風の復讐譚[更新停止]   作:kuraisu

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なんか戦闘描写がイマイチだなー


第12話

漆黒の雷竜を操り、エクトル卿はタルブの戦場へと降下して電撃のブレスで味方の前に広がっていたトリステイン軍の兵の集団を黙らせた。

 

「な、なんだ!?あの黒い竜は!」

 

ヒポグリフに跨る衛士が悲鳴のように叫んだ次の瞬間に、雷竜はヒポグリフに噛みついて肉を引きちぎった。

 

絶命したヒポグリフから飛び降りようとした衛士はエクトル卿の”マジック・アロー”の餌食となった。

 

その様子を遠くから見ていたマンティコア隊の衛士達が驚く。

 

「一瞬、凄まじい強さですな」

「竜もそうだが、あの乗り手も只者ではない」

「しかし、あの竜はいったい……?」

 

やや混乱ぎみの部下達をマンティコア隊隊長のド・ゼッサールは一喝した。

 

「混乱している場合か!あの竜を討つぞ!」

 

「し、しかし隊長。あんな黒い竜を私は見たことがありません!」

 

半ば恐慌状態に陥っている部下の言葉に、ゼッサールは落ち着かせる必要があると判断した。

 

「聞いたことがある。アルビオンの高地地帯(ハイランド)に黒い風竜の亜種がいると」

 

「どのような竜であるか、教えてもらえますか?」

 

「風竜でありながら、その凶暴性は火竜山脈の火竜にも勝るそうだ。

噂では決して人に飼い馴らされることはないと言われていたのだが……

まあ、話半分にしても油断ならん相手であることに間違いない」

 

ゼッサールの言葉に、隊員達は警戒心を強めた。

 

そしてゼッサールの号令に従い、マンティコア隊の衛士が5名続いた。

 

そして6方向から同時に雷竜に火や風の魔法攻撃を仕掛けたが、エクトル卿は”エア・シールド”でそれを防ぎ、雷竜は正面にいた敵に向けてブレスを繰り出した。

 

攻撃をかけられた衛士は咄嗟に防御しようとしたものの、詠唱が間に合わずに乗っている幻獣ごと真っ黒になって地面に落ちた。

 

が、マンティコア隊はそれに動じることなく次の攻撃を繰り出す。

 

雷竜の羽を狙った攻撃で、僅かに飛翔力を失ったが、エクトル卿は振り向きざまに”エア・スピアー”で隊員の一人を攻撃した戦線離脱させたが、残っている4人は構うことなく追撃を続ける。

 

仲間を失っても一糸乱れぬ連携にエクトル卿は内心舌を巻いた。

 

(これではとても地上の支援ができぬ)

 

戦闘に指揮を見せない程度に戦場全体に意識を向ける。

 

現在タルブにいるアルビオンの竜騎士十五騎の内、実に十二騎がトリステイン国王直属の近衛衛士隊の相手に必死で満足な地上支援を行えていなかった。

 

だが、竜騎士は一騎で数百の兵に匹敵する火力を誇る戦力単位。

 

三騎が地上の支援を行っているお蔭で押される一方だった地上の戦いは拮抗しはじめていた。

 

これならばしばらくは戦闘のみに集中しても地上に落ちた空軍も暫くは持つとエクトル卿は判断し、襲い掛かってくるマンティコア隊を迎え撃った。

 

残っている4騎はかなりの手練れであるようで、なかなか隙を見せず、相互に連携しつつ徐々に徐々に雷竜の翼にダメージを与えることで雷竜を飛べなくさせようとしているようであった。

 

このままでは自分が負けると悟ったエクトル卿はマンティコア隊との距離を取ろうとする。

 

翼にダメージが蓄積しているとはいえ、風竜の亜種たる雷竜とマンティコアでは雷竜の方が飛行速度が速い。

 

しかしマンティコア隊もそれは承知しており、雷竜の進行方向に魔法を撃つことで牽制し、中々全速力を出せなかった。

 

それでも雷竜は機動力が売りの風竜の亜種。

 

それを巧みに操り、マンティコア隊の魔法の雨を避けて距離を離していく。

 

目についたグリフォンに跨った衛士に向かって突進させ、すれ違いざまに杖剣で衛士の首を飛ばす。

 

そしてグリフォンに飛び乗り、グリフォンを操る。

 

幻獣と言っても、余程年齢を重ねていない限り、知能は馬とさほど変わらないため、グリフォンは訓練で教え込まれた通りのエクトル卿の指示にそのまま従った。

 

雷竜とグリフォンではグリフォンの方が小回りが利き、マンティコア隊を相手取るにはこちらの方がよいとエクトル卿は判断したのだ。

 

事実、そこから怒涛の勢いでエクトル卿はマンティコア隊を圧倒し始めた。

 

常に敵部隊の死角に入り、1騎、また1騎と討ち取っていく。

 

「貰った!」

 

攻撃直後で無防備になっているエクトル卿の背後から”魔法の矢”で貫こうと詠唱を始める。

 

「馬鹿ッ!後ろだ!」

 

ゼッサールが叫んだ直後、攻撃しようとした衛士は雷竜の電撃に幻獣ごと貫かれて絶命する。

 

雷竜の主であるエクトル卿が使い魔の繋がりを通じて命じていたのだ。

 

周りがほぼ全滅したゼッサールは冷や汗を垂らす。

 

(単騎で我が隊をここまで翻弄する傑物はカリン隊長だけだと思っていたが)

 

先代のマンティコア隊隊長の姿をゼッサールは脳裏に浮かべた。

 

