まだ結論は出ていなかったが、すでに日が暮れており、今日中に成果を示せと言われていたカステルモールは仕方なく捜査状況を報告すべく、ジョゼフに謁見を申し込んだ。
その申し込みはすぐ受け入れられ、国王の執務室の前に来た。なぜか執務室が騒がしいのでカステルモールは警備兵に困惑の視線を向けたが、警備兵は顎をしゃくって中に入るようしめしたので、扉をノックして入った。
執務室の椅子に座っている円形の机の奥にジョゼフが座っており、机の脇にアルビオン王のエドムンドが座っていたので驚いた。なにか二人で話していたようだ。
「お話中でしたか? お話が終わるまで外で待ちますが」
「かまわんから座れ」
めんどくさそうにそう言って、椅子を勧めるジョゼフにカステルモールは従い、勧められた椅子に座った。
座ったカステルモールをめんどくさそうに見やったエドムンドは、ひとつため息をついてジョゼフに話した。
「例の件についてはまた後日だ。むろん、大枠では同意するが、もっと細部を詰めねば同意するわけにはいかぬ」
「なるほど。帰る時に乗るサン・マロンへ行く時に乗る両用艦隊旗艦の中で詳細を討議するとしよう」
「サン・マロンに用事でもあるのか?」
「視察に来るようクラヴィルから言われていてな。まあ、今回の捜査が済むまでは延期せざるを得んがな」
二人が何の話をしているか理解できなかったが、質問しても答えられないであろうことは察していたため、カステルモールは黙っていた。
「それであのロダンとかいう給仕に暗殺を命じたのは誰か、わかったか?」
「いえ。ですがある程度は絞れましたので、もうしばらく時間をいただきたく」
「もうしばらく? なにをたわけたことを。あの園遊会に参加していた容疑者はそこの白の国の王様を筆頭に他国の有力者がいるのだぞ。そんな者たちを何日も拘束していられると本気で思っておるのか?」
他国の有力者を勝手に拘束してしまえば、その国との外交関係の悪化は避けられない。
それだけでなく国内の有力者のほとんども容疑者であり、彼らを長期間拘束してしまえばガリアの支配体制の空洞化を招くことになる。そうなればそこら中にいる不満分子が好機と見て一斉蜂起し、ガリアは多種多様な勢力が入り乱れる泥沼の内乱時代に突入する可能性もあった。
さすがに王国そのものが崩壊するリスクをおかしてまで、犯人追求を優先しては本末転倒である。
「さきほども申し上げましたが、容疑者はある程度絞れております。拘束を継続するのはこの者たちのみで十分です」
そう言ってカステルモールは脇に持っていた捜査の報告書を提出した。
ジョゼフは報告書を流し読みすると、エドムンドの前に投げた。
エドムンドは眉をしかめたが、ジョゼフの読んでみろというジェスチャーに従い、報告書をジョゼフとは正反対にしっかりと読み、ますます眉をしかめた。
「お気に召さないと見える」
「まあ、一日たらずの捜査であることを鑑みればよく調べて方だとは思うがな」
しかめっ面を浮かべながらカステルモールの捜査能力を評価しつつも、ジョゼフの言葉を否定はしなかった。
「……この園遊会で親しくなった者たちの名が載っているのだ。不機嫌にもなろう」
「それは感心できんぞ。この者たちは、その暴露、なんだったか」
ジョゼフはエドムンドから報告書をひったくった。あまりの無礼な態度にカステルモールは内心冷や汗を流したが、やられたエドムンドはもう諦観の表情を浮かべていた。
報告書にサラッと目を通して、内容を確認したジョゼフは
「辺境伯主催の不満暴露大会で余や余の王政府に対する批判を行っていた潜在的な政敵ともいえる連中だぞ? そんな連中にあなたが通じていたというなら余はこれからのアルビオンとの関係を考え直さねばなるまい」
「少しは王者にふさわしい度量を明確に示したらどうだ。むろん、貴族でありながら王の命令を軽んじ、無視するような輩は容赦なく処刑すべきだが、実害がでないなら許容してやるのが大国の主として正しい姿というべきであろう。まあ、国中に様々な勢力が混在しているのを許容できるほど巨大な器をお持ちのジョゼフ陛下にこんなことを言っても、始祖に説法しているようなものなのだろうがな」
エドムンドの皮肉にジョゼフは大声で笑った。
「随分と余を買い被っておられるようだなエドムンド殿。余は無能王と名高い王であるぞ。ふはははははは!!」
