神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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本当にうちの小説は全く進まないな。
皆さんにそろそろ飽きられつつあるのではないかと若干不安に思いつつ、投稿します。


第十六話

 

 

感応種であるイェン・ツィーを討伐した俺たちブラッド。

それで何か変化があったかと言われればぶっちゃけほとんど何も変わってない。

相も変わらず毎日毎日アラガミを殺して喰らって討伐して虐殺して屠る、そんなことばかりしている。

アラガミがこの世に存在する限り、神機使いに休日などないのだ!

 

 

……いや、さすがに冗談ですけどね?

けれど、ほぼ連日稼働中と言っても過言ではない。フライアの進路上にはまだまだ多くのアラガミがのさばっているからである。

唯一変わったことは、またシエルさんが隊で浮き始めたことくらいだろうか。

 

 

少し前までは完全に染まっていたのにいつの間にか脱色を行っていたらしく、入隊当時の真面目すぎるシエルさんに退化?していた。

 

 

何でも彼女、ラケル博士が運営している施設「マグノリア・コンパス」にて高度な軍事訓練を叩き込まれてきたらしく、そのために普通のことをあまり経験せずに育ってきてしまったらしい。

不器用な子だけど友達になってあげてねとはラケル博士の姉、レア博士の言葉である。

 

 

しかし、おかげで俺の仕事が増える増える。ジュリウス隊長にチーム内のことシエルのことを丸投げされたせいで、ほかのチームの人との摩擦をできるだけ少なくするようにチーム分けを行ったり、彼女の精密すぎる作戦や訓練方法にテコ入れしたりと割かし多忙である。

 

 

信じられるか?俺、一か月と少し前まで普通の学生やってたんだぜ?

それが今では化物を毎日ぶっ殺す社畜モドキになってるんだぜ。本当にどうしてこうなったのやら。

 

 

まぁ、シエルさんもシエルさんなりにわからないながらも色々考えてはいるようだったのでもう少ししたら大丈夫だとは思うんだけど……なるべく早くしてほしいかなぁ。

 

 

さて、愚痴はここまでにしておこう。

溜まった鬱憤はそこら辺のアラガミをデストロイすることで解消すればいい。幸い、イェン・ツィーと戦った以降の任務は雑魚ばかりだから今回もいい感じでストレスを発散させてくれることだろう。

油断はしないけどね。

 

 

<エリック、上だ!

 

 

なんてシャレにならんし。

まぁ、上田はすでに実地訓練で乗り越えてるから平気かな。

 

 

くだらないことに思考リソースを使っているといつの間にやら目的の場所である。

今回の任務は緊急のものが複数来ていたため少数で、それぞれの任務にあたることとなっていた。ジュリウス隊長とロミオ先輩、ギルさんとナナ、俺とシエルさんと言う組み合わせである。

 

 

シエルをよろしくなと言って俺の肩に手を置いたジュリウス隊長の顔がとても憎らしかった。あの人少しは隊員のために働こうよ。

 

 

「今回の相手は誰でしたっけ?」

 

 

「コンゴウとオウガテイル堕天種ですよ、副隊長。このくらい把握しておいてください」

 

 

「すいません」

 

 

反射的に謝ってしまった。

しかし、情報の把握は上に立つものとしては当然のことだから怒られても仕方ないね。

例えその暇がなくとも。

 

 

「なら、バレットは炎系に統一しておきましょう。オラクルの消費は激しいけど今回は二人だし、その都度カバーしていけば問題ないでしょう」

 

 

シエルさんだって銃で撃つだけしかできないわけではない。接近戦でも結構な腕前である。それで敵からオラクルを略奪し、適当に距離を取って弾を撃ち込めばいい。

 

 

「それについて異議はありません。しかし、副隊長の戦い方で援護するのは正直かなり厳しいです」

 

 

「マジか」

 

 

俺の戦い方そこまで変則的だったかなぁ?

