……黒幕って言い方が悪かったのかな。
捜査は周りを納得させることができる推論がでるところまでは進んだ。
暗殺犯にオードラン男爵家の紋章が刻まれていたことから、オードラン男爵に暗殺犯との関係を問うたが「そんな奴は知らない」の一点張り。
そこでオードラン男爵についてきた従者やメイドなどに聞き込みを開始したところ、オルレアン派に所属していたために所領や利権の一部を王家に取り上げられた際に、給金を払えなくなったのでオードラン家にリストラされた警備兵の一人でロダンという名前であることが分かった。
王宮に下働きとして雇われたのは二年前であり、給仕長が証言するところによれば「ロダンは寡黙だが、真面目で優しく、お願いを断れない力持ち」ということで周りから評価されており、便利な人物として下働きだけでなく、けっこうな数の宮廷貴族にも非常に重宝されていたとか。
それゆえ、ロダンは寡黙だから誰にも喋らないだろうと油断した宮廷貴族が雑用を押し付ける為にけっこう王宮の億部まで連れ込んでいたという噂もあり、これを事実とするならロダンは王宮の情報を探るスパイであり、経歴から考えてオードラン男爵家のスパイというのがもっとも筋が通る。
動機についてもオードラン男爵は常々現王政の不満を漏らしていたことが従者の証言で明らかになり、男爵が暗殺を企む理由は十二分にあるし、いまだに幾人かの元オルレアン派貴族とも連絡をとっていることから反乱を企んでいたのではないかと推測できる。
だとすると、今回の暗殺の目的はジョゼフ派が牛耳るガリア王国とアルビオン王国・ロマリア連合皇国との関係を引き裂き、その隙をついて復権しようとしたオードラン男爵、ひいてはオルレアン派残党の陰謀と説明することができる。
都合のいいことに暗殺犯を目撃したオードラン男爵の叫びが周りの混乱を呼んだという状況を考えれば、その説明は国内貴族達にとっては違和感なく受け入れられることになるだろう。
(そんなふざけた報告を無能王にできるかッ!)
そう内心で激しく叫んでいるのは捜査の責任者である、カステルモールである。
カステルモールにとってその結論は断じて認めてはならないものであったのだ。
彼にとって現王ジョゼフ一世とは”弟から冠を奪った簒奪者”であった。カステルモールは戴冠前にジョゼフは既に皇太子に冊立されてはいたが、それでも無能と国内外から嘲られていたジョゼフより、周囲からの人望に篤い優れた為政者であったオルレアン公こそがガリアの王座に座るべき人物だったのだと心から信じるオルレアン派の一員だったのである。
そしてなにより……
「お前は、まだ若いのに見どころがある」
大した生まれでもない、下級貴族出身の自分をオルレアン公がその一言でとりたててくれた恩をカステルモールは忘れていなかった。もしオルレアン公に出会わなければ、二十半ばにして騎士団長などという大任を任される身になることはなかったろう。それだけに彼の亡きオルレアン公に対する忠誠心は強かった。
無論、そんなことを公言してしまえば確実にジョゼフ派に粛正されるので普段は王家に忠実な騎士を演じながら、いつか暴君ジョゼフを討つ為に自分と同じ志を持っている者を自然な状況で部下に加え、逆にジョゼフに忠実な部下を全く関係性がなく説得力のある理由を見つけ出しては移動させたりした。
カステルモールの細心の注意を払った努力の結果、四年の月日を経て、約七十名で構成されている東薔薇花壇警護騎士団が、オルレアン公に対して表に出せぬ忠誠を誓う者のみで構成される騎士団へと秘密裏に変貌を遂げていた。
国王を守護する為の花壇騎士団のひとつがそんな劇的ビフォーアフターを遂げたというのに、盤上遊戯に耽ってる人物以外に気づかれていないあたり、カステルモールの隠蔽能力の高さを伺える。
とにかく、そんな彼らにとって元オルレアン派貴族が首謀者であると報告するのは自分の首を絞めるに等しいことであった。なぜならどの程度かはわからないがこの事件を理由に元オルレアン派貴族の冷遇がより酷くなることは容易に推測できるし、そうなればその大義名分を無能王に与えた東薔薇騎士団はオルレアン派の信頼を失うであろう。
