風の復讐譚[更新停止]   作:kuraisu

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つい最近、『全裸の王様』なる作品群を拝見した。
うん。酷いww


第14話

ハヴィランド宮殿の会議室――

 

タルブの敗戦を受け、閣僚会議が開かれようとしていた。

 

「大失態でしたな皇帝閣下」

 

口火を切ったのは財務卿グレシャムである。

 

「トリステインの策謀を見破り、敵の艦隊を全滅せしめたまではよかったのですが、こちらの親善艦隊もまた全滅しました。これでは長期的な戦をするより他ありませんが、国庫に五万の大軍を維持できるほどのお金はありません。となれば増税するしかありませぬが、そうなれば平民から怨嗟の声があがりましょう。ただでさえ、2年渡る内乱の重税に民は苦しんでいたのですから」

 

グレシャムの指摘に閣僚達の半数が頷く。

 

「すぐにトリステインに使節を派遣し、事態の収拾をはかるべきかと考えますが」

 

「しかし、これは悪逆なる侵略者に対する正義の戦争だ。民を苦しませるからと言ってやめられるものか」

 

己の持論に反論してきた内務卿ランカスター公を睨みつける。

 

「ほほう。では内務卿は民に怨嗟の声があがろうと構わぬと仰せか」

 

「そうは言っておらん!我々どれだけ寛大な心を持って歩み寄ろうとも、トリステイン側の侵略の意思が明らかな以上、無意味だと言っておるのだ!」

 

「トリステインとて艦隊を失ったのだ。妥協の余地はあろう!」

 

財務卿と内務卿の言い争いが始まったが、クロムウェルが片手を上げて制すると両者は黙り込んだ。

 

「グレシャム君の言い分はもっともだが、艦隊の再編を急がねばならぬ今、ある程度の増税はやむをえまい」

 

クロムウェルの言葉にグレシャムは悔しそうな顔をして黙り込んだ。

 

それを見て、軍務卿ホーキンスが声をあげる。

 

「今回の侵攻作戦の失敗により、空軍全艦艇の実に4割を喪失しました。

これを再建するとなると、かなりのお金がかかります。また艦艇を揃えたとしても一線級の戦力にするには最低でも三年。二線級で妥協するにしても、一年は欲しいところです」

 

その予測に反論したのが、法務卿ヨーク伯だ。

 

「三年、二線級でも一年は必要だと?

トリステインはゲルマニアと同盟関係にある。

つまり空軍はゲルマニアが、陸軍はトリステインが、という形で遠征軍を編成し、明日にでも攻め込んでくるかも知れぬというのに悠長な!」

 

「悠長と言われるが、どれだけ有能な教官をつけてもそうなるでしょう」

 

「ほう。歴戦の勇将であられるホーキンス将軍がやる前から不可能などという戯言をほざくとはな。よる年波には勝てぬか?」

 

「精神論だけで現実に対処できると仰られるか?」

 

ホーキンスは辟易した様子でそう言った。

 

が、それは更にヨーク伯の怒りに油を注いだらしく、脂肪を激しく波打たせながら叫ぶ。

 

「そうは言っていない!トリステイン・ゲルマニアの脅威に対処するためにアルビオン軍の力が必要だと言ってるのだ!それともホーキンス将軍は空軍の再編すらせずにトリステイン対抗できるとでも言うのか!?できはしまい!故に早急に残った艦隊二十隻あまりでトリステイン・ゲルマニア連合軍に対処する戦略を練るのだ!!」

 

無茶を言うなとホーキンスは思った。

 

君主制から共和制に変わっても、相変わらず政治家という人種はいつも軍事の常識を無視して軍に無理難題を押し付けてくるようだ。

 

ホーキンスもテューダー朝の王政に思うところあって革命に加担することを決断した身の上であるが、先のクロムウェルの陰謀や今回の政治家の態度を見て、早くもその決断を後悔しはじめていた。

 

「落ち着きたまえ。ヨーク君」

 

「しかし、閣下。一年も訓練させる時間の余裕があるわけがありません」

 

「その余裕があると言ったら?」

 

予想外なクロムウェルの言葉に閣僚達の視線が集まる。

 

「エクトル卿。タルブにはゲルマニア軍は存在しなかった。そうだね?」

 

「仰る通り」

 

「ということは、トリステインとゲルマニアの同盟関係は強固なものではないということだ。

両国が連合して我が国に攻め込んでくるにしても、相互不信でそう簡単に話はまとまるまい。

最低でも半年程度は協議に時間を費やし、このアルビオンに攻め込んではくることはできぬ」

 

クロムウェルの推測に、閣僚達から感嘆のため息が漏れる。

 

「しかし、それでも半年。半年では練度を保障しかねますが……」

 

「今回の敗戦は情報収集を怠った指導部である貴族議会、ひいては余の責任だ。

で、あるからには時間稼ぎの策謀を巡らせるのは余の義務である」

 

その宣言に閣僚達は驚いた。

 

国家の指導者が敗戦の責任は自分ら指導部にあると宣言したのだ。

 

驚かぬはずがない。

 

「時間稼ぎと閣下は申されるが、いったいどのようにしてそうするおつもりで?」

 

「君も知っているだろうが、かの”聖女殿”がこの度めでたくトリステインの女王になったそうだ」

 

エクトル卿は頷く。

 

あのタルブ攻防戦でアンリエッタは自ら陣頭指揮を執り、優勢なアルビオン軍に対して”フェニックス”を召喚して、トリステインを勝利に導いたことから”聖女”と民に讃えられ、貴族や民の期待に応える形でトリステインの王位につく運びとなったということは既に周知の事実である。

