ストライク・ザ・ブラッド~王の吸血鬼~   作:ルートE

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今回は早めに更新できました。


聖者の右腕Ⅴ

「何処に行くんだ?殲教師殿」

 

突然のカルマの登場に驚きつつもわずかに警戒するオイスタッハ。

 

「貴方は何者ですか?」

 

殲教師が戦斧をカルマへと向ける。

 

「俺は、この古城(バカ)のただのクラスメイトだけど」

 

カルマは口角をわずかに吊り上げた不敵な笑みを浮かべつつ答える。

カルマの応えにオイスタッハは、大きな笑い声をあげる。

 

「誰が来たかと思えば、ただの学生ですか。行きますよ、アスタルテ...我らが至宝を奪還するのです」

 

「──命令受諾(アクセプト)

 

人型の眷獣に包み込まれたアスタルテが、無感情に呟く。

 

「行かすつもりは無いんだけどね...俺は」

 

右腕を上に突き出し、カルマは前方に振り下ろす。そして膨大な魔力を放ちながら言葉を紡ぐ。

 

「──投影 開始(トレース オン)――――工程完了(ロールアウト)全投影 待機(バレット クリア)

 

カルマが詠唱するとカルマの背後の空間が歪み、その歪みから銀の槍が無数に現れる。

 

殲教師と巨大な腕の眷獣を持つ少女がカルマが出した無数の銀の槍を目にして動きを止める。特にオイスタッハは、銀の槍の一つ一つが先ほど戦った剣巫が持っていた槍と同じ気配を感じる事とその魔力にひどく驚き動きを止める。

ただの少年だと思っていたカルマがどういった方法か分からないが獅子王機関が機密にしている雪霞狼を無数に出すという驚きとそれを成したであろう強大な魔力に二度驚く。

 

「もう一度聞きましょう。貴方は何者ですか?」

 

カルマは右手で頬を掻きながらめんどくさそうに答える。

 

「さっき言ったろ...俺はこの第四真祖(バカ)のクラスメイトだ」

 

「答える気がないなら結構です。アスタルテ! この者を捕らえなさい」

 

「──命令受諾(アクセプト)

 

虹色の巨人の右腕がカルマの身体へと襲いかかる。

 

「先輩──ッ!」

 

雪菜がカルマへの攻撃に気付き叫ぶ。だが、その時にはすでに遅かった。巨人は右腕だけでなく左腕もカルマへと向けて放っていた。

仮に右腕を無数の銀の槍で弾こうと左腕は防げないだろうと思っていた。

 

だが、カルマは微動だにせず冷静な声で呟く。

 

「...停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!」

 

カルマの背後の歪みから現れていた槍の半数が、光り輝くと同時に虹色の巨人の右腕に向かって神々しい光を放ちながら放たれた。

さすがにいくら雪霞狼に似ているといってもその槍を増やしただけではあの攻撃を防げるわけがない。“神格振動波駆動術式(DOE)”の力を得たあの拳を。

 

オイスタッハは勝利を確信し、雪菜は敗北を確信した。

 

巨人の右腕と銀の槍のがぶつかり合った瞬間、青白い閃光を放ち、それと同時に凄まじい爆風が発生する。

二つの魔力の塊がぶつかり合い発生した凄まじい爆風は埃と瓦礫を舞い上がらせ、埃を含んだ砂煙を巻き起こす。

 

砂煙が晴れた空間にいくつかの影が浮かび上がる。それは、神城カルマとその背後に浮かび上がる無数の槍のものだった。

それに対して虹色の巨人の眷獣は姿を消し去りそこには、藍色の髪の少女のみが立っていた。

 

その場にいた者のほとんどが何が起きたか理解できなかった。

 

「ば、バカな...薔薇の指先(ロドダクテュロス)が姿を消しただと、ありえん!?」

 

オイスタッハは、驚愕のあまりに持っていた戦斧を取り落とす。

 

「アスタルテ! 再び、やつを捕まえろ!」

 

「──命令受諾(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)、“薔薇の指先(ロドダクテュロス)”」

 

