数年前から書いてるFF零式の二次創作物はまだ平均評価がつかぬというのに……
これが原作カテゴリに含まれているゼロ魔のパワーか。
十二隻の護衛艦隊は、降下地点であるタルブに向けて軍事物資や兵力を満載した輸送艦を率いて進路をとっていたのだが、先鋒の親善艦隊から鷹から受け取った伝令書を見て、エクトル卿は眉を顰めた。
護衛艦隊旗艦の艦長ブロワ侯爵が怪訝な顔をして覗き込んできたのでエクトル卿は伝令書を投げ渡した。
それを受け取ってブロワ侯爵も伝令書を確認すると血の気がさっと引いた。
「ブロワ侯爵、お前はどう思う?どうも我らが想定したのとは、違う局面になってきたように思えるのだが」
「……いくらなんでも信じられませんな。
”レキシントン”含む親善艦隊二十隻が悉く轟沈した?
既にトリステイン艦隊は最初の奇襲攻撃でその戦力の大半を喪失したはず」
ということは親善艦隊に対抗できるだけの兵力が整えられていたということか?
軍艦に対して有効な対空兵器や高位メイジの対空魔法を雨のように浴びせられれば、いかに軍艦といえども轟沈するのだからそう考えうのが自然……
いや、最初の奇襲攻撃が成功している以上、トリステインは我が軍の動向を察知したいなかったのだ。
となるとトリステインが軍を招集したのはそれからということになるが……
常識的に考えて奇襲を受けてから対応したのでは、先鋒の親善艦隊を全滅させるほどの戦力をトリステインが整えていたとは考えにくい。
「なんにせよ情報が少なすぎて判然とせぬな」
「では、閣下。一個竜騎士中隊を偵察として派遣させましょう」
「そうせよ。それと高速艦以外の艦はこの空域で留まるよう指示を出せ。
最軽装の高速艦の三隻のみで先鋒の親善艦隊に一刻も早く合流するのだ」
エクトル卿の命令にブロワ侯爵は首を傾げる。
「よろしいのですか?高速艦のみでは大した支援はできませんぞ」
「この伝令が事実であった場合に備えてだ。
その場合、可能な限り敗残の我が軍の将兵を艦に乗せて、トリステイン軍を背に帰国する」
「危険ですな」
「そうだ。だからこそ鈍足の重装艦等の足に合わせてられん」
「了解しました」
ブロワ侯爵はそう頷いて指示を飛ばし始める。
その様子を見て、エクトル卿は隣にいたディッガーに何事か耳打する。
するとギョッとした目をしたディッガーを引きずる形でエクトル卿は旗艦の奥へ消えた。
そして、ブロワ侯爵が高速艦三隻の司令を決めて彼らだけ先に先行させるよう命令しおわると、エクトル卿がなぜか大量の汗をかいて立っていた。
「どうしました?」
「……いや、少し……暑いと思ってな」
口ごもった口調にブロワ侯爵はやや怪しく思ったものの、本当にしんどそうだったのであまりツッコまないでおいた。
護衛艦隊旗艦の艦長から高速艦三隻の司令に命じられた大佐は震える声でフネの客人に告げた。
「既に艦隊とは視認できぬほど距離をとりました」
「そうか。迷惑をかけるな」
「いえ、しかし、よろしかったので?ブロワ中将閣下に無言で司令がこちらに来てしまって」
「かなり予想外な事態になっているからな。私自ら赴くべきだと判断した」
「では、なぜブロワ中将になにも言わずにこちらへ?」
「言うと反対するに決まっておろう」
大佐は天を仰ぐ。
どうしてこうなったと。
エクトル卿は親善艦隊に乗っている優秀な空軍士官を救出して彼らの心を掴もうという算段していた。
しかし、武断的で融通があまり聞かないブロワ侯爵に言っても「総大将が部下を置いて前線に行くな」と返されるのは容易に想像がついたので、策を講じることにした。
つまり、ディッガーと自分の服装を交換させ、自室においてある予備の仮面をディッガーにつけさせて自分の代わりを演じるように強要し、自分の使い魔の雷竜でこっそり高速艦に乗り込んだのである。
ディッガーは嫌がったが、「主命だぞ」と半ば脅す形で強引に変装させた。
「許せ。最悪、ラ・ロシェールの商船に密航してでもアルビオンに戻るからさ」
進行方向と逆方向に向かってそう呟くエクトル卿。
その後ろで大佐が「これ自分が罪に問われたりしないか?」とネガディブシンキング状態になっており、大佐の部下達が必死で励ましていた。
すると一騎の竜騎士が高速艦の甲板に降り立った。
「前衛艦隊が全て轟沈したのは確かなようです。
地上に降りた空兵達が応戦していますがいつまでもつか……」
「なるほど。それで他の者はどうした?」
「隊長が追い詰められている味方を見捨てるなど俺の主義に反すると言って、空兵の援護に部隊の全員を投入しました」
竜騎士の台詞にエクトル卿は深く頷く。
「竜騎士部隊だけでも先に先行するとしよう」
「お、お待ちください!我らの高速艦三隻に残っている竜騎士は全部合わせても十騎です。いくらなんでも無謀にすぎます!」
大佐の反論にエクトル卿も負けじと返す。
「だが、我らがタルブに到着した時、既に味方が全滅していては本末転倒だ」
「ですが!親善艦隊が全滅するほどの戦力をトリステインは揃えて来ているのです!