数分に渡り笑いまくった後、ジョゼフはふたたびつまらなそうな表情を浮かべてでカステルモールに向き直った。
「それでおまえはここに書かれている連中、六名の拘束を継続せよというのか?」
「はい」
「我が騎士ベルナールや気弱なオードランはまだしも、他の連中は大きな影響力を持っているのだ。そんな奴らを他国の使者を害した疑いで拘束していれば、無実が証明されたときに文句を言ってくるぞ。特に取り調べに非協力的なサルダーニャ侯爵は絶対になにかしら要求してこよう。まあ、それで真犯人が断定できるというのならともかく、その補償すらないというのではな。この中から適当なやつを犠牲にして王家の面子を守る。それでよいではないか?」
「そ、それでは陛下の誠実さが疑われましょう!」
カステルモールの非難を受けても、ジョゼフは軽くあくびをしただけだった。
「疑われる? くだらんことをぬかすな。逆に聞くがいったいどこの誰が余を信じているというのだ? 国民も、議会も、役人も、貴族も、余のことを内政をさせれば国を傾け、外交をさせれば国を誤る、と平気な顔で嘲るような奴しかこの国にはおらんだろう。ただ権力を求めるがゆえにおまえのように余に不満を抱いているくせに、おべっかを使いこなす恥知らずな野心家どもがこの宮殿に蔓延っておるから、それが表面化しないだけにすぎん」
心底どうでもいいような調子でそう述べるジョゼフの言葉に、カステルモールは体中の血が凍てつくような悪寒に襲われた。
おべっか使いと呼ばれて自分の内心を、オルレアン公に対する絶対の忠誠を、目の前の無能王は見抜いているのではないかと思ってしまったからである。
そんなカステルモールを興味深げにジョゼフはみつめてきた。
なにか言い返さなければやばいと思ったが、言葉を失って口が回らない。
「……お戯れを」
ようやく口に出た言葉はそんなありふれた代物であった。
しかしその言葉を聞いて数秒すると、ジョゼフは興味を失ったように頬杖をついて姿勢を崩した。
「少し話がそれたな。とにかく今日までだ。日が昇るまでに首謀者が見つからんようなら、こちらで首謀者役を選定する。ああ、お前が首謀者役をやりたいというなら考慮してやるぞ」
非情な言葉だが、カステルモールは内心その切り返しに安堵していた。
彼としては自分の正体を追及されるほうがよほど恐ろしいことであったからだ。
だからこそ、彼はさきほどのジョゼフに感じたのはただの錯覚だったのだと思い込んだ。
もし薄々であれ、自分の忠誠の在処に気づいているのならなんの行動もおこさないなどありえないからだ。
先ほどの妙に見識があることを言えたのは、単純に思いつきが口にでたというだけなのだろう。
そんな風に考えていると、執務室のドアがノックされた。
「イザベラです。入ります」
そう言ってドアを開けたイザベラは父王だけではなく、エドムンドとカステルモールがいることに怪訝な表情をしたが、すぐにそれを消した。
「なんのようだ?」
「城下の一部勢力に不穏な動きが見られたので探ってみましたところ、すこし気になる情報を入手したので。その報告に」
「どのような動きがあったのだ?」
イザベラは部外者、特にエドムンドという他国の人間がいる前で報告するのはどうかと視線で抗議するも、ジョゼフが意に介さずに「さっさと報告しろ」と言うので軽くため息をついて報告をはじめた。
イザベラの報告はたしかに重要な報告であった。カステルモールやエドムンドが顔色を変えるほどに。しかしジョゼフはとてもつまらない報告を聞いているように思えたらしく、とても退屈そうだった。
「それで? それのどこが気になるというのだ」
報告後のジョゼフのぞんざいな言葉にイザベラは屈辱で顔を歪ませる。
「いえ、陛下。これはかなり重要な報告です。おかげで一番疑わしき人物がわかりました」
「ほう。では、さっさとそやつを連れてこい」
「いえ。まだ証拠がでているわけではありませんので。自白させるために陛下にも一芝居付き合っていただきたいのですが」
カステルモールの提案を聞いたジョゼフの瞳が輝いたのを、エドムンドは確認した。その輝きがおそらくはろくでもないものであろうことを薄々感づいてもいた。