慌て身を隠そうとするオイスタッハの命令に従って、アスタルテが苦痛の表情を浮かべながら再び虹色に輝く人型の眷獣を出現させる。

巨人はその両腕を握りしめ、再びカルマを狙って殴りかかる。

だが、再びカルマの背後の無数の槍が巨人の腕に向かって放たれ、その攻撃を防ぐ。

 

カルマが放つ槍と巨人の腕がぶつかる瞬間、再び青白い閃光がその場を包み込み、爆風が起きる。

埃が舞い上がり、それが晴れるとまたもカルマと無数の銀の槍はそこにおり、アスタルテの眷獣のみが姿を消している。

 

「何度やっても同じだよ。オッサン」

 

オイスタッハは、今だに理解できないカルマが出した無数の槍の能力に激しく動揺する。

神格振動波駆動術式(DOE)”は魔力による攻撃を一切無効化する。たとえそれが未完成の形とはいえ、それを無効化してさらにその眷獣さえも消し去る力が理解できなかった。

 

「アスタルテ! ここは撤退です!」

 

「──命令受諾(アクセプト)

 

再び出現した眷獣は、巨大な腕で外壁を破壊する。埃と瓦礫が舞い散り、それが晴れたときには二人の姿は存在しなかった。

 

「まあ、追いかけたいところだが今のとこはいいかな」

 

そう呟きながら、背後に浮かんでいた無数の槍を消し、カルマは古城の頭を抱えうずくまる雪菜の元へとゆっくりと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

キーストーンゲートとは、絃神島の中央に位置する巨大複合建造物。

十二階建ての地上部は島内で最も高い建物である。

一方でこの巨大な建造物には、もう一つの重要な役割がある。

それが海面下四十階層にも及ぶ、人工島(ギガフロート)集中管理施設だった。

直径わずか二キロに満たないこの建物が絃神島を構成する四基の人工島(ギガフロート)の連結部をも兼ねている。

それゆえに警部も厳重である。

絃神市が保有する特区警備隊(アイランド・ガード)は、三個大隊四百四十人強。その一個大隊は、常時キーストーンゲートの警備に当たっている。その人数には一個小隊の攻魔官も含まれる。

計算上では、夜の帝国(ドミニオン)の獣人兵団一個中退を相手にしても、数日間は持ちこたえられると言われていた。

だが、現在海面下第十階層の気密隔壁を二人の侵入者が突破して、ゲートの中層部へと向かっている。

人工生命体(ホムンクルス)のアスタルテとロタリンギアの殲教師であるオイスタッハは、警備部隊を蹴散らし進む。

 

「──大方これで片付きましたか」

 

完全に沈黙した警備部隊の姿を見回して、オイスタッハは冷ややかに言った。

そう思いながら、今さっき自分たちが来た道へと視線をやる。

その場から離れようとした時、微かに動く気配を感じる。

戦場から少し離れた場所に、一人の少女が立っている。

武装はない。彼女が携帯しているのは、小さなノートパソコンだけだ。戦闘訓練を受けた人間の姿勢でもないし、魔力も感じない。ただの人間だ。

たまたま通路の様子を見に来て戦闘に遭遇したという雰囲気だった。

怯える少女の姿を眺める。

彼女が身につけているの制服が、獅子王機関の剣巫の服によく似ている。

仲間という可能性を考えて無力化しておくべきか──

 

そう考えて、オイスタッハは首を横に振る。

あの剣巫が追いかけてきたところで、今のオイスタッハたちにはなんの障害にもならない。

それよりも先ほどの謎の少年のことが少し気がかりでしょうがない殲教師。アスタルテの眷獣を無力化出来る能力を持つ無数の槍を出すことの出来る少年。

獅子王機関の剣巫が戦意喪失した今、オイスタッハの計画を止められるかもしれない唯一の存在。

彼がいつ追ってくるかわからない現状では、この場で急いでおくことが最善策であろう。

 

それにここであの少女の命を奪う意味はない。

放っておいても彼女は愚か、この島の全ての人間はいずれ死ぬ。

 

そう。この咎人たちが造りし背約の地──絃神島は間も無く海に沈む。




こんなものでしょうか?

衛宮士郎の投影を強力にしてカルマに持たせてみました。
ついでに通常の投影なら無理なことも可能にしてみました。

カルマの能力などは今度、人物紹介的な感じで詳しくしますので。
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