そうなれば現在他国に亡命されている亡きオルレアン公の忘れ形見、シャルロット様が祖国に正義を齎すために戻ってくるときに東薔薇騎士団はシャルロット様に協力することが難しくなってしまうのだった。
そのため、オードラン男爵が首謀者と決めつけて事件を切り上げるというわけにはいかなかった。元々暗殺犯がオードラン男爵家の紋章付きボタンがついた服で暗殺を決行してる時点で、誘導めいたものを感じるのである。
そこでカステルモールは信頼する副団長アルヌルフにオードラン男爵を尋問させた。アルヌルフはカステルモールとは親子ほど歳の離れた人物で、オルレアン公がカステルモールを見出さねば年功序列に従って彼が団長となっていたかもしれない。
しかしそのことを全く気にせずにカステルモールの有能さを認め、その補佐ができるほどよくできた人間であり、温厚で思慮深いことから自分が罪人だと疑われて不機嫌な相手を宥めるのは彼の得意技のひとつであった。
アルヌルフの根気強く丁寧な尋問によってオードラン男爵はリュティスに入城してからの行動を細かく説明した。オードラン男爵は余裕をもって園遊会開始の二週間前にリュティスに到着しており、資金に余裕のある何人かの貴族が王家主催の園遊会の前祝と称して行なっていた小規模なパーティに参加したりして日数を潰していたという。
オードラン男爵は参加したパーティの主催が誰で、どんな内容のパーティだったかを詳細に覚えていた。その数多くのパーティで東薔薇騎士団の面々が注目したのは、園遊会の数日前にシルヴァニア辺境伯が主催したという仮面パーティである。
仮面パーティ自体は別に珍しくない。顔を隠して互いの身分も素性も気にせずに談合を楽しむというのはハルケギニアの貴族社会では広く浸透しているものだ。『仮面パーティで下級貴族が、そうとしらずに一国の王女や王子に恋をする悲恋物』とかは貴族向けの小説、劇作で使い古されたものと聞けば、ある程度理解できるだろうか。
だから仮面パーティだからと言って注目する理由にはならないのだが、その仮面パーティで話された内容が問題であった。
「現状への不満暴露大会が始まってね。皆盛り上がったものさ。
シルヴァニア辺境伯は今の王政府は辺境をもっと気にかけてくれないのか。ロベスピエール三世陛下の御代に整備された国道の舗装が崩壊ぎみで事故が起こりかねないと散々報告しているのだがいまだ返事すらこないと。今の王政府は仕事をしているのかと怒り狂っておられた。いつかとんでもない振り戻しに見舞われることになるぞと。
ベルナールは陛下の戯れでド素人の団長に仰がねばならない屈辱を長々と語っていたな。団長に怒りをぶつけようにも、その団長が望まぬ人事であると不満を抱いてるのが目に見えてわかるから発散できずに屈辱をため込む一方だと。だから陛下に直訴をしたら、受け流されてしまったとも言っていたか。……園遊会の時にその団長がモリエール夫人のことだと知ってとても驚いた。まさかその団長が女性だとは思っていなかったのだ。
サン=ジュストは今の陛下はこの国をどのようにお導きになるのか示してはくれないのか。派閥が乱立して混沌としている国情を理解してくだされば、皆がそれを待ち望んでいるのはわかるだろうに。皇太子時代から良い噂がなかったとはいえ、ここまでとは嘆かわしいものだと。
モンドンヴィル伯爵は空海軍の急激な拡充に不安を示しておられた。先日のアルビオンとの戦争前にも新教徒過激派によるテロの餌食にあって、参戦前に両用艦隊が機能不全に陥る無様を晒したのだから、今後はもっと水兵の採用基準を厳格化すべきではないかと。それを陛下に説明するのが艦隊司令長官の役目だろうにあの愚将めとか……
サルダーニャ侯爵は昨年領地の一部を王家に召し上げられたことがとても不満だと。ガリアという王国を強大にするために寄越せというのならまだ理解できるが、召し上げられた領地は王国の発展になんの必要性もない。ただ我が家に対する嫌がらせだ。いつか報いを受けさせてやると怒りを露わに叫んでいましたな。先祖に申し訳が立たない。絶対にいつか神罰をくらわしてやるとも言ってた気がします。
こんな普段ならしない話題をしたせいか、意気投合したので一緒に園遊会で行動していたんだ。