「余に演劇を演ぜよと申すか。一国の王が主演を――いや、この場合の主演は犯人か。まあいい。どちらにせよガリア最高位の貴人が演じる劇だ。余が総監督を行う。幾十年にわたる遊興の果てに身に着けた余の知識を総動員し、完璧な脚本を作り上げて見せよう!」
なんだかおかしな報告に向かっているのに気づき、流石にイザベラとカステルモールが諫言しようとしたが、
「エドムンド殿にも重役を排してやるゆえ、ぜひ参加してほしいものだ」
「……いきなりやる気になったな? 個人的にもゲオルグを診療院送りにしてくれた礼を犯人にしたいのでな。犯人を追い詰められる配役であるなら、喜んで引き受けよう」
「うむ。了解した。エドムンド殿の要望は全面採用だ。これより余は脚本執筆を行う。一刻もせぬうちに書き上げるから翌朝までに団員全員に脚本を叩き込ませておけよカステルモール。よいな? それとイザベラ。おまえの部下を数人借りるぞ」
あまりにも予想外な展開に、イザベラとカステルモールは皮肉も全く同じ困惑の表情を浮かべて、場の空気に流されるがままに頷いた。
翌朝、拘束されていた容疑者六名は陛下自ら尋問をおこなうという名目で手枷を嵌められ、謁見の間へと連行された。
謁見の間には抜刀している近衛騎士、東薔薇花壇騎士約百名がものものしい雰囲気を漂わせながら、容疑者を囲むように睨みつけており、玉座にジョゼフが尊大な態度で容疑者を見下ろし、そのかたわらにいるエドムンド以下アルビオンの客人達は敵意に溢れた目で容疑者を睨みつけている。
そして少し離れたところで今回の筋書を知りながら、傍聴人としてそれを拝聴できる幸福を噛みしめている北花壇騎士団長のイザベラがニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、その彼女の周りを侍女たちが固めていた。
まったくもって穏やかではない光景に、容疑者たちの脳裏に嫌な予感を感じた。
「陛下、これは一体なんのおつもりかっ!」
一番反抗的なサルダーニャ公爵が怒りもあらわに抗議の声をあげるが、
「黙っておれ侯爵。次に余の許可を得ずに発言を行えば、物理的に喋れなくしてやるぞ」
冷酷な王の言葉に従い、周りの騎士が殺気を出しながらサルダーニャ侯爵に杖を向ける。
想像以上にやばい状態に陥ってると知ったサルダーニャ侯爵は渋々だが黙った。
「さて、これより国王の最高司法権を行使し、特例の臨時裁判を開廷する。国王主催園遊会における他国施設暗殺未遂事件。被告人は目の前にいる六名の貴族」
まさしく裁判長という厳粛な声で、臨時裁判の開廷を宣言するジョゼフに容疑者改め、被告人たちは動揺した。
サルダーニャ侯爵が抗議しようと声をあげたが、言葉になる前にそばにいた騎士の”水の鞭”で強くうたれて黙らせられ、オードラン男爵が恐怖のあまり体を震わせながら青い顔をした。モンドンヴィル伯爵もオードラン男爵ほどではないが、険しい表情を浮かべる。
一方、シルヴァニア辺境伯とサン=ジュスト伯爵は一瞬眉を動かしたものの、平然としていた。
「尋問官及び裁判長、ガリア王ジョゼフ・ド・ブルボン。尋問官、アルビオン王エドムンド・ペンドラゴン・オブ・ステュワート、東薔薇花壇警護騎士団長バッソ・カステルモール。法廷書記、高等法院上級参事官クロード・ルベル・サンクレール」
法廷側の人間の名前を述べた後、
「念のため聞いておくが、自分が今回の事件の首謀者だと名乗り出る者はおらぬか? 今この時点で罪を認め全面自供すれば、その潔い精神に免じて終身刑で済ましてやることを考えてやってもよいが?」
その宣言に被告人たちは憮然とした表情を顔に浮かべ、犯人は内心の歓喜を表情に出さないよう努力せねばならなかった。
こんな言葉を言ってくるということは、いまだに自分とロダンをつなげる証拠がないと証明しているに等しい。
ならばこのままシラをきりつづければ無罪放免になる可能性がある。いや、やつあたりで自分が処刑されることはあっても、同胞に危害が及ぶことはあるまい。
「いないようだな。では尋問を開始するとしよう。シルヴァニア辺境伯。容疑を認めるか否か。否であるならば理由を述べよ」
その問いかけにシルヴァニア辺境伯は涼しい顔をしながら答える。
「もちろん否認します。私の王家への忠誠心をお疑いでしょうか?」
「忠誠心のある者が不満暴露大会などを主催するとは思えぬがな」
