風の復讐譚[更新停止]   作:kuraisu

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第2話

ニューカッスルを攻略すべく揃った貴族派の天幕にエクトル卿が入るとすぐさま高級将校を招集し、作戦会議を開いた。

 

「さて、集まってもらったのは如何にしてあのニューカッスルを落とすか方策を考えるためだ」

 

貴族議会により、ニューカッスル攻略の総指揮を任されたエクトル卿が宣言する。

 

それに対し、まず諸侯軍を率いている初老の貴族がまず発言を求めた。

 

「そうは言われても、このまま圧力をかけ、王党派を降伏させるより他ないのではありませんか?」

 

「なにを言う。そんな悠長な真似をしているからニューカッスルを包囲して早数か月もたつというのにいまだ攻略できんのだ。

頭の固い王党派の連中を黙らせるには殺すよりほかはない」

 

天幕内にどよめきが広がる。

 

「閣下!王族を根絶やしにするような真似をすればロマリアの介入を招きかねませんぞ!」

 

「――介入してきたら、どうだというのだ?」

 

初老の貴族は絶句した。

 

「よもやとは思うが、貴様は自覚していないのか?

我らはハルケギニアの秩序そのものに喧嘩を売っておるのだぞ。

ロマリアを含め、既に他の専制国家と我らは潜在的な仮想的だ。

そんな状況でたかが王族の血脈を断つことに何の躊躇いを覚える?」

 

絶対零度の視線で初老の貴族を睨みつける。

 

初老の貴族は心情的には王党派だった。

 

しかし周辺の領主全てが貴族派になり、領民の安寧のため仕方なく貴族派に属した。

 

そのため、王族を生きながらえさせるために貴族が幼子の時から聞かされるロマリアの権威を武器に決戦を遅らせてきたのだ。

 

少なくとも、今までは有効だった。

 

今まで貴族議会が送り込んできた貴族達には。

 

しかし、目の前の仮面の男にロマリアの権威など全く通用しない。

 

ロマリアの名を出しても鋭い眼光が少しもゆるくなっていないのだから。

 

それどころか更に鋭くなっていることに気づき、初老の貴族が青い顔をして座ると、エクトル卿は軽く舌打ちをした。

 

「それで具体的な作戦案についてだが、ディッガー資料を渡してくれ」

 

ディッガーが作戦内容が書かれた資料を配布する。

 

その作戦案は極めてオーソドックスなものだった。

 

空軍の砲撃により、城壁を破壊して陸軍を突っ込ませ、占領するというものだ。

 

「作戦発動は明朝だ。なにか質問のあるものはおるか?」

 

エクトル卿は手をあげた空軍提督に視線をやった。

 

「なんだ。ボーウッド提督」

 

「降伏勧告はしないのですか?」

 

「……話を聞いていなかったのかボーウッド提督。

頭の固い王党派の連中を黙らせるには殺すよりほかはないと言った筈だが?」

 

エクトル卿の目に冷たい光が走り、手を杖剣の柄にやる。

 

元々、ボーウッドに対して良い感情を持っていないため、戯けた事を抜かすようであれば、即座に斬り捨てるつもりだった。

 

ボーウッドは額に冷や汗を流しながら言い募る。

 

「念のため、『明日総攻撃を開始する』と前置きを置いた上で最後の降伏勧告を行うべきです」

 

「王党派の連中は決死の覚悟で城に立て籠もっておるのだ。

奴らは既に死兵。そんなことで降伏するなど到底思えんが」

 

「だとしてもです!

最後まで王族に対して寛大であろうとしたが、偏狭な王族は理解しなかった言い張ることができます」

 

気に入らなかったが、ボーウッドの言葉に一理あったので、エクトル卿は考え込んだ。

 

「好きにしろ」

 

最終的に、どの道ジェームズの首をとることができるのであれば別にどうでもよいと判断し、投げやりな答え方をした。

 

そしてふと正面決戦をすると見せかけるのであれば、少数で裏から突入してジェームズ一家の身柄を拘束も可能ではないかとエクトル卿は考えた。

 

「ブロワ侯爵」

 

この考えをボーウッドに聞かせる気にはならなかったのでエクトル卿が信を置く空軍の提督の名を読んだ。

 

「ハッ、なんでしょうか?」

 

「貴下の小艦隊を借りたい。ありえんこととは思うが、死兵というのは時としてとんでもない力を発揮するものだからな。いざという時のためにボーウッド提督と連絡をとるため、貴下の小艦隊を本陣においておきたい」

 

「私自身は構いませんが……」

 

ブロワ侯爵は横目でボーウッドを見る。

 

するとエクトル卿もボーウッドを見た。

 

「構わんよな、ボーウッド提督?」

 

「……はい」

 

小艦隊とはいえ、勝手に空軍の配置に口出ししてきたのにボーウッドは思う所がないわけではなかったが、おとなしく受け入れた。

 

「決戦は明朝。今夜はたっぷりと睡眠をとり、決戦に備えるがよい」

 

エクトル卿はそう宣言するとディッガーと共に自分に与えられた天幕へと消えた。

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