輝く、半透明の巨大な腕が鳥の翼を根元からひきちぎっている。

実体を保てなくなった鳥の魔力の塊を虹色の腕はさらに攻撃する。

 

「魔力を...喰っている!?」

 

その異様な光景に雪菜は言葉を失う。倒した眷獣の魔力を喰らう──雪菜が知る限り、そんな眷獣は聞いたことがない。

そしてその宿主を見て驚愕する。

虹色の腕の宿主は、雪菜よりも小柄な少女。素肌にケープコートを纏った藍色の髪の少女。

 

「吸血鬼...じゃない!? そんな...どうして、人工生命体(ホムンクルス)が眷獣を!?」

 

すると後ろで、ドッ、と重いなにかが投げ落ちる音がする。

驚き後ろを見るとそこには、重傷を負った吸血鬼が倒れている。

肩口から深々と切り裂かれ、吸血鬼でなければ即死のような傷を負っている。

 

「──ふむ。目撃者ですか。想定外でしたね」

 

ふと聞こえた低い男の声に、雪菜が顔を上げる。

燃えさかる炎を背に立っているのは、身長190cmは超えるであろう男。

右手に掲げた半月斧バルディッシュの刃と、装甲強化服の上にまとった法衣が、鮮血で紅く濡れている。

 

「戦闘をやめてください」

 

雪菜は法衣の男を鋭く睨む。

しかし男は気にも留めず、蔑むように眺めている。

 

「若いですね。この国の攻魔師ですか...見たところ魔族の仲間ではないようですが」

 

淡々という。

男の身体から滲み出る殺意を感じ、雪菜は重心を落とし警戒する。

 

「行動不能の魔族に対する虐殺行為は、攻魔特別措置法違反です」

 

「魔族におもねる背教者たちが定めた法に、この私が従う道理があるとでも?」

 

男は巨大な斧を振り上げる。

 

「くっ、雪霞狼——!」

 

槍を構えて、雪菜が疾走った。負傷する吸血鬼めがけて振り下ろされる斧をなんとか受け止め、弾き返す。

 

「ほう...!」

 

戦斧を弾き飛ばされた男は、巨体からは想像できない敏捷さで後方に飛び退き、雪菜に向き直る。

 

「なんと、その槍、七式突撃降魔械槍シュネーヴァルツァーですか!? ”神格振動波駆動術式(D O E)”を刻印した獅子王機関の秘密兵器! よもやこのような場で目にする機会があろうとは!」

 

男の口元に、歓喜の笑みを浮かべ、眼帯のような片眼鏡が、紅く発行を繰り返す。

 

「いいでしょう、獅子王機関の剣巫ならば相手にとって不足なし。娘よ、ロタリンギア殲教師、ルードルフ・オイスタッハが手合わせを願います。この魔族の命、見事救ってみなさい!」

 

「ロタリンギアの殲教師!? なぜ西欧教会の祓魔師が、吸血鬼狩りを──!?」

 

「我に答える義務なし!」

 

巨体が、大地を蹴り加速。振り下ろされる戦斧が、雪菜を襲う。それを見切って紙一重で避け負けじと反撃する。

旋回した雪菜の槍が、オイスタッハの右腕へと伸びる。

回避不可能と悟り、鎧で覆われた左腕で受け止める。

互いの鎧と槍がぶつかり合い青白い閃光が撒き散らされる。

 

「ぬうぅん!」

 

男の左腕の装甲が砕け散り、その隙に雪菜が距離を稼ぐ。

 

「我が聖別装甲の防護結界を一撃で打ち破りますか! さすがは七式突撃降魔械槍シュネーヴァルツァー、実に興味深い術式です。素晴らしい!」

 

破壊された左腕を眺めながら、オイスタッハが満足そうに舌なめずりをする。

その姿を見て"彼はここで倒さなければならない"と剣巫の直感が告げる。

 

「──獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る。破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威を持ちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」

 

「む...これは...」

 

雪菜の体内に練り上げられる呪力を、槍から放つ。

直後、雪菜はオイスタッハへと攻撃を仕掛ける。

 

「ぬお...!」

 

閃光のように放たれた銀の槍を、殲教師の戦斧が受け止める。だが、その威力に数メートル近く後退する。

しかし雪菜の攻撃は終わらない。至近距離からの嵐のような連撃。

 

単純な速さではない。人間である雪菜は、霊視によって一瞬先の未来を視ることで、誰よりも早く動くことができる。

 