エドムンドの詰問にも、シルヴァニア辺境伯は微笑みさえ浮かべて反論する。
「あれは一種のガス抜きですよ。不満を吐き出さずにいれば、いつ限界を迎えて暴発するかわかりませんからな。こうして時たま開いているのです。それにその大会を開くときは常に王室の許可をいただいて行っております。もし翻意があるならば、最初から許可などもらいませんよ」
これに言い返した者は一人もおらず、ジョゼフが次に行こうかと提案すると尋問官は頷いた。
「花壇騎士ベルナール。おまえの弁明を聞こう」
そう言われたベルナールは悲壮な覚悟を決めて、何の感情も浮かんでいない顔をジョゼフに向けた。
「ぼくは入団のときにたてた陛下の騎士としての誓いに背いたことは一度もありません。それが疑われているのはとても屈辱です。どうしても嫌疑が晴れないのなら、なにも抵抗することなくその嫌疑を受け入れます。それをもって我が忠誠の潔白を示し、我が家の名誉を守っていただきたい」
その弁明を聞き、カステルモールはベルナールとはあまり仲が良くないのだが、その気高き態度に深く感心した。
「陛下。ベルナールの言はもっともかと思いますが」
「それは余が決めることだぞ」
不快な目でカステルモールを睨み付けて黙らせると、一転してジョゼフはにこやかな笑みを浮かべてベルナールに「まあ、考慮しよう」とつぶやいた。
「次、サルダーニャ侯爵は……まだ激痛に呻いておるか。サン=ジュスト伯爵。先にあなたの弁明を聞くとしよう」
「とうぜん私も無罪を主張します。なぜなら――ッ!」
突如飛んできた”風の槍”が大きな音をたてて伯爵の足先数サントの床を貫き、伯爵の自己弁護を強引に中断させた。
「傷ついた床の修理費は弁償してくれるのだろうな?」
「……すまぬジョゼフ。次からは気をつけるゆえ、大目に見てくれぬか?」
「おまえのとこの大使に迷惑をかけたことをチャラにしてくれるなら考えぬでもない」
「むぅ」
ジョゼフの切り返しに、エドムンドはこれ以上言っても無駄だなと結論した。
「……いったいなんのまねですか! エドムンド陛下ッ!」
激怒してそう叫ぶサン=ジュスト伯爵に、エドムンドは冷笑する。
「戯言を抜かすな。たわけめが」
「はっ?」
「裁判長。わたしはサン=ジュスト伯爵が今回の陰謀に関わっていた決定的な証拠を掴んでおります。いくつか確認してもよろしいでしょうか?」
「カステルモールの提案を認める」
「待てッ! なんの話だ!?」
動揺を隠さぬサン=ジュスト伯爵の叫びに、ジョゼフは手元の木槌で机をたたく。
「サン=ジュスト伯爵。尋問官の話が終わるまであなたに反論の権利はない。黙っておれ」
ジョゼフの視線に、もし黙らぬならどうなるか分かっておるなという言葉をサン=ジュスト伯爵は本能的に感じ、同じようにジョゼフの意を介した騎士たちの威圧感が増したのもあって、伯爵は黙らざるを得なかった。
「被告に問いますが、あなたは二年前、新教徒の粛清を行なっていた領内の司教に反発し、戦乱を起こした。間違いないですね」
「冤罪を連発して無辜の民草を虐殺する外道でしたのでね」
「余計な言い訳は無用。証人を呼べ!」
すると扉が開いて筋骨たくましい大男と愛嬌ある顔立ちをした美少年に引きずられて一人の身なりのいい男が入室してきた。
サン=ジュスト伯爵はその男の顔を見て、思わず驚愕の表情を浮かべた。
すぐにしまったと思い、ポーカーフェイスをしたものの、時既に遅し。
「おや、伯爵閣下はこの男を知っておるのかな?」
「……たしか、リュティスの銀行屋でしょう」
嗜虐心が透けて見える笑みを浮かべているジョゼフの問いに、サン=ジュスト伯爵は白々しく答えた。
「なるほど。ではサン=ジュスト伯爵はこの者の裏の顔をまったく知らぬと申されるのだな?」
カステルモールの問いにサン=ジュスト伯爵は平然と頷きながらも、内心絶望の叫びをあげざるを得なかった。
「この男は今から五週間前に暗殺犯のロダンと親しく会話をしていたという情報を掴んだ北花壇騎士団がやや強引ながらもそれを理由に身柄を確保。周辺を捜査した結果、この男が新教徒の地下組織のリーダーのひとりであることが判明した。まちがいないな?」
「はい」
その新教徒のリーダーは、諦観で固まった表情を浮かべ、聖書に手のひらを置きながら、無感情な声で返答した。