それに対して竜騎士十騎を援軍に送ったところで、我が軍の犠牲者が増えるだけです!」
だが、竜騎士が恐る恐ると言った様子で言い放った。
「トリステイン軍は対空兵器を用意しておらず、兵力も二千程しかないようですが」
その言葉に彼らは沈黙した。
大佐は抑揚のない声で問う。
「ということはなにか?我が空軍は高々二千の敵地上部隊に敗れたと?」
「恐れながら……」
「詭弁を弄すな!」
大佐は竜騎士を叱責した。
アルビオンはハルケギニア最強の空軍を有する国家。
革命戦争でやや練度が落ちたとはいえ、二千程度のトリステインの弱兵相手に敗北を喫するなど悪い冗談にもほどがある。
「まぁ、待て大佐。
では、なにゆえ親善艦隊が全滅したか、おぬしはわかるのか?」
エクトル卿の問いに竜騎士は顔を歪める。
「それが……一部の空兵に聞いたところ、トリステインは極秘に”風石”を消失させる魔法兵器を開発していたようで、その兵器の攻撃を受けた親善艦隊は浮力を失い、地上に落ちるに至たってしまったようです」
竜騎士の説明に大佐が青い顔をする。
フネを浮かばせる”風石”を消失させる兵器ってなんだ。反則もいいところではないか。
エクトル卿も腕を組む。
(よもやトリステインにそのような隠し玉が存在したとは)
その魔法兵器の開発を主導したのは誰だろう。
トリステインには”レコン・キスタ”に協力している者達が多数いる。
にも関わらず、開発を秘匿してのけるだけの権力も考慮すると候補に浮かぶのはトリステインの王族だが、年中喪中王妃とお花畑王女にそんな真似ができるとは到底思えない。
となると……事実上トリステインを切り盛りしているマザリーニ枢機卿か。
或いは王家に恩を売る為にアカデミーが極秘開発していた可能性もあるが……、まぁ今はそんなことを考えている場合ではない。
「それでその兵器はどのようなものなのだ」
「実物を確認した訳ではありませんが、竜のような空を飛ぶ兵器であったと。
そして親善艦隊を全て沈没させて去って行ったそうです」
「ということは、今その兵器は戦場にないのだな?」
その問いに竜騎士は頷く。
「そうか、では、私自ら竜騎士隊を率いて先行しよう」
「なっ!危険です!親善艦隊を全滅させた兵器を繰り出して来たらどうするのです!?」
「落ち着け大佐。冷静に考えても見よ。
”風石”を消失させるような兵器がそう何度も使えるような代物だと思うか?」
大佐は口ごもった。
(確かに”風石”を丸ごと消失させるような真似をするには控えめに考えても同程度の精霊石が必要とみて間違いあるまい)
「確かにその通りかもしれません」
「であるならば、我が軍を包囲している者どもを蹴散らし、味方を収容して戻るのだ。敵の援軍が来る前にな」
エクトル卿がそう言うも、大佐は頷かなかった。
するとエクトル卿は懐からなにかの書類を出して大佐に渡す。
その書類を大佐が見るとすぐさまエクトル卿の提案を了承した。
(やはり責任を負いたくなかっただけか)
渡した書類には『本作戦の全責任は護国卿エクトルにある』と書かれており、エクトル卿が戦死した場合に帰国した際にこの書類を見せれば共和国政府はこの大佐を護国卿を見殺しにした罪に問えないであろう。
もっとも、戦死する気は毛頭ないが。
「それでここからタルブまでどれほどだ?」
「だいたい30分ほどといったところです」
「そうか、ではそれまで戦線を維持させなばな」
そう言うとエクトル卿は雷竜に跨り、飛翔する。
それに追従する形で他の竜騎士達も竜に跨って飛翔し、一路タルブへ急いだ。
思ったより会話シーン長くなった。次話でようやく戦闘回か?
まぁ、サイトとルイズは既に戦場から離脱してるので、残っている面子と言えば……