ストライク・ザ・ブラッド~王の吸血鬼~   作:ルートE

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聖者の右腕Ⅶ

暁古城と神城カルマは、学生食堂の端っこの、日当たりのいいテラス席で突っ伏した。

宿題漬けの週末を乗り越えた月曜日の放課後。

 

「熱い...焼ける。灰になる...つか、追々試ってなんだ。あのチビッ子担任、絶対に俺たちをいたぶって遊んでやがんだろ!」

「全くだ~...誰が島の危機を救ったと思ってんだよ」

 

夏休みに受けた追試は、積もりに積もった出席日数不足の埋め合わせの点数に及ばず、おまけに夏休み明け初日の授業をサボったことで、結果的に追々試である。これが絃神島を沈没から救った代償だと思うと、あまりに理不尽だ。

 

唯一の救いは、あの事件以来、妙に浅葱が優しい。

今日もわざわざ放課後居残って、勉強を教えてくれるというのだから。

なんでも浅葱もあの事件に巻き込まれていたらしく彼女は古城達が絃神島を救ったということも知っている。

その浅葱は現在、飲み物を買うために購買部の方へと出かけて行った。

あたしが戻ってくる前にやっておけ、と彼女に言われた問題集から、古城とカルマは目を逸らす。

 

「なぁ、古城」

「なんだよ、カルマ」

「いやなんでソワソワしてるのかな~と、思ってな」

「いや、その姫柊のことなんだけどな」

「ああ」

 

カルマが納得したように声を上げる。

 

「先輩!」

 

あの短い会話でカルマが納得した事を怪訝に見ている時に急に呼ばれビクッと肩を震わす。後ろを振り返るととそこには姫柊雪菜がいた。

 

「姫柊!!どうだった!?」

 

思わずと言った調子で乗り出しながら、古城は尋ねる。

そんな様子に雪菜はわずかに引きながらも、言うべき言葉を続ける。

 

「陰性でした。」

 

その言葉を聞いた瞬間、古城は心底安心したと言った感じで、ホゥ、と安堵の溜息をこぼす。

 

「良かった。痛い思いさせちまったし...」

 

ふと、周りを見回した古城は、小声でそっと語りかけるように、ボソッと呟く。

 

「お前を俺の血の従者にしちまったんじゃないかと気が気じゃなくてさ。」

「血が出たのも微量でしたし、それにあの時は比較的安全だって分かっていましたから。」

 

カルマがボケ~っとそこからいつも通りの空気に戻るのかと思っていたが、違った。雪菜の背後にある苗木に見覚えのあるどころか、よく知るポニーテールの少女が立っていた。

 

「へー...古城くんが痛い思いをさせて、血が出て、陰性だったんだ〜...」

 

その顔は笑顔でありながら、口の端はヒクヒクと引き攣っている。怒りが頂点に達した時、彼女が見せる癖のようなもので、つまり、今、彼女は今までにないくらいの怒りを覚えているわけである。

 

「待て!凪沙!お前は今は重大な勘違いをしてる!絶対に!」

 

そんな抗議の言葉に対して、雪菜もブンブンと頭を上下に振る。

 

「何が勘違いだっていうのかな?古城くんが雪菜ちゃんのはじめて奪って、血を流させたっていうところのどこが?」

「だから、その思考に移行していることがすでに、勘違いなんだが...」

 

古城は思わず空を見上げたくなったが、ふと思いついたように凪沙に質問する。

 

「そうだ。浅葱は?一緒じゃねえのか?」

 

凪沙は自分の妹ということも相まって、親友である浅葱と仲が良い。だから、一緒にいるのかと思い、いないなら、捜させてこの難局を打破しようとまで考えていたのだが...

 

「浅葱ちゃんなら、ほら、そこに...」

「え?」

 

ギギギと、まるで機械仕掛けの人形がさびつきながらも必死に動こうとしていることを連想させるような首の動きで後ろを振り返ると、そこには購買で買ってきたジュースを片手にフルフルと肩を震わせている藍葉浅葱がいた。

 

「古城...あんた...最低。」

 

浅葱の妙な迫力に古城だけでなくカルマまでもがビクッとしている隙にスタスタと、古城の前を通り過ぎ雪菜の目の前に行く。

 

「あなたが姫柊さんね?いい機会だから、聞いておきたいんだけど、このバカとどういう関係なの?」

「先輩の監視役です!」

「ストーカー...ってこと?」

 

そんな浅葱の言葉に対して、慌てた調子で雪菜は訂正する。

 

「違います!ただ、先輩が悪いことをしないように見張ってるだけで...」

「その貴方が、この馬鹿を誘惑してどうするのよ!」

「それはそう...ですけど...」

 

姫柊が言い返せずにいると、浅葱が大声で騒ぎ出す。

 

「だれかーここに淫 魔が、中学生に手を出す淫 魔がいますよー!」

「やめろ浅葱!」

 

浅葱の言葉に対して、過敏に反応した周りの生徒たちはチッと舌打ちを打ちながら、古城に殺気を放っていた。

 

「カルマも止めてくれよ!」

 

「まあ、がんばれよ。変態真祖君」

 

そう耳元でつぶやいてカルマはその場を去ろうと歩き出す。

 

「おまえ...!」

 

背後に古城達の口論を聞きながらカルマは、いつもの平穏な日常を取り戻したのだと感じるのだった。

 




今回は少なめです。
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