え? 自分が何を言ったかって? それはついた派閥が負けたからってここまで冷遇されなきゃならないのかとね。それといつか今政権握って自分を嘲笑っている奴にいつか逆襲したいとも。……言っておくが、それを理由にして暗殺を起こしたりするほど自分は短気ではないからな」
最後らへんになってどれだけやばいことを言っているのか自覚したのか、オードラン男爵は真っ青な顔をしてアルヌルフに釘を刺したが、時すでに遅しである。
オードラン男爵に問い詰めたところ、不満を漏らしたことは今までもあるが明確に逆襲したいと言い切ったのは記憶にある限り、あれが初めてということであったから、オードラン男爵の暴露を聞いた者の誰かが彼に濡れ衣を着せれると踏んで利用したという可能性が浮上した。
名前があがった者の中でベルナールは除外していいだろう。職務でカステルモールはベルナールと何度か顔を合わせたことがあるが、そんな度胸がある人間であるようには見えなかった。腕はいいのだが精神面が気弱に過ぎるのであった。
となると残るはシルヴァニア辺境伯、サン=ジュスト伯爵、モンドンヴィル伯爵、サルダーニャ侯爵の中の誰かだとカステルモールは確信した。無論、なんのひねりもなくオードラン男爵が黒幕という可能性もあったが、カステルモール以下、東薔薇花壇騎士団はその可能性を意図的に無視した。
すぐに東薔薇騎士団は名前のあがった四名を順番に参考人として拘束して尋問室に連れてきた。
「それで私に疑惑がかかっていると?」
トップバッターのシルヴァニア辺境伯が鋭い目つきでカステルモールを見る。
「オードラン男爵が自白したところによると辺境伯は園遊会の二日前に仮面パーティを開かれた。そしてそのパーティの席上で辺境伯は現在の王政府は不甲斐ない、いつかとんでもないことに襲われるぞと発言したとの証言がありますが、間違いないか?」
「一言一句その通りとは言わないが、大筋その通りだな」
「なぜ辺境伯ともあろう人がそんなことを仰ったのだ。不見識な発言とは思わないか。この一件抜きにしても、別件で不敬罪に処されても文句は言えぬぞ」
「国論を論じただけで不見識などと言われてはたまらんわ。第一、仮面パーティを行うことやその席上で現状の不満暴露大会を行うことは事前に陛下に謁見した際に許可をもらっている。その席上、どんな無礼な発言があったても罪には問わぬと確約までいただいている。それでも不敬罪に処されると?」
シルヴァニア辺境伯の言葉に東薔薇騎士団は動揺した。カステルモールはすぐ部下に命じてそんな話が事前にあったかどうかジョゼフに確認させに行かせた。
十数分後、ジョゼフより確かにそんな約束したという有り難い御言葉を戴いた部下が戻ってきて、カステルモールは頭を抱えた。不敬罪という武器で容疑者を脅して自供させるつもりだったのに、完全にご破算である。
「ひとつお聞きしますが、陛下より確約を戴いていたという話は仮面パーティで公言したのですか?」
「言っていないな。陛下の息がかかっていると知れば、本音を暴露してくれないと思ったのでな。全責任は私がとると言って不満暴露大会を始めたな」
「ご協力、感謝する」
カステルモールはそう言ってシルヴァニア辺境伯を解放した。こうなったら実体のない虚像でも不敬罪を武器にして他の容疑者を脅すしかない。ジョゼフから空手形を与えられていたと知らない彼らはその言葉が嘘でしかないことに気づかないだろうからなんとかなるだろう。
自分は演技には自信がある。なんとしてもやってみせよう。そう気合を入れた。
次のサン=ジュスト伯爵はそんなカステルモールの気迫に圧倒されたのか、不敬罪を武器に持ち出すまでもなく素直に自供を始めた。
「陛下に対して悪意を抱いている。それで今回の暗殺を企んだのではないのか?」
「ちがいます。確かにわたしは現王ジョゼフ陛下に対して不満を持っておりますし、言いたいこともたくさんあります。しかし、それを理由にして暗殺を企んだりはしません。わたしは誠実さだけで生きてきたのです。その誠実さのおかげで多くの貴族や領民からの信頼を勝ち取ってまいりました。それを裏切るような真似は神と始祖に誓ってありえません」
「なるほど。ではあなたは誰が犯人だと思う?」