「おまえたちの地下組織から押収した記録の中で頻繁にサン=ジュスト伯爵の名前が登場しているが、これはなぜか?」
「それはサン=ジュスト伯爵がわたしと同格のリーダーだからです」
「でたらめだ!」
「サン=ジュスト伯爵。今、あなたに発言の権利はない。証人への質問が終わるまで静かにしているように。もしこれ以上口うるさく審議の邪魔を行うならば、法廷侮辱罪が適用されるぞ」
木槌を叩きながら威圧感MAXでそう発言するジョゼフに、サン=ジュスト伯爵は反射的になにか言い返そうとしたが、東薔薇花壇騎士に杖を突きつけられて黙り込んだ。
「わたしは銀行の金を横領して資金を確保し、仕事で小耳に挟む王政府の情報をもとに王都の行動部隊を指揮しておりました。その行動部隊の人員確保をサン=ジュスト伯爵が担っておりました。伯爵は領内で新教の布教を行いつつ、信仰心が強い勇気ある若者を探し出して行動部隊の隊員として育て上げ、王都に送り込んでくれたのです」
「なるほど。次の質問だがロダンもあなたたちの組織に所属していた記録があるが、事実か?」
「その通りです。ロダンは三年前にサン=ジュスト伯爵の下で新教に改宗し、二年前からわたしの指揮下で宮廷のスパイとして活動しておりました」
「今回、ロダンが騒動を起こしたのもあなたの指示によるものか?」
「はい。確かにわたしの命令によるものです」
「なぜそのような命令を?」
「きっかけは今から三日前にロダンがジョゼフ陛下と女官とのある計画の話をしているのを盗み聞きしたことに始まります。ロダンが言うには陛下はイザベラ殿下とアルビオン王を結婚させて強固な友好関係を構築し、そしてロマリアとは強固な同盟関係を構築し、三国一致体制で新教徒絶滅政策を実施して国内勢力を統合させるという計画のことです」
この証言にこの場にいるほとんどの者が、信じられないという表情を浮かべ、エドムンドの方を向いた。
しかしそのエドムンドも驚きに満ちた表情をして、ジョゼフの方に振り向いたので、しぜんと全員の視線がジョゼフに集まった。
「……ジョゼフ。イザベラとの婚約を暗に勧められた記憶ならあるが、ロマリアと友好関係を結ぶだの新教徒絶滅政策だのという話は聞いた記憶すらないのだが?」
「たわむれでそんな冗談を口にした記憶はあるな。本気でやるつもりはかけらもなかったが」
ほんとうかと疑わしい目でジョゼフを見るエドムンドだったが、すぐに確かめようのないことだと脳内のメモ書きするだけで切り上げ、カステルモールに尋問を続けるように催促した。
「では、なぜ暗殺対象にゲオルグ大使とバリベリニ枢機卿を選んだのだ?」
「それはサン=ジュスト伯爵と協議して選びました。わたし個人としてはジョゼフ陛下の弑逆を望んでいたのですが、いま陛下が死ねばガリアはいくつにも分裂して戦乱の状態に陥り、組織の今後の見通しができなくなるというサン=ジュスト伯爵の言葉を受け入れ、友好・同盟関係をひき裂ければそれで良しとエドムンド陛下とバリベリニ枢機卿を対象にすることにしました」
「エドムンド陛下? ゲオルグ大使ではなくて?」
「はい。毒の入ったワインを渡す手はずだったので、おそらくはなんらかの手違いによりエドムンド陛下に渡されるべき毒入りワインがゲオルグ大使に渡ったということでございましょう」
あまりにも衝撃的な証言によって室内が静まり返った。
「なるほど。よくわかった。サン=ジュスト伯爵。なにか弁明はあるかね?」
「わたしは、その人の事を知りません……」
顔面を蒼白させながらそう述べるサン=ジュスト伯爵の言葉を信じる者は誰もいなかった。
「結論は出たな」
目をつぶってジョゼフは木槌を叩いて判決を述べた。
「被告、サン=ジュスト。国家反逆罪及び背教の罪により爵位剥奪及び領地・財産召し上げの上、一族郎党を絞首刑に処す。没収する財産については全て国家に納められるものとし、領地はロマリアへの誠意の証として宗教庁に荘園として寄贈することとする。また旧サン=ジュスト伯爵領における異端の摘発にガリア王政府は協力を惜しまないことをここに宣言する。アルビオンの誠意については今後何らかの形で示すことになるが、よろしいか?」
「かまわぬ」
「よろしい。他の被告は証拠不十分により無罪放免とする。以上で閉廷する」
ジョゼフが木槌を叩く、直前にサン=ジュストが叫んだ。