ここで少しだけ自分の戦い方を振り返ってみた。

 

 

他のアラガミをプレデターフォームで捕まえ、攻撃の盾やそのまま攻撃したりする。

アラガミを踏み台に跳びあがり、そのまま重力に従ってアラガミを切り殺す。

跳びかかってきたアラガミに銃を突きつけ、汚い花火だ。

その他もろもろ。

 

 

………俺以外にこんな戦い方してるやつ見たことねぇな。そういえば。

確かに、これは援護しにくいだろう。主に何をしでかすかわからないから。

 

 

「了解。なら今回は二人で前衛をしましょう。それで何かあったらお互いにカバーし合うってことで」

 

 

「はい、それが良いと思います」

 

 

『各種バイタルに異常なし。いつでも始めてください』

 

 

通信機からフランさんの声が聞こえてくる。

もうお約束だね。

 

 

「じゃあ、始めましょうか。シエルさん」

 

 

「はい、これから任務を開始します」

 

 

じゃ、お仕事始めましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……やはりすさまじい。

副隊長と近くで戦っていて、私が感じた感想はこの一言に尽きました。

目の前のアラガミを相手取りながらも決して周囲にいるアラガミをおろそかにしたりしない。むしろ、四方八方に目が付いているのか?と疑いたくなるくらい正確に周囲のアラガミを倒していきました。

それだけでなく、私のフォローまで完璧にこなしていました。一か月と少し前に神機使いとなったにもかかわらずここまでの実力とは……。

こういってはなんですが、経歴から考えるに化物ですね。

 

 

「ん?どうかしました?」

 

 

片手間にオウガテイル堕天種を切り裂きながら笑顔を向けてくる副隊長。

それ、やめてください。とっても怖いんですけど……。

 

 

「いえ、何でもありません」

 

 

思わず、副隊長から目をそらす。

今の副隊長が怖かったという事もあるが、その前に先程考えた思考が少し失礼かと思いどこか後ろめたく感じたのかもしれない。

ダメだ、こんなことを考えていては……チーム、いい連携なんてできるわけが……。

 

 

「ま、何もないならいいんですけどね―――――」

 

 

ザシュ

 

 

私の背後で何かが切れ、液体が飛び散るような音がする。

そちらに目を向けてみると、今私に襲いかかろうとしたオウガテイル堕天種が切り伏せられ、力なく地面に倒れていた。

 

 

「―――――――あんま考え事しすぎると、死んじゃいますよ?だから、もう少し頭空っぽにしてみたらどうですか?案外、そっちの方がいいことあるかもしれませんよ」

 

 

にっこりと、年相応の笑みを見せて副隊長はそう言った。

またすぐに背後のアラガミに切りかかりに行ってしまったけど。

 

 

正直、副隊長の言ったことを今すぐに実行はできないでしょう。

私は長年、こういう風に教育を受け、育ってきたのですから。この理詰めの考え方は早々変わらないと思います。

 

 

しかし、今もオウガテイル堕天種を笑顔で屠り続けている副隊長を見ていると、何となく……本当に何となくですがチームとして機能して行くような気がします。

 

 

「シエルさんどうかしました?」

 

 

「いえ、なんでもありません」

 

 

私は副隊長にそう返し、たった今現れた中型アラガミコンゴウに向けて銃を構えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何やらシエルさんの機嫌が滅茶苦茶いい件について。

笑顔で照準を合わせ、ぶっぱしまくる姿は恐怖しか感じさせない。しかも、オラクルを回復させるOアンプルをがぶ飲みするという徹底ぶりである。

思わず俺の表情も引き攣ってしまっても仕方ないと思う。

 

 

見ろ、コンゴウが転がろうとして何回も失敗している。

ここまで何もできないと何となく可哀そうに思えてくるから不思議である。

しかしその様を見てもシエルさんの表情は変わらない。むしろ、より一層笑みが深くなっているまである。

怖すぎて思わず、コンゴウに攻撃するのを忘れてしまっている。

 