「……仲間を売るようでいやですが、おそらくはオードランかと。園遊会でもうっかり問題発言をしてエドムンド陛下に庇われたりしてました。自ら手を汚さずにロダンに実行させうような悪辣な真似をできるとは思えませんが……、一番疑わしいのは誰かと聞かれますとやはり、そうなるかと」
「だが、仮にロダンがオードラン男爵の手の者とするとずいぶんとお粗末だとは思わないのか。ロダンが着ていた服にオードラン男爵家の紋章があったせいで一番に疑われることになっているのだぞ。仮に、不敬極まるが、陛下の弑逆するなら実行犯に自分の家の紋章など絶対に身につけさせないと思うのだが」
「確かにそうですが……わたしにはなんとも。先ほども言いましたが、オードランはこういうことに向いている性格とは思えませんのでかなりおおざっぱな指示しか出してなかったのでは? それでロダンがいつもの服装のまま暗殺を行ったと……あえて、もっともらしく筋道をつければ、の話ですが」
このように自分でも信じてないような推測を自信なさげに言って終わる、というような展開が数回繰り返されてサン=ジュスト伯爵に対する尋問は終わった。
次に呼ばれたモンドンヴィル伯爵は不機嫌さと反抗心を隠さなかったが、それでもカステルモールの別件で起訴してやろうかという脅しに抗いきれず、渋々取り調べを受ける気になった。
「あなたは空海軍の不手際やその拡充に不満を抱いているそうだな。なぜだ? 空海軍の増強されようとも王政府に所属しておらず、領主でしかないあなたには関係のないことだろう。なぜそんなことに不満を抱く?」
「空軍艦隊司令長官のクラヴィルとはリュティス魔法学校生だった頃の同期だ。良く知ってるやつの不手際となれば文句を言いたくなるのもわかるだろうが。まさか私はそれを理由に陛下の暗殺をはかる馬鹿者だとでも言いたいのか?」
「そういうわけではない。だが、殺人の動機というのは他人には理解しかねるものが多いのも確かだ。だから確かめておく方が賢明だろう」
「なるほど。仕事熱心だな」
「参考までに聞くが、あなたは誰が怪しいと思っている?」
その質問にモンドンヴィル伯爵に腕を組んで、しばらく考え込んだ。
「……今になって考えるとどいつも怪しく思えてくるな。
そもそもシルヴァニア辺境伯があんな不満暴露大会なるものを開いたのが濡れ衣を着せる相手を選別していたように思えるからな。普段から中枢にいないせいで内心どんなことを考えているのか想像もできん。まあ、それだけに当然、全く関係がない可能性もあるわけだが。
サン=ジュストも時領内で司教と対立して血で血を洗う戦乱を起こした奴だ。その司教とバリベリニ枢機卿が絡んでいたら報復としてバリベリニ枢機卿の抹殺を企んだとしても不思議じゃない。ただこの場合、ゲオルグ大使に毒を盛ったのは陽動ということになるが……、そうだとすると他国の人間に毒を盛る意味が分からんな。余計な外交問題をつくるだけだからな。
サルダーニャ侯爵は、不満暴露大会でも言ってたが、領地を召し上げられたのがかなり不満らしい。だからジョゼフ主催の園遊会が原因で外交関係を悪化させ、その責任をジョゼフに追及して勇退をさせることができる宮廷勢力と手を結んでいたら暗殺を企む可能性はなくもないだろう」
「オードラン男爵とベルナール騎士領主については?」
「あいつらはシロだろ。特にオードラン男爵は。でなきゃ暗殺犯に持家の紋章をつけさせるか。まあ、裏を掻いて捜査員は騙されてるんだと言いくるめるほど剛胆な性格ならまだわからんでもないが、オードラン男爵はとても小心者だ。あれは演技でできる小心ぶりじゃない。それにベルナールの方はご同輩であるおまえらの方が理解していそうだが、秩序を重んじる騎士だろう。明確に反乱を起こすならまだしもこんな暗殺に手を染めるとは思えん」
それはカステルモールの推測と同じであった。モンドンヴィル伯爵を退室させた後、カステルモールはそれぞれの領地の状況も考慮に値する材料となりうるかと思い、部下に命じて資料庫から容疑者の領地のデータを持ってくるよう命じた。
次に来たサルダーニャ侯爵は、対応に困った。尋問室に連れてこられるなりカステルモールを睨み付けて
