ライメイジャパンの挑戦!〜青き炎・アナザーストーリー〜 作:支倉貢
光輝たちは日々練習を重ね、ついにプロジェクト最初の試合の日となった。
「……私帰る!!」
野々宮が、クルッと踵を返して帰ろうとするのを、青木がユニフォームの背中を掴んで、引き止めた。
「何すんのよ!!」
「何故逃げるのですか?」
「だ、だって……!」
「?」
野々宮は言い切れず、フイと視線を逸らした。ただ野々宮は、幽霊が苦手なだけだ。
しかし、青木には得体の知れないものであろうが叩き潰すのみ。そのため、怖くもなんともない。言ってしまえば、青木がこの世で一番怖いかも……これ以上言ったら青木に殺されそうだから、やめておこう。
倉石が、膝の上に乗せたパソコンに、尾刈斗中のデータを出した。
「……出たよ。これだね」
「おっ!すっげえな〜倉石!」
「尾刈斗中は、敵の恐怖を煽る戦術を得意とするチーム。また、彼らは呪いをかけることができる……と、あるわ」
「の、呪い!?」
ヒィイ、と恐れおののく好瀬は泣き出し、沖野に抱きつく。野々宮は既に足が震えていた。
こいつら大丈夫なのか。
青木は呆れてものも言えなかった。
「落ち着いて下さい。呪いなど存在するはずがありません」
「そ、そんなことどうして断言できるのですか!!」
「そんなものが存在するなら、私は既に憎い人を呪ってますよ」
「青木は、憎い人がいるのか?」
「まあ、一応……まあ、そんなことは置いといて。呪いなど存在しません」
「ぅ……ぅうう……」
好瀬は泣きじゃくり、野々宮と抱き合う始末。
他のメンバーもそれなりに恐怖は抱いていたが、青木と光輝は、まったく怖くなかった。
青木は幽霊などいないと断言しているためだが、光輝の場合は違った。
「呪いか……面白え!どんなのか、見せてもらうぜ!」
ビシ!と尾刈斗中イレブンを指差す光輝。どうやら彼女には恐怖など毛頭無いらしい。
青木は彼女の能天気さに、またもや呆れている。初戦から厄介なことになりそうだ。
この状況の中、倉石はクスクスと1人笑っていた。
「いい試合にしようぜ!よろしくな!」
「ええ……よろしくお願いします。貴女もきっと信じますよ。呪いの存在をね……クックックッ」
尾刈斗中イレブンのキャプテン、幽谷博之が光輝と握手を交わす。
相変わらず、怪しい笑みを浮かべる尾刈斗中イレブン。光輝も、それに負けじと挑戦的な笑みを返した。
スタンディングメンバーが発表された。
FW:沖野 春野
MF:青木 野々宮 陽山 月星
DF:好瀬 吹野 神童 三月
GK:光輝
瞳子監督が、指示を出すべくライメイジャパンを見渡した。
「相手チームのフォーメーションは、守備的布陣よ。攻め込めば攻め込むほど、難しいものになるでしょう。青木さん、陽山さん、月星さんもチャンスがあればゴールを狙って」
「はい!」
「はーいっ!」
陽山と月星が返事をする横で、青木が静かに頷いた。
「よーし、みんな!気合い入れて行こうぜ!」
「「「「おお!!!」」」」
ホイッスルが鳴り、試合が開始される。
キックオフはライメイジャパンからだ。
沖野がボールを横に流し、春野は受けたボールをバックパスで野々宮にまわす。野々宮がボールを受け取ると、MF陣が動き出した。
「カナ!テル!上がって!フレアとルナはサイドに!穂乃緒は私と来て!」
「幽霊が怖いからですか?」
「そう……って違う!!」
並走してきた青木がボケれば、野々宮のツッコミが入る。それに、野々宮の本音が入っていたようなそうでもないような。
野々宮は青木にボールを託し、上げさせる。
「あんたのそのスピードなら、なんとかなるでしょ!?」
「……まあ、してみせましょうか」
野々宮が言うには、相手をとっとと抜き去り、前線にボールを運べ、ということだろう。
阻んできた敵FWが青木のチェックにまわるが、青木はクルッとターンして相手をかわし、時には文字通り吹っ飛ばしながら、どんどん攻め込む。
(……実力自体はそこそこってところね。でも……呪いって、一体どんなものなのかしら?)