 

けど、このままシエルさんに任せてサボるわけにもいかない。

神機を構え、コンゴウに向けて駈け出そうとしたところで、

 

 

「グォオオオオ………」

 

 

コンゴウは最後に力なく咆え、その体を地面に沈めた。

が、ハイなテンションのシエルさん。コンゴウが倒れたにも関わらず、いまだに神機から弾を撃ち続けております。

 

 

もうやめて、シエル!コンゴウのライフはとっくにゼロよ!

 

 

「おや、本当ですね」

 

 

「マジで気付いてなかったんか……」

 

 

私(わたくし)戦慄せざるを得ませんことよ。

 

 

『対象の討伐を確認。素晴らしい戦果です。この調子なら、もうちょっと難しい任務でもこなせるんじゃないですか?』

 

 

「そんなことより休日が欲しいです」

 

 

『私だって欲しいですよ』

 

 

「ですよねー」

 

 

ホントフェンリルってばブラック企業ねっ!

思わずフランさんと愚痴り合う。

 

 

「副隊長、帰投準備ができました」

 

 

「了解です」

 

 

フランさんとの通信を切ってシエルさんの言葉に返事をする。

 

 

「それと、フライアに戻った後少々時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

 

 

「別にかまわないけど…」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

そう言い残し、すたすたとシエルさんは帰っていった。

頭に疑問符を浮かべながらも、何時ぞやのようにおいていかれないよう、急いでシエルさんの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで、何事もなく帰投を果たした俺はシエルさんに呼び出された庭園に足を運んでいた。

そこにはすでにシエルさんが居り、それはいったいいつの間に…と考える早さである。

 

 

「副隊長。お忙しい中、お呼び立てして申し訳ありません。ですが、どうしてもお伝えしたいことがあるんです」

 

 

「別に大丈夫だけど……どうしたの?そんな改まって」

 

 

「ブラッドは皆、私が考えていた以上の高い汎用性と戦闘能力を、兼ね備えた部隊です」

 

 

無視か。

黙って私の話を聞けという事ですね、分かります。

 

 

「更に驚いたのは、決して戦術理解度が高いわけでもなく、規律正しい連携をしているわけでもない点です」

 

 

皆脳筋だからね、仕方ないね。

 

 

「私の理解をはるかに超えて、ブラッドというチームは高度に有機的に機能している、それはおそらく……副隊長、きっと、貴方がみんなを繋いでいるからなんです」

 

 

「……へ?」

 

 

俺がみんなを繋いでいる……?

HAHAHA!ないわー。

 

 

「シエルさん、何かの間違えじゃない?俺がみんなを繋いでいるなんて……」

 

 

むしろ、みんなを繋ぐどころか引かれているまである。

 

 

「いえ。みんななんだかんだ言っても副隊長のこと好きだと思いますよ。私も嫌いではありませんし」

 

 

「お、おう」

 

 

真正面からそういわれると照れるな。

思わず、シエルさんの顔を直視することができず視線をそらす。

そんな俺の様子を気にすることなく、シエルさんは話を続けた。貴女も結構ゴーウイングマイウェイだよね……。

 

 

「私は戸惑っています……正直、今まで蓄積してきたものをすべて否定されている気分です」

 

 

俺は今、貴女のせいで大いに戸惑っていますけどね。

しっかし、すべて否定されてる気持ちか……。

そんなことを思っていたのかと苦い顔をしているのが分かったのかシエルさんは慌てて次の言葉を紡ぐ。

 

 

「あ、誤解しないでください!嫌な気持ちではないんです……それどころか……なんというか……」

 

 

「ええと、どう説明すればいいのか……ううん……少々お待ちください……」

 

 

