ストライク・ザ・ブラッド~王の吸血鬼~   作:ルートE

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戦王の使者Ⅰ

「糞っ、糞っ、糞っ、糞っ、取引の情報が漏れていたとは...やってくれたな、人間ども!」

 

掠れた声で口汚く罵りながら、獣人の男は深夜の街を疾走する。

銃撃で受けた傷がズキズキと疼いた。

男はある組織の者であり、今夜武器の闇取り引きをする手筈だったのだ。

だが、何処からか情報が漏れ、特区警備隊アイランド・ガードに突入され、取引は中止。

仲間も弾丸に撃たれ、死んでしまった。

 

「許さんぞ...」

 

炎に包まれている背後の倉庫を、男は憎悪の眼差しで睨みつけた。

絃神島――太平洋上に浮かぶ巨大な人口島(ギガフロート)。 人間と魔族が共存する“魔族特区”である。

男は欧州、“戦王領域”の出身であり、絃神島の者ではない。

そして男は、黒死皇派のテロリストであり、その手の中には起爆装置のスイッチが握られていた。

男が前もって仕掛けていた爆弾は二つあり、最初の一つは倉庫で使ってしまったが、もう一つ、港湾地区の地下水路に仕掛けたものが残っている。

負傷者の救援の為に呼ばれた特区警備隊(アイランド・ガード)の増援部隊がそのあたりを通過しているだろう。

この爆発で、彼らを殲滅する算段だ。

 

「同志の仇だ。思いしれ――ッ!」

 

男はスイッチを入れたが、何の反応も無かった。

 

「何っ!?なぜだ!!」

 

男が困惑しているところへ背後から声がかけられる。

 

「逃走劇は終わりかな?」

 

「き、貴様は、誰だ!?」

 

「俺か? 俺はただの学生だよ。とにかく大人しく捕まってくれよ。」

 

男へ声をかけた人物―――神城カルマが言い終わると同時に男の周囲に鎖が現れ、一瞬にして抵抗できないように巻き付く。

 

「これで終わりっと」

 

男が身動きを取れなくなったのを見て、男に近づき鎖を巻き付けていない腹部を拳で強打した。

タフな獣人と言えどカルマ(吸血鬼の王)の一撃を喰らい意識を失いその場に倒れる。

 

「――終わったぞ、那月ちゃん」

 

ビルの屋上、給水路の上に漆黒のドレスを身に纏っている少女が映った。

 

「教師をちゃんづけで呼ぶな!」

 

那月はそう言うと、カルマの前に降り立ったちカルマを手に持つ扇で叩こうとする。

 

「危ないな~。教師が生徒を叩こうとしちゃダメでしょ」

 

「チッ――尋問等は特区警備隊(アイランド・ガード)に任せるぞ。 私は、明日の授業の支度があるからな」

 

「仕事の手伝をしたんだから単位はくれるよね?」

 

「さて、帰るぞ。 明日は遅刻するなよ」

 

自分の言葉を無視して帰る自分の担任にどうかと思いつつ帰路につくカルマであった。

 

 

 

 

 

絃神島に九月の秋という夏を過ぎた冬に向けた準備をする期間という気の利いた時期など微塵もない。

途中から古城と一緒に来たカルマは、陽射しから逃げるように急ぎ足で昇降口に駆け込むと、そこにちょうど見知った顔がいた。

 

「おはよ、古城、カルマ。めずらしいわね、あんたたちが遅刻しないで来るなんて」

 

彼女の隣には、大きなスポーツバッグが投げ出されていた。

 

「浅葱? なんだその荷物?」

 

古城が、上履きに履き替えながら訊く。

浅葱は、そんな古城を見上げてニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ちょうどいいところに来てもらっちゃって、悪いわね。意外に重くて面倒だったのよ」

 

「運んでやるなんてひと言も言ってねえぞ。それにカルマもいんだろうが」

 

「やー、ホント助かるわ。ロッカーの前に置いといてくれたらいいからさ」

 

ささやかな古城の反論を無視して、浅葱は指示を出す。

そういうことだ、とカルマは目で古城に言ってから二人の時間を邪魔してはいけないと一人足早に教室へと入った。

カルマが教室に入るとクラスの半数くらいが一斉に振り返りカルマの方を見たので少し動揺しつつ、尋ねる。

 

「何だ?」

 

すると教卓近くにいた短髪のツンツンに逆立てた軽薄そうな雰囲気の男子生徒、矢瀬基樹が近づいてくる。

 

「いや、ちょうど決まってなかった種目の適任が来たからよ」

 

矢瀬はそう言いながら背後の黒板を指す。

そこには、球技大会の参加種目とクラスメイトたちの名前が几帳面な文字で書かれていた。

そのほとんどがクラスメイトたちの独断と偏見で決められたらしい。

黒板から”カルマ”と書かれた名前を探してみると見つけた。

 

「まぁ、俺はなんでもいいけどよ。一応確認ぐらいとれよな、矢瀬」

 

「まあ、いいだろ。俺とお前の仲だろ」

 

矢瀬は、いつもの調子のようだ。

 

「バスケか...」

 

球技大会でカルマが選ばれた競技は、バスケ。嫌ではないのだが力加減がめんどくさいな~とカルマは思う。

カルマの後に教室に入ってきた古城と浅葱は、矢瀬の策略により、バドミントンの男女混合ダブルスに出場されられることになった。

 

 

 

 

授業後にクラスメイトたちは各々の種目の練習を行うために運動場や体育館へと散って行く。

その中には、帰路につく者もいてそれにまぎれてこっそりと帰ろうとした所を矢瀬に見つかり、嫌々バスケコートがある体育館へと向かうのだった。

 

「───ッ!」

 

魔力の反応を感じ取り身体がビクリっと震える。

 

「どうした、カルマ?」

 

クラスの男子が急に動いたカルマに反応する。

 

「悪りぃ、ちょっと抜ける!」

 

男子の止める声を無視しカルマは魔力を感知した方向へと向かって行った。

 

 

 

 

魔力の感知した方向で見たのは、古城と姫柊が手紙をもって何か話し込んでいる所だった。

 

「何してたんだ?」

 

「カルマか、お前こそどうしてここに?」

 

「魔力を感じたからな、でその手紙は何?」

 

「いや、さっき何か式神が持ってきたんだよ。姫柊は心当たりでもあるのか?」

 

「はい...ですけど、そんなはず...」

 

「蛇と剣か...」

 

蛇と剣を模した紋章から送り主が分かったカルマはめんどくさい奴が来たなと少しうんざりした顔をする

 

「──古城?」

 

その時、聞き覚えのある声が聞こえる。

建物の陰から顔を出す。華やかな顔立ちの女子生徒。

 

「こんなところでなに騒いでんのよ。あんたがいつまでも練習に来ないから、捜しに来てやったのよまったく。あたしをあんなカップル時空に置き去りにするとはいい度胸...」

 

「あ、浅葱?」

 

ノースリーブのポロシャツと、かなり短い純白のスコートを着た浅葱。

この場に来ては、行けなかった人物だ。

 

「こりゃ、まずいな」

 

カルマは状況を瞬時に把握し急ぎ足でその場を後にした。

 

 




今回も少なめですが疲れました。
最近よく疲れます。
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