「貴様! フォン・サルダーニャ侯爵を罪人扱いとはいい度胸だなッ! ガリア王国に名だたる名門の当主に対してなんたる非礼! なんたる侮辱! この屈辱は絶対に忘れんぞッ! この一件が終わったら貴様らに相応の報いを与えてやるからなッ! 覚悟しておけッ!!」
「侯爵閣下、わたしたちはあなたの無罪を証明したくてやっているのです。どうかご協力を……」
あまりの苛烈さに、思わずカステルモールは下手にでてしまった。
「ハッ! なに? 無罪を証明? 愚か者めが! フォン・サルダーニャの名を継ぐ者が、あのような真似を行うと本気で思っているのかッ!? 私は国境地帯の領地を治めるという崇高な責務があるのだ! 国内向けに暗殺の策謀を巡らす暇などあるものか! 疑わなくてもよい相手の判別すらつかなぬとは、栄えある花壇騎士団も堕ちたものよなッ!!」
「ッ! 流石に聞き捨てなりませんな。今回の捜査は陛下に徹底して行えと勅命を受けているのです。その捜査に非協力的な真似をするとなれば閣下の進退にも影響がでましょう。それでなくても二日前のシルヴァニア辺境伯主催の仮面パーティで不敬罪と受け取れる発言をしていたと報告を受けているのだ! この一件を抜きにしても別件でヴァルハラにぶち込んでもよいのだぞ!」
「黙れ黙れ黙れッ! 礼節のなんたるかも弁えぬのか! 私はガリア南部をクラディウス治世下のロマリアから奪回した時より、ガリア南部の守護を代々になってきたフォン・サルダーニャの血を継ぐ者ぞ! 反逆するならば堂々と兵をあげて反逆するのも理解できぬか! それにヴァルハラにぶち込むなどと脅しても無駄だ! 不敬罪や監獄ヴァルハラが怖くて国境守護が務まるかッ!!」
「いい加減にしろ! これでは捜査が進まんだろうがッ!」
「それがどうした!!」
怒りのメーターMAXなサルダーニャ侯爵から情報を絞り出そうとカステルモールはあの手この手を尽くしたが、成果はあがらず、人柄の良いアルヌルフに尋問を任せても成果は芳しくなかったのでサルダーニャ侯爵から情報を得るのを東薔薇騎士団は諦めた。
それとほぼ同時に資料室に行かせた部下が戻ってきた。その資料が大量にあったので分担してまとめた結果、現在の調査状況は以下のようになる。
+オードラン男爵
元オルレアン派。ロダンの元雇い主。
本人の言葉を信じるならロダンのことを覚えていない。
気弱な性格であり、暗殺計画に参加していた可能性は低い。
領地の状況はこれとっては特に問題はないが、あえて特筆するとすればド田舎である。
+ベルナール騎士領主
花壇騎士団所属。戦功により領地を賜る。
王家と王国に対する忠誠心は高く、暗殺計画に関わっていた可能性は低い。
領地運営に関しては完全に代官に委任しており、本人は収入源程度にしか把握してない。
+シルヴァニア辺境伯
ガリア東部に領土を持つ。ベルナール騎士領主の領地とは隣接している。
仮面パーティを開いた人物で、これのせいで様々な問題が発生している。
領地の状況はおおむね平穏だが、行方不明者が多く出ていることに苦慮している。
辺境伯側はゲルマニアの人攫いグループが関係しているとみているが、証拠はない。
+サン=ジュスト伯爵
ガリア南部に領土を持つ。
誠実で優しい性格で、仮面パーティに参加していた者達から概ね高評価。
二年ほど前に領内の司教と対立して教会派と領主派の間で戦乱が起きている。
開戦理由は異端審問と称して司教が無実の者を多く処刑したためと王政府に報告されている。
+モンドンヴィル伯爵
元陸軍士官。艦隊司令長官のクラヴィル卿とは魔法学校の同期。
武人然とした性格で、陸軍での評価は高かったようだが士官同士のトラブルで退役。
空海軍の急速な拡充には危機感を持っているようだが、今回の件にかかわりは見られない。
以後、領地運営に精を出しており、そのかいあってか領地は発展している。
+サルダーニャ侯爵
ガリアの南端に領地を持つ名門当主。
暗殺計画の関係者と疑われただけで激怒しており、強烈な特権意識を持っていることが伺える。
だが、それが自らの罪を隠す演技である可能性も否定できない。
本人は厳として認めないが、ジョゼフへの殺意と動機だけは十分にある。
「黒幕」改め、「ロダンに暗殺を命じた人間」はこの六人の中にいます!
なんで黒幕って言い方やめたかっていうと、黒幕が誰か作者がわからなくなったからですwww