まぁ、先代と模擬戦をした場合、空中戦で負けたというよりは災害の中にマンティコア隊が突っ込んだと言うべき事態になったので、純粋に空中戦でマンティコア隊がここまで劣勢になったのはゼッサールが知る限り、今回が初めてだ。

 

そう思うと素直に敵への称賛の念が湧きあがってくる。

 

そして全速で敵に向かって突進させた。

 

エクトル卿は長期戦は不利と見て、短期決戦を仕掛けてきたと判断した。

 

「面白い」

 

エクトル卿もゼッサール目掛けてグリフォンを突進させる。

 

そして遠距離魔法の射程圏内に入った瞬間――

 

「ぬ?」

 

ゼッサールはマンティコアから飛び降りた。

 

予想外の行動にエクトル卿の動きが一瞬止まる。

 

その一瞬を見逃さず、ゼッサールは落下しながら”エア・スピアー”を唱え、エクトル卿の左肩を貫いた。

 

「ぐっ!」

 

魔法の衝撃でグリフォンの背から叩き落とされた。

 

すぐさま使い魔の雷竜を呼び寄せ、落下する自分を拾わせてゼッサールを殺そうとしたが、既にゼッサールは距離をとって味方の衛士達と合流を果たしていた。

 

ここで追撃しては今度はこちらが不利であると考え、戦場全体を見渡した。

 

既に高速艦三隻が戦場に到着しており、地上の兵の回収を行っており、竜騎士達が追撃をかけてくるトリステイン軍を蹴散らす形となっている。

 

それを見て、エクトル卿も潮時と考え、高速艦の護衛に回り、アルビオンへの帰途についた。

 

「……この戦いは始まりから終わりまで予想外の連続だ」

 

トリステイン軍を率いていた王女アンリエッタの指揮を補佐(温室育ちのアンリエッタに戦術能力はまったくないので、トリステイン軍を事実上の指揮官と言ってもよい)をしていた宰相マザリーニはホッとしたように呟いた。

 

ゲルマニアと同盟関係成立させ、アルビオンとの不可侵条約を結び、戦争回避に全力を尽くしてきたがそれを嘲笑うようにアルビオンは不可侵条約を破って侵攻してきた。

 

即座に王宮で王女臨席の御前会議を開いたが、有効な打開案がまったくでなかった。

 

慎重派はアルビオン側のトリステイン艦隊がアルビオンの親善艦隊を砲撃したという”誤解”を正し、軍を撤退させるべきと主張し、軍の者達は援軍に三週間もかかるとかいう戯言を述べるゲルマニアに再度援軍を要請し、援軍の到着と同時に反攻に出るべしと主張した。

 

マザリーニはアルビオンの言い分を馬鹿正直に信じるような愚か者ではなかったが、艦隊が全滅してる上にゲルマニアの援軍もなしに戦えばトリステインは成す術もなくアルビオンに敗北することくらい容易に想像がついた。

 

ゲルマニアの魂胆は見え透いている。他国領土を守るのに自国の兵を失うのが惜しいのであろう。

 

だからトリステインを一度アルビオンに制圧させ、ゲルマニアは”解放軍”としてトリステインにいるであろうアルビオンの占領軍を倒して、トリステインを併呑したいのだ。

 

ゲルマニア皇帝アルブレヒトは王女アンリエッタの婚約者である。トリステインを統治する正統性としては十分だ。

 

仮にトリステイン軍がアルビオン相手に3週間持たせたとしても、ゲルマニアはなにかと理由をつけて援軍を寄越さないだろう。

 

となれば、トリステインの半分をアルビオンに無抵抗で渡すことになろうとも、国の命運を保とうとマザリーニは外交でアルビオンと戦おうと考えた。

 

しかしそこでアンリエッタが「自国領土が他国が侵略してるのに、貴方たちは延々と会議を続けているだけ、それでも国の重鎮か!」と激怒し、自ら軍を率いると宣言してしまった。

 

殆ど期待していなかった王者としての振る舞いに、マザリーニは絶望的なまでに勝ち目がないと承知の上で、アンリエッタに従った。

 

ここで王女の命に従わないなど、臣下としてありえないからだ。

 

そしてタルブに向かいアルビオン軍と戦い始めたのだが、やはり勝ち目が見えぬ。

 

一方的にアルビオンに押されていたが、”不死鳥(フェニックス)”が戦場に現れ、精強を誇るアルビオン竜騎士団を全滅させ、”光の玉”を吐き出してアルビオン艦隊の全ての艦をあっさりと沈めたしまった。

 

不死鳥(フェニックス)”は艦隊が航行不能になるのを見届けると戦場を去ったが、あまりの意味不明な事態に混乱しているアルビオン軍はトリステイン軍に押され始めた。

 

これなら勝てると思ったその時だった。

 

アルビオンの竜騎士が十数騎援軍に来て、戦況は膠着状態に陥り、空軍士官を数百名救出して去って行ってしまった。

 

”空の覇者”と呼ばれる程の強さを誇るアルビオン空軍の士官の帰還を許したしまったのは、痛手であるがひとまずはトリステインは自国を守護したこととなる。

 

「この一件が終わったら早々にゲルマニアを批難して、もっと対等な同盟関係を結ばせねばな。

少なくともトリステインには単独でアルビオンの侵攻を跳ね返す程の実力があるのだとゲルマニアは誤解するだろから向こうから言ってくる可能性もあるな」

 

アルビオンを撃退した直後にもかかわらず、先の事を考えねばならぬマザリーニであった。

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