「ふむ、なんというパワー...それにこの速度! これが獅子王機関の剣巫ですか!!」

 

雪霞狼の攻撃を受け止めきれずに、半月斧がひび割れ、砕け散る。

その瞬間、雪菜は人間であるオイスタッハに攻撃を加えることを躊躇してしまう。それをオイスタッハは見逃すはずもない。

 

「いいでしょう、獅子王機関の秘呪、確かに見せてもらいました──やりなさい、アスタルテ!」

 

強化鎧の筋力を前回にして、殲教師が背後へと跳躍。代わりに雪菜の前に飛び出してきたのは、ケープコートを羽織った藍色の髪の少女。

 

命令受託(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)、“薔薇の指先(ロドダクテュロス)”」

 

少女のコートを突き破って現れたのは、巨大な腕。それは虹色の輝きを放ちながら雪菜を襲う。

 

「ぐっ!」

 

「ああ...っ!」

 

かろうじて雪菜が激突に勝つ。“薔薇の指先”と呼ばれる眷獣を、銀の槍が引き裂く。眷獣のダメージを受けたアスタルテと呼ばれる少女が弱々しく苦悶に息を吐く。

 

「あああああああああ──っ!!」

 

少女の絶叫と同時に背中を引き裂くもう一本の腕が現れる。

眷獣が二体、というわけではなく、もとより左右一対ひとつの眷獣なのだろう。しかしそれは、独立した別の生き物のように相手を頭上から襲う。

 

「しまっ──」

 

 

雪霞狼の穂先は、眷獣の右腕に突き刺さったままだった。もし一瞬でも雪菜が力を抜けば、手負いの右腕に雪菜は潰される。

そしてこの状況では、雪菜は、左腕を避けられない。

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

 

 

 

カルマは雪菜の戦闘を上空に浮かびながら見物していた。

 

「ふーん、あれが剣巫か。まさか〝七式突撃降魔械槍シュネーヴァルツァー〟を持っているとはね、戦うとしたら少しめんどくさそうだな。だが、解析 開始(トレース オン)あの槍は武器になるな...」

 

雪菜が持つ槍を解析し、自分の手ごまとして使おうと考えるカルマ。

 

(そろそろ古城が来るかな、それにしてもあの藍色の髪の少女の眷獣は植え付けられたものか。珍しいな...)

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

 

 

 

 

 

雪菜は自身の死を覚悟する。

ただ最後に一瞬だけ、見知った少年の姿が脳裏によぎる。ほんの数日前、出会ったばかりの灰色の髪をした少年の面影が。

自分が死ねば、おそらく彼は悲しむだろう。だから死にたくない、と雪菜は思った。

 

「姫柊ィ──!」

 

思いがけないほど近い距離から、その少年の声が聞こえてきた。

 

第四真祖、暁古城の声が。

 

「おおおおおおォ!」

 

古城は握りしめた拳で、巨大な腕の形の眷獣を殴りつける。

虹色に輝く眷獣の左腕が、勢いよく吹き飛んだ。そして眷獣の宿主である少女も、その衝撃に転倒し、雪菜と戦ってた右腕が消滅。

 

「なっ...」

 

雪菜は呆然とでたらめな光景を眺める。

 

「なにをやってるんですか、先輩!? こんなところで──!?」

 

どうにか気を取り直して、雪菜は訊く。古城は怒りを隠そうともせずに、

 

「それはこっちの台詞だ、姫柊! このバカ!」

 

「バ、バカ!?」

 

「様子を見に行くだけじゃなかったのかよ。なんでお前が戦ってんだ!」

 

「そ、それは──」

 

うっと、雪菜が物言いたげに口ごもる。古城は詳しくは理解せずともいろいろとあったことはわかる。

 

古城は空を飛べないし、空間転移魔法などももちろん使えない。二基の人工島を連結する長さ十六キロの連絡橋を、全力疾走は流石に疲れた。

そして古城がたどり着いた時には、最初見えていた眷獣はすでに倒れ、雪菜は謎の男と戦闘の真っ最中だった。

 

「で...結局、こいつらはなんなんだ?」

 

「わかりません。あの男は、ロタリンギアの殲教師だそうですが...」

 

武器を失った法衣の男を睨んで、雪菜が答える。

 

「ロタリンギア? なんでヨーロッパからわざわざやってきて暴れてるんだ、あいつは?」

 

「先輩、気をつけてください。彼らは、まだ...」

 