「ま、待ってくれ! わたしや妻はともかく一族には! 我が子にはどうか慈悲を! まだ六歳なのです! どうかお目こぼしを!」
「そのうるさい反逆者を黙らせろ」
ジョゼフの命令に東薔薇花壇騎士は忠実に従い、サン=ジュストに様々な魔法で攻撃して喋ることができないようにした。彼らはジョゼフに反感を持っていたが、新教徒の汚さに対する怒りはそれ以上であったらしい。
「今度こそ、閉廷する」
その後、サン=ジュストの一族は女子供を問わずにそのほとんどが処刑された。
彼が属した地下組織も同様である。末端はともかくとして幹部クラスは一人残らず絞首刑処された。ただしリーダーだけは逮捕されてからは積極的に組織が行った行為を証言したとが評価され、終身刑で済んだ。
旧サン=ジュスト伯爵領は宗教庁の判断により、信仰心篤く病的なまでに潔癖性な司教に荘園として与えられた。司教は断固たる決意で異端殲滅に臨み、数千から数万単位の人間を異端審問にかけ、その内実に九割以上の人間が異端認定で処刑されるか審問中に限界を迎えるかして死亡した。
死んだ人間の内、何割が本当に新教徒であったのかは謎であるが、司教は、
「多少無実の人間がいても、死ぬべき人間はちゃんと死んだんだからいいじゃないか。
”神はおのれを知る者の魂を救いたもう”と聖書にある。つまり悪人は死ねばそのまま地獄行きだが、善人は死んでも神はちゃんと救って魂を安楽の地へと導いてくださるのだから問題はない。
それに異端どもと一緒に暮らしていてはいつ異端に誑かされるかわかったものではない。そうなってしまえばその者は地獄で永劫苦しまねばならんのだ。ならば現世で多少の痛みを与えることになっても天国へ導くのが神の僕たるわたしの義務であろう」
と慈悲の心にあふれた眼差しで弟子たちにそう説法したという。
カステルモール「なんで裁判ごっこになったの?」
ジョゼフ「なんか面白くない展開だったのでむしゃくしゃしてやった。ついでに油断しきってる犯人の意表をつくために他の容疑者も巻き込んだぞ!」
えー、なんというか作者が持つゼロ魔世界の暗黒面を描写したかっただけなのに、なぜこんな推理物やらなんやらが混合された代物になったのか、作者は非常に疑問ですw
ちなみ今回の事件の全貌は、
イザベラとの諍いでジョゼフの箱庭の中にあった新教徒の僧侶のコマ壊される
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ジョゼフはついでだから新教徒のコマを全滅させようと考え出す。
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そこで銀行屋の部下であるロダンに、女官とのでたらめ会話をわざと聞かせる。
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ロダンの報告を聞いて、銀行屋はジョゼフ暗殺計画を立てる。
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園遊会で自分を暗殺にしにくるの返り討ちするという展開を望んでジョゼフはWktk
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なのに、サン=ジュストの横槍で暗殺対象がエドムンドとバリベリニに変更。
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あまり面白くない展開にジョゼフはしらけて、捜査をカステルモールに任せる。
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カステルモールは首謀者を特定できず、ジョゼフは八つ当たりに誰か殺してやろうかと考え出す。
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そこにイザベラ、ロダンとサン=ジュストと銀行屋の関係を調べた報告書を提出。
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ジョゼフ「よし、裁判ごっこしよ」
ジョゼフが煽った感じですが、黒幕は新教徒の地下組織。暗殺命令を出したのはサン=ジュストでした。