青木は、ずっとこれが気がかりだった。
呪いを使うチーム。
それは、一体どんなものなのだろうか。
しかし、今はプレーに集中せねば。
気がかりを頭の片隅に置いて、青木は前線の沖野にパスを出した。
「お願いします!」
「おお、任せろ!」
沖野がグッと
「コズミックブラスト!!……?」
沖野がボールを叩く瞬間、尾刈斗のGK・鉈の手が不思議な動きをした。
沖野はそれを不気味に思いつつ、渾身の力でボールを蹴り飛ばした。
「歪む空間!!」
突如空間が歪み、沖野が放ったボールは吸い込まれるように鉈の手に収まってしまった。
沖野の眉が、シワを寄せる。
「何!?」
着地した沖野の横を掠め、ボールが尾刈斗の前線へ運ばれていく。野々宮がすぐにチェックにまわるも、かわされてしまう。
そこに、青木が立ち塞がった。
「デッドスパイク!!」
見事ボールを奪うことに成功した青木は、パスを出そうと周りを見渡す。
しかし、沖野も春野もマークされ、動くにも動けなかった。
(それなら……!)
こういう時の彼女の行動は、人一倍速い。
一気に加速し、相手陣営へ斬り込んでいった。
「なるほど……女子だけのチームと聞いていましたが、なかなかやるようですね……ククク……」
尾刈斗中サッカー部監督が、怪しく嗤う。
そして次の瞬間、彼の目付きが豹変した。
「本気出すぜ、てめえら!!」
来る。青木はボールをキープしつつ、身構えた。
一方、ゴール前で構える光輝は、さっきの発言にカチンときていた。
「なんだ!?今まで本気じゃなかったのかよ!俺たちが女だからって、なめてんじゃねーぞ!!」
しかし、これも彼らにとっては所詮負け犬の遠吠え。そう聞こえる。彼女たちには負けるはずがない。
彼らには
「ゴーストロック……!!」
フリーを狙い、攻め込む青木の体が、ふと止まった。
「くっ……!?」
必死に体を動かそうとしても、動けない。
そんな彼女に、野々宮の檄が飛ぶ。
「何してんのよ、あんた!」
「か、体が……動かない……!」
「はぁ!?何を言って……うっ!?」
青木と同じように、今度は野々宮の体も止まる。
沖野、春野、陽山、月星……ライメイジャパンDF陣にも、この謎の現象が起こった。
ただ一人、まだそれにかかっていない光輝は、目の前の不可解な現象を、ただ見ていることしかできなかった。
「一体、何がどうなってるんだ……!?……うぐっ!」
ついに、その魔の手が光輝にも襲いかかった。
ライメイジャパンは、誰も動くことができなくなった。
その間に、尾刈斗中はどんどん攻め込んでいく。DF陣も、一歩も動くことができない。光輝さえも。
「くそっ、どうなってんだよ!」
「無駄ですよ……貴女方には、我々が呪いをかけて差し上げました。
「か、金縛り!?」
「バカな……!!」
幽谷にシュートを決められ、得点を告げるホイッスルが鳴った瞬間、光輝たちは金縛りから解放された。
「まさか……ほ、本当に彼らは、呪いを……!!!」
「そ、そんなはずないわ。だ、だって、だって……!」
「落ち着け、遥華、ルチア!」
震え出す好瀬と野々宮に、光輝が喝を入れる。
「いいか。呪いなんてモンは、俺たちの不安を煽る要素に過ぎない。怖がってちゃ、余計奴らの思うツボだ!さっきは引っかかったけど、次はこうはいかない!絶対、攻略してやる!やろうぜ、みんな!」
「「「おお!!」」」
士気が上がる中、青木はふと幽谷たちを見やった。金縛りに遭っていた間、青木には気になっていたことがあった。
「マーレーマーレー、マレトマレ……」
一体、これが何なのか。何か、この呪いを解く鍵になりそうなのだが……。
「青木、試合再開だ!ポジションにつけ!」
「ぁ……は、はい」
沖野に促され、青木はポジションへと向かった。