そういって考え込むシエルさん。

レア博士から言われていた通り、だいぶ不器用なようだ。まぁ、ずっと任務や行動を共にしていればわかるけど。

 

 

やがて、言葉が見つかったのかキリッとした表情で俺の顔を正面から射抜く。

 

 

「折り入って………お願いがあります………私と、友達になってください!」

 

 

綺麗なお辞儀と共に出される手、俺はそれをぽかんと眺めていた。いったいどうしたというのだろうか……。

 

 

そうやって考えていると、シエルさんは不安になったのか、不安そうな表情で顔を上げて、

 

 

「……あの、どうでしょう?」

 

 

「……えーっと」

 

 

あまりの急展開に正直ついていけていない。

なので、ついつい反応が適当になってしまった。

その俺の反応をNOと受け取ったのか、シエルさんは残念そうに声のトーンを下げた。

 

 

「そうですよね……。すいません、昔から訓練ばかりで…あまりこういうことに慣れてなくて……」

 

 

「いやいやいや、大丈夫です!友達になりましょう!」

 

 

「ありがとう……ございます……。憧れてたんです……仲間とか、信頼とか……命令じゃない、みんなを思いやる関係を……」

 

 

「……そっか」

 

 

レア博士から彼女の辿ってきた歩みを聞いているのでその言葉がどれほどの重みを持っているのか、少しでも理解できるため、思わず微笑んでしまう。

成長したんだなぁ。

 

 

「それと、もう一つ……不躾なお願いがあるんですけど……」

 

 

「なに?」

 

 

「貴方を呼ぶとき……『君』って呼んでいいですか?」

 

 

「……ん?」

 

 

「あ、すいません……いきなり『君』って、呼ぶのは……いくらなんでも早すぎますよね……」

 

 

いや、ツッコミたいところはそこじゃないんだけど。

君って……なんか前時代的だなぁ。しかも、親しい間柄で呼ぶような呼び名じゃないし。

誰だ、こんなこと教えたやつ。

 

 

「ちなみに、なんで『君』なの?」

 

 

「親しい間柄の人は相手のことを『君』と呼ぶと……ラケル先生が……」

 

 

ま た あ い つ か!

ホントもうろくなこと教えないなあの人!

 

 

「もう、シエルさんがそれでいいならいいよ」

 

 

なんかどっと疲れてしまった俺は殆ど投げやりに近い対応をしてしまう。だが、シエルさんは特別気にはしていないようで。

 

 

「ありがとう。君が……私にとっての、初めての……友達です……」

 

 

胸の前で手を組み、満面の笑みでそういってくれた。

おおぅ、胸に来るな。この笑顔。

シエルさんマジ天使と思わず言ってしまいそうだぜ。

 

 

「少しだけ、みんなと仲良くなる自信がついた気がします」

 

 

「それはよかったよ」

 

 

俺の負担も結果的に軽くなるし、彼女には、ぜひとも友達作りをがんばってもらいたいね。

 

 

「あ、何度もすいません。これで最後のお願いなんですけど……聞いてくれます?」

 

 

「……いいですよ。ここまで来たら何でも言ってください」

 

 

満面の笑みを見せてくれたお礼だ。

出血大サービスで俺にできることなら何でもしてあげよう。

 

 

一体どんなのが来るのかと、のほほんと次の言葉を待つ。

すると、彼女はこう言った。

 

 

「敬語……なくしてくれませんか?もう、私たち友達なんですから」

 

 

「……そうか、ならそうさせてもらうよ。改めてよろしくね。シエル」

 

 

「はいっ!」

 

 

敬語に関しては完全にブーメランだが、そこはツッコまないでおこう。

とりあえず、彼女が真にブラットのメンバーとなるのも遠くはないだろうと思い俺は気の抜けた笑みを浮かべた。

 

 

……これで少しは仕事が減るだろうと考えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみにこの後、シエルちゃんはブラッドメンバーと無茶苦茶おでんパンパーティーした。

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