 

というのも、トリステイン政府が派手に諸国に喧伝しているからだ。

 

アンリエッタが陣頭指揮をとったということは、ラヴレターの一件を知るクロムウェルやエクトル卿を驚かせた。

 

私情優先で政治感覚皆無というのが、アンリエッタに対する評価であったからだ。

 

が、どうやらそれもいくらか修正する必要があるとエクトル卿は感じていた。

 

クロムウェルは士気高揚のために周りの貴族に引っ張り出されたのだろうにと切って捨てていたが、自ら陣頭指揮をとったということは、アンリエッタはそれなりの軍事能力を有しているのかも知れない。

 

となれば、あの風石を消し飛ばした魔法兵器も、アンリエッタの指示で開発されたものかも知れず……

 

そう考えれば、問題はあれどまったくの無能というわけではないのだろうとエクトル卿は考えたのだ。

 

最悪、アンリエッタが恋人関係の事になると理性が焼き切れるだけの名君という可能性さえありうると。

 

そういうふうにアンリエッタの評価を改めたエクトル卿である。

 

「そう。その”聖女”にお祝い申し上げるため、この宮殿に行幸願おうと思うのだ」

 

「それは……トリステインの女王を誘拐するという意味でございますか?」

 

ヨーク伯の問いにクロムウェルはほほ笑む。

 

「最悪の場合はな。だが、できれば自主的に我が国に亡命してほしいものだ」

 

そう言って指を鳴らすクロムウェル。

 

すると奥の扉からウェールズ皇太子が入室してきた。

 

閣僚達はウェールズが悔い改めて、皇帝の親衛隊に所属したという噂は聞いていたが、本人を目の前にするのは初めてだ。

 

クロムウェルが座っている椅子の横まで歩いていき、彼に跪く姿を見ると亡国の王子というものは、こうも誇りを失い、己の身を守る為にかつて叛逆者と蔑んだ者に忠誠を誓えるのかとある者は嘲笑し、ある者は侮蔑する。

 

「彼にトリステイン女王を亡命させるよう説得させようと思うのだ」

 

その言葉に閣僚達は首を傾げた。

 

なぜウェールズにそんな役をやらせるのかと皆疑問に思ったからだ。

 

「閣下、なぜそんな仕事を彼にやらせるのです?そんなことより彼の生存を公表し、政治宣伝に使った方が効果的かと考えますが……」

 

皆の思いを代表して、ランカスター公が問いかけた。

 

するとクロムウェルは声をあげて、笑った。

 

「確かにそうかもしれぬ。

しかし、ウェールズ君はあの女王陛下と恋仲なのだよ。そうだねウェールズ君?」

 

クロムウェルの言葉にやや驚く閣僚一同。

 

「ええ。その通り。ですから彼女の事を私はよく知っている。

おそらく彼女はかつて私がそうであったように、皇帝閣下の理想を彼女は理解していないのだ。

真にレコン・キスタの理念を彼女が理解すれば、彼女は必ず協力してくる。

だから私に彼女の説得を任せて欲しい。始祖の御心に沿う道を歩むは王家の本道だ」

 

ウェールズの言葉に、閣僚達は冷ややかな視線を向ける。

 

自分の身を守る為に功を立てようと必死になっているようにしか見えなかったからだ。

 

「うむ。ウェールズ君に一任する。皆もそれでよいな?」

 

クロムウェルの確認に、閣僚達は頷いた。

 

こうして会議が終わり、エクトル卿も他の閣僚とともに退室しようとしたが、クロムウェルに呼び止められた。

 

「閣下。いったい何用ですか?」

 

「いや、君の鉄騎隊アイアンサイドにいる兵を借りたいと思ってね」

 

「なぜです?」

 

「私たちは商船に偽装してトリステインに潜入しようと考えているからだ」

 

その問いに答えたのはクロムウェルではなく、ウェールズだった。

 

「二度と俺の視界内に入るなと前に言ったはずだが?」

 

「僕個人としては破るつもりはなかった。だけど皇帝閣下の命とあらば仕方がない」

 

軽く舌打ちするエクトル卿。

 

エクトル卿としては、物理的に二度と喋れないようにしてやりたいのだが、クロムウェル皇帝閣下の虚無とやらで動いているであろうウェールズの死体の首を斬り飛ばしても無意味であると重々承知しているので自制する。

 

「皇帝閣下の助力があれば、商船ひとつ手配することなど容易であろう」

 

「ですが、アルビオン人ばかりの商船が何日もラ・ロシェールに停泊していては周りに不信がられるでしょう」

 

「……なるほど」

 

ハルケギニアはそれぞれの地域で多少の差があるとはいえ、殆ど同じ言語が使用されている。

 

そんなハルケギニアにおいて、異彩をはなっているのがアルビオン語である。

 

アルビオンは他の国と陸続きではなかったため、言語が奇妙な発展を遂げた。

 

その結果として、アルビオン語は他のハルケギニア諸国の言語と比べ、かなりイントネーションがかなり違う。

 

いわゆるアルビオンなまりというやつである。

 

これを矯正するのはかなりの難事業であり、一朝一夕でどうにかなるものではない。

 

「要するに他国人の部下を貸してほしいということか」

 

「その通りだ」

 

「わかった。ディッガーを貸そう」

 

「よいのかね?ディッガー君は君の右腕だろう」

 

エクトル卿は頷く。

 

「構いません。それにあいつはガリア人です。

双子の王国と呼ばれるトリステインに紛れ込んでも、バレはせん。

それにあいつは引き際を弁えており、万一の事態にも対応できるであろうからな」




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