ライメイジャパンの挑戦!〜青き炎・アナザーストーリー〜 作:支倉貢
「次の相手は、野生中よ」
移動中の車内でパソコンを開いた倉石は、画面上に出して説明をした。
「野生的なパワーが特徴で、その身体能力は高いらしいわ。特に、縦の力がすごいんですって」
「縦の力?どういうことだそれ」
光輝が意味がわからないとでも言うように、首を傾げる。倉石は言い方が悪かったか……と溜息をつき、説明を続けた。
「ジャンプ力ってこと」
「あ、なるほど!高さか、そうか……って、マジかよ!」
「俺のコズミックブラストも使えねえな。アレ、ジャンプするから」
ようやく意味がわかって愕然とする光輝の隣に座る沖野が、肩を竦めた。と、ここで篠原が重要なことを思い出す。
「ふあ!?そういえばジャ◯プ買うの忘れてた!!」
「篠原、それで思い出すな。おい、そして降りようとするな後にしろ」
沖野が飛び降りようとする篠原のジャージを掴み、阻止する。もちろん、光輝は彼女らの話は聞いていない。
ここで簡単に諦めないのが光輝の性格の良いところである。すぐに青木を振り向いた。
「ジャンプ力なら、青木がすっげえよな!青木なら行けんじゃね?……ってあれ?青木は?」
振り向いた座席に、青木はいなかった。光輝はすぐに、隣が空席の好瀬に声をかける。
「遥華ー!青木は?」
「あ……青木さんなら、今日はご家族とのっぴきならない用事があるって言ってました」
「えええ!?ウソだろ!」
「早く終われたら、戻るって言ってましたけど……」
「それは絶対帰ってこないパターンだな」
はははっ!と豪快に笑う沖野。チームメイトとして共に戦っていく中で、ライメイジャパンはお互いの性格や
例えば篠原は度が過ぎるほどの隠れオタクで、ある日春野が彼女を呼ぼうとして扉を開けた際、ポスターを見てニマニマしてる篠原に出くわし、ものすごく気まずい状況になったのだという。
その他にも、青木が普通に歩いていると、三月と光輝と沖野が何故か廊下で三つ巴の大合戦を繰り広げており、あまりにも苛立った彼女が3人まとめて拳で成敗したとか。
何故戦っていたかと後で問いただすと、光輝の空手道、三月の合気道、沖野の剣道のどれが最強かを決めていたのだとか。青木は呆れて、後でまた3人に文字通り怒りの鉄槌を下したらしい。
こうしてお互いをなんとなく理解し合ったライメイジャパンは、青木のこの行動に驚きはしたものの、怒りを覚える者は誰一人いなかった。まあ、仕方ないか。と、全員が肩を竦める。
……こんな状況が普通と化しているライメイジャパンもどうかと思うが。
「着いたわ。ここが野生中よ」
瞳子監督の声に、光輝は一目散にバスから降りた。降りてみると、そこにあるのは森、森、森……辺り一面、森だった。
「………………森じゃねーか!!」
呆然としていた光輝の第一声が、野生中に響いた。
「何だぁ?ここは。まさか、本当に野獣と試合するっつーのかよ?」
「まさかぁ。そんなことないでしょ」
沖野が森を見渡しながら言えば、春野はあははと軽く笑って流す。
「みんな、バスから降りたわ……ね……」
瞳子監督が全員を見渡し、バスの方を振り向くと、思わず言葉を失った。いつも冷静で、クールな瞳子監督が、絶句するなど珍しい。光輝たちは、瞳子監督の視線の先を追った。
そこには、バスに緑色のユニフォームを着たーーおそらく野生中の選手たちが、バスにべったりと張り付いていたからだ。ある者はボンネットの上に乗り、またある者は窓をペタペタと触り指紋を付け、またまたある者はバスの上に乗ってまるでトランポリンに乗っているかのように跳ね……。
この光景に、今度はライメイジャパンの面々も唖然とした。
「……イヤイヤイヤ!ちょっとあんたら何やってんのよ!?そんなことしたら帰りのあたしらのバスが汚れるじゃない!」
「いや、ツッコむところそこ!?もっと大事なとこあるよ!?壊れるとか!バスは後で洗浄すりゃいいでしょーが!」
野々宮の的はずれなツッコミに、三月が重ねてツッコミを入れる。2人の声を聞いたのか、ニワトリ頭の少年が顔を上げた。少年の腕には、キャプテンマークが巻かれていた。ニワトリ頭の少年に、神童が強く反応したのには、誰も気が付かなかった。
「ん?おお、すまんコケ。こんな大きなバスを初めて見たから、つい興奮したコケ」
「そうだったのか?じゃ、お前らが俺たちの対戦相手の野生中なんだな!」
光輝がニカッと笑いかけ、握手を求めて手を差し出す。だが、降りて来た野生中の面々は、そんな光輝を鼻で笑う。
「ふん。お前らみたいな女が俺たちに敵うなんて、勘違いするなコケ」
「軽く捻って、潰してやるよ」
「なっ!!」
野生中の見下した言動は、光輝の怒りを刺激した。掴みかかろうとする光輝を、滝原が抑える。
「やめなよ。伝えたいことは、ボールで伝えるべきさ」
「っ……そうだよな。よーし、みんなっ!俺たちのサッカー、見せてやろうぜ!」
「「おおっ!!」」
光輝の声に呼応し、ライメイジャパンが太陽に向かって拳を突き上げた。