雪菜の警告の前にケープコートの少女だ立ち上がる。その背後には虹色の眷獣が実体化したままだ。

 

「先ほどの魔力...貴方はただの吸血鬼ではありませんね。貴族ノーブルズと同等かそれ以上...もしや第四真祖の噂は真実ですか?」

 

破壊された戦斧を投げ捨てる。

その殲教師をかばうように、藍色の髪の少女が前に出る。

 

再起動(リスタート)完了(レディ)命令を続行せよ(リエクスキュート)、“薔薇の指先(ロドダクテュロス)”──」

 

「やめろ、俺はべつにあんたたちと戦うつもりは──」

 

「待ちなさい、アスタルテ。今はまだ、真祖と戦う時期ではありません!」

 

古城と殲教師が、同時に叫ぶ。

だが、すでに宿主の命令を受け止めた眷獣は止まらない。虹色の腕を鈍く煌めかせ、古城を狙う。

 

「先輩、下がってください!」

 

槍を構えた雪菜が、古城を突き飛ばし、飛び出す。

だが、その動きを予知していたようにもう一本の腕が少女の足元から、放たれた。地面をえぐるように飛来した右腕に反応が遅れる。

 

「姫柊!」

 

古城が咄嗟に雪菜を突き飛ばす。雪菜は為す術もない吹き飛ぶ。目標を見失った右腕が眼下から、そして左腕が頭上から古城を襲う。

 

「せ、先輩っ!? なんてことを──!」

 

受け身をとった雪菜が、体勢を立て直す。

 

「ぐっ...!」

 

拳を握り古城はかろうじて迎撃。だがそれは右腕の話。そして頭上からの攻撃を避けきれず古城の腕から、鮮血が散る。

そう思われた瞬間、古城が叫んだ。

 

「待て...やめ...ろおおおおお────!」

 

その声は、敵ではなく自分自身に向けられているようだった。

古城の瞳が真紅に染まり、喰いしばる口元から牙がのぞく。

そして傷ついた彼の腕から迸ったのは、鮮血ではなかった。

肌を裂くようなにして出現したのは、目も眩むような青色い輝き。灼熱の閃光が視界を埋め尽くす。虹色の眷獣が弾け飛ぶ。

 

「ぬ、いけません...アスタルテ!」

 

殲教師が人工生命体の少女に向けられた怒号は、爆音にかき消される。

古城の腕から放たれたのは、実体化した濃密な塊。すなわちそれは眷獣と呼ばれる存在。だが、その眷獣は次元を超えている。

それは全てを破壊する嵐のような雷撃。

制御不可能な巨大な稲妻が地上の建物を薙ぎ払い、生み出された暴風となって吹き荒れる。

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

 

 

 

 

 

カルマは相も変わらず上空に浮かんだまま静観していた。

 

「古城はいいとこで出てきたな。さて、そろそろ俺もいくかな。って、あのバカ暴走してんじゃねえか!?。はぁ仕方ねえな」

 

カルマは上空から高速で降下しながら悪態をついた。

 

「暴走してんじゃねーよ。古城」

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

 

 

「暴走してんじゃねーよ。古城」

 

古城の中の眷獣が暴走し、稲妻と粉砕される建物の破壊音に掻き消されながらもこの場にそぐわない声が響く。

雪菜は、雪霞狼の結界で瀕死の男を守りながら上空を目を向ける。

そこには、荒れ狂う稲妻と暴風の中、人影が地上に降ってくる。

そしてその人影の腕が輝いたと思えば、巨大な雷も、暴風も、何もなったように消滅する。

 

砂煙が晴れるとそこにいたのは、少しだけ見覚えのある少年だった。

古城とともに行動をしていた少年、天城カルマであった。

 

「アブローラに貰ったんならちゃんと扱えよな、古城」

 

「あなたは何者ですか」

 

「俺はこの古城(バカ)の親友の天城カルマということで。よろしく」

 

「...よろしくお願いします」

 

雪菜にはカルマという少年がどういった存在か測りかねていた。古城の友人というのは知っていたが、第四真祖の眷獣をどうやったかは分からないが消し去ったのだ。

 

(あなたは何者ですか。これは上に報告するべきでしょうか)

 

「あっ、そうだ。古城にはこのこと秘密な。すぐばれそうだけど。じゃあな」

 

 

雪菜が自分に向ける視線を気にも留めず、カルマは眠たそうにあくびをしながら帰っていった。




長くなっちゃった。そして